StudyMed医師国家試験

ケアプランは誰が書く?―医療保険と介護保険の境界線で読み解く在宅ケア

第114回医師国家試験 C問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第31問

法律に基づく在宅ケアについて正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.ケアプランは介護福祉士が作成する。
  2. b.人工呼吸器は在宅で使用可能である。
  3. c.訪問介護には医師の指示書が必要である。
  4. d.訪問診療は計画的・定期的に行う在宅医療である。
  5. e.通所リハビリテーションには医療保険が適用される。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅ケアの制度を問う問題だ。在宅療養は医療保険のサービスと介護保険のサービスが組み合わさって成り立っている。着眼点は「誰が計画を立てるか」「医師の指示が要るのはどのサービスか」「どちらの保険が使われるか」の3つ。ここを整理すれば迷わず解けるよ。
医学生医学生
制度の問題はどうも苦手です。公衆衛生の講義で介護保険をやったはずなんですが、職種の名前がごちゃごちゃになってしまって。
ドクタードクター
多くの人がそこでつまずくんだ。まずケアプランから。介護保険の居宅サービス計画、いわゆるケアプランは誰が作るかな。
医学生医学生
介護福祉士ではないんですか?介護のプロなので、計画も立てるイメージがありました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。ケアプランを作るのは介護支援専門員、つまりケアマネジャーだ。介護福祉士は入浴や排泄、食事の介助などを実際に行う国家資格の専門職で、計画を作る立場ではない。ちなみにケアマネジャーは、介護福祉士や看護師、医師などの資格と実務経験を持つ人が研修を受けてなる資格なんだ。要支援の人の介護予防プランは地域包括支援センターなどが作るし、本人や家族が自分で作るセルフプランも認められている。
医学生医学生
介護福祉士が「実行する人」、ケアマネジャーが「計画する人」と分けて覚えればいいですね。
ドクタードクター
その通り。次は医師の指示書。訪問介護、つまりホームヘルプに医師の指示書は必要だろうか。
医学生医学生
在宅医療実習で訪問看護に同行したとき、看護師さんが訪問看護指示書を確認していました。訪問介護も同じように要るのかと思っていましたが……。
ドクタードクター
いい経験をしているね。でも訪問介護は掃除や調理といった生活援助や、入浴・排泄の介助などの身体介護が中心で、医療行為ではない。だから医師の指示書は不要で、内容はケアプランに基づいて決まる。医師の指示が必要なのは、医療的な処置を含む訪問看護や、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどだ。名前が似ているから混同しないようにね。
医学生医学生
では、通所リハビリテーションは医師の指示のもとで行うので医療保険になるんでしょうか。
ドクタードクター
そこも落とし穴だ。通所リハビリテーション、いわゆるデイケアは医師の指示が必要だけれど、制度上は介護保険の居宅サービスなんだ。要介護者が介護老人保健施設や病院・診療所に通って理学療法や作業療法を受ける。一方、病院の外来で行う疾患別リハビリテーションは医療保険。同じリハビリでも制度が違うんだよ。
医学生医学生
「医師の指示がある=医療保険」とは限らないんですね。ここは完全に勘違いしていました。
ドクタードクター
大事な気づきだね。では残りの2つ、人工呼吸器の在宅使用と訪問診療の定義はどうかな。
医学生医学生
神経内科を回ったとき、ALSの患者さんが気管切開をして自宅で人工呼吸器をつけて過ごしていると聞きました。だから在宅で使えるはずです。
ドクタードクター
正しい。在宅人工呼吸療法は保険診療として認められていて、気管切開を介する侵襲的陽圧換気と、マスクを使う非侵襲的陽圧換気の両方が在宅で行われている。対象はALSや筋ジストロフィーなどの神経筋疾患、COPDなどだ。在宅酸素療法や睡眠時無呼吸症候群のCPAPも同じく在宅で行う医療だね。
医学生医学生
訪問診療は、あらかじめ計画を立てて定期的に訪問する診療ですよね。往診とは違うと習いました。
ドクタードクター
そう、訪問診療は通院が難しい患者に対し、診療計画を立てて同意を得たうえで、例えば月2回など定期的に訪れる診療。往診は急に具合が悪くなったときなどに、患者や家族の求めに応じて臨時に訪れる診療だ。診療報酬上も区別されている。だから正解は人工呼吸器の在宅使用と訪問診療の定義の2つになる。
医学生医学生
整理すると、ケアプランはケアマネジャー、指示書が要るのは訪問看護で訪問介護は不要、デイケアは介護保険、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。少し発展的な話もしておこう。訪問看護は、要介護認定を受けた人には原則介護保険が適用されるけれど、末期の悪性腫瘍やALSなど厚生労働大臣が定める疾病の場合や、特別訪問看護指示書が出ている急性増悪期には医療保険が使われる。どちらでも医師の指示書は必要だ。
医学生医学生
介護保険の対象についても確認させてください。40〜64歳の人も使えるんでしたよね。
ドクタードクター
40〜64歳の医療保険加入者は第2号被保険者で、末期がんなどの特定疾病が原因の場合に限ってサービスを受けられる。65歳以上は第1号被保険者だ。保険者は市町村で、要介護認定は介護認定審査会が行い、その判定には主治医意見書が欠かせない。つまり医師も介護保険の入り口に関わっているんだ。
医学生医学生
主治医意見書は、将来自分も書く立場になるんですね。
ドクタードクター
その通り。在宅医はケアマネジャーや訪問看護師と連携し、サービス担当者会議などで情報を共有しながら医療と介護を調整する。画像検査や手術などを除けば多くの医療は在宅で行えるし、住み慣れた環境で家族と療養できることはQOLを保つうえで大きな意味がある。制度を知っていることが、患者さんの選択肢を広げることにつながるんだよ。

まとめ

在宅ケアは医療保険と介護保険のサービスが組み合わさって成り立っており、それぞれの担い手と制度上の位置づけを区別することが重要です。ケアプランは介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成し、介護福祉士は実際の介護を担う職種です。医師の指示書が必要なのは訪問看護や訪問・通所リハビリテーションで、生活援助や身体介護を行う訪問介護には不要であり、通所リハビリテーション(デイケア)は医師の指示が必要でも介護保険のサービスです。訪問診療は計画的・定期的、往診は求めに応じた臨時の診療と区別され、在宅人工呼吸療法や在宅酸素療法などの高度な医療も自宅で行えます。将来、主治医意見書を書き多職種と連携する立場になる医師にとって、こうした制度の理解は患者のQOLを支える基盤となります。

解答・解説

正解はb, dです

在宅ケアは、医療保険によるサービスと介護保険によるサービスが組み合わさって成り立っている。本問は、それぞれのサービスの法的な位置づけについての基本的な知識を問う問題である。

整理のポイント

1. 誰がケアプランを作るのか:介護保険では、介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成する。 2. 医師の指示が必要なのはどのサービスか:医療行為を含むサービスには医師の指示が必要である。訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどがこれにあたる。生活援助や身体介護を行う訪問介護には、医師の指示は不要である。 3. どの保険が適用されるか:通所リハビリテーション(デイケア)、訪問介護、通所介護(デイサービス)などは、介護保険のサービスである。 4. 訪問診療と往診の違い:訪問診療は、あらかじめ計画を立てて定期的に訪問する診療である。往診は、患者や家族の求めに応じて臨時に訪問する診療である。 5. 在宅で行える医療:在宅酸素療法、在宅人工呼吸療法、在宅中心静脈栄養法、経管栄養、自己導尿などは、在宅医療として行われている。 これらを踏まえると、正しいのは「人工呼吸器の在宅使用」と「訪問診療の定義」の2つである。

選択肢考察

  1. ×a.  ケアプランは介護福祉士が作成する。

    介護保険の居宅サービス計画(ケアプラン)は、原則として介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成する。要支援者の介護予防サービス計画は、地域包括支援センターなどが作成する。利用者本人や家族が自分で作成すること(セルフプラン)も認められている。介護福祉士は、入浴・排泄・食事などの介護を実際に行う専門職(国家資格)である。ケアプランを作成する職種ではない。なお、ケアマネジャーは、介護福祉士・看護師・医師などの資格を持ち、実務経験を積んだ者が、研修を受けて就く資格である。

  2. ○b.  人工呼吸器は在宅で使用可能である。

    在宅人工呼吸療法は保険診療として認められており、在宅で人工呼吸器を使うことができる。気管切開を介する侵襲的陽圧換気(TPPV)と、マスクを用いる非侵襲的陽圧換気(NPPV)の両方が在宅で行われている。対象となる疾患には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの神経筋疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある。これらの患者が、自宅で家族と生活を続けることができる。在宅酸素療法(HOT)や、睡眠時無呼吸症候群に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP)も、同じように在宅で行われている。

  3. ×c.  訪問介護には医師の指示書が必要である。

    訪問介護(ホームヘルプ)は、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪れ、身体介護(入浴、排泄、食事の介助など)や生活援助(掃除、洗濯、調理など)を行うサービスである。医療行為ではないので、医師の指示書は必要ない。サービスの内容は、ケアプランに基づいて決まる。一方、医療的な処置や看護を行う訪問看護では、主治医が作成する訪問看護指示書が必要である。この2つを混同しないことが大切である。

  4. ○d.  訪問診療は計画的・定期的に行う在宅医療である。

    訪問診療は、通院が難しい患者に対して、医師が診療計画を立て、本人の同意を得たうえで定期的に自宅などを訪れて行う診療である(例えば月2回など)。これに対して往診は、急に具合が悪くなったときなどに、患者や家族の求めに応じて臨時に訪れる診療である。診療報酬のうえでも、訪問診療と往診は区別されている。

  5. ×e.  通所リハビリテーションには医療保険が適用される。

    通所リハビリテーション(デイケア)は、介護保険の居宅サービスである。要介護者などが介護老人保健施設や病院・診療所などに通い、理学療法や作業療法などのリハビリテーションを受ける。医師の指示のもとで行われるが、適用されるのは医療保険ではなく介護保険である。なお、病院の外来で行う疾患別リハビリテーションには医療保険が適用される。通所リハビリテーションとは制度が異なる。

在宅ケアを支える主なサービスと保険

・訪問診療・往診:医療保険 ・訪問看護:要介護・要支援の認定を受けた人には原則として介護保険が適用される。ただし、末期の悪性腫瘍やALSなど、厚生労働大臣が定める疾病の場合や、急に病状が悪化した時期(特別訪問看護指示書が出ている期間)には、医療保険が適用される。どちらの場合も、医師の指示書が必要である。 ・訪問介護、通所介護(デイサービス)、短期入所(ショートステイ)、福祉用具の貸与:介護保険 ・訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション:介護保険(医師の指示が必要)

介護保険の基本

・保険者は市町村(特別区を含む)である。 ・65歳以上が第1号被保険者、40~64歳の医療保険加入者が第2号被保険者である。第2号被保険者は、末期がんなどの特定疾病が原因の場合に限ってサービスを受けられる。 ・要介護認定は市町村の介護認定審査会が行う。審査には主治医意見書が必要である。 ・ケアプランは介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成し、サービス担当者会議で関係する職種が情報を共有する。

在宅医療の意義

画像検査や手術などを除けば、多くの医療は在宅で行うことができる。住み慣れた環境で家族と一緒に療養できることは、QOL(生活の質)を保つうえで大きな意義がある。在宅医は、訪問看護師やケアマネジャーと連携し、医療と介護のサービスを調整する。

POINT

・ケアプランを作成するのは介護支援専門員(ケアマネジャー)で、介護福祉士ではない ・医師の指示書が必要なのは訪問看護。訪問介護には不要 ・訪問診療は計画的・定期的、往診は臨時の求めに応じたもの ・在宅人工呼吸療法(TPPV・NPPV)や在宅酸素療法は在宅で行える ・通所リハビリテーション(デイケア)は介護保険のサービス

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。