StudyMed医師国家試験

事実か、判断か―SOAPの「A」に書くべきものを見極める

第117回医師国家試験 B問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第117回 B問題 第5問

診療録におけるSOAPのAに該当するのはどれか。

  1. a.現病歴
  2. b.鑑別診断
  3. c.検査結果
  4. d.身体所見
  5. e.治療計画

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は診療録の書き方、SOAPの問題だ。カルテの経過記録を4つの枠に分けて書く形式だけれど、それぞれに何を入れるかを正しく振り分けられるかが問われている。まずSOAPのそれぞれの文字が何の略か、言えるかな。
医学生医学生
SがSubjective、OがObjective、AがAssessment、PがPlanです。臨床実習が始まる前のオリエンテーションで習いました。
ドクタードクター
完璧だね。では、それぞれに何を書くかを確認しよう。Sは主観的情報で、患者さんや家族が語った内容。Oは客観的情報で、医療者が観察したり測定したりして得た内容だ。
医学生医学生
Aは評価なので……検査結果もAに入るのかなと一瞬思いました。検査値を見て評価するイメージがあったので。
ドクタードクター
そこは混同しやすいポイントだね。検査結果そのものは測定によって得られた客観的なデータだから、Oに書く。例えば「CRP高値」という事実はOで、「炎症反応の上昇は細菌感染を示唆する」という解釈がAになるんだ。
医学生医学生
数字そのものはO、その数字をどう読むかがA、ということですね。
ドクタードクター
その通り。Aは、SとOを材料にして医療者が下す判断だ。病態の解釈、鑑別診断、重症度や経過の評価などがここに入る。だから今回の正解は鑑別診断になる。訴えと所見を統合して「どの疾患・病態が考えられるか」を推論したものだからね。
医学生医学生
現病歴はどうでしょう。医師が聴き取ってまとめるので、客観的な情報のようにも感じます。
ドクタードクター
いい疑問だね。たしかに書くのは医師だけれど、中身は「いつから、どんな症状が、どう変わってきたか」という患者さんの語りだ。情報源が患者さんだから、主訴と一緒にSに入れる。OSCEの医療面接で聴き取った内容は、基本的にSだと考えればいい。
医学生医学生
身体所見は、視診や聴診で医療者が自分で得た情報なのでOですね。
ドクタードクター
そう、バイタルサインと同じくOだ。そして治療計画は、Aの判断を踏まえて今後どうするかを示すものだから、Pに書く。
医学生医学生
整理すると、患者さんが語った事実がS、医療者が得た事実がO、医療者の考えがA、これから何をするかがP、という分け方ですね。
ドクタードクター
その2つの軸、「誰からの情報か」と「事実か判断か」で考えると迷わない。少し発展的な話をすると、Pはさらに3つに分けて書くことが多い。追加検査などの診断計画、薬物療法や処置などの治療計画、患者さんや家族への説明・生活指導などの教育計画だ。
医学生医学生
内科の実習でカルテを書いたとき、指導医の先生にPをDx、Tx、Exに分けて書くように言われました。あれがその3分類だったんですね。
ドクタードクター
その通り。それから、SOAPは問題志向型システム、POSに基づく記録の一部なんだ。POSでは基礎データから問題リストを作り、問題ごとに初期計画を立て、経過記録をSOAPで書いて、最後に退院時要約をまとめる。SOAPは本来、プロブレムごとに書くものなんだよ。
医学生医学生
問題が複数ある患者さんなら、#1、#2と分けてそれぞれSOAPを書くということですか。
ドクタードクター
そう。そうすることで、どの問題にどう対応しているかが一目でわかる。診療録は医師法で記載と5年間の保存が義務付けられた公的な文書でもある。事実と判断を分けて書くことで、ほかの医療者が思考過程を追いやすくなり、チーム医療での情報共有にも役立つんだ。
医学生医学生
Aがしっかり書けているカルテは、その医師がどう考えたかが伝わるカルテなんですね。研修医になったら意識してみます。
ドクタードクター
まさにそこが大事。Aは医師の臨床推論そのものだから、ここを丁寧に書く習慣が診断力を育てるよ。

まとめ

SOAPは問題志向型システム(POS)に基づく経過記録の形式で、S(主観的情報)には主訴や現病歴など患者が語った内容、O(客観的情報)にはバイタルサイン・身体所見・検査結果など医療者が観察・測定した事実を書きます。A(評価)はSとOを統合した医療者の判断で、病態の解釈や鑑別診断、重症度の評価が該当し、P(計画)には診断計画・治療計画・教育計画を記載します。検査結果そのものはOですが、その解釈はAに書くという「事実と判断の区別」が最大のポイントです。「誰からの情報か」「事実か判断か」の2軸で振り分ければ迷わず分類できます。事実と判断を分けて記録する習慣は、チームでの情報共有を円滑にするとともに、自らの臨床推論を鍛える土台になります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

診療録(カルテ)の記載形式であるSOAPの4項目のうち、A(Assessment:評価・判断)に何を書くかを問う問題である。

SOAPの考え方

SOAPは、問題志向型システム(POS:problem oriented system)に基づく診療記録(POMR:problem oriented medical record)で、経過記録(progress note)を書くときの基本形式である。患者の問題点(プロブレム)ごとに、次の4つに分けて記載する。 ・S(Subjective)主観的情報: 患者や家族が語った内容。主訴、現病歴、自覚症状など。 ・O(Objective)客観的情報: 医療者が観察・測定した内容。バイタルサイン、身体所見、検査結果、画像所見など。 ・A(Assessment)評価: SとOをもとに医療者が下す判断。病態の解釈、鑑別診断、重症度や経過の評価など。 ・P(Plan)計画: Aに基づく今後の方針。追加検査の計画、治療計画、患者教育など。 選択肢を「誰からの情報か」「事実か判断か」という視点で振り分けると、患者が語った事実はS、医療者が得た事実はO、それらを踏まえた医療者の考えはA、これから何をするかはPとなる。この中で医療者の判断にあたるのは鑑別診断である。

選択肢考察

  1. ×a.  現病歴

    現病歴は、症状がいつからどのように始まり、どう変化してきたかを患者(または家族)から聴き取った内容であり、主訴とともにS(主観的情報)に記載する。Aには該当しない。

  2. ○b.  鑑別診断

    鑑別診断は、S(訴え)とO(所見・検査結果)を統合して医療者が「どの疾患・病態が考えられるか」を推論・判断したものである。医療者の解釈・評価にあたるため、A(Assessment)に記載する。

  3. ×c.  検査結果

    血液検査や画像検査などの結果は、測定によって得られた客観的なデータであるため、O(客観的情報)に記載する。ただし、その結果をどう解釈するか(例: 「炎症反応の上昇は細菌感染を示唆する」)はAに書く。

  4. ×d.  身体所見

    視診・触診・打診・聴診などで医療者が得た身体所見は、バイタルサインと同様に客観的情報であり、O(客観的情報)に記載する。

  5. ×e.  治療計画

    治療計画は、評価(A)を踏まえて今後どのように対応するかを示すものであり、P(Plan)に記載する。Pには治療計画のほか、診断のための追加検査の計画、患者・家族への説明や教育、他科への紹介なども含まれる。

問題志向型システム(POS)

POSは、患者の抱える問題を明確にし、問題ごとに解決を図っていく診療の考え方である。POMRは一般に以下で構成される。 1. 基礎データ(データベース): 主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴、身体所見、検査所見など 2. 問題リスト(プロブレムリスト): 基礎データから抽出した問題点の一覧 3. 初期計画(イニシャルプラン): 問題ごとの診断計画・治療計画・教育計画 4. 経過記録(プログレスノート): SOAP形式で記載 5. 退院時要約(サマリー)

Pの3分類

P(Plan)はしばしば次の3つに分けて書かれる。 ・診断計画(Dx:diagnostic plan): 追加すべき検査など ・治療計画(Tx/Rx:therapeutic plan): 薬物療法、処置など ・教育計画(Ex:educational plan): 患者・家族への説明、生活指導など

記載の注意

診療録は医師法により記載と保存(5年間)が義務付けられた公的な文書である。事実(S・O)と判断(A)を分けて書くことで、他の医療者が思考過程を追いやすくなり、チーム医療での情報共有にも役立つ。

POINT

・S=主観的情報(主訴、現病歴、自覚症状) ・O=客観的情報(バイタルサイン、身体所見、検査結果) ・A=評価(SとOに基づく病態の解釈、鑑別診断) ・P=計画(検査計画、治療計画、教育計画) ・「患者が語った事実」はS、「医療者が得た事実」はO、「医療者の判断」はA、「今後の行動」はP。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。