誰が指定し、どこが設置し、何で賄うのか―精神保健の制度を「入院から地域へ」の流れで整理する
第113回医師国家試験 C問題 第8問
国試問題にチャレンジ
精神保健について正しいのはどれか。
- a.措置入院患者数は年々増加している。
- b.精神科デイケアは医療保険で賄われる。
- c.精神保健指定医は学会が認定する資格である。
- d.精神保健福祉センターは市町村ごとに設置される。
- e.精神障害者社会復帰施設は入院患者の社会復帰訓練を行う。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
精神科デイケアは、病院や診療所に日中通って集団活動やSSTなどを行う外来の精神科リハビリテーションで、診療報酬で評価される医療保険の給付対象であり、介護保険の通所リハビリテーションとは別の制度です。措置入院は指定医2名の診察に基づく都道府県知事の行政処分による入院で、患者数は大きく減少しており、非自発的入院の中心は医療保護入院です。精神保健指定医は厚生労働大臣が指定する資格で、精神保健福祉センターは都道府県と政令指定都市に設置されます。かつての精神障害者社会復帰施設は退院後や地域生活者を対象とし、現在は障害者総合支援法の障害福祉サービスへ移行しています。「入院医療中心から地域生活中心へ」という流れの中で、各制度の設置主体・根拠法・財源を整理しておくことは、患者の退院支援や地域生活を支える実践につながります。
解答・解説
正解はbです
本問は、精神保健医療福祉の制度(入院形態の動向、地域ケアの財源、資格、行政機関、社会復帰のための施設)について横断的に問うている。
押さえるべき流れ
わが国の精神科医療は「入院医療中心から地域生活中心へ」という方針のもとで再編されてきた。精神科病床数や入院患者数は緩やかに減少し、本人の意思によらない入院のうち、行政処分として行う措置入院は大幅に減少している。一方で、地域で暮らす精神障害者を支える外来医療や福祉サービスが拡充されてきた。
各制度の位置づけ
・精神科デイケア:外来での精神科リハビリテーションで、診療報酬(医療保険)の対象となる医療行為である。 ・精神保健指定医:精神保健福祉法に基づき厚生労働大臣が指定する資格である。 ・精神保健福祉センター:精神保健福祉法に基づき都道府県(および政令指定都市)が設置する専門機関である。 ・社会復帰のための施設:退院した人や地域で生活する人の自立を支援するもので、現在は障害者総合支援法の障害福祉サービスに移行している。 これらの「誰が指定・設置するか」「どの法律・財源に基づくか」を整理すれば、医療保険で賄われる精神科デイケアの記述が正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 措置入院患者数は年々増加している。
措置入院は、2人以上の精神保健指定医が診察し、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれ(自傷他害のおそれ)があると一致して判断した場合に、都道府県知事(政令指定都市の市長)の権限で行う入院である。措置入院で在院している患者数は、1990年前後には1万人を超えていたが、その後大きく減少し、近年は全国で1,500人前後で推移している。増加しているという記述は誤りである。現在、非自発的入院の大半は医療保護入院(指定医1名の診察と家族等の同意による入院)が占めている。
- ○b. 精神科デイケアは医療保険で賄われる。
精神科デイケアは、精神障害者が日中の一定時間(標準で1日6時間程度)病院や診療所の施設に通い、集団活動・作業・生活技能訓練(SST)などを通じて症状の安定、生活リズムの確立、対人関係能力の回復を図る外来の精神科リハビリテーションである。診療報酬に「精神科デイ・ケア」「精神科ショート・ケア」「精神科ナイト・ケア」「精神科デイ・ナイト・ケア」として点数が定められており、医療保険の給付対象となる。自己負担分は自立支援医療(精神通院医療)の対象となり、原則1割に軽減できる。なお、高齢者が通う介護保険の通所リハビリテーション(いわゆるデイケア)とは別の制度である。
- ×c. 精神保健指定医は学会が認定する資格である。
精神保健指定医は、精神保健福祉法に基づき、申請に応じて厚生労働大臣が指定する国の資格であり、学会の認定する専門医とは異なる。指定には、5年以上の診断・治療の経験(うち3年以上は精神障害の診断・治療)、所定の症例報告の審査、厚生労働大臣の定める研修の修了が必要で、指定後も5年ごとに研修を受けなければならない。措置入院・医療保護入院の要否判定、隔離や身体的拘束などの行動制限の判断など、人権の制限を伴う業務を行うため、公的な指定制度となっている。
- ×d. 精神保健福祉センターは市町村ごとに設置される。
精神保健福祉センターは、精神保健福祉法により都道府県が設置するものと定められており、政令指定都市にも設置される。市町村ごとではない。精神科医、精神保健福祉士、公認心理師(臨床心理技術者)、保健師などが配置され、複雑・困難な相談への対応、保健所や市町村への技術指導・援助、精神保健に関する教育研修・調査研究・普及啓発、精神医療審査会の事務、精神障害者保健福祉手帳の判定や自立支援医療(精神通院医療)の判定などを担う、地域精神保健の中核機関である。
- ×e. 精神障害者社会復帰施設は入院患者の社会復帰訓練を行う。
精神障害者社会復帰施設は、かつて精神保健福祉法に定められていた施設(生活訓練施設、授産施設、福祉ホーム、福祉工場など)で、症状がある程度安定し退院した人や地域で生活する人を対象に、病院と社会の中間的な場として生活・就労の訓練や住まいを提供していた。対象は入院中の患者ではない。入院患者のリハビリテーションは病院内の精神科作業療法などで行われる。なお、これらの施設は障害者自立支援法(2006年施行、現・障害者総合支援法)の施行により、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、共同生活援助(グループホーム)、地域活動支援センターなどの障害福祉サービスへ移行した。
精神保健福祉法による主な入院形態
・任意入院:本人の同意による入院。 ・医療保護入院:精神保健指定医1名が入院が必要と判断し、本人の同意が得られない場合に、家族等の同意により行う入院。非自発的入院の大部分を占める。 ・措置入院:指定医2名の診察が一致して自傷他害のおそれありと判断した場合に、都道府県知事(政令指定都市の市長)が行う入院。 ・緊急措置入院:急速を要する場合に指定医1名の診察で72時間を限度として行う入院。 ・応急入院:急速を要し家族等の同意が得られない場合に、指定医の診察により応急入院指定病院へ72時間を限度として行う入院。
地域精神保健の行政機関
・精神保健福祉センター(都道府県・政令指定都市):専門的・技術的な中核機関。 ・保健所:地域精神保健の第一線機関として、相談、訪問指導、措置入院関係の事務などを行う。 ・市町村:身近な相談、障害福祉サービスの提供など。
地域生活を支える医療・福祉
・医療:精神科デイケア・ショートケア・ナイトケア、精神科訪問看護、自立支援医療(精神通院医療)。 ・福祉:障害者総合支援法に基づく自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助(グループホーム)、地域活動支援センターなど。精神障害者保健福祉手帳による各種支援。 ・近年は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が進められている。
精神科病床の現状
精神科病床数・入院患者数は減少傾向にあるが、人口当たりの精神科病床数や平均在院日数は、国際的にみると依然として多い・長い水準にある。
POINT
・精神科デイケアは診療報酬で評価される医療(医療保険)であり、介護保険の通所リハビリテーションとは別物である。 ・措置入院患者数は大きく減少しており、非自発的入院の中心は医療保護入院である。 ・精神保健指定医は厚生労働大臣が指定する(5年ごとの研修が必要)。 ・精神保健福祉センターは都道府県と政令指定都市に設置される。 ・社会復帰施設は退院後・地域生活者が対象で、現在は障害者総合支援法の障害福祉サービスに移行している。
