StudyMed医師国家試験

レニンとアルドステロンが逆を向くとき―フィードバックで読み解く原発性アルドステロン症

第108回医師国家試験 B問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第27問

血漿レニン活性〈PRA〉と血漿アルドステロン濃度〈PAC〉が,反対方向に変化(一方が上昇し他方が低下)する病態はどれか。

  1. a.原発性アルドステロン症
  2. b.偽性アルドステロン症
  3. c.偽性Bartter症候群
  4. d.腎血管性高血圧症
  5. e.肝硬変

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、血漿レニン活性とアルドステロン濃度の動き方から病態を見分ける問題だ。ポイントは「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のどこに異常の起点があるか」。起点がわかれば、2つの値がどちらに動くかは自然に決まるんだ。
医学生医学生
正直、レニンとアルドステロンの組み合わせは丸暗記してしまっていて、理屈がよくわかっていません。
ドクタードクター
それならまず流れを確認しよう。腎臓の傍糸球体細胞は、腎灌流圧が下がったり、緻密斑に届くNaClが減ったり、交感神経のβ1刺激を受けたりするとレニンを出す。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変え、ACEでアンジオテンシンⅡになり、これが副腎皮質球状層からアルドステロンを分泌させる。
医学生医学生
生理学の講義で習いました。アルドステロンは集合管でNaを再吸収して、KとH⁺を捨てるんですよね。
ドクタードクター
そう。その結果、体液量と血圧が上がると、今度はレニン分泌が抑えられる。負のフィードバックだ。ここから3つのパターンが導ける。まず、起点がレニン側、つまり上流にある場合はどうなるかな?
医学生医学生
レニンが増えれば、その下流のアルドステロンも増えるので、両方とも上がる……同じ方向ですね。
ドクタードクター
正解。これが続発性アルドステロン症だ。腎動脈が狭くなって腎灌流圧が下がる腎血管性高血圧症が典型だね。原因は中高年なら動脈硬化、若い女性なら線維筋性異形成が多い。
医学生医学生
肝硬変もアルドステロンが高いと聞きますが、むくんでいて体液は多いはずなのに、なぜレニンが上がるんですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。肝硬変では低アルブミンで膠質浸透圧が下がり、さらにNOなどで内臓の動脈が拡張する。体全体の水は多くても、動脈を実際に回っている有効循環血液量は減っているんだ。腎はそれを「足りない」と感じてレニンを出す。だからレニンもアルドステロンも上がる。腹水の治療にスピロノラクトンを使う理由もここにある。
医学生医学生
偽性Bartter症候群も、利尿薬や下剤の乱用、嘔吐で体液が失われてレニンが上がるので、同じパターンですね。
ドクタードクター
その通り。低カリウム血症と代謝性アルカローシスを伴うけれど、血圧は正常から低めというのが特徴だ。次に2つ目のパターン。アルドステロン自体が勝手に、レニンと無関係に作られたらどうなる?
医学生医学生
アルドステロンでNaと水がたまって血圧が上がるから、フィードバックでレニンは下がる……あ、ここで逆向きになるんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。これが原発性アルドステロン症で、今回の正解だ。副腎のアルドステロン産生腺腫や、両側の過形成による特発性アルドステロン症が原因になる。アルドステロンは高く、レニンは低い。この性質を利用して、アルドステロン/レニン比、つまりARRの高値でスクリーニングするんだ。
医学生医学生
低カリウム血症があれば原発性アルドステロン症を疑う、と覚えていました。
ドクタードクター
低カリウム血症は大事な手がかりだけど、伴うのは半数程度で、血清Kが正常な例も多い。だから治療抵抗性の高血圧や若年発症の高血圧、副腎偶発腫瘍のある人では、K正常でもARRを測ることが勧められている。
医学生医学生
では偽性アルドステロン症は?名前からするとアルドステロンが高そうですが。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。3つ目のパターンで、アルドステロン以外のものが鉱質コルチコイド受容体を刺激している。代表は甘草のグリチルリチンだ。腎の11β-HSD2という酵素が阻害され、本来コルチゾンに変換されるはずのコルチゾールが局所で受容体を刺激し続ける。血中コルチゾールが増えるわけではない点に注意しよう。体液量が増えるのでレニンが下がり、それに伴ってアルドステロンも下がる。
医学生医学生
症状はアルドステロン過剰と同じなのに、レニンもアルドステロンも低いんですね。漢方薬の副作用として臨床実習の薬剤部で聞いた話とつながりました。
ドクタードクター
Liddle症候群も同じ低レニン・低アルドステロン型だ。最後に一つ発展知識を。逆方向に動くパターンはもう一つあって、Addison病のように副腎がアルドステロンを作れない場合は、レニンが上がってアルドステロンが下がる。今回の選択肢にはないけれど、セットで覚えておくと整理しやすい。
医学生医学生
起点が上流なら同じ方向に上昇、副腎の自律的な過剰なら逆向き、それ以外による受容体刺激なら両方低下、副腎の産生不全ならもう一つの逆向き、ですね。
ドクタードクター
完璧だ。原発性アルドステロン症はARRでスクリーニングしたら、カプトプリル負荷試験や生理食塩水負荷試験で自律性を確認し、副腎静脈サンプリングで片側性か両側性かを判定する。片側性なら腹腔鏡下副腎摘出術、両側性ならMR拮抗薬が基本だ。高血圧の中に隠れていて、手術で治せる可能性がある病気だから、見逃さないことが大切なんだ。

まとめ

血漿レニン活性とアルドステロン濃度の動きは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のどこに異常の起点があるかで決まります。腎血管性高血圧症、肝硬変、偽性Bartter症候群のようにレニン側が起点の場合は両者がともに上昇し、甘草による偽性アルドステロン症やLiddle症候群のようにアルドステロン以外の機序で受容体以降が過剰に働く場合は両者がともに低下します。アルドステロンがレニンと無関係に自律的に分泌される原発性アルドステロン症では、体液量増加によるフィードバックでレニンが抑えられ、アルドステロン高値・レニン低値という逆方向の変化となり、ARR高値がスクリーニングの根拠となります。なお、Addison病のように副腎の産生不全ではレニン高値・アルドステロン低値という別の逆方向パターンを示します。暗記ではなくフィードバックの理屈で整理することで、内分泌性高血圧の診断と治療方針の理解が確かなものになります。

解答・解説

正解はaです

本問は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)のどこに異常の起点があるかによって、血漿レニン活性(PRA)と血漿アルドステロン濃度(PAC)の動きが決まることを理解しているかを問う。

RAA系の基本

腎臓の傍糸球体装置(輸入細動脈の傍糸球体細胞)は、腎灌流圧の低下、遠位尿細管(緻密斑)に届くNaCl量の減少、交感神経(β1受容体)刺激を感知してレニンを分泌する。レニンは肝臓由来のアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変え、これが主に肺の血管内皮にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンⅡとなる。アンジオテンシンⅡは血管を収縮させるとともに、副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌を促す。アルドステロンは集合管でNa再吸収とK・H⁺排泄を促進し、体液量と血圧を上げる。体液量・血圧が回復すればレニン分泌は抑えられる(負のフィードバック)。

PRAとPACの動きの3パターン

1. 起点がレニン側(上流)にある場合:レニンが増えればアルドステロンも増え、両者は同じ方向に動く(高レニン・高アルドステロン=続発性アルドステロン症)。腎血流低下、有効循環血液量の減少、尿細管でのNaCl喪失などが該当する。 2. 起点がアルドステロン自体の自律的過剰にある場合:アルドステロンによるNa・水貯留で体液量と血圧が上がり、フィードバックでレニンが抑えられる。すなわちPACは高く、PRAは低いという「反対方向」の変化になる。これが原発性アルドステロン症である。 3. アルドステロン以外の物質が鉱質コルチコイド受容体(MR)を刺激する、あるいはMRより下流のNa再吸収が過剰になる場合:体液量増加によってレニンが抑制され、それに伴ってアルドステロンも低下する(低レニン・低アルドステロン)。偽性アルドステロン症が代表である。 したがって、両者が逆方向に動くのは、アルドステロンが「レニンと無関係に」過剰産生される病態に限られる、と考えれば正解にたどり着ける。

選択肢考察

  1. ○a.  原発性アルドステロン症

    副腎皮質の腺腫(アルドステロン産生腺腫)や両側副腎の過形成(特発性アルドステロン症)から、アルドステロンがレニンの刺激と無関係に自律的に分泌される疾患である。過剰なアルドステロンによりNaと水が貯留して循環血液量が増え、高血圧をきたす。増えた体液量と上昇した腎灌流圧が傍糸球体装置を抑えるため、レニン分泌は低下する。その結果、PACは上昇しPRAは低下するという逆向きの変化を示す。この性質を利用したのがアルドステロン/レニン比(ARR)によるスクリーニングで、ARRの高値が本症を疑う根拠となる。低カリウム血症を伴うのは一部(半数程度)にとどまり、血清Kが正常の例も多い点も押さえておく。

  2. ×b.  偽性アルドステロン症

    高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシスといったアルドステロン過剰と同様の症状を呈するが、アルドステロン自体は増えていない病態である。代表的な原因は甘草(成分グリチルリチン)の過剰摂取で、グリチルリチンの代謝産物が腎尿細管の11β-水酸化ステロイド脱水素酵素2型(11β-HSD2)を阻害する。この酵素は本来、コルチゾールを受容体親和性の低いコルチゾンへ変換してMRを保護しているため、阻害されると局所でコルチゾールがMRを刺激し続ける(血中コルチゾール濃度そのものが上がるわけではない)。ほかに先天的な11β-HSD2欠損(AME症候群:apparent mineralocorticoid excess)、デオキシコルチコステロン(DOC)の過剰、上皮型Naチャネル(ENaC)の機能獲得変異によるLiddle症候群なども同様の像をとる。いずれも体液量増加によりレニンが抑制され、その結果アルドステロンも低下するため、PRAとPACはともに低下し、同じ方向に動く。

  3. ×c.  偽性Bartter症候群

    Bartter症候群はHenleループ上行脚のNa-K-2Cl共輸送体などの遺伝子異常でNaCl再吸収が障害される疾患であり、これと似た病態が後天的な原因で起こるものを偽性Bartter症候群という。原因として、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の乱用、下剤の乱用、習慣性の嘔吐(神経性やせ症など)が挙げられる。NaClや体液が失われて有効循環血液量が減り、緻密斑へのNaCl到達量も減るため、レニン分泌が亢進し、続いてアルドステロンも上昇する。PRAとPACはともに上昇し、同方向の変化である。低カリウム血症と代謝性アルカローシスを伴うが、血圧は正常〜低めであることが原発性アルドステロン症との違いである。

  4. ×d.  腎血管性高血圧症

    腎動脈が狭窄し、その先の腎臓の灌流圧が下がることで、傍糸球体装置からレニンが過剰に分泌される。原因は、中高年では粥状動脈硬化、若年女性では線維筋性異形成、ほかに高安動脈炎(大動脈炎症候群)などがある。レニン増加に続いてアンジオテンシンⅡとアルドステロンが増えるため、PRAとPACはともに上昇する(続発性アルドステロン症)。腹部の血管雑音、低カリウム血症、ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)投与後の急激な腎機能悪化などが診断の手がかりとなる。

  5. ×e.  肝硬変

    肝硬変では、肝臓でのアルブミン合成低下による血漿膠質浸透圧の低下に加え、一酸化窒素(NO)などの血管拡張物質の増加による内臓動脈の拡張が起こる。そのため体全体の水分は多くても、動脈内を実際に循環する有効循環血液量は減少し、腎血流量も低下する。これを腎が「体液不足」と感知してレニン分泌を増やし、アルドステロンも上昇する(続発性アルドステロン症)。PRAとPACはともに上昇し、同方向に動く。アルドステロン作用で尿細管のNa・水再吸収が亢進することが腹水や浮腫を悪化させる一因となり、治療に抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)が用いられる根拠にもなっている。

PRA・PACによる病態の整理

・高レニン・高アルドステロン(同方向・上昇):腎血管性高血圧症、レニン産生腫瘍(傍糸球体細胞腫)、悪性高血圧、Bartter症候群・Gitelman症候群、偽性Bartter症候群(利尿薬・下剤乱用、嘔吐)、脱水・出血、うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの浮腫性疾患 ・低レニン・高アルドステロン(逆方向):原発性アルドステロン症(アルドステロン産生腺腫、特発性アルドステロン症)、グルココルチコイド奏効性アルドステロン症 ・低レニン・低アルドステロン(同方向・低下):偽性アルドステロン症(甘草・グリチルリチン)、AME症候群、Liddle症候群、DOC産生腫瘍、先天性副腎皮質過形成の一部(11β-水酸化酵素欠損症、17α-水酸化酵素欠損症)、Cushing症候群の一部 ・高レニン・低アルドステロン(逆方向):Addison病(原発性副腎皮質機能低下症)、21-水酸化酵素欠損症などで副腎そのものがアルドステロンを作れない場合。本問の選択肢にはないが、PRAとPACが逆方向に動くもう一つの型として覚えておくとよい。 ・低レニン性低アルドステロン症(Ⅳ型尿細管性アシドーシス):糖尿病性腎症などでみられ、高カリウム血症を伴う。

原発性アルドステロン症の診断の流れ

高血圧患者、とくに低カリウム血症、若年発症、治療抵抗性高血圧、副腎偶発腫瘍を伴う例では、PACとPRAを測定してARRを求めスクリーニングする。陽性であれば、カプトプリル負荷試験、生理食塩水負荷試験、経口食塩負荷試験などの機能確認検査でアルドステロンの自律性を確かめ、CTで副腎を評価したうえで、副腎静脈サンプリングにより片側性か両側性かを判定する。片側性(腺腫など)は腹腔鏡下副腎摘出術、両側性はMR拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノンなど)による薬物治療が基本となる。

POINT

・PRAとPACの動きは、RAA系のどこに異常の起点があるかで決まる。 ・レニン側(上流)が起点:両者とも上昇(腎血管性高血圧、偽性Bartter症候群、肝硬変、心不全など)。 ・アルドステロンの自律的過剰:PAC上昇・PRA低下(原発性アルドステロン症)→ ARR高値でスクリーニング。 ・アルドステロン以外によるMR刺激やその下流の異常:両者とも低下(偽性アルドステロン症、Liddle症候群など)。 ・副腎の産生不全:PRA上昇・PAC低下(Addison病など)。 ・甘草による偽性アルドステロン症は11β-HSD2阻害で局所のコルチゾールがMRを刺激することによる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。