StudyMed医師国家試験

尿は食卓を映す鏡―24時間蓄尿で「食塩摂取量」がわかる理由

第115回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第115回 B問題 第10問

24時間蓄尿検査で摂取量が評価できるのはどれか。

  1. a.脂質
  2. b.食塩
  3. c.食物繊維
  4. d.エネルギー
  5. e.脂溶性ビタミン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、24時間蓄尿という検査で、どの栄養素の摂取量を推定できるかを問う問題だ。暗記で済ませず、「なぜ尿から摂取量がわかるのか」という原理から考えると、迷わず解けるようになるよ。
医学生医学生
尿に出てくるものなら測れる、という理解でいいでしょうか。
ドクタードクター
半分正解だね。条件は2つある。1つ目は、吸収されたあと主に腎臓から尿中へ排泄されること。2つ目は、体内の総量がほぼ一定に保たれていて、1日の摂取量と1日の尿中排泄量がほぼ等しいこと。この両方を満たして初めて、尿の量から摂取量を逆算できるんだ。
医学生医学生
生理学の講義で習った「出納バランス」の考え方ですね。入った分だけ出ていく状態なら、出た分を測れば入った分がわかる。
ドクタードクター
その通り。では、その条件をいちばんよく満たすのはどれだと思う?
医学生医学生
ナトリウムでしょうか。腎臓が体液量を調節するときの主役なので。
ドクタードクター
正解、食塩だ。食塩のナトリウムは消化管からほぼ完全に吸収され、汗や便から失われるのはわずかで、大部分は腎臓から排泄される。体液量が安定していれば、尿中Na排泄量は摂取量をよく反映するんだ。
医学生医学生
NaのmEqから食塩のグラムへはどう換算するんですか。
ドクタードクター
NaClの式量は約58.5だから、食塩1 gに含まれるNaはおよそ17 mEq。つまり、24時間尿中Na排泄量を17で割れば1日の食塩摂取量(g)が推定できる。たとえば170 mEq/日なら約10 g/日だね。
医学生医学生
17で割る、なら覚えやすいです。では脂質はどうでしょう。尿には出てこない気がします。
ドクタードクター
そうだね。脂質は吸収後にエネルギー源として燃やされて二酸化炭素と水になるか、脂肪組織に貯蔵される。余った分は体脂肪として蓄積されるから、摂取量と尿中排泄量が釣り合う関係が成り立たない。
医学生医学生
エネルギーも同じ理由で無理そうですね。そもそも物質ではないですし。
ドクタードクター
鋭いね。エネルギーは栄養素が代謝されて生じるもので、尿に出る物質ではない。過不足は体重の推移などで評価するのが基本だ。食物繊維はどうかな。
医学生医学生
消化酵素で分解されず、小腸でほとんど吸収されないので、便に出るはずです。
ドクタードクター
その通り。一部は大腸で腸内細菌に発酵されるけれど、尿には現れない。最後に脂溶性ビタミンは、水溶性ビタミンとの対比で考えるとわかりやすいよ。
医学生医学生
水溶性ビタミンは余ると尿に捨てられるけど、脂溶性のA・D・E・Kは肝臓や脂肪に溜まるから過剰症が起こりやすい、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
完璧だ。脂溶性ビタミンは主に胆汁を介して便中に排泄され、尿にはほとんど出ない。だから蓄尿では評価できない。
医学生医学生
原理がわかると、選択肢を一つずつ「尿に出るか」「釣り合っているか」で確認できますね。食塩以外に蓄尿で推定できるものはありますか。
ドクタードクター
蛋白質も推定できる。蛋白質の窒素は主に尿素として尿中に出るから、尿中尿素窒素からMaroniの式で摂取量を推定するんだ。CKDの蛋白制限がきちんと守れているかの確認に使われる。カリウムもおおよそ推定できるよ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、患者さんが蓄尿の容器を病棟のトイレに置いていたのを見ました。ため忘れがあったらどうなるんですか。
ドクタードクター
過小評価になってしまう。そこで役立つのが尿中クレアチニン排泄量だ。筋肉量に依存して1日の排泄量がほぼ一定だから、これが予想より少なければ蓄尿が不完全だった可能性を疑う。開始時の尿は捨て、終了時刻の尿は採る、という手順も大切だね。外来では手軽な随時尿のNaとクレアチニンから推定式で食塩摂取量を見積もることもあるけれど、精度は24時間蓄尿に劣る。
医学生医学生
減塩指導をしても、自己申告だけでは本当に減っているかわかりませんものね。
ドクタードクター
そう、蓄尿は客観的な指標として、高血圧やCKDの患者さんの減塩指導の効果判定に役立つ。日本高血圧学会のガイドラインでは減塩目標は6 g/日未満とされているから、数値を示して一緒に目標を確認すると、患者さんの意欲にもつながるんだ。

まとめ

24時間蓄尿で摂取量を推定できるのは、吸収後に主に尿中へ排泄され、定常状態で「摂取量≒尿中排泄量」が成り立つ物質であり、その代表が食塩(ナトリウム)です。食塩1 gはNa約17 mEqに相当するため、24時間尿中Na排泄量(mEq/日)を17で割ると1日の食塩摂取量(g)を推定できます。脂質やエネルギーは代謝・貯蔵され、食物繊維と脂溶性ビタミンは主に便中に排泄されるため、蓄尿では評価できません。蛋白質摂取量は尿中尿素窒素からMaroniの式で推定でき、蓄尿の完全性は尿中クレアチニン排泄量で確認します。原理から理解しておくと、高血圧やCKDの減塩・蛋白制限の指導を客観的に評価する臨床の場面で生きてきます。

解答・解説

正解はbです

テーマ

24時間蓄尿検査(1日分の尿をすべてためて測定する検査)で、どの栄養素の摂取量を推定できるかを問う問題である。

考え方の原則

尿から摂取量を推定できるのは、次の2条件を満たす物質である。 (1) 体内に吸収された後、主に腎臓から尿中へ排泄される。 (2) 体内の総量がほぼ一定に保たれており(定常状態)、「1日の摂取量 ≒ 1日の尿中排泄量」が成り立つ。 食塩(NaCl)のナトリウム(Na)はこの条件をよく満たす。腸管から摂取したNaのほとんどが吸収され、汗や便から失われるのはわずかで、大部分は腎臓から排泄される。体液量が安定していれば、1日の尿中Na排泄量は1日のNa摂取量をよく反映する。

計算方法

NaClの式量は約58.5なので、食塩1 gに含まれるNaは 1000 ÷ 58.5 ≒ 17 mEq(mmol)である。したがって、 推定食塩摂取量(g/日)= 24時間尿中Na排泄量(mEq/日)÷ 17 となる。例えば尿中Na排泄量が170 mEq/日なら、食塩摂取量は約10 g/日と推定される。 一方、脂質・食物繊維・脂溶性ビタミンは尿中にほとんど排泄されず、エネルギーは物質ではないため尿から直接は測れない。

選択肢考察

  1. ×a.  脂質

    脂質は吸収後、エネルギー源として利用されるか、脂肪組織に貯蔵される。最終的には二酸化炭素と水に代謝され、尿中に脂質としてほとんど排泄されない。過剰に摂取した分は体脂肪として蓄積されるため「摂取量 ≒ 尿中排泄量」が成り立たず、蓄尿では評価できない。

  2. ○b.  食塩

    食塩のNaは消化管からほぼ完全に吸収され、汗や便への損失はわずかで、主に腎臓から排泄される。体内Na量が一定であれば、1日の尿中Na排泄量は1日のNa摂取量とほぼ等しくなる。食塩1 g ≒ Na 17 mEqであるため、「24時間尿中Na排泄量(mEq/日)÷ 17」で1日の食塩摂取量(g)を推定できる。高血圧や慢性腎臓病(CKD)の減塩指導の効果判定に用いられ、食事記録による自己申告より客観的な指標となる。

  3. ×c.  食物繊維

    食物繊維は人の消化酵素で分解されない成分で、小腸ではほとんど吸収されない。一部は大腸で腸内細菌により発酵され短鎖脂肪酸などになるが、残りは便として排泄される。尿中には現れないため、蓄尿では評価できない。

  4. ×d.  エネルギー

    エネルギーは糖質・脂質・蛋白質などの栄養素が代謝されて生じるもので、尿中に排泄される物質ではない。消費されなかった分は体脂肪として貯蔵されるため、尿の成分から摂取エネルギー量を推定することはできない。エネルギー摂取の過不足は、体重の変化などで評価する。

  5. ×e.  脂溶性ビタミン

    脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は脂質とともに吸収され、肝臓や脂肪組織に蓄えられる。水に溶けにくいため尿中にはほとんど排泄されず、主に胆汁を介して便中に排泄される。そのため蓄尿では評価できない。過剰摂取では体内に蓄積して過剰症をきたしやすい点も、尿中に排泄されやすい水溶性ビタミンとの違いである。

24時間蓄尿で摂取量を推定できる主なもの

・食塩: 推定食塩摂取量(g/日)= 尿中Na排泄量(mEq/日)÷ 17 ・蛋白質: 尿中尿素窒素(UUN)の排泄量から推定する(Maroniの式)。  推定蛋白質摂取量(g/日)=[尿中尿素窒素排泄量(g/日)+ 0.031 × 体重(kg)]× 6.25  6.25は「蛋白質の約16%が窒素である」ことに基づく係数(100 ÷ 16)。高度の蛋白尿がある場合は、尿蛋白量を加えて補正する。 ・カリウム: 尿中K排泄量からおおよその摂取量を推定できる。

蓄尿検査を正しく行うための注意

・開始時に排尿して膀胱を空にし、その尿は捨てる。以後24時間の尿をすべてため、終了時刻の尿は採取する。 ・ため忘れがあると過小評価となる。正しく蓄尿できたかは尿中クレアチニン排泄量で確認できる(筋肉量に依存し、1日排泄量がほぼ一定であるため)。 ・CKDの患者では、蓄尿によりクレアチニンクリアランスも測定できる。

簡易法

24時間蓄尿は手間がかかるため、外来では早朝尿や随時尿のNa・クレアチニン濃度から推定式を用いて食塩摂取量を推定する方法も用いられる。ただし精度は24時間蓄尿に劣る。

参考

日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧患者の減塩目標は食塩6 g/日未満とされている。

POINT

・蓄尿で摂取量を推定できる条件: 主に尿中に排泄され、摂取量 ≒ 排泄量となる物質 ・食塩摂取量(g/日)= 尿中Na(mEq/日)÷ 17 ・蛋白質摂取量は尿中尿素窒素からMaroniの式で推定する ・脂質・食物繊維・脂溶性ビタミン・エネルギーは蓄尿では評価できない ・蓄尿が正しく行われたかは尿中クレアチニン排泄量で確認する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。