StudyMed医師国家試験

異常値はひとつだけ―英語の健診問題で「脂質異常症」を見抜く

第120回医師国家試験 E問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第120回 E問題 第37問

A 64-year-old man. He visited the family physician for an abnormal finding in the annual health check-up. He quit smoking three years ago. He does not have any history of stroke, coronary heart disease, or peripheral artery disease. He is currently not on any medication.  His body measurements are as follows: height 170cm, weight 65kg, waist circum-ference 81cm, blood pressure 128/74mmHg.  His fasting blood test results are as follows: LDL cholesterol 183mg/dL, HDL cholesterol 58mg/dL, triglycerides 130mg/dL, glucose 102mg/dL, HbA1c 5.5% (reference range 4.9 - 6.0), creatinine 0.76mg/dL.  Which of the following best describes the man’s condition?

  1. a.Obesity
  2. b.Dyslipidemia
  3. c.Hypertension
  4. d.Diabetes mellitus
  5. e.Metabolic syndrome

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は英語で出題された、健診で異常を指摘された男性の問題だ。選択肢はどれも生活習慣病の英語名。ポイントは、提示された数値を一つずつ各疾患の診断基準に当てはめていくこと。英語に気をとられず、落ち着いて基準と照らし合わせよう。
医学生医学生
英語の問題文だと身構えてしまいますが、選択肢は肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームですね。生活習慣病が全部そろっている感じです。
ドクタードクター
その通り。まず体格からいこう。BMIは自分で計算する必要がある。どうなるかな。
医学生医学生
体重を身長の2乗で割るので、65÷1.7²でだいたい22.5です。日本の基準ではBMI 25以上が肥満なので、普通体重ですね。
ドクタードクター
正解。腹囲も81cmで、男性の内臓脂肪蓄積の目安である85cmに届かない。だから肥満もメタボリックシンドロームも、入り口の段階で外れることになる。
医学生医学生
メタボは腹囲が必須項目でしたよね。でも、脂質の値が悪いならメタボの可能性もあるかと一瞬思いました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。日本の診断基準では腹囲が必須で、そのうえで脂質・血圧・血糖のうち2項目以上を満たす必要がある。しかも脂質の項目はトリグリセリド高値かHDLコレステロール低値で判定するもので、LDLコレステロールは判定項目に入っていない。今回は腹囲を満たさないし、ほかの項目もどれも該当しない。
医学生医学生
LDLがメタボの項目に入っていないのは盲点でした。CBTの勉強のときも数値ばかり覚えていて、項目の中身まで意識していませんでした。
ドクタードクター
次は血圧だ。128/74mmHgをどう評価する?
医学生医学生
140/90mmHg未満なので高血圧ではありません。ただ正常というより、少し高めでしょうか。
ドクタードクター
いい感覚だね。高血圧治療ガイドラインの分類では、収縮期120〜129mmHgかつ拡張期80mmHg未満は「正常高値血圧」にあたる。高血圧ではないけれど、生活習慣には気をつけたい範囲だ。糖代謝はどうかな。
医学生医学生
空腹時血糖102mg/dLとHbA1c 5.5%なので、糖尿病型の126mg/dL以上や6.5%以上にはまったく届きません。空腹時血糖110mg/dL未満なので境界型でもないですね。
ドクタードクター
そう。こうして消していくと、基準を外れているのはLDLコレステロールの183mg/dLだけになる。空腹時採血でLDLコレステロール140mg/dL以上は高LDLコレステロール血症だから、診断は脂質異常症、つまりdyslipidemiaだ。HDLコレステロールは40mg/dL未満で異常、トリグリセリドは空腹時150mg/dL以上で異常だから、どちらも正常範囲だね。
医学生医学生
問題文が「an abnormal finding」と単数形なのも、異常が一つだけということと合っていますね。昔は高脂血症と呼んでいたと講義で聞きましたが、名前が変わったのはなぜですか。
ドクタードクター
低HDLコレステロール血症のように「高く」ない異常も含めて扱うためだよ。だから今は脂質異常症という名前が使われている。では、診断したあとに臨床で何をするかも押さえておこう。LDLコレステロールが180mg/dL以上という点で、ひとつ考えておきたい疾患があるんだ。
医学生医学生
家族性高コレステロール血症でしょうか。臨床実習の循環器内科で、アキレス腱が太い患者さんを診察させてもらいました。
ドクタードクター
まさにそれ。アキレス腱肥厚や黄色腫の有無、家族性高コレステロール血症や早発性冠動脈疾患の家族歴を確認する。それと並行して、甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、薬剤などによる二次性脂質異常症を除外することも大切だ。
医学生医学生
そのうえで治療方針を決めるんですね。この人はすぐにスタチンを始めるんですか。
ドクタードクター
この人は冠動脈疾患や脳梗塞の既往がないから一次予防の対象だ。糖尿病や慢性腎臓病、末梢動脈疾患といった高リスク病態がなければ、年齢・性別・血圧・喫煙・脂質などからリスクを点数化して低・中・高リスクに分け、LDLコレステロールの管理目標をそれぞれ160、140、120mg/dL未満と設定する。一次予防ではまず食事療法、運動療法、禁煙継続といった生活習慣の改善を行い、それでも目標に届かない場合や高リスクの場合に薬物療法を検討する、というのが基本的な流れだ。
医学生医学生
診断名を当てるだけでなく、その先のリスク評価までつながっているんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。健診で一つだけ異常値が出た人こそ、将来の動脈硬化性疾患をどう防ぐかを考える出発点になる。英語の疾患名と診断基準をセットで覚えておけば、こうした問題は確実に得点できるよ。

まとめ

健診での異常を扱う問題では、BMI・腹囲・血圧・血糖・脂質を一つずつ診断基準に当てはめることが基本です。本例はBMI約22.5、腹囲81cm、血圧128/74mmHg(正常高値血圧)、空腹時血糖102mg/dL、HbA1c 5.5%といずれも基準内で、異常はLDLコレステロール183mg/dL(空腹時140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症)だけであるため、脂質異常症(dyslipidemia)と診断します。メタボリックシンドロームは腹囲(男性85cm以上)が必須で、LDLコレステロールは判定項目に含まれない点に注意が必要です。LDLコレステロール180mg/dL以上では家族性高コレステロール血症も念頭に置き、二次性脂質異常症を除外したうえで、一次予防としてリスク区分に応じた管理目標を設定し、まず生活習慣の改善から始めます。obesity、hypertension、diabetes mellitus、metabolic syndromeなどの英語名と診断基準をセットで押さえることが、英語問題と日常診療の両方で役立ちます。

解答・解説

正解はbです

問題文の要旨

64歳の男性が年1回の健康診断で異常を指摘され、かかりつけ医(家庭医)を受診した。3年前に禁煙しており、脳卒中・冠動脈疾患・末梢動脈疾患の既往はなく、服薬もない。身長170cm、体重65kg、腹囲81cm、血圧128/74mmHg。空腹時採血でLDLコレステロール183mg/dL、HDLコレステロール58mg/dL、トリグリセリド(中性脂肪)130mg/dL、血糖102mg/dL、HbA1c 5.5%、クレアチニン0.76mg/dL。「この男性の状態を最もよく表すものはどれか」が問われている。

所見の整理

本問は、提示された数値を各疾患の診断基準と一つずつ照らし合わせれば解ける。 ・体格:BMI(体格指数)=体重(kg)÷身長(m)²=65÷(1.70×1.70)=65÷2.89≒22.5。日本肥満学会の基準(BMI 25以上で肥満)に届かず、普通体重である。 ・腹囲:81cm。メタボリックシンドロームの必須項目である男性85cm以上を満たさない。 ・血圧:128/74mmHg。高血圧の基準(診察室血圧140/90mmHg以上)に届かない。 ・糖代謝:空腹時血糖102mg/dL、HbA1c 5.5%。糖尿病型(空腹時126mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上)には遠い。 ・脂質:LDLコレステロール183mg/dLのみが基準(140mg/dL以上)を大きく超えている。HDLコレステロール58mg/dL(基準:40mg/dL未満で異常)、空腹時トリグリセリド130mg/dL(基準:150mg/dL以上で異常)はいずれも正常範囲である。 ・腎機能:クレアチニン0.76mg/dLで、明らかな腎機能障害は示唆されない。

診断

異常値はLDLコレステロールの上昇だけであり、高LDLコレステロール血症、すなわち脂質異常症(dyslipidemia)と診断できる。問題文の「an abnormal finding(一つの異常所見)」という表現も、異常が一項目に限られることと矛盾しない。

設問の考え方

生活習慣病の診断名を英語で問う問題である。選択肢の英語(obesity=肥満、dyslipidemia=脂質異常症、hypertension=高血圧、diabetes mellitus=糖尿病、metabolic syndrome=メタボリックシンドローム)を正しく訳し、BMIを自分で計算したうえで、それぞれの診断基準に当てはめればよい。なお、脂質異常症と診断した後は、動脈硬化性疾患の既往がない「一次予防」の対象として、年齢・性別・血圧・喫煙・糖代謝などから将来の冠動脈疾患リスクを評価し、リスクに応じたLDLコレステロールの管理目標を設定するという流れになる。

選択肢考察

  1. ×a.  Obesity

    誤り。Obesityは肥満を指す。日本ではBMI 25以上を肥満と定義する。本例のBMIは65÷1.70²≒22.5で、普通体重(18.5以上25未満)の範囲にあり、肥満には当たらない。腹囲も81cmで内臓脂肪蓄積を疑う目安(男性85cm以上)に達していない。

  2. ○b.  Dyslipidemia

    正しい。Dyslipidemiaは脂質異常症である。空腹時採血でLDLコレステロール140mg/dL以上を高LDLコレステロール血症と診断するが、本例は183mg/dLとこの基準を大きく上回る。一方、HDLコレステロール58mg/dL(40mg/dL未満で低HDLコレステロール血症)とトリグリセリド130mg/dL(空腹時150mg/dL以上で高トリグリセリド血症)は正常である。したがって本例は、LDLコレステロールの上昇のみによる脂質異常症と判断できる。かつては「高脂血症」と呼ばれたが、低HDLコレステロール血症も含めて扱うため、現在は「脂質異常症」という名称が使われている。

  3. ×c.  Hypertension

    誤り。Hypertensionは高血圧である。診察室血圧で収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上を高血圧とする。本例の128/74mmHgは基準を満たさない。高血圧治療ガイドライン2019の分類では、収縮期120~129mmHgかつ拡張期80mmHg未満は「正常高値血圧」に当たり、高血圧ではない。

  4. ×d.  Diabetes mellitus

    誤り。Diabetes mellitusは糖尿病である。糖尿病型の判定基準は、空腹時血糖126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれかである。本例は空腹時血糖102mg/dL、HbA1c 5.5%で、どの基準にも当たらない。空腹時血糖110mg/dL未満は正常域であり、境界型(空腹時血糖異常)にも該当しない。

  5. ×e.  Metabolic syndrome

    誤り。日本のメタボリックシンドローム診断基準では、腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)が必須項目である。そのうえで、①脂質(トリグリセリド150mg/dL以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dL未満)、②血圧(収縮期130mmHg以上かつ/または拡張期85mmHg以上)、③空腹時血糖110mg/dL以上のうち2項目以上を満たす必要がある。本例は腹囲81cmで必須項目を満たさない。選択項目も、トリグリセリド130mg/dL、HDLコレステロール58mg/dL、血圧128/74mmHg、空腹時血糖102mg/dLといずれも該当しない。なお、LDLコレステロールはメタボリックシンドロームの判定項目に含まれていない点にも注意する。

脂質異常症の診断基準(空腹時採血、動脈硬化性疾患予防ガイドライン)

・LDLコレステロール 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症 ・LDLコレステロール 120~139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症(高リスク病態がないか検討する) ・HDLコレステロール 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症 ・トリグリセリド 150mg/dL以上(空腹時)、175mg/dL以上(随時):高トリグリセリド血症 ・non-HDLコレステロール(総コレステロール-HDLコレステロール)170mg/dL以上:高non-HDLコレステロール血症(150~169mg/dLは境界域) ※ここでいう「空腹時」は10時間以上の絶食を指す。LDLコレステロールはFriedewald式(総コレステロール-HDLコレステロール-トリグリセリド/5)で求めるか直接法で測定する。 ※これらは治療開始基準ではなく、スクリーニングのための基準である。

診断後の考え方

・脂質異常症と診断したら、まず二次性脂質異常症(甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、薬剤性など)を除外する。 ・LDLコレステロール180mg/dL以上では、家族性高コレステロール血症(FH)の可能性も考え、アキレス腱肥厚・黄色腫の有無や、FHまたは早発性冠動脈疾患の家族歴を確認する。 ・冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞の既往がある場合は二次予防となり、より厳しい管理目標を設定する。既往がない場合は一次予防として、糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患といった高リスク病態の有無を確認し、それらがなければ年齢・性別・収縮期血圧・糖代謝異常・脂質・喫煙などからリスクを点数化して、低・中・高リスクに分類する。LDLコレステロールの管理目標は、低リスク160mg/dL未満、中リスク140mg/dL未満、高リスク120mg/dL未満である。 ・一次予防では、まず食事療法・運動療法・禁煙などの生活習慣改善を行い、それでも目標に達しない場合や高リスクの場合にスタチンなどの薬物療法を検討する。

主な生活習慣病の基準(成人)

・肥満:BMI 25以上 ・高血圧:診察室血圧140/90mmHg以上(家庭血圧135/85mmHg以上) ・糖尿病型:空腹時血糖126mg/dL以上、OGTT 2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上のいずれか ・メタボリックシンドローム:腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)が必須で、脂質・血圧・血糖の3項目のうち2項目以上

POINT

・異常値はLDLコレステロール183mg/dLのみであり、診断は脂質異常症(dyslipidemia)である。 ・高LDLコレステロール血症はLDLコレステロール140mg/dL以上(空腹時)で判定する。 ・BMIは体重(kg)÷身長(m)²で求め、25以上を肥満とする。本例は約22.5で非肥満である。 ・メタボリックシンドロームは腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)が必須項目であり、LDLコレステロールは判定項目に含まれない。 ・高血圧は140/90mmHg以上、糖尿病型は空腹時血糖126mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上である。 ・obesity、dyslipidemia、hypertension、diabetes mellitus、metabolic syndromeといった英語の疾患名を確実に覚えておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。