同意なき入院でも権利は守られる―医療保護入院で患者に伝えるべきこと
第118回医師国家試験 C問題 第24問
国試問題にチャレンジ
医療保護入院する患者への説明で適切なのはどれか。
- a.「弁護士と面会することはできません」
- b.「入院中に任意入院に切り替えることはありません」
- c.「入院治療が必要な理由や入院目的について自分で考えましょう」
- d.「治療に納得いかない場合は精神医療審査会に申し立てができます」
- e.「退院の希望があった場合は72時間以内に退院することができます」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
医療保護入院は、精神保健指定医1名の診察で入院が必要と判断され、本人が病状のため同意できない場合に、家族等(いなければ市町村長)の同意で行う非自発的入院です。入院時には入院理由や退院請求・処遇改善請求ができることなどを書面で告知する義務があり、請求は都道府県知事に行われ、第三者機関である精神医療審査会が審査します。弁護士や人権擁護に関わる行政職員との面会・電話、信書の発受は制限できず、病状が改善して同意できるようになれば任意入院へ切り替えるのが原則です。「72時間の退院制限」は任意入院の規定であり、2024年4月施行の改正で医療保護入院にも更新制の入院期間が設けられた点も押さえておきましょう。非自発的入院における権利保障の仕組みを理解することは、精神科医療に限らず、患者の人権に配慮した医療を実践するための基盤となります。
解答・解説
正解はdです
医療保護入院とは
医療保護入院は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に定められた入院形態の一つである。精神保健指定医(以下、指定医)の診察の結果、精神障害者であり医療と保護のために入院が必要だが、病状のために本人が入院に同意できる状態にないと判断された場合に、家族等の同意(家族等がいない、または意思表示をしない場合は市町村長の同意)によって行われる。本人の意思によらない非自発的入院である。
問われていること
非自発的入院であっても、患者の人権は最大限守られなければならない。法律上、入院時には書面で「入院すること」「入院の理由」「退院請求・処遇改善請求ができること」「行動制限に関すること」などを患者本人に告知する義務がある。本問はその告知内容として正しいものを選ばせており、患者に保障される権利(通信・面会の自由、退院請求・処遇改善請求の権利、任意入院への移行など)を理解しているかを問うている。
解き方
各選択肢が「患者の権利を不当に制限していないか」「法の仕組みと合っているか」で判断する。精神医療審査会への退院請求・処遇改善請求は、医療保護入院の患者に保障された中心的な権利救済の手段であり、入院時に必ず説明すべき事項である。
選択肢考察
- ×a. 「弁護士と面会することはできません」
精神科病院では医療と保護に欠かせない範囲で行動制限が認められるが、患者の代理人である弁護士、および人権擁護に関わる行政機関の職員(法務局、都道府県・精神保健福祉センターの職員など)との面会や電話は制限できない。信書の発受も制限できない。入院形態を問わない原則であり、誤りである。
- ×b. 「入院中に任意入院に切り替えることはありません」
精神保健福祉法は、本人の同意に基づく任意入院をできる限り優先するよう求めている。治療により病状が改善し、本人が入院に同意できる状態になれば、医療保護入院から任意入院へ切り替えるのが原則である。切り替えがないとする説明は誤りである。
- ×c. 「入院治療が必要な理由や入院目的について自分で考えましょう」
医療保護入院では、入院の理由や入院が治療を目的とすることなどを、病院側が書面を用いて患者本人に告知しなければならない。そもそも病状のために入院の必要性を理解・同意できない患者が対象であり、理由を本人に考えさせる説明は告知義務を果たしておらず不適切である。
- ○d. 「治療に納得いかない場合は精神医療審査会に申し立てができます」
入院中の患者本人や家族等は、都道府県知事(指定都市では市長)に対して退院請求や処遇改善請求を行うことができ、請求を受けた知事は精神医療審査会に審査を求める。精神医療審査会は精神科医、法律家、有識者などからなる第三者機関で、入院継続の必要性や処遇の適否を審査し、その結果に基づき知事が退院や処遇改善を命じることができる。こうした権利救済の仕組みを伝えることは、入院時に説明すべき事項であり適切である。
- ×e. 「退院の希望があった場合は72時間以内に退院することができます」
医療保護入院は本人の同意によらない入院であり、本人が希望しても指定医が入院継続を必要と判断すれば退院はできない。「72時間」は、任意入院の患者が退院を求めたときに、指定医の診察で入院継続が必要と判断されれば72時間に限り退院を制限できる、という任意入院の規定である(特定医師の診察では12時間)。医療保護入院の説明としては誤りである。
精神保健福祉法による主な入院形態
・任意入院:本人の同意による入院。退院の申し出があれば退院させるのが原則だが、指定医の診察で入院継続が必要と認められれば72時間(特定医師なら12時間)に限り退院を制限できる。 ・医療保護入院:指定医1名の診察で医療と保護のため入院が必要と判断され、本人が同意できる状態にない場合に、家族等の同意で入院させる(家族等がいない、または意思表示をしない場合は市町村長の同意)。特定医師の診察による場合は12時間まで。 ・措置入院:自傷他害のおそれがある場合に、指定医2名以上の診察結果が一致したとき、都道府県知事(指定都市では市長)の権限で入院させる。 ・緊急措置入院:措置入院の手続きを踏む時間的余裕がない緊急時に、指定医1名の診察で72時間に限り入院させる。 ・応急入院:急速を要し家族等の同意が得られない場合に、指定医の診察で72時間に限り、応急入院指定病院に入院させる(特定医師の場合は12時間)。
医療保護入院の入院期間(2024年4月施行の改正)
2022年の精神保健福祉法改正(2024年4月施行)により、医療保護入院にも入院期間が定められた。入院から6か月までは3か月以内、それ以降は6か月以内の期間を定め、更新する場合は指定医の診察と家族等の同意などの手続きが必要となった。「期間の定めがあるのは緊急措置入院と応急入院だけ」というのは改正前の整理である。いずれにしても、本人の希望のみで72時間以内に退院できるわけではない。
入院患者の権利保障
・入院時の書面告知:入院形態、入院理由、退院請求・処遇改善請求ができること、行動制限に関すること等(2024年改正で医療保護入院では家族等にも入院理由を告知することとなった)。 ・制限できないもの:信書の発受、人権擁護に関する行政機関の職員・患者の代理人である弁護士との面会や電話。 ・退院請求・処遇改善請求:患者本人または家族等が都道府県知事に請求し、精神医療審査会が審査する。 ・2024年からは、市町村長同意による医療保護入院者などを対象に、訓練を受けた訪問支援員が話を聴く入院者訪問支援事業も始まった。
POINT
・医療保護入院は、指定医1名の診察と家族等(または市町村長)の同意による非自発的入院である。 ・入院時には入院理由や退院請求・処遇改善請求ができることを書面で告知する。 ・退院請求・処遇改善請求は都道府県知事に行い、精神医療審査会が審査する。 ・弁護士・人権擁護の行政機関職員との面会・電話、信書の発受は制限できない。 ・病状が改善し同意可能になれば任意入院へ切り替える。 ・「72時間の退院制限」は任意入院の規定(緊急措置入院・応急入院も72時間が上限)。
