背中に貼られた小さなシール―パッチテストが「数日待つ」理由はⅣ型にあり
第115回医師国家試験 F問題 第50問
国試問題にチャレンジ
42歳の女性。自宅近くの歯科診療所で歯科金属のアレルギーを疑われ,検査を勧められて来院した。ネックレスとピアスで皮膚症状を生じたことがある。実施した皮膚検査の写真を下に示す。 この検査で判定するアレルギー型はどれか。

- a.Ⅰ型
- b.Ⅱ型
- c.Ⅲ型
- d.Ⅳ型
- e.Ⅴ型
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
金属などによるアレルギー性接触皮膚炎は、感作されたT細胞が再接触時に反応する細胞性免疫で、反応のピークが24〜72時間後に来る遅延型、すなわちⅣ型アレルギーです。パッチテストは疑わしい物質を背部などに貼付し、48時間後に除去して判定し、3日目・1週間後にも判定する検査で、金属は遅れて陽性化しやすいため1週間後の判定が重要です。Ⅰ型はプリックテストや皮内テストで15〜20分後に判定し、Ⅱ型・Ⅴ型は抗体の検出、Ⅲ型は免疫複合体や数時間でピークとなるArthus反応で評価する点が対照的です。原因金属が特定されれば歯科補綴物の置換などにつながり、口腔症状や全身の皮膚病変の改善が期待できます。アレルギー型を免疫機序・反応時間・検査法の3点で整理しておくことは、皮膚科に限らず日常診療での原因検索の基礎となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・42歳女性。歯科診療所で歯科金属に対するアレルギーを疑われ、検査目的で受診した。 ・以前にネックレスやピアスで皮膚症状が出たことがある。装飾品の接触部位に皮膚炎を起こした既往は、ニッケル、コバルト、クロムなどの金属に対するアレルギー性接触皮膚炎を示唆する。 ・写真では、小さな円形の試料を並べたシートが背部などの皮膚に貼付されている。これはパッチテスト(貼布試験)である。
考え方
金属アレルギーによる接触皮膚炎は、皮膚から侵入した金属イオンが体内の蛋白と結合して抗原となり、それに感作されたT細胞が再接触時に反応して起こる。抗体ではなくT細胞が主体の細胞性免疫反応であり、抗原に触れてから24〜48時間以上たって反応が最も強くなるため、遅延型過敏反応(Ⅳ型アレルギー)に分類される。 パッチテストはこの反応を皮膚上で再現する検査である。疑わしい物質(本例では歯科金属や装飾品に含まれる金属の試薬)を皮膚に密封して貼付し、48時間後に除去して判定し、さらに72時間後(3日目)と1週間後(7日目)頃にも判定する。貼付部位に紅斑・浸潤・丘疹・小水疱が生じれば陽性である。特に金属は反応が遅れて出ることがあるため、1週間後の判定も重要である。判定が数日後になること自体が、この検査が遅延型反応(Ⅳ型)を調べていることを表している。
選択肢考察
- ×a. Ⅰ型
Ⅰ型(即時型、アナフィラキシー型)は、肥満細胞や好塩基球の表面に結合したIgEに抗原が結合し、ヒスタミンなどが放出されて数分〜数十分で症状が現れる反応である。じんま疹、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーなどが該当する。検査には血清特異的IgE抗体測定、皮膚プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト(いずれも15〜20分後に膨疹・紅斑を判定)、誘発試験などを用いる。48時間以上たってから判定するパッチテストの対象ではない。
- ×b. Ⅱ型
Ⅱ型(細胞傷害型)は、細胞表面や基底膜などの抗原にIgGやIgMが結合し、補体の活性化や貪食、抗体依存性細胞傷害によって細胞・組織が障害される反応である。自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、免疫性血小板減少症、Goodpasture症候群などが該当する。検査は直接・間接Coombs試験、血小板結合IgG(PAIgG)測定、組織の直接蛍光抗体法などで、抗体を検出する。パッチテストでは評価しない。
- ×c. Ⅲ型
Ⅲ型(免疫複合体型、Arthus型)は、抗原と抗体が結合した免疫複合体が血管壁や組織に沈着し、補体活性化と好中球の集積によって組織障害を起こす反応である。血清病、全身性エリテマトーデスのループス腎炎、溶連菌感染後糸球体腎炎、過敏性肺炎(Ⅳ型も関与)などが該当する。皮膚反応としては抗原の皮内注射後4〜8時間程度で最大となるArthus反応があり、ほかに免疫複合体や補体価の測定を行う。パッチテストの判定対象ではない。
- ○d. Ⅳ型
Ⅳ型(遅延型、細胞性免疫型)は、感作されたT細胞が抗原に再び出会うとサイトカインを放出し、マクロファージなどを呼び寄せて炎症を起こす反応で、抗体は関与しない。抗原接触から24〜72時間程度で反応がピークとなる。金属などによるアレルギー性接触皮膚炎はその代表であり、パッチテストは貼付48時間後以降に紅斑・丘疹・小水疱を判定してこのⅣ型反応を調べる検査である。同じⅣ型の反応を調べるものに、ツベルクリン反応や薬剤によるリンパ球刺激試験(DLST)がある。
- ×e. Ⅴ型
Ⅴ型(刺激型)は、細胞表面の受容体に対する自己抗体が結合して受容体を刺激または阻害する反応で、Ⅱ型の亜型とする考え方もある。TSH受容体を刺激する抗体によるBasedow病が代表で、抗アセチルコリン受容体抗体による重症筋無力症(受容体の阻害)もここに含めることがある。検査は血中の自己抗体測定であり、パッチテストでは評価しない。
アレルギー反応の分類(Gell & Coombs分類)
・Ⅰ型(即時型):IgE・肥満細胞。アナフィラキシー、じんま疹、気管支喘息、花粉症。検査:特異的IgE、プリックテスト、皮内テスト。 ・Ⅱ型(細胞傷害型):IgG・IgM、補体。自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、免疫性血小板減少症、Goodpasture症候群。検査:Coombs試験など。 ・Ⅲ型(免疫複合体型):免疫複合体、補体、好中球。血清病、ループス腎炎、溶連菌感染後糸球体腎炎。皮膚反応はArthus反応。 ・Ⅳ型(遅延型):T細胞、マクロファージ。接触皮膚炎、ツベルクリン反応、移植片拒絶。検査:パッチテスト、ツベルクリン反応、リンパ球刺激試験。 ・Ⅴ型(刺激型):受容体に対する自己抗体。Basedow病など。
パッチテストの実際
・試薬を専用の絆創膏(パッチテストユニット)に載せ、背部や上腕内側の健常皮膚に貼付する。 ・貼付後48時間で除去し、除去後しばらくして(2日目)判定、さらに3日目と7日目頃に判定する。金属では遅れて陽性化する例があるため7日目の判定が重要である。 ・判定は国際基準(ICDRG基準)に従い、紅斑のみ(疑陽性)、紅斑+浸潤・丘疹(+)、小水疱(++)、大きな水疱(+++)などに分ける。刺激反応(アレルギーではない皮膚刺激)との区別も必要である。 ・検査期間中は貼付部位を濡らさない、激しい運動を避ける、副腎皮質ステロイドや抗ヒスタミン薬の使用に注意するなどの指導を行う。
金属アレルギーと歯科金属
・原因金属としてニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、金、水銀などが代表的である。歯科用合金(金銀パラジウム合金、アマルガムなど)にも含まれる。 ・歯科金属アレルギーは口腔内の症状(口内炎、口腔扁平苔癬様病変)のほか、全身性接触皮膚炎や掌蹠膿疱症、汗疱状湿疹などの皮膚病変の原因になることがある。 ・パッチテストで原因金属が特定されたら、その金属を含む歯科補綴物を除去し、セラミックやレジンなど原因を含まない材料に置き換える。
POINT
・パッチテストはⅣ型(遅延型)アレルギーを調べる検査で、アレルギー性接触皮膚炎(金属・化粧品・薬剤など)の原因検索に用いる。 ・貼付48時間後に除去して判定し、3日目・7日目にも判定する(金属は遅れて陽性化しやすい)。 ・Ⅰ型の検査はプリックテスト・皮内テスト・特異的IgE(15〜20分で判定)。 ・Ⅳ型の検査にはパッチテストのほか、ツベルクリン反応、リンパ球刺激試験がある。 ・装飾品で皮膚炎を起こした既往は金属アレルギーを示唆し、歯科金属の検索につながる。
