StudyMed医師国家試験

CTに映らないアルドステロン症―低レニン・高アルドステロンの次に打つ3つの負荷試験

第114回医師国家試験 A問題 第73問

国試問題にチャレンジ

第114回 A問題 第73問

41歳の女性。高血圧,頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して,自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが,血圧は150/80mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。血液検査では血清カリウムが2.8mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では,血漿レニン活性0.1ng/mL/時間(基準1.2~2.5),血漿アルドステロン濃度231pg/mL(基準30~159)であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。  診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。

  1. a.生理食塩水負荷試験
  2. b.カプトプリル負荷試験
  3. c.デキサメサゾン抑制試験
  4. d.フロセミド立位負荷試験
  5. e.MIBG副腎シンチグラフィ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、二次性高血圧のなかで最も頻度の高い原発性アルドステロン症について、スクリーニングの次に何をするかを問う問題だ。着眼点は、どんな高血圧で疑うか、レニンとアルドステロンの組み合わせをどう読むか、そして確定診断にどの検査を使うか、の3つだよ。
医学生医学生
若いころからの高血圧で降圧薬が効きにくく、低カリウム血症もあるので、二次性高血圧を疑う状況だと思います。脱力は低カリウムのせいでしょうか。
ドクタードクター
その通り。脱力は低カリウム血症による筋力低下で説明できる。若年発症、治療抵抗性、低カリウム血症はどれも原発性アルドステロン症を積極的に疑うきっかけになる。では、レニンとアルドステロンの結果をどう読む?
医学生医学生
レニンが抑制されていて、アルドステロンが高いです。生理学の講義で習ったレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の流れからすると、本来はレニンが上がるからアルドステロンも上がるはずなのに、逆になっています。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。アルドステロンが副腎から勝手に過剰分泌されると、腎集合管でNaの再吸収が増えて体液量が増え、その結果レニンは抑えられる。だから低レニン・高アルドステロンは原発性を示すパターンなんだ。一方、高レニン・高アルドステロンなら腎血管性高血圧などの続発性、低レニン・低アルドステロンなら甘草による偽性アルドステロン症やLiddle症候群などを考える。
医学生医学生
アルドステロン/レニン比を計算すると、231を0.1で割って2,310なので、基準の200を大きく超えていますね。これで診断確定でしょうか。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だ。比はあくまでスクリーニング。レニンやアルドステロンは体位、時間帯、食塩摂取量、降圧薬などで変動するから、陽性なら本当に自律的に分泌されているのかを負荷試験で確かめる必要がある。これを機能確認検査と呼ぶんだ。
医学生医学生
スクリーニング、確定診断、局在診断の3段階で進めるということですか。
ドクタードクター
その通り。では機能確認検査の考え方を見ていこう。正常なら抑えられるはずの刺激を加えても、アルドステロンが下がらない、あるいはレニンが上がらないことを確かめるのが共通の発想だ。まず生理食塩水負荷試験。生理食塩水を数時間かけて点滴して体液量を増やすと、正常ならレニン-アンジオテンシン系が抑制されてアルドステロンが下がる。
医学生医学生
原発性アルドステロン症では自律分泌なので、点滴しても下がらないということですね。ただ容量負荷になるので、心不全の人には怖そうです。
ドクタードクター
鋭いね。心不全や腎不全、コントロール不良の重症高血圧では注意が必要だ。次にカプトプリル負荷試験。ACE阻害薬でアンジオテンシンIIを減らすと、正常ではアルドステロンが下がってレニンは上がる。原発性ではアンジオテンシンIIに依存していないから、アルドステロンは下がらず、レニンも抑えられたまま。外来でも比較的安全に行いやすい検査だよ。
医学生医学生
フロセミド立位負荷試験は、利尿で体液を減らしてレニンを刺激する検査でしたか。
ドクタードクター
そう。ループ利尿薬を静注して立位を保たせ、体液量の減少と腎血流の低下でレニン分泌を刺激する。正常ならレニンが上がるけれど、原発性では体液過剰で強く抑制されているから低いままだ。ただ低カリウム血症や起立性低血圧を助長しうるから、施行時は注意する。ほかに経口食塩負荷試験もあり、通常はこれらのうち少なくとも1つで陽性を確認する。
医学生医学生
デキサメタゾン抑制試験は、同じ副腎の検査なので候補に入れそうになりました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。あれはACTHを抑えてコルチゾールが下がるかを見る検査で、Cushing症候群のスクリーニングや病型診断に使う。副腎腫瘍があるときにコルチゾールの同時産生を評価することはあるけれど、アルドステロンの自律分泌を証明する検査ではない。
医学生医学生
MIBGシンチは、内分泌内科の実習で褐色細胞腫の患者さんに使っていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。MIBGはノルアドレナリンに似た構造でカテコールアミン産生細胞に取り込まれるから、褐色細胞腫やパラガングリオーマの局在診断に使う。副腎皮質の機能的画像なら、アドステロールを使ったシンチグラフィがあるよ。
医学生医学生
もう一つ気になったのは、CTで副腎に異常がないことです。それなら原発性アルドステロン症ではないと考えてしまいそうです。
ドクタードクター
そこも大事な注意点だ。アルドステロン産生腺腫は1cm未満の小さいものが多く、両側性の特発性アルドステロン症ではCTで異常が出ないことも多い。だからCTで腫瘍が見えなくても否定はできないし、逆にCT所見だけで片側か両側かを決めてもいけない。手術を考える患者さんでは、副腎静脈サンプリングで左右のアルドステロン分泌を比べて局在を決める。
医学生医学生
片側性なら腹腔鏡下副腎摘出術、両側性ならミネラルコルチコイド受容体拮抗薬という治療の分かれ道につながるわけですね。
ドクタードクター
その通り。スピロノラクトンやエプレレノン、エサキセレノンなどが使われる。最後に、原発性アルドステロン症は同じ程度の本態性高血圧に比べて脳卒中や心房細動、心肥大、腎障害が起こりやすく、しかも血清カリウムが正常な例も多い。低カリウムがないから大丈夫、と見逃さないことが臨床ではいちばん大切だ。測定前には、比に影響する降圧薬を可能な範囲でカルシウム拮抗薬やα遮断薬に切り替えることも覚えておこう。

まとめ

高血圧に低カリウム血症を伴うときは原発性アルドステロン症を疑い、低レニン・高アルドステロンでアルドステロン/レニン比が200を超えればスクリーニング陽性と判断します。ただし比は変動しやすいため、確定診断には生理食塩水負荷試験、カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験などの機能確認検査で、アルドステロンの自律分泌を確かめます。デキサメタゾン抑制試験はCushing症候群、MIBGシンチグラフィは褐色細胞腫の検査であり、目的が異なります。腺腫は小さく両側性病変も多いため、CTで異常がなくても否定できず、手術を考える場合は副腎静脈サンプリングで局在を決めます。二次性高血圧で最も多く臓器障害も起こしやすい疾患だからこそ、スクリーニングから確定、局在診断へと段階的に進める流れを押さえておくことが大切です。

解答・解説

正解はa, b, dです

所見の整理

・41歳女性。3年前(38歳)から高血圧があり、カルシウム拮抗薬を内服しても150/80mmHg前後と降圧目標に届かない。若年発症かつ降圧薬に反応しにくい高血圧は、二次性高血圧を疑う契機となる。 ・1年前から頭痛と脱力がある。血清K 2.8mEq/Lと低カリウム血症があり、脱力は低カリウム血症による筋力低下で説明できる。 ・安静臥位での採血で、血漿レニン活性(PRA)0.1ng/mL/時と著明に抑制され、血漿アルドステロン濃度(PAC)231pg/mLと高値である。 ・腹部単純CTでは副腎を含め異常を認めない。

診断へのプロセス

高血圧+低カリウム血症をみたら、まずアルドステロン(ミネラルコルチコイド)作用の過剰を考え、レニンとアルドステロンの組み合わせで病態を分ける。 ・低レニン・高アルドステロン → 原発性アルドステロン症(PA) ・高レニン・高アルドステロン → 続発性アルドステロン症(腎血管性高血圧、レニン産生腫瘍、利尿薬使用など) ・低レニン・低アルドステロン → 偽性アルドステロン症(甘草・グリチルリチン)、Liddle症候群、デオキシコルチコステロン産生腫瘍、Cushing症候群など 本例は低レニン・高アルドステロンのパターンで、アルドステロン/レニン比(ARR=PAC[pg/mL]÷PRA[ng/mL/時])は231÷0.1=2,310と、スクリーニング陽性の目安(200超)を大きく上回る。したがって原発性アルドステロン症が強く疑われる。

設問の考え方

PAの診断は、(1) スクリーニング(ARR)→ (2) 機能確認検査(確定診断)→ (3) 病型・局在診断(片側性か両側性か)の順に進める。ARRはあくまでスクリーニングであり、レニン・アルドステロンは体位、時間帯、食塩摂取量、降圧薬などで変動するため、陽性例では「アルドステロンの自律的な過剰分泌」を負荷試験で確かめる。代表的な機能確認検査が、生理食塩水負荷試験、カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験であり(ほかに経口食塩負荷試験がある)、通常このうち少なくとも1種類で陽性を確認する。 なお、単純CTで副腎腫瘍が見えなくてもPAは否定できない。アルドステロン産生腺腫は1cm未満の小さいものが多く、両側性の特発性アルドステロン症ではCTで異常を示さないことも多い。確定診断後、手術を希望する患者では副腎静脈サンプリングで左右差を評価して局在診断を行う。

選択肢考察

  1. ○a.  生理食塩水負荷試験

    生理食塩水を数時間かけて点滴静注し、循環血漿量を増やす検査である。正常ではレニン-アンジオテンシン系が抑制されてアルドステロンが低下するが、PAではアルドステロンが自律的に分泌されているため、負荷後もPACが十分に低下しない。PAの機能確認検査の一つであり適切である。容量負荷となるため、心不全や腎不全、コントロール不良の重症高血圧では注意が必要である。

  2. ○b.  カプトプリル負荷試験

    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるカプトプリルを内服させ、アンジオテンシンIIの産生を抑える検査である。正常ではアンジオテンシンIIの低下によりアルドステロンが低下し、レニンは上昇する。PAではアルドステロン分泌がアンジオテンシンIIに依存しないため、内服後もアルドステロンが低下せず、レニンも抑制されたままでARRが高値にとどまる。外来でも安全に施行しやすいPAの機能確認検査であり適切である。

  3. ×c.  デキサメサゾン抑制試験

    合成糖質コルチコイドのデキサメタゾンを投与して下垂体からのACTHを抑制し、コルチゾールが低下するかをみる検査で、Cushing症候群のスクリーニング・病型診断に用いる。PAの確定診断(アルドステロン自律分泌の証明)を目的とした検査ではない。なお、副腎腫瘍を認めるPA患者でコルチゾールの同時過剰分泌を評価する目的や、まれな家族性のグルココルチコイド奏効性アルドステロン症の評価で行うことはあるが、本問の「診断のために行うべき検査」には当たらない。

  4. ○d.  フロセミド立位負荷試験

    ループ利尿薬のフロセミドを静注し、一定時間立位を保たせて、利尿による循環血漿量の減少と立位による腎血流低下でレニン分泌を刺激する検査である。正常ではPRAが上昇するが、PAでは過剰なアルドステロンによる体液量増加のためにレニンが強く抑制されており、負荷後もPRAが低値のままとなる。PAの機能確認検査の一つであり適切である。低カリウム血症や起立性低血圧を助長しうるため、施行時はその点に注意する。

  5. ×e.  MIBG副腎シンチグラフィ

    MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)はノルアドレナリンに類似した構造をもち、カテコールアミン産生細胞に取り込まれるため、褐色細胞腫・パラガングリオーマの局在診断や転移検索に用いられる。PAの診断には用いない。副腎皮質ホルモン産生腫瘍の機能的画像診断としては、コレステロール誘導体を用いる131I-アドステロール副腎皮質シンチグラフィがある。

原発性アルドステロン症(PA)の概要

・副腎皮質球状層からアルドステロンが自律的に過剰分泌される疾患である。アルドステロンは腎集合管でNa再吸収とK・H+排泄を促すため、体液量増加による高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスを生じる。体液量増加によりレニンは抑制される。 ・高血圧患者の5〜10%程度を占めるとされ、二次性高血圧の中で最も頻度が高い。血清Kが正常の例も多いため、低カリウム血症がないことで否定してはならない。 ・病型は、片側性のアルドステロン産生腺腫と、両側性の副腎過形成(特発性アルドステロン症)が大部分を占める。 ・同程度の本態性高血圧と比べて、脳卒中、心房細動、心肥大、腎障害などの臓器障害が起こりやすい。

スクリーニングの対象

低カリウム血症(利尿薬誘発性も含む)を伴う高血圧、若年発症の高血圧、治療抵抗性高血圧、副腎偶発腫を伴う高血圧、40歳未満で脳血管障害を発症した例などでは積極的にスクリーニングする。測定前には、ARRに影響する降圧薬(β遮断薬、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬など)を可能な範囲でカルシウム拮抗薬やα遮断薬に切り替える。

診断の流れ

(1) スクリーニング:ARR 200超(かつPACが一定値以上)で陽性。 (2) 機能確認検査:生理食塩水負荷試験、カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験、経口食塩負荷試験のうち、少なくとも1つで陽性を確認する。なお、低カリウム血症を伴い、レニンが測定感度以下に抑制され、PACが明らかな高値である典型例では、機能確認検査を省略できるとする考え方も示されている。 (3) 局在・病型診断:副腎CT(できれば造影・薄いスライス)で腫瘍の有無を確認し、手術を検討する場合は副腎静脈サンプリング(AVS)で左右のアルドステロン分泌を比較する。CT所見だけで片側性・両側性を判断しない。

治療

・片側性(主に腺腫):腹腔鏡下副腎摘出術。 ・両側性(過形成)や手術を希望しない例:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン、エサキセレノンなど)による薬物治療。

鑑別が必要な低カリウム血症+高血圧

・続発性アルドステロン症(高レニン・高アルドステロン):腎血管性高血圧、悪性高血圧、レニン産生腫瘍など。 ・偽性アルドステロン症(低レニン・低アルドステロン):甘草(グリチルリチン)を含む漢方薬や肝疾患治療薬による。グリチルリチンが11β-水酸化ステロイド脱水素酵素2型を阻害し、コルチゾールが鉱質コルチコイド受容体を刺激するために起こる。 ・Liddle症候群、Cushing症候群なども低レニン・低アルドステロンの高血圧・低カリウム血症を呈しうる。 ・心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの浮腫性疾患でも二次的にアルドステロンが上昇するが、これらは有効循環血漿量の減少によるもので、通常は高血圧を伴わない。

POINT

・高血圧+低カリウム血症 → まずPAを疑い、PRAとPACを測定する。 ・低レニン・高アルドステロンでARR 200超ならPAのスクリーニング陽性。 ・確定診断(機能確認検査)は、生理食塩水負荷試験・カプトプリル負荷試験・フロセミド立位負荷試験(・経口食塩負荷試験)。 ・CTで腫瘍がなくてもPAは否定できない。手術を考えるなら副腎静脈サンプリングで局在診断。 ・デキサメタゾン抑制試験はCushing症候群、MIBGシンチグラフィは褐色細胞腫の検査。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。