痛まない「とさか」の正体―尖圭コンジローマを患者にどう説明するか
第113回医師国家試験 D問題 第71問
国試問題にチャレンジ
21歳の女性。外陰部腫瘤を主訴に来院した。2か月前に外陰部の腫瘤に気付いた。腫瘤は表皮から隆起し少しずつ増大している。軽い瘙痒はあるが痛みはない。月経周期は28日型,整。子宮と卵巣に異常を認めない。外陰部の写真を別に示す。 患者への説明として正しいのはどれか。2つ選べ。

- a.「性交でうつります」
- b.「今後強い痛みがでてきます」
- c.「リンパ節を介して全身に広がります」
- d.「イミキモドというお薬を塗ってください」
- e.「ヒトパピローマウイルス〈HPV〉18型が原因です」
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生まとめ
若年者の外陰部に痛みのない乳頭状・鶏冠状の多発隆起を認めたら尖圭コンジローマを考えます。原因は低リスク型のHPV 6型・11型で、性的接触で感染する性感染症であるため、パートナーの受診も勧めます。良性病変でリンパ行性に全身へ広がることはなく、強い痛みも通常は伴わず、有痛性の病変なら性器ヘルペスを考えます。外陰部・肛門周囲の病変にはイミキモド5%クリーム外用が第一選択で、腟内・子宮腟部の病変や妊婦では外科的治療を選び、治療後の再発にも注意が必要です。HPVの型と疾患の対応やワクチンの価数まで整理しておくと、患者への説明や予防の指導に自信をもって臨めます。
解答・解説
正解はa, dです
所見の整理
・21歳の女性:性的活動が盛んな年代であり、性感染症(STI:sexually transmitted infection)をまず念頭に置く。 ・2か月前から気付いた外陰部の腫瘤で、表皮から盛り上がり、ゆっくり大きくなっている:急性炎症ではなく、緩徐に増殖する隆起性病変である。 ・軽いかゆみ(瘙痒)はあるが痛みはない:有痛性の潰瘍・水疱を作る性器ヘルペスとは異なる。 ・子宮・卵巣に異常なし:病変は外陰部に限られている。 ・外陰部写真:腟口周囲に、表面が乳頭状で先端がとがった、鶏のとさか状〜カリフラワー状の小隆起が多数集簇している。
診断へのプロセス
若年女性の外陰部に、痛みのない乳頭状の多発性隆起病変が数か月かけて増大してきたという経過と、典型的な肉眼像から、尖圭コンジローマと診断できる。鑑別としては、有痛性の浅い潰瘍や小水疱を作る性器ヘルペス、急性に有痛性の腫脹をきたすバルトリン腺炎・膿瘍、表面が扁平で湿潤した丘疹となる第2期梅毒の扁平コンジローマ、中心臍窩を持つ光沢のある丘疹を作る伝染性軟属腫、外陰癌などが挙がるが、年齢・症状・形態から尖圭コンジローマが最も考えやすい。尖圭コンジローマは視診で診断するのが基本であり、非典型例や治療抵抗例、悪性が否定できない例では生検を行う。
設問の考え方
患者への説明として正しいものを選ぶ問題である。尖圭コンジローマについて、①感染経路(性的接触)、②原因ウイルスの型(低リスク型HPV 6型・11型)、③症状と経過(痛みは乏しく、良性で全身に広がらない)、④治療(外陰部病変ではイミキモド外用が第一選択)を正確に押さえていれば解答できる。
選択肢考察
- ○a. 「性交でうつります」
尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)が性交などの性的接触によって皮膚・粘膜の微小な傷から侵入して生じる代表的な性感染症である。したがってこの説明は正しい。患者には、パートナーにも感染している可能性があり、受診・診察を勧めること、コンドームの使用は感染リスクを下げるが、覆われていない部位からも感染しうるため完全には防げないことなどもあわせて伝える。
- ×b. 「今後強い痛みがでてきます」
尖圭コンジローマは自覚症状に乏しく、あっても軽い瘙痒や違和感、摩擦による出血程度である。病気の進行に伴って強い痛みが出てくることは通常ない。強い痛みを伴う外陰部病変として代表的なのは性器ヘルペス(浅い潰瘍・小水疱)であり、これと混同した説明である。
- ×c. 「リンパ節を介して全身に広がります」
尖圭コンジローマは良性の上皮増殖性病変であり、HPVは感染した皮膚・粘膜の上皮内にとどまる。病変は接触により外陰部・腟・子宮頸部・肛門周囲などの近接部位に多発・拡大することはあるが、リンパ節を経由して全身へ広がることはない。この説明は誤りである。
- ○d. 「イミキモドというお薬を塗ってください」
イミキモド5%クリームは、局所でToll様受容体7(TLR7)を刺激し、インターフェロンαなどのサイトカイン産生を促して、ウイルス感染細胞に対する免疫反応を高める外用薬である。外陰部・肛門周囲の尖圭コンジローマに対する薬物療法の第一選択であり、通常は週3回、就寝前に塗布して翌朝洗い流す。効果が不十分な場合は液体窒素による凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、外科的切除などの外科的治療を行う。なお、腟内・子宮腟部(子宮頸部)の病変には使用できず、妊娠中の安全性も確立していないため、これらの場合は外科的治療が選択される。本症例は外陰部の病変で妊娠の記載もなく、イミキモド外用は適切な説明である。
- ×e. 「ヒトパピローマウイルス〈HPV〉18型が原因です」
尖圭コンジローマの原因の大部分は低リスク型HPVの6型と11型である。18型は16型とともに高リスク型HPVの代表であり、子宮頸癌(特に18型は腺癌)や前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の原因となる型である。したがってこの説明は誤りである。
尖圭コンジローマの概要
・原因:HPV 6型・11型(低リスク型)が約90%を占める。 ・感染経路:性的接触。潜伏期間は3週〜8か月程度(平均約3か月)とされ、感染時期の特定が難しいことが多い。 ・好発部位:女性では外陰部・腟口周囲・腟・子宮頸部・会陰・肛門周囲、男性では陰茎(冠状溝・包皮)・陰嚢・肛門周囲。 ・肉眼所見:先端のとがった乳頭状〜鶏冠状、集簇するとカリフラワー状の淡紅色〜褐色の疣贅。 ・症状:多くは無症状か軽い瘙痒程度。 ・病理:表皮の乳頭状増殖と、核の周囲が明るく抜けて見えるコイロサイト(koilocyte:HPV感染細胞の特徴)を認める。
治療
・外陰部・肛門周囲:イミキモド5%クリーム外用が第一選択。外科的治療(凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、切除)も選択肢であり、病変の大きさ・数に応じて使い分ける。 ・腟内・子宮腟部の病変、妊婦:イミキモドは用いず、外科的治療を行う。 ・肉眼的に消失しても潜伏感染が残るため、治療後3か月以内に約25%が再発するとされ、経過観察が必要である。
HPVの型と疾患
・低リスク型(6型、11型など):尖圭コンジローマ、再発性呼吸器乳頭腫症(分娩時の産道感染による乳幼児の喉頭乳頭腫など)。 ・高リスク型(16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型など):子宮頸癌、CIN、肛門癌、中咽頭癌、陰茎癌など。
予防
HPVワクチンのうち4価(6・11・16・18型)と9価(4価の型に31・33・45・52・58型を追加)は6型・11型を含むため、尖圭コンジローマの予防効果も期待できる。2価ワクチン(16・18型)は6型・11型を含まないため、尖圭コンジローマの予防効果は期待できない。
主な外陰部STIの鑑別
・性器ヘルペス:単純ヘルペスウイルス(主に2型)。有痛性の小水疱・浅い潰瘍、鼠径リンパ節腫脹。 ・梅毒:第1期は無痛性の硬結(初期硬結)・硬性下疳、第2期は扁平コンジローマ(湿潤した扁平な丘疹)。 ・軟性下疳:有痛性の潰瘍と有痛性の鼠径リンパ節腫脹(国内ではまれ)。 ・尖圭コンジローマ:無痛性の乳頭状・鶏冠状の疣贅。
POINT
・若年者の外陰部に、痛みのない乳頭状〜鶏冠状の多発隆起病変 → 尖圭コンジローマ。 ・原因は低リスク型HPV 6型・11型。16型・18型は子宮頸癌の高リスク型。 ・性感染症であり、パートナーの診察も必要。 ・良性病変でリンパ行性に全身へ広がることはない。痛みは乏しい(有痛性なら性器ヘルペスを考える)。 ・外陰部病変の第一選択はイミキモド5%クリーム外用。腟内・子宮腟部病変や妊婦では外科的治療。 ・治療後も再発が多い。4価・9価HPVワクチンで予防可能。
