StudyMed医師国家試験

胎嚢・心拍・CRL―妊娠初期エコーは「いつ何が見えるか」の時刻表で解く

第113回医師国家試験 C問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第113回 C問題 第13問

妊娠中の超音波検査所見について正しいのはどれか。

  1. a.妊娠3週で胎嚢を認める。
  2. b.妊娠4週で胎芽の心拍動を確認できる。
  3. c.妊娠9週の胎児心拍数は160~180/分である。
  4. d.妊娠10週に児頭大横径〈BPD〉で分娩予定日を修正する。
  5. e.妊娠15週で生理的臍帯ヘルニアを観察できる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠初期の超音波検査で「何週に何が見えるか」を時系列で整理する問題だ。選択肢はどれも週数と所見の組み合わせだから、正しい時刻表を頭に持っているかどうかが勝負になる。まず、妊娠週数の数え方から確認しよう。妊娠0週0日はいつかな。
医学生医学生
最終月経の初日です。なので、受精した日が0週というわけではないんですよね。
ドクタードクター
その通り。排卵・受精はおよそ妊娠2週、着床は妊娠3週ごろにあたる。つまり妊娠3週は着床が始まったばかりで、超音波で何かを捉えられる段階ではないんだ。
医学生医学生
ということは、妊娠3週で胎嚢が見えるというのは早すぎますね。
ドクタードクター
そうだね。経腟超音波で子宮内に胎嚢が見えてくるのは妊娠4週後半〜5週ごろ。続いて5週ごろに卵黄嚢、5〜6週で胎芽とその心拍動が確認できるようになる。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、外来の先生が「心拍が見えたら次は予定日を決めよう」と話していました。妊娠4週で心拍というのも早すぎるわけですか。
ドクタードクター
そう。4週はせいぜい小さな胎嚢が見え始める時期で、胎芽も心拍もまだ見えない。心拍は5〜6週ごろ、遅くとも7週ごろまでには大部分で確認できる。心拍の確認は、胎児が生きていて流産ではないことを示す大切な所見なんだ。
医学生医学生
次は心拍数です。胎児心拍の正常は110〜160/分と習ったので、160〜180/分は頻脈だと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこがこの問題で一番の落とし穴だね。110〜160/分は妊娠中期以降の正常基線なんだ。胎児心拍数は一定ではなく、見え始めた5〜6週には100〜120/分程度、そこから急速に上がって妊娠9週ごろに160〜180/分程度でピークを迎える。その後、副交感神経、つまり迷走神経による調節が成熟するにつれて徐々に下がり、中期以降に110〜160/分に落ち着く。
医学生医学生
なるほど、9週で160〜180/分は生理的なピークの値なんですね。これが正しい記述ですか。
ドクタードクター
正解。妊娠9週の胎児心拍数が160〜180/分、というのが正しい選択肢だ。次は分娩予定日の修正。妊娠10週の時点で使う計測値は何だろう。
医学生医学生
児頭大横径はCBTの問題でよく見たので、それで修正するのかと思っていました。
ドクタードクター
BPDは妊娠中期以降の発育評価や推定体重の計算に使う値なんだ。妊娠8〜11週ごろは頭殿長、つまりCRLが週数と最もよく相関し、個体差も小さい。だから予定日の確認・修正はCRLで行う。最終月経から出した予定日とCRLからの推定週数が大きくずれていれば、CRLに基づいて修正するんだよ。BPDを補助的に使うのは、CRLが大きくなりすぎる12週以降に初めて評価するような場合だね。
医学生医学生
最後に生理的臍帯ヘルニアですが、発生学の講義で、腸管が一度臍帯の中に出てから回転して戻ると習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。腸管の伸長に腹腔の容積が追いつかず、中腸が臍帯内へ一時的に脱出する。妊娠8週ごろから見られ、11〜12週ごろまでに回転しながら腹腔内へ還納される。だから妊娠15週でまだ脱出していれば、それは生理的ではない。
医学生医学生
その場合は臍帯ヘルニアや腹壁破裂といった病的なものを疑うんですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床での注意点をまとめよう。妊娠5〜6週になっても子宮内に胎嚢がなく、血中hCGが十分高い場合は異所性妊娠を疑う手がかりになる。妊娠初期の超音波は、子宮内妊娠の確認、心拍による生存の確認、胎児数と多胎なら膜性の確認、そしてCRLによる予定日の確定、という流れで進むんだ。
医学生医学生
11〜13週台は後頸部浮腫を計測できる時期だとも聞きました。
ドクタードクター
そうだね。NTの肥厚はDown症候群などの染色体異常や先天性心疾患のリスク上昇と関連する。ただし全妊婦に一律に行う検査でも、確定診断でもない。出生前検査は十分な情報提供と遺伝カウンセリングのもとで、妊婦さんと家族の意思を尊重して行うことが大切だよ。

まとめ

妊娠週数は最終月経初日を0週0日として数え、経腟超音波では妊娠4週後半〜5週に胎嚢、5週ごろに卵黄嚢、5〜6週に胎芽と心拍が確認できるようになります。胎児心拍数は出現時の100〜120/分程度から上昇し、妊娠9週ごろに160〜180/分程度でピークとなった後、副交感神経の成熟とともに漸減して、中期以降は110〜160/分に落ち着きます。妊娠初期の分娩予定日の確認・修正はBPDではなく、妊娠8〜11週ごろのCRLで行います。生理的臍帯ヘルニアは妊娠8週ごろから見られ11〜12週ごろまでに還納されるため、それ以降の脱出は臍帯ヘルニアや腹壁破裂を疑います。「いつ何が見えるか」の時刻表を押さえておくことは、異所性妊娠や流産の判断、正確な予定日の決定といった妊婦健診の基本に直結します。

解答・解説

正解はcです

妊娠初期の経腟超音波検査で「いつ」「何が」見えるかを時系列で問う問題である。妊娠週数は最終月経の初日を妊娠0週0日として数えるため、排卵・受精はおよそ妊娠2週、着床は妊娠3週ごろにあたる。したがって妊娠3週はまだ着床が始まったばかりで、超音波で構造物を捉えられる時期ではない。 経腟超音波でみえる構造物は、おおむね次の順で出現する。 ・妊娠4週後半〜5週:子宮内に胎嚢(gestational sac:GS) ・妊娠5〜6週:胎嚢内に卵黄嚢、続いて胎芽と心拍動 ・妊娠8〜11週ごろ:頭殿長(crown-rump length:CRL)が週数とよく相関し、分娩予定日の確認・修正に用いる ・妊娠8週ごろ〜:中腸が臍帯内へ脱出する生理的臍帯ヘルニアがみられ、妊娠11〜12週ごろまでに腹腔内へ還納される 胎児心拍数は一定ではなく、心拍が見え始めた時期の100〜120/分程度から急速に増加し、妊娠9週ごろに160〜180/分程度で最大となる。その後は副交感神経系の成熟に伴って徐々に低下し、妊娠中期以降は110〜160/分(正常基線)に落ち着く。この経過を知っていれば、妊娠9週で160〜180/分という記述が生理的範囲であると判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  妊娠3週で胎嚢を認める。

    誤り。妊娠3週は着床が起こる時期で、胎嚢はまだ超音波で描出できる大きさではない。経腟超音波で胎嚢が確認できるのは妊娠4週後半〜5週ごろからである。なお、妊娠5〜6週になっても子宮内に胎嚢を認めず、血中hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が十分高い場合は、異所性妊娠を疑う手がかりになる。

  2. ×b.  妊娠4週で胎芽の心拍動を確認できる。

    誤り。妊娠4週ではせいぜい小さな胎嚢がみえ始める段階で、胎芽そのものも心拍動もまだ確認できない。胎芽の心拍動が経腟超音波で確認できるのは妊娠5〜6週ごろであり、遅くとも妊娠7週ごろまでには大部分で確認できる。心拍の確認は、胎児が生存していること(流産でないこと)の確認として重要な所見である。

  3. ○c.  妊娠9週の胎児心拍数は160~180/分である。

    正しい。胎児心拍数は心拍が出現する妊娠5〜6週には100〜120/分程度だが、心臓の発達とともに上昇し、妊娠9週ごろに160〜180/分程度でピークを迎える。その後は自律神経系、とくに副交感神経(迷走神経)による調節が成熟するにつれて漸減し、妊娠中期以降は正常基線とされる110〜160/分の範囲に収まる。したがって妊娠9週で160〜180/分は正常範囲の所見である。

  4. ×d.  妊娠10週に児頭大横径〈BPD〉で分娩予定日を修正する。

    誤り。妊娠初期(妊娠8〜11週ごろ)の分娩予定日の確認・修正には、頭殿長(CRL:頭頂から殿部までの長さ)を用いる。この時期のCRLは個体差が小さく、週数との相関が最も高いためである。児頭大横径(biparietal diameter:BPD)は妊娠中期以降に胎児発育の評価や推定体重の算出に用いる計測値であり、妊娠10週の予定日修正の指標ではない。CRLが大きくなりすぎる時期(目安として妊娠12週以降)に初めて評価する場合には、BPDを補助的に用いることがある。

  5. ×e.  妊娠15週で生理的臍帯ヘルニアを観察できる。

    誤り。胎生期には腸管の急速な伸長に腹腔の容積が追いつかず、中腸が臍帯内に一時的に脱出する。これが生理的臍帯ヘルニアで、妊娠8週ごろからみられ、妊娠11〜12週ごろまでに腸管は回転しながら腹腔内へ還納される。したがって妊娠15週で臍帯内に腸管が脱出していれば生理的ではなく、病的な臍帯ヘルニア(臍帯内に腹腔内臓器が膜に覆われて脱出する腹壁異常)や腹壁破裂を疑う。

妊娠初期の超音波所見の目安(経腟超音波)

・妊娠4週後半〜5週:胎嚢 ・妊娠5週ごろ:卵黄嚢 ・妊娠5〜6週:胎芽、胎児心拍 ・妊娠8〜11週ごろ:頭殿長(CRL)による分娩予定日の確認・修正 ・妊娠8週ごろ〜11、12週ごろ:生理的臍帯ヘルニア ・妊娠11〜13週台:後頸部浮腫(nuchal translucency:NT)の計測が可能な時期

妊娠初期超音波検査の目的

妊娠5〜10週ごろは、まず子宮内妊娠であること(異所性妊娠の否定)、胎児の生存(心拍の確認)、胎児数と膜性(多胎の場合の絨毛膜・羊膜の数)を確認し、続いてCRLで分娩予定日を確定する。最終月経から算出した予定日とCRLから推定した週数に大きなずれがあれば、CRLに基づいて予定日を修正する。

NT計測と出生前検査

妊娠11週〜13週台(CRLがおよそ45〜84mmの時期)には、胎児の後頸部の皮下に見える低エコー域(NT)の厚さを計測できる。NTの肥厚はDown症候群(21トリソミー)などの染色体異常や先天性心疾患のリスク上昇と関連する。ただしNT計測は全妊婦に一律に行う検査ではなく、確定診断でもない。出生前検査は妊婦・家族の意思を尊重し、十分な情報提供と遺伝カウンセリングのもとで行うことが求められる。

胎児心拍数の推移

心拍出現時(妊娠5〜6週)100〜120/分程度 → 妊娠9週ごろ160〜180/分程度で最大 → 以後漸減 → 妊娠中期以降110〜160/分(正常基線)。

POINT

・胎嚢は妊娠4週後半〜5週、胎児心拍は妊娠5〜6週で確認できる。 ・胎児心拍数は妊娠9週ごろに160〜180/分でピークとなり、その後漸減する。 ・妊娠初期の分娩予定日の修正はBPDではなくCRL(妊娠8〜11週ごろ)で行う。 ・生理的臍帯ヘルニアは妊娠11〜12週ごろまでに還納される。それ以降の脱出は病的と考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。