StudyMed医師国家試験

入院の「見通し」は書くが「値段」は書かない―入院診療計画書の中身を押さえる

第115回医師国家試験 E問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第115回 E問題 第1問

入院診療計画書に記載が求められていないのはどれか。

  1. a.入院時の傷病名
  2. b.予測される入院費
  3. c.推定される入院期間
  4. d.退院に向けた支援計画
  5. e.入院中に計画される検査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、入院したときに患者さんに渡す入院診療計画書について、何を書く書類なのかを問う問題だ。着眼点はひとつ、この書類が何のためにあるのか。目的がわかれば、記載事項は自然に見えてくるよ。
医学生医学生
臨床実習で病棟にいたとき、入院した患者さんに看護師さんが書類を渡して説明していたのを見ました。あれのことですよね。
ドクタードクター
そう、それだ。入院診療計画書は、どんな病気で、どんな検査や治療を、どれくらいの期間をかけて行う予定なのかを文書にして、患者さんや家族に渡して説明するためのものなんだ。インフォームド・コンセントの考え方を入院医療に具体化した書類といえる。
医学生医学生
法律で決まっているんですか。それとも病院ごとの慣習でしょうか。
ドクタードクター
医療法で、病院や診療所の管理者に対し、入院から7日以内に作成して交付し、適切に説明することが求められている。診療報酬上も入院基本料を算定する要件の一つになっていて、医師だけでなく看護師やその他の必要な職種が共同して作るんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で医療法の条文を見た気はしますが、中身までは覚えていませんでした。具体的には何を書くんでしょう。
ドクタードクター
主なものを挙げよう。患者さんの氏名などの基本情報、主治医の氏名、入院の原因となった傷病名と主要な症状、入院中に行う検査・手術・投薬などの治療計画、それに推定される入院期間だ。看護や栄養管理の計画も含まれる。
医学生医学生
そうすると、入院時の傷病名と入院中に計画される検査は、どちらも当然書く項目ですね。
ドクタードクター
その通り。自分がなぜ入院したのか、入院中に何をされるのかは、患者さんが一番知りたいことだからね。推定される入院期間はどうだろう。
医学生医学生
仕事や家族の予定を調整するのに必要なので、書くべきだと思います。ただ、病状次第で変わるものを書いていいのか少し気になります。
ドクタードクター
いい疑問だね。だから「推定」なんだ。あくまで見通しとして示し、変わればあらためて説明する。見通しがあるだけで、患者さんは仕事の休みや退院後の生活の準備を考えられるんだ。
医学生医学生
退院に向けた支援計画も載るんですか。入院したばかりで退院の話をするのは早い気もします。
ドクタードクター
そう感じる人は多いけれど、今は入院早期から退院後の生活を見据えて、医療・介護・福祉サービスとの連携を計画することが重視されている。とくに在宅復帰支援を評価する病棟などでは記載が必要になる。だからこれも盛り込まれる項目なんだ。
医学生医学生
となると残るのは、予測される入院費ですね。患者さんにとっては大事な情報なのに、書かなくていいのは意外です。
ドクタードクター
正解はそれだ。入院診療計画書は「医療の内容と見通し」を伝える文書で、費用の見込みは記載事項に含まれていない。入院費は実際の検査や治療の内容、入院期間の変動、高額療養費制度などの負担軽減によって大きく変わるからね。費用の説明は、必要に応じて医事課などの窓口や別の書類で行われる。
医学生医学生
費用が大事でないわけではなく、別の場所で説明する、という整理なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。関連する書類もあわせて押さえておこう。退院時に、退院後の療養に必要な保健医療や福祉サービスを書いて渡す退院療養計画書、ほかの医療機関に紹介するときの診療情報提供書がある。また、疾患ごとに入院中の検査や治療の流れを標準化したクリニカルパスの患者用版を、入院診療計画書として使うこともあるんだ。
医学生医学生
外科を回ったとき、手術前日から退院までを日ごとに表にした紙を患者さんに渡していました。あれがクリニカルパスですね。
ドクタードクター
そう。患者さんにとっては先の見通しが立って安心できるし、医療者にとってはチームで同じ計画を共有できる。将来、自分が主治医として計画書を書いて説明する場面は必ず来るから、形式だけでなく、患者さんが理解できる言葉で伝えることを意識しておこう。

まとめ

入院診療計画書は、医療法に基づき入院後7日以内に作成・交付・説明する書類で、入院医療におけるインフォームド・コンセントを具体化したものです。記載事項は、傷病名と主要な症状、検査・手術・投薬などの治療計画(看護や栄養管理を含む)、推定される入院期間、主治医の氏名、退院に向けた支援などで、医師・看護師など多職種が共同で作成します。一方、予測される入院費は治療内容や期間、公的な負担軽減によって変わるため記載事項に含まれず、必要に応じて別の窓口や書類で説明されます。退院療養計画書、診療情報提供書、クリニカルパスといった関連文書とあわせて理解しておくと、書類の目的を軸に記載事項を判断でき、将来患者に入院計画を説明する際にも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

入院診療計画書は、患者が入院した際に、どのような病気で、どのような検査・治療を、どのくらいの期間をかけて行う予定なのかを文書にまとめ、患者(または家族)に交付して説明するための書類である。インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の考え方を入院医療に具体化したものといえる。 法的には医療法第6条の4で、病院・診療所の管理者に対し、入院から7日以内に入院診療計画書を作成して患者・家族に交付し、適切に説明することが義務付けられている(入院期間が短い場合などの例外がある)。また診療報酬上も、入院基本料を算定するための要件の一つとされており、医師・看護師・その他必要な職種が共同して作成する。 記載すべき主な事項は、患者の氏名・生年月日・性別、主治医の氏名、入院の原因となった傷病名と主要な症状、入院中に行われる検査・手術・投薬その他の治療(看護や栄養管理を含む)の計画、推定される入院期間などであり、さらに退院に向けた支援(退院後の療養や在宅復帰に関わる計画)も盛り込まれる。 つまり入院診療計画書は「医療の内容と見通し」を伝える文書であり、費用の見込みはその記載事項に含まれない。この観点から、記載が求められていないものを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  入院時の傷病名

    入院の原因となった傷病名と主要な症状は、医療法で定められた入院診療計画書の基本的な記載事項である。患者が自分の病気と入院の理由を理解するうえで欠かせない情報であり、記載が求められる。

  2. ○b.  予測される入院費

    入院診療計画書は診療内容とその見通しを説明する文書であり、予測される入院費は法令上の記載事項に含まれていない。入院費は、実施される検査・治療の内容、入院期間の変動、高額療養費制度などの公的負担軽減の有無によって大きく変わるため、計画書の記載項目とはされていない。費用に関する説明は、必要に応じて医事課などの窓口や別の書類で行われる。したがって、本問で記載が求められていないのはこの選択肢である。

  3. ×c.  推定される入院期間

    推定される入院期間は記載事項の一つである。入院がどのくらい続くかの見通しは、患者・家族が仕事や家庭の調整、退院後の生活の準備を行ううえで重要な情報であり、記載が求められる。

  4. ×d.  退院に向けた支援計画

    退院後の療養や在宅復帰を見据えた支援の計画は、入院診療計画書に盛り込まれる項目である。入院早期から退院後の生活を視野に入れて医療・介護・福祉サービスとの連携を計画することが求められており、特に在宅復帰支援を評価する病棟などでは記載が必要となる。

  5. ×e.  入院中に計画される検査

    入院中に予定される検査は、手術・投薬その他の治療(看護や栄養管理を含む)とともに、入院中の診療計画として記載が求められる。どのような検査をいつ頃行うのかを示すことで、患者は入院中の経過を見通すことができる。

入院診療計画書の概要

・根拠:医療法第6条の4(入院時の書面の作成・交付・説明の義務)および診療報酬上の入院基本料の算定要件。 ・作成者:医師、看護師、その他必要に応じて関係職種(薬剤師、管理栄養士、リハビリテーション職、医療ソーシャルワーカーなど)が共同して作成する。 ・時期:入院した日から起算して7日以内に患者・家族へ交付し、説明する。

主な記載事項

・患者の氏名、生年月日、性別 ・主治医(診療を主として担当する医師)の氏名、および主治医以外の担当者の氏名 ・入院の原因となった傷病名と主要な症状 ・入院中に行われる検査、手術、投薬その他の治療(看護・リハビリテーション・栄養管理を含む)の計画 ・推定される入院期間 ・特別な栄養管理の必要性の有無 ・退院に向けた支援(在宅復帰支援など)に関する計画 記載されない例:予測される入院費、医療機関の収益に関わる情報など。

関連する文書

・退院療養計画書:退院時に、退院後の療養に必要な保健医療・福祉サービスなどを記載して患者に交付する文書(医療法で作成が努力義務とされる)。 ・診療情報提供書(紹介状):他の医療機関へ患者を紹介する際に、診療経過や検査結果を伝える文書。 ・クリニカルパス:疾患ごとに標準化された入院中の検査・治療のスケジュール表で、患者用パスを入院診療計画書として用いることもある。

POINT

・入院診療計画書は医療法第6条の4に基づき、入院後7日以内に作成・交付・説明する。 ・記載事項:傷病名と主要な症状、検査・手術・投薬などの治療計画(看護・栄養管理を含む)、推定入院期間、主治医氏名、退院に向けた支援など。 ・予測される入院費は記載事項ではない。 ・医師・看護師など多職種が共同で作成する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。