2005年の谷と2015年の山―グラフから日本の合計特殊出生率を見抜く
第114回医師国家試験 C問題 第6問
国試問題にチャレンジ
日本,アメリカ,イタリア,韓国およびフランスの合計特殊出生率の1990年から2018年までの推移を別に示す。 日本はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
合計特殊出生率は15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計した値で、1人の女性が生涯に産む子どもの数の目安となり、人口置換水準はおおむね2.1です。日本は1989年の「1.57ショック」を経て1990年に1.5台となり、2005年に1.26で底を打った後、2015年に1.45まで回復し、再び低下するという形をたどりました。国際比較では、アメリカとフランスが2.0前後と高く、韓国は2000年代以降日本を下回り2018年に1.0を割り込み、イタリアは日本より低い値から始まり1990年代半ばに谷がある点で日本と区別できます。日本の出生率はその後も過去最低を更新しており、晩婚化・晩産化を背景とした少子化の動向を理解することは、人口統計の問題を解くだけでなく、周産期医療や地域医療の将来像を考えるうえでも重要です。
解答・解説
正解はdです
問われているテーマ
合計特殊出生率(TFR:total fertility rate)とは、ある年の15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したもので、「その年の年齢別出生率が続いたと仮定したとき、1人の女性が生涯に産む子どもの平均数」に相当する。人口が長期的に増えも減りもしない水準(人口置換水準)は、先進国でおおむね2.1前後である。本問は、5か国の1990~2018年のTFRの推移のグラフから日本を選ぶ問題である。
グラフの読み取りと日本の特徴
日本のTFRの推移で押さえるべき点は次のとおりである。 ・1989年に1.57となり(「1.57ショック」)、1990年時点ですでに1.5台であった。 ・その後も低下を続け、2005年に過去最低(当時)の1.26となった。 ・2005年以降は緩やかに回復し、2015年に1.45まで上昇した。 ・2016年以降は再び低下に転じ、2018年は1.42であった。 グラフでこの形、すなわち「1990年に約1.5で始まり、2005年に谷(約1.26)をつくり、2015年頃に約1.45まで回復した後わずかに低下する」線は④である。
他の線の見分け方
・2.0前後の高い値で推移する2本(①、②)は、欧米の中で出生率が比較的高いアメリカとフランスである。2000年代後半まで2.0を超え、その後大きく下がる①がアメリカ、1990年代に1.7台と低めから家族政策の強化によって2.0前後まで上昇した②がフランスである。 ・1990年代前半は日本より高かったが急低下し、2000年代以降は5か国中最も低く、2018年に1.0を割り込んだ③が韓国である。 ・1990年代に1.2前後と日本より低い値から始まり、2000年代に一時日本を上回った後、再び低下する⑤がイタリアである。 日本とイタリアはともに低出生率国で値が近いが、1990年時点でイタリアのほうが低く(日本は約1.5、イタリアは約1.3)、日本の谷が2005年であることから区別できる。
選択肢考察
- ×a. ①
アメリカである。先進国の中では移民や若年層の出産が多いこともあって出生率が高く、1990年代から2000年代後半まで2.0前後で推移し、2007年頃には2.1を超えて人口置換水準に達した。しかしリーマンショック(2008年)後の景気後退を境に低下が続き、2018年には1.7台となった。それでも日本よりはかなり高い水準である。
- ×b. ②
フランスである。1990年代前半は1.7台であったが、従来からの手厚い家族手当に加え、保育サービスの充実や、出産・子育てと就労を両立できる幅広い選択肢を用意する環境整備を進めたことで上昇し、2000年代後半から2010年代前半にかけて2.0前後に達した。少子化対策の成功例としてよく挙げられる。ただし2010年代半ば以降は、財政事情から家族給付の一部が削減されたことなどもあり、低下傾向にある。
- ×c. ③
韓国である。1990年代前半は1.6~1.7程度と日本より高かったが、1990年代後半から急激に低下し、2001年頃以降は一貫して日本を下回っている。2000年代以降は1.4を上回ることがなく、2018年には0.98と1を下回り、5か国中最低となった。その後もさらに低下し、世界で最も低い水準の国となっている。
- ○d. ④
日本である。1990年は約1.54で、その後低下を続けて2005年に1.26と当時の過去最低を記録した。以後は緩やかに上昇して2015年に1.45となったが、2016年から再び低下に転じ、2018年は1.42であった。「2005年を谷とするV字に近い形」と「2015年頃をピークに再低下」という特徴がグラフの④と一致する。なお、出生数は2016年に統計開始以来初めて100万人を下回り、その後も減少が続いている。TFRも2023年に1.20、2024年に1.15と、2005年を下回って過去最低を更新している。
- ×e. ⑤
イタリアである。イタリアはドイツなどと並んで、ヨーロッパの中でも日本や韓国と同様に出生率が低い国である。1990年代半ばには1.2前後と日本よりも低い値であったが、2000年代に上昇して2010年頃には1.4台半ばとなり、一時は日本を上回った。その後は再び低下している。1990年時点で日本より低い値から始まる点、および谷が1990年代半ばにある点で日本(④)と区別できる。
出生に関する指標
・合計特殊出生率:15~49歳の女性の年齢別出生率の合計。1人の女性が生涯に産む子どもの数の目安。期間合計特殊出生率(その年の年齢別出生率を合計したもの)が通常用いられる。 ・総再生産率:合計特殊出生率のうち女児だけについて計算したもの。 ・純再生産率:総再生産率に、生まれた女児が出産年齢に達するまでの死亡を考慮したもの。1.0を下回ると将来人口は減少に向かう。 ・人口置換水準:人口が長期的に一定に保たれるTFRの水準で、日本ではおおむね2.07前後とされる。
日本の出生の動向
・第1次ベビーブーム(1947~49年)はTFRが4を超えていた。第2次ベビーブーム(1971~74年)は約2.1。 ・1966年(丙午)は1.58と一時的に大きく低下した。 ・1989年に1.57となり、丙午の年を下回ったことから「1.57ショック」と呼ばれ、少子化対策(エンゼルプランなど)のきっかけとなった。 ・2005年に1.26と当時の最低値。その後回復し2015年に1.45となったが、再び低下し、2020年代には過去最低を更新し続けている。 ・晩婚化・晩産化や未婚率の上昇が低下の主な要因とされる。
国際比較の大まかな整理
・比較的高い:フランス、アメリカ、スウェーデンなど(2.0に近い~1.7程度)。 ・低い:日本、イタリア、ドイツ、スペインなど(1.2~1.5程度)。 ・極めて低い:韓国(1.0未満)、台湾、シンガポールなど東アジア諸国・地域。
POINT
・日本のTFRは1990年に約1.5、2005年に最低1.26、2015年に1.45まで回復、その後再び低下(2018年は1.42)。 ・2.0前後で推移する国はアメリカ・フランス(家族政策の成功例はフランス)。 ・韓国は2000年代以降日本より低く、2018年に1.0を割り込んだ。 ・イタリアは日本と同程度の低出生率国だが、1990年代半ばに谷がある点で区別する。 ・人口置換水準は約2.1、「1.57ショック」は1989年。
