StudyMed医師国家試験

テニスラケットが目印―表皮の「見張り番」Langerhans細胞を電子顕微鏡で見分ける

第113回医師国家試験 F問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第13問

Langerhans細胞にみられるのはどれか。

  1. a.Birbeck顆粒
  2. b.デスモソーム
  3. c.メラノソーム
  4. d.トノフィラメント
  5. e.ケラトヒアリン顆粒

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚の基礎、表皮をつくる細胞とそれぞれに特徴的な微細構造の対応を問う問題だ。選択肢はどれも電子顕微鏡レベルの構造なので、「その構造はどの細胞のものか」を一つずつ振り分けていけば答えにたどり着ける。まず、表皮にはどんな細胞がいるか挙げてみようか。
医学生医学生
組織学の講義で習ったのは、角化細胞、メラノサイト、Langerhans細胞、Merkel細胞の4種類です。
ドクタードクター
その通り。表皮は重層扁平上皮で、細胞の約9割は角化細胞、つまりケラチノサイトが占める。基底層から有棘層、顆粒層、角層へと分化しながら上へ移動して、最後は垢として剥がれ落ちる。残りの3種類は少数派だけど、それぞれ役割がはっきりしているんだ。
医学生医学生
Langerhans細胞は免疫担当でしたよね。抗原提示細胞だったと思います。
ドクタードクター
そう、皮膚の代表的な抗原提示細胞で、主に有棘層にいる樹状細胞だ。角化細胞の隙間に樹枝状の突起を伸ばして、侵入してきた抗原を見張っている。そして細胞質の中に、この細胞に特有の小器官をもっている。それが正解のBirbeck顆粒だよ。
医学生医学生
Birbeck顆粒は「テニスラケット状」と覚えました。棒の先が膨らんでいる形ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。電子顕微鏡では棒状構造の一端が袋状に膨らんでいて、ラケット小体とも呼ばれる。ランゲリン、つまりCD207というC型レクチン受容体によって形成され、抗原の取り込みや処理に関わると考えられている。では、残りの構造がどの細胞のものか確認していこう。まずデスモソームはどうかな。
医学生医学生
デスモソームは細胞同士をつなぐ接着装置なので、Langerhans細胞も周りの細胞とつながっていそうな気がするんですが……。
ドクタードクター
そこが引っかけどころ。デスモソームは角化細胞どうしを強固に結合する装置で、有棘層で特に発達している。光学顕微鏡で見える有棘細胞の「棘」はこの部分なんだ。一方、Langerhans細胞やメラノサイトは周囲の角化細胞とデスモソームで結合していない。だから正解にはならないよ。
医学生医学生
デスモソームといえば、天疱瘡でデスモグレインに対する自己抗体ができる話を皮膚科の講義で聞きました。
ドクタードクター
そう、尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3、落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1が標的になって、角化細胞どうしの接着が外れて水疱ができる。構造と疾患をセットで覚えると忘れにくいね。次にトノフィラメントはどうだろう。
医学生医学生
ケラチンの線維の束で、角化細胞の骨組みのようなものでしょうか。
ドクタードクター
正解。ケラチンでできた中間径フィラメントの束で、デスモソームや基底層のヘミデスモソームに付着して細胞の形と強度を支えている。Langerhans細胞はケラチンをもたないので、トノフィラメントも欠いているんだ。ケラトヒアリン顆粒はわかるかな。
医学生医学生
顆粒層の名前の由来になっている顆粒ですよね。病理実習で、顆粒層の細胞に濃い紫の粒が見えていました。
ドクタードクター
その通り、顆粒層の角化細胞にみられる好塩基性の顆粒で、フィラグリンの前駆体であるプロフィラグリンやロリクリンを含んでいる。フィラグリンはケラチン線維を凝集させて角層をつくり、分解産物は天然保湿因子になる。フィラグリン遺伝子の機能喪失変異は尋常性魚鱗癬の原因となり、アトピー性皮膚炎の発症リスクにも関わるよ。
医学生医学生
残るメラノソームはメラノサイトの小器官ですね。でも角化細胞の中にもメラニンがあると聞いたことがあります。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。メラノソームはメラノサイトがチロシナーゼでメラニンを合成・蓄積する場所で、成熟すると樹状突起を通じて周囲の角化細胞に受け渡される。角化細胞では核の上にキャップのように集まって、紫外線からDNAを守っているんだ。だから角化細胞内にも見られるけれど、Langerhans細胞の特徴的な構造ではない。
医学生医学生
整理すると、デスモソーム・トノフィラメント・ケラトヒアリン顆粒は角化細胞、メラノソームはメラノサイト、Birbeck顆粒がLangerhans細胞、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展知識も押さえておこう。Langerhans細胞はCD1a、ランゲリン、S-100蛋白、HLA-DRが陽性。皮膚に入ったハプテンなどの抗原を取り込んで所属リンパ節に移動し、T細胞に提示するので、アレルギー性接触皮膚炎、つまりIV型アレルギーの感作に重要だ。紫外線照射やGVHDで数が減ることも知られているよ。
医学生医学生
起源は骨髄由来と習ったのですが、それで合っていますか。
ドクタードクター
かつてはそう説明されていたけれど、現在では、定常状態の表皮Langerhans細胞の多くは胎生期の前駆細胞に由来して局所で自己複製し、炎症などで減ったときに骨髄由来の単球から補充されると考えられている。臨床で特に大事なのはLangerhans細胞組織球症で、CD1a・ランゲリン陽性でBirbeck顆粒をもつ細胞がクローン性に増殖し、頭蓋骨の打ち抜き像、皮疹、尿崩症などを起こす。BRAF V600E変異が高頻度にみられることも覚えておこう。
医学生医学生
小児科の実習で、頭蓋骨の打ち抜き像から診断がついた症例のカンファレンスを聞いたことがあります。ここにつながるんですね。
ドクタードクター
そう、基礎の微細構造の知識が、病理診断や臨床の鑑別にそのまま生きてくる。テニスラケットを見たらLangerhans細胞、と即答できるようにしておこう。

まとめ

表皮は角化細胞が大部分を占め、メラノサイト、Langerhans細胞、Merkel細胞が少数存在し、それぞれに特徴的な微細構造があります。Langerhans細胞は有棘層に分布する抗原提示細胞で、テニスラケット状のBirbeck顆粒を特徴とし、CD1a・ランゲリン・S-100蛋白が陽性で、デスモソームやトノフィラメントはもちません。デスモソーム(天疱瘡の標的)、トノフィラメント(ケラチン)、ケラトヒアリン顆粒(フィラグリン前駆体)は角化細胞の構造、メラノソームはメラノサイトの小器官です。Langerhans細胞はアレルギー性接触皮膚炎の感作に関わり、Birbeck顆粒やCD1a陽性はLangerhans細胞組織球症の診断根拠にもなります。細胞と構造の対応を整理しておくことは、皮膚疾患の病態理解や病理診断の土台になります。

解答・解説

正解はaです

表皮を構成する細胞と、それぞれに特徴的な微細構造(電子顕微鏡でみえる構造)の対応を問う一般問題である。 表皮は重層扁平上皮で、細胞の大部分(約9割)は角化細胞(ケラチノサイト)が占める。角化細胞は基底層→有棘層→顆粒層→角層へと分化しながら上方へ移動し、最終的に角層として剥がれ落ちる。このほか表皮には、メラニン色素を作る色素細胞(メラノサイト)、免疫を担う抗原提示細胞であるLangerhans細胞、触覚にかかわるMerkel細胞が少数存在する。 選択肢に挙げられた構造のうち、デスモソーム、トノフィラメント、ケラトヒアリン顆粒はいずれも角化細胞の分化・接着に関わる構造であり、メラノソームはメラノサイトの小器官である。Langerhans細胞は角化細胞の間に樹枝状の突起を伸ばして存在するが、角化細胞とはデスモソームで結合せず、ケラチン線維(トノフィラメント)ももたない。その代わりに、細胞質内にこの細胞に特有のBirbeck顆粒をもつ。したがって、Langerhans細胞にみられる構造はBirbeck顆粒である。

選択肢考察

  1. ○a.  Birbeck顆粒

    正しい。Birbeck顆粒はLangerhans細胞に特異的な細胞質内の小器官で、電子顕微鏡では棒状の構造の一端が袋状に膨らんだテニスラケット状の形態を示すため、ラケット小体とも呼ばれる。C型レクチン受容体であるランゲリン(CD207)により形成され、抗原の取り込みと処理に関与すると考えられている。Langerhans細胞の同定やLangerhans細胞組織球症の診断において、Birbeck顆粒の証明やCD1a・ランゲリン陽性が重要な根拠となる。

  2. ×b.  デスモソーム

    誤り。デスモソーム(接着斑)は隣り合う角化細胞どうしを強固に結合させる細胞間接着装置で、有棘層で特に発達している。光学顕微鏡で有棘細胞の間にみえる「棘(とげ)」はこのデスモソームの部分にあたる。構成蛋白であるデスモグレインに対する自己抗体が生じると、角化細胞どうしの接着が失われて天疱瘡(尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3、落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1)を生じる。Langerhans細胞やメラノサイトは周囲の角化細胞とデスモソームで結合していない。

  3. ×c.  メラノソーム

    誤り。メラノソームは基底層に存在するメラノサイトの細胞小器官で、チロシナーゼの働きによりチロシンからメラニン色素を合成・蓄積する場である。成熟したメラノソームはメラノサイトの樹状突起を通じて周囲の角化細胞へ受け渡され、角化細胞の核の上方に集まって紫外線から核のDNAを守る。このため角化細胞内にもメラノソームはみられるが、Langerhans細胞に特徴的な構造ではない。

  4. ×d.  トノフィラメント

    誤り。トノフィラメントは角化細胞の細胞質に豊富に存在するケラチンからなる中間径フィラメントの束で、デスモソームや基底層のヘミデスモソームに付着して細胞の形と機械的強度を保つ。基底層ではケラチン5/14、有棘層より上ではケラチン1/10が主に発現する。Langerhans細胞はケラチンをもたないため、トノフィラメントを欠く。

  5. ×e.  ケラトヒアリン顆粒

    誤り。ケラトヒアリン顆粒は顆粒層の角化細胞にみられる好塩基性の顆粒で、フィラグリンの前駆体であるプロフィラグリンやロリクリンなどを含む。フィラグリンはケラチン線維を凝集させて角層の形成に関わり、分解産物は天然保湿因子となる。フィラグリン遺伝子の機能喪失変異は尋常性魚鱗癬の原因となり、アトピー性皮膚炎の発症リスクにも関与する。Langerhans細胞とは関係しない。

Langerhans細胞の特徴

・表皮(主に有棘層)に分布する樹状細胞で、皮膚における代表的な抗原提示細胞。かつては骨髄由来とのみ説明されていたが、定常状態の表皮Langerhans細胞の多くは胎生期の前駆細胞に由来して局所で自己複製し、炎症などで減少した際には骨髄由来の単球から補充されることがわかっている。 ・表面マーカー:CD1a、ランゲリン(CD207)、HLA-DR(MHCクラスII)、S-100蛋白が陽性。古典的にはATPase染色陽性。IgEに対する高親和性受容体(FcεRI)も発現する。 ・皮膚に侵入した抗原(ハプテンなど)を取り込み、所属リンパ節へ移動してT細胞に抗原を提示する。アレルギー性接触皮膚炎(IV型、遅延型過敏反応)の感作に重要である。 ・紫外線照射で数が減少し機能が低下する(紫外線療法の免疫抑制作用の一因)。移植片対宿主病(GVHD)でも減少・消失する。 ・Langerhans細胞組織球症(LCH)は、Langerhans細胞に類似した細胞(CD1a・ランゲリン陽性、Birbeck顆粒をもつ)がクローン性に増殖する疾患で、骨病変(頭蓋骨の打ち抜き像)、皮疹、尿崩症などを呈する。BRAF V600E変異が高頻度にみられる。

表皮の細胞と特徴的構造の整理

・角化細胞:デスモソーム、トノフィラメント(ケラチン)、ケラトヒアリン顆粒(顆粒層)、層板顆粒(顆粒層、細胞間脂質を放出) ・メラノサイト:メラノソーム(基底層に存在、S-100蛋白陽性) ・Langerhans細胞:Birbeck顆粒(有棘層に存在、CD1a陽性) ・Merkel細胞:神経内分泌顆粒(基底層に存在、触覚受容に関与、サイトケラチン20陽性)

POINT

・Langerhans細胞=表皮の抗原提示細胞(樹状細胞)、Birbeck顆粒(テニスラケット状)をもつ ・CD1a、ランゲリン(CD207)、S-100蛋白、HLA-DR陽性 ・Langerhans細胞はデスモソーム・トノフィラメントをもたない ・デスモソーム・トノフィラメント=角化細胞(特に有棘細胞)、ケラトヒアリン顆粒=顆粒細胞、メラノソーム=メラノサイト(角化細胞へ受け渡される) ・接触皮膚炎の感作に関与、紫外線やGVHDで減少

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。