StudyMed医師国家試験

LDLを上げるのは誰だ―「作る」と「片づける」のバランスで解く続発性脂質異常症

第114回医師国家試験 C問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第114回 C問題 第28問

血清LDLコレステロール値が上昇する原因として正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.肝硬変
  2. b.1型糖尿病
  3. c.吸収不良症候群
  4. d.甲状腺機能低下症
  5. e.ネフローゼ症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ほかの病気が原因で起こる続発性脂質異常症のうち、LDLコレステロールを上げる疾患を選ぶ問題だ。丸暗記より、LDLの量が何で決まるのかという仕組みから考えると、自然に答えが出るよ。
医学生医学生
LDLは悪玉コレステロールですよね。どこで作られて、どこで処理されるんでしたっけ。
ドクタードクター
そこから整理しよう。LDLの量は大きく「供給」と「除去」のバランスで決まる。供給は、肝臓でのコレステロール合成、律速酵素はHMG-CoA還元酵素だね、それとVLDLの産生・分泌だ。VLDLは血中で中性脂肪を分解されながらLDLへと変わっていく。除去を担うのは、肝細胞表面のLDL受容体。ここでLDLが取り込まれて血中から消える。
医学生医学生
生化学の講義で、家族性高コレステロール血症はLDL受容体の異常だと習いました。受容体が減ると片づけられなくなって上がる、ということですね。
ドクタードクター
その通り。つまり「作りすぎ」か「片づけ不足」でLDLは上がり、「作れない」「材料が入らない」と下がる。この視点で選択肢を見ていこう。まず甲状腺機能低下症はどうかな。
医学生医学生
甲状腺ホルモンが減ると代謝が全体に落ちるので、コレステロールも処理されずに上がる……くらいのイメージです。
ドクタードクター
方向性は合っている。具体的には、甲状腺ホルモンには肝臓のLDL受容体の発現を高める作用がある。ホルモンが不足すると受容体が減って、LDLの取り込みが低下する。さらにコレステロールが胆汁酸に変換されて排泄される量も減る。だからLDLが上昇するんだ。
医学生医学生
内分泌内科の実習で、脂質異常症で紹介された方が実は橋本病だった、という症例を見ました。
ドクタードクター
まさに臨床でよくある話だね。甲状腺ホルモンを補充すればLDLは下がるから、原因を見逃さないことが大事なんだ。次にネフローゼ症候群はどうだろう。
医学生医学生
診断基準に脂質異常症が入っていた気がします。でも、尿から蛋白が抜けるのに、なぜLDLは増えるんでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。大量の蛋白尿で低アルブミン血症になると、血漿の膠質浸透圧が下がる。肝臓はそれを補おうとアルブミンの合成を高めるけれど、そのときアポ蛋白Bの合成やHMG-CoA還元酵素の活性もいっしょに亢進して、VLDLやLDLの産生が増えてしまう。加えてリポ蛋白リパーゼの活性やLDL受容体の発現が下がり、分解・除去も滞る。合成亢進と異化低下のダブルパンチでLDLが上がるわけだ。ちなみに脂質異常症は、成人ネフローゼ症候群の診断基準では参考所見という位置づけだよ。
医学生医学生
肝臓が頑張りすぎて、リポ蛋白まで一緒に作ってしまうんですね。では肝硬変も、肝臓の病気だから脂質が乱れて上がりそうに思えますが。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。コレステロールもリポ蛋白も主に肝臓で作られる。肝硬変では肝細胞の合成能が落ちるから、LDLを含めたコレステロールはむしろ低下する。アルブミン、コリンエステラーゼ、凝固因子と並んで、コレステロールの低値は肝合成能低下の指標になるんだ。ただし、原発性胆汁性胆管炎や閉塞性黄疸のような胆汁うっ滞では、胆汁へのコレステロール排泄が減って逆に上がることがある。肝疾患でも病態によって向きが違う点に注意しよう。
医学生医学生
吸収不良症候群は、材料が腸から入ってこないので下がる側ですね。
ドクタードクター
その通り。脂質やコレステロールの吸収が落ちるうえ、全身の栄養状態も悪くなるから、血清コレステロールは低値になる。
医学生医学生
1型糖尿病はどうでしょう。糖尿病なら脂質異常症が多い印象があります。
ドクタードクター
その印象は主に2型糖尿病のものだね。1型糖尿病はインスリン欠乏が本態だけれど、インスリン治療で血糖がきちんと管理されていれば脂質は正常範囲のことが多い。コントロール不良やケトアシドーシスでインスリンが著しく不足すると、リポ蛋白リパーゼの活性が落ちて主に中性脂肪が上がる。LDL上昇の代表的な原因とはいえないんだ。一方2型糖尿病では、インスリン抵抗性を背景に高中性脂肪血症と低HDL血症が目立ち、小型で動脈硬化を起こしやすいsmall dense LDLも増える。
医学生医学生
整理すると、LDLが上がるのは甲状腺機能低下症とネフローゼ症候群で、肝硬変と吸収不良症候群は下がる、1型糖尿病は管理されていれば大きく変わらない、ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点をまとめよう。高LDL血症を見つけたら、すぐに家族性高コレステロール血症などの原発性と決めつけず、まず続発性の原因を探すこと。甲状腺機能、尿蛋白、肝胆道系に加えて、副腎皮質ステロイドやサイアザイド系利尿薬、経口避妊薬などの服薬歴、Cushing症候群も確認したい。続発性なら原因疾患を治療すれば脂質も改善することが多いから、いきなりスタチンを始める前にひと手間かけるのが大切なんだ。
医学生医学生
健診でLDLが高いと言われた人こそ、TSHと尿検査をチェックする価値があるんですね。
ドクタードクター
その通り。逆に、甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍などの消耗性疾患、低栄養ではLDLが下がる。高値でも低値でも、その背景にある病気を考える習慣をつけておこう。

まとめ

血清LDLコレステロールは、肝臓での合成・VLDL分泌という「供給」と、肝LDL受容体による「除去」のバランスで決まります。甲状腺機能低下症ではLDL受容体の発現低下により除去が減り、ネフローゼ症候群では低アルブミン血症を契機に肝でのリポ蛋白合成が亢進し異化も低下するため、いずれもLDLが上昇します。一方、肝硬変では肝合成能低下、吸収不良症候群では吸収低下によりLDLは低下し、1型糖尿病はインスリン治療下では脂質は正常のことが多く、コントロール不良時は主に中性脂肪が上昇します。ほかにも胆汁うっ滞、Cushing症候群、ステロイドなどの薬剤がLDL上昇の原因となります。高LDL血症をみたらまず続発性の原因を除外するという姿勢は、不要な治療を避け、隠れた疾患を見つけるうえで日常診療に直結する重要な考え方です。

解答・解説

正解はd, eです

問われていること

他の病気が原因で起こる脂質異常症(続発性〈二次性〉脂質異常症)のうち、LDLコレステロール(低比重リポ蛋白コレステロール。いわゆる悪玉コレステロール)を上昇させる疾患を選ぶ問題である。

LDLコレステロール値を決める仕組み

血中のLDLの量は、主に次の2つのバランスで決まる。 1. 供給:肝臓でのコレステロール合成(律速酵素はHMG-CoA還元酵素)と、超低比重リポ蛋白(VLDL)の産生・分泌。VLDLは血中で中性脂肪を分解されながらLDLへと変わる。小腸からのコレステロール吸収も肝臓へのコレステロール供給源となる。 2. 除去:肝細胞表面のLDL受容体がLDLを取り込み、血中から除去する。 したがって、「肝臓での合成・分泌が増える」または「LDL受容体による取り込みが減る」とLDLは上昇し、「合成ができない(肝不全)」「材料が吸収できない(吸収不良)」とLDLは低下する。

正解の導き方

・甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンはLDL受容体の発現を促すため、その不足で受容体が減り、LDLの除去が低下してLDLが上昇する。 ・ネフローゼ症候群:尿へ蛋白が失われて低アルブミン血症になると、肝臓での蛋白合成が全体に高まり、リポ蛋白の合成も亢進する。加えてリポ蛋白の分解・除去も低下し、LDLが上昇する。 一方、肝硬変と吸収不良症候群ではLDLはむしろ低下し、1型糖尿病はインスリン治療で血糖が管理されていればLDLは通常大きく変化しない。よって正解はdとeである。

選択肢考察

  1. ×a.  肝硬変

    コレステロールやリポ蛋白(VLDLなど)は主に肝臓で合成される。肝硬変では肝細胞の機能が低下して合成能が落ちるため、LDLコレステロールを含む総コレステロールはむしろ低下する。アルブミンやコリンエステラーゼ、凝固因子の低下と同様に、コレステロールの低値は肝合成能低下の指標になる。ただし、原発性胆汁性胆管炎(かつての原発性胆汁性肝硬変)や閉塞性黄疸のように胆汁の流れが障害される病態では、胆汁中へのコレステロールの排泄が減り、コレステロールが上昇することがある点に注意する。

  2. ×b.  1型糖尿病

    1型糖尿病は膵β細胞の破壊によるインスリン欠乏が本態で、インスリン治療によって血糖が適切に管理されていれば血清脂質は正常範囲であることが多い。インスリンが著しく不足した状態(コントロール不良や糖尿病ケトアシドーシス)では、リポ蛋白リパーゼの活性が落ちて主に中性脂肪が上昇するが、LDLコレステロール上昇の代表的な原因とはいえない。なお、インスリンはLDL受容体の発現を促すため、インスリン作用不足(2型糖尿病のインスリン抵抗性など)ではLDLが上昇しうる。2型糖尿病では高中性脂肪血症と低HDLコレステロール血症が特徴的であるが、LDLの上昇や小型で動脈硬化を起こしやすいLDL(small dense LDL)の増加もみられる。

  3. ×c.  吸収不良症候群

    吸収不良症候群は、小腸での栄養素の消化・吸収が障害される病態の総称である。脂質やコレステロールの吸収が低下するうえ、全身の栄養状態も悪化するため、LDLコレステロールを含む血清コレステロールは低値を示す。

  4. ○d.  甲状腺機能低下症

    甲状腺ホルモンは肝臓のLDL受容体の発現を高める作用をもつ。甲状腺機能低下症ではこの作用が弱まってLDL受容体が減り、血中LDLの肝臓への取り込み(除去)が低下するため、LDLコレステロールが上昇する。コレステロールが胆汁酸へ変換されて排泄される量も減る。高LDLコレステロール血症は甲状腺機能低下症の重要な検査所見であり、脂質異常症を診たときには続発性の原因として甲状腺機能を確認する必要がある。甲状腺ホルモンを補充すればLDLは低下する。

  5. ○e.  ネフローゼ症候群

    ネフローゼ症候群では、大量の蛋白尿により低アルブミン血症となり、血漿の膠質浸透圧が低下する。これを補おうと肝臓でアルブミンの合成が高まるとともに、アポ蛋白Bの合成やHMG-CoA還元酵素の活性も亢進し、VLDLやLDLの産生が増える。さらに、リポ蛋白リパーゼの活性やLDL受容体の発現が低下してリポ蛋白の分解・除去も滞る。この合成亢進と異化低下が重なり、LDLコレステロールが上昇する。高LDLコレステロール血症(脂質異常症)は、ネフローゼ症候群の診断基準でも参考所見とされている。

続発性脂質異常症の主な原因

〈LDLコレステロールが上昇しやすいもの〉 ・甲状腺機能低下症 ・ネフローゼ症候群 ・閉塞性黄疸、原発性胆汁性胆管炎(胆汁うっ滞) ・Cushing症候群 ・薬剤:副腎皮質ステロイド、サイアザイド系利尿薬、経口避妊薬(エストロゲン・プロゲスチン製剤)など ・2型糖尿病(インスリン抵抗性) 〈中性脂肪が上昇しやすいもの〉 ・コントロール不良の糖尿病、肥満、アルコール多飲、慢性腎臓病など

LDLコレステロールが低下する主な病態

肝硬変などの肝合成能低下、吸収不良症候群、低栄養、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などの消耗性疾患。

診療上の注意

高LDLコレステロール血症を見つけたら、すぐに家族性高コレステロール血症などの原発性脂質異常症と決めつけず、まず続発性の原因(甲状腺機能、尿蛋白、肝胆道系、服薬歴など)を確認する。続発性であれば、原因疾患の治療で脂質値が改善することが多い。

参考:脂質異常症の診断基準(空腹時採血)

・高LDLコレステロール血症:LDLコレステロール140mg/dL以上(120~139mg/dLは境界域) ・低HDLコレステロール血症:HDLコレステロール40mg/dL未満 ・高トリグリセライド血症:中性脂肪150mg/dL以上

POINT

・LDLは「肝臓での合成・分泌」と「肝LDL受容体による除去」のバランスで決まる。 ・甲状腺機能低下症:LDL受容体の減少→LDL上昇。 ・ネフローゼ症候群:低アルブミン血症→肝でのリポ蛋白合成亢進+異化低下→LDL上昇。 ・肝硬変(合成能低下)、吸収不良症候群(吸収低下)ではLDLは低下する。 ・1型糖尿病はインスリン治療下では脂質は正常のことが多く、コントロール不良時は主に中性脂肪が上昇する。 ・高LDL血症をみたら、まず続発性の原因を除外する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。