「1人で捨てない」が鉄則―医療用麻薬の管理ルールを総点検
第115回医師国家試験 E問題 第3問
国試問題にチャレンジ
医療機関における麻薬の管理・取扱いについて誤っているのはどれか。
- a.鍵をかけた堅固な設備に保管する。
- b.残った注射薬は研修医が1人で破棄する。
- c.紛失した場合は都道府県知事に届け出る。
- d.施用・交付時に診療録に必要事項を記載する。
- e.施用・交付には麻薬施用者免許が必要である。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
医療用麻薬は麻薬及び向精神薬取締法により、免許・保管・記録・廃棄・事故届の各段階で厳しく管理されます。施用・交付には医師免許に加えて都道府県知事が交付する麻薬施用者免許が必要で、保管は他の医薬品と区別した施錠可能な堅固な設備で行い、施用・交付時には診療録に所定事項を記載します。紛失・盗難などの事故は都道府県知事へ届け出ます。廃棄は必ず立会いのもとで行い、施用残液は他の職員の立会いで廃棄して30日以内に届け出、未使用麻薬は事前届出のうえ麻薬取締員などの立会いで廃棄するため、研修医が単独で破棄することは認められません。こうした仕組みを理解することは、乱用を防ぎつつ緩和医療で必要な鎮痛を適正に提供するための前提となります。
解答・解説
正解はbです
テーマ
モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなどの医療用麻薬は、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)によって、免許・保管・記録・廃棄・事故時の届出が厳しく規定されている。乱用・横流しを防ぐため、「誰が扱えるか(免許)」「どこにしまうか(保管)」「何を記録するか(記録)」「どう処分するか(廃棄)」「なくなったらどうするか(事故届)」の各段階にルールがある。
考え方
本問は「誤っているもの」を選ぶ。各選択肢を法の原則に照らすと、保管・事故届・診療録記載・免許の記述はいずれも法の規定どおりである。一方、廃棄は必ず他者の立会いのもとで行い記録・届出する仕組みになっており、研修医が単独で処分することは認められない。この点が誤りである。
選択肢考察
- ×a. 鍵をかけた堅固な設備に保管する。
正しい記述である。麻薬は麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別し、鍵をかけた堅固な設備(容易に持ち運べない金庫など)に保管しなければならない。麻薬診療施設では、麻薬管理者(麻薬施用者が2人以上いる施設で置く)が保管・管理の責任を負う。
- ○b. 残った注射薬は研修医が1人で破棄する。
誤った記述であり、これが正解である。患者に施用した後に残った注射液(施用残液)は、麻薬管理者(麻薬管理者を置かない施設では麻薬施用者)が、薬剤師など他の職員の立会いのもとで、回収困難な方法(放流・焼却など)で廃棄し、その後30日以内に都道府県知事へ調剤済麻薬廃棄届を提出する。また、期限切れなど未使用の麻薬を廃棄する場合は、事前に都道府県知事へ届け出たうえで、麻薬取締員など当該職員の立会いのもとで廃棄しなければならない。いずれの場合も一人で処分することは許されず、研修医が単独で廃棄するのは不適切である。
- ×c. 紛失した場合は都道府県知事に届け出る。
正しい記述である。麻薬の滅失・盗難・所在不明(紛失)・その他の事故が生じたときは、品名・数量や事故の状況を、速やかに麻薬事故届として届け出なければならない。医療機関(麻薬診療施設)の場合、届出先は都道府県知事である。盗難の場合は警察署への届出も必要となる。
- ×d. 施用・交付時に診療録に必要事項を記載する。
正しい記述である。麻薬施用者は麻薬を施用・交付したとき、診療録に患者の氏名・住所、病名、主要症状、施用・交付した麻薬の品名と数量、施用・交付の年月日を記載しなければならない。加えて麻薬診療施設では麻薬帳簿を備え、受け入れ・払い出し・廃棄などを記録する。
- ×e. 施用・交付には麻薬施用者免許が必要である。
正しい記述である。医師免許だけでは麻薬を施用・交付したり、麻薬処方箋を交付したりすることはできず、都道府県知事から麻薬施用者免許を受ける必要がある。免許は従事する麻薬診療施設ごとに受け、有効期間は免許を受けた日からその翌々年の12月31日までである。
医療機関における麻薬管理の主な規定
・免許:麻薬施用者免許(医師・歯科医師・獣医師が対象)、麻薬管理者免許(医師・薬剤師などが対象)。いずれも都道府県知事が交付する。麻薬施用者が2人以上いる麻薬診療施設には麻薬管理者を置く。 ・保管:麻薬以外の医薬品(覚醒剤を除く)と区別し、施錠した堅固な設備に保管する。 ・記録:診療録への記載(患者情報・病名・主要症状・品名・数量・年月日)と麻薬帳簿の整備。 ・処方箋:麻薬処方箋には患者の住所、麻薬施用者の免許番号などの記載が必要である。 ・廃棄:未使用麻薬の廃棄は事前届出と当該職員の立会いが必要。施用残液や患者から返納された調剤済麻薬は、施設内で職員立会いのもと廃棄し、30日以内に届け出る。 ・事故:紛失・盗難・破損などは速やかに都道府県知事へ届け出る。 ・年間届:麻薬管理者(または施用者)は毎年、前年の麻薬の受け入れ・払い出し・在庫量などを都道府県知事に届け出る。
関連
向精神薬は麻薬ほど厳格ではないが、施錠できる場所での保管や、一定量以上の紛失時の届出などが定められている。覚醒剤(原料を含む)は覚醒剤取締法で規制され、覚醒剤は麻薬と同じ保管庫に保管することが認められている。
POINT
・麻薬の施用・交付には医師免許に加えて麻薬施用者免許(都道府県知事が交付)が必要。 ・保管は他の医薬品と区別し、鍵をかけた堅固な設備で行う。 ・施用・交付時は診療録に所定事項を記載する。 ・紛失・盗難などの事故は都道府県知事に届け出る。 ・廃棄は単独では行わず、必ず立会いのもとで行い、届け出る。
