StudyMed医師国家試験

UHCの旗振り役はどこ?―略語を「正式名称」と「役割」に戻して国際機関を見分ける

第113回医師国家試験 C問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第113回 C問題 第1問

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉について中心的に取り組む国際機関はどれか。

  1. a.ILO
  2. b.WHO
  3. c.JICA
  4. d.OECD
  5. e.UNAIDS

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国際保健の問題だ。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、略してUHCという考え方を理解しているかどうかと、選択肢に並ぶ略語がそれぞれどんな組織なのかを整理できているかがポイントになる。まず、UHCとはどういう状態を指すか説明できるかな。
医学生医学生
「すべての人が医療を受けられる」ことですよね。日本の国民皆保険みたいなイメージです。
ドクタードクター
半分正解。大事なのは、必要な保健医療サービスを「経済的な困窮に陥ることなく」利用できることまで含む点なんだ。予防や治療だけでなく、健康増進、リハビリテーション、緩和ケアも対象に入る。病院にかかれても、その支払いで家計が破綻してしまうならUHCは達成されたとはいえない。
医学生医学生
受診できるかどうかだけでなく、お金の面での守りもセットなんですね。
ドクタードクター
そう。UHCは、誰がカバーされるか、どのサービスが含まれるか、自己負担をどれだけ抑えられるか、という3つの軸で評価される。そして2015年の国連総会で採択されたSDGsでは、目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.8としてUHCの達成が掲げられているよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義でSDGsは17の目標があると習いました。保健は目標3にまとまっているんですね。
ドクタードクター
その通り。では本題。UHCは保健医療そのものの概念だから、それに中心的に取り組むのはどこだと思う?
医学生医学生
保健の専門機関というと、やはりWHO、世界保健機関でしょうか。
ドクタードクター
正解。WHOは「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする国連の保健専門機関で、本部はジュネーブ。UHCを保健政策の最重要目標の一つに位置づけて、各国のサービスのカバー率や、医療費による家計の困窮の指標をモニタリングし、世界銀行などと連携して政策支援をしている。
医学生医学生
でも国際労働機関のILOも社会保障を扱っていた気がして、少し迷いました。
ドクタードクター
いい引っかかりだね。ILOは労働条件の改善や労働基準の設定、雇用や社会保障の促進を担う国連の専門機関だ。社会保障の観点から医療保障に触れることはあるけれど、本来の担当はあくまで労働分野。UHCを中心的に推進する立場ではないんだ。
医学生医学生
JICAは途上国で保健医療の支援をしているとニュースで見ました。
ドクタードクター
確かにJICA、国際協力機構は途上国の保健医療体制の強化を通じてUHC達成を支援している。ただ、JICAは日本の政府開発援助を実施する日本の独立行政法人で、二国間協力を担う組織。そもそも国際機関ではない、というのが決定的なポイントだ。
医学生医学生
OECDは各国の医療費比較のデータでよく名前を見かけます。
ドクタードクター
OECD、経済協力開発機構は主に先進国が加盟し、経済成長や開発援助、貿易について協議・政策提言を行う機関だ。保健統計も公表しているけれど、本来は経済分野の組織で、国連機関でもない。UNAIDS、国連合同エイズ計画は、WHOやUNICEFなど複数の国連機関が共同で運営するHIV/エイズ対策に特化した計画。特定の感染症対策が役割だから、保健サービス全体を対象とするUHCの中心ではない。
医学生医学生
略語を正式名称に戻して、その組織が「何の専門か」「国際機関かどうか」を考えれば絞れるわけですね。
ドクタードクター
まさにそれが解き方の鍵だ。最後に発展知識。日本は1961年に国民皆保険を達成した、UHCを早くに実現した国として知られていて、その経験を背景に国際保健の場でUHCの推進を積極的に提唱してきた。毎年12月12日は国連が定めた「UHCデー」でもあるよ。
医学生医学生
当たり前だと思っていた皆保険が、世界的には目標になっているんですね。臨床実習で高額療養費制度の説明を受けている患者さんを見たのを思い出しました。
ドクタードクター
いい気づきだね。高額な医療費で家計が破綻しないようにする仕組みは、まさにUHCの「経済的保護」の側面そのものだ。ほかにUNICEFは子どもの健康・福祉、UNFPAは人口・リプロダクティブヘルスというように、機関と役割をセットで整理しておくと国際保健の問題に強くなるよ。

まとめ

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人が必要な保健医療サービスを、経済的な困窮に陥ることなく利用できる状態を指し、SDGs目標3のターゲット3.8に位置づけられています。保健分野を専門とする国連機関である世界保健機関(WHO)が、各国の達成状況のモニタリングや政策支援を通じてUHCを中心的に推進しています。ILOは労働・社会保障、OECDは経済分野、UNAIDSはHIV/エイズ対策に特化した機関であり、JICAは日本の独立行政法人で国際機関ではありません。日本は1961年に国民皆保険を達成した国としてUHCを国際的に提唱しており、高額療養費制度などの身近な仕組みもUHCの理念とつながっています。略語を正式名称と役割に戻して整理する習慣は、国際保健分野の理解に役立ちます。

解答・解説

正解はbです

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC: Universal Health Coverage〉とは、「すべての人が、必要とする健康増進・予防・治療・リハビリテーション・緩和ケアなどの保健医療サービスを、経済的な困窮に陥ることなく、支払い可能な費用で利用できる状態」を指す考え方である。 2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標〈SDGs: Sustainable Development Goals〉では、目標3「すべての人に健康と福祉を」の中のターゲット3.8としてUHCの達成が掲げられている。 UHCは保健医療そのものに関わる概念であるため、国連システムの中で保健分野を専門に担当する世界保健機関〈WHO〉が中心となって推進している。労働、経済、特定疾患対策、二国間援助などを担う機関もそれぞれの立場でUHCに関与し得るが、「中心的に取り組む国際機関」として問われればWHOを選ぶことになる。 各選択肢については、略語の正式名称と、その機関が何を目的とした組織なのか(そもそも国際機関なのか)を思い出すことが解答の鍵となる。

選択肢考察

  1. ×a.  ILO

    ILO(International Labour Organization)は国際労働機関であり、国連の専門機関の一つである。労働条件の改善、労働基準の設定、雇用・社会保障の促進などを任務とする。社会保障の観点から医療保障に触れることはあるものの、労働分野が本来の担当であり、UHCを中心的に推進する機関ではない。

  2. ○b.  WHO

    WHO(World Health Organization)は世界保健機関であり、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする国連の保健専門機関である(本部はジュネーブ)。UHCを保健政策の最重要目標の一つに位置づけ、各国のUHC達成状況のモニタリング(サービスのカバー率や、医療費による家計の経済的困窮の指標など)や政策支援を世界銀行などと連携して行っている。UHCに中心的に取り組む国際機関として最も適切である。

  3. ×c.  JICA

    JICA(Japan International Cooperation Agency)は国際協力機構であり、日本の政府開発援助〈ODA〉を一元的に実施する日本の独立行政法人である。開発途上国の保健医療体制強化を通じてUHC達成を支援する事業も行っているが、基本的には日本と相手国の二国間協力を担う組織であり、そもそも国際機関ではない。

  4. ×d.  OECD

    OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)は経済協力開発機構であり、主に先進国が加盟し、加盟国の経済成長、開発途上国への援助、自由な多角的貿易の拡大などについて協議・政策提言を行う国際機関である。加盟国の医療費や保健統計の比較(Health Statistics など)も公表しているが、本来は経済分野の機関であり、UHCを中心的に推進する機関ではない。

  5. ×e.  UNAIDS

    UNAIDS(Joint United Nations Programme on HIV/AIDS)は国連合同エイズ計画であり、WHOやUNICEFなど複数の国連機関が共同で運営する、HIV/エイズ対策に特化した国連の計画である。特定の感染症対策を担うもので、保健医療サービス全体の普遍的な提供を目指すUHCを中心的に担う機関ではない。

UHCの3つの側面

UHCは、①カバーされる人の範囲(誰が対象か)、②提供されるサービスの範囲(どのサービスが含まれるか)、③費用負担の程度(自己負担をどれだけ抑えられるか)という3つの軸で評価される。医療を受けられても、その支払いで家計が破綻するようでは達成とはいえない点が特徴である。

SDGsとUHC

SDGsは2015年の国連総会で採択された2030年までの国際目標で、17の目標と169のターゲットからなる。前身の国連ミレニアム開発目標〈MDGs〉は開発途上国を主な対象としていたが、SDGsは先進国も含むすべての国が対象である。保健分野は目標3にまとめられ、そのターゲット3.8がUHCの達成である。

日本とUHC

日本は1961年に国民皆保険を達成しており、UHCを早期に実現した国として知られる。この経験を背景に、国際保健外交の場でUHCの推進を積極的に提唱してきた。毎年12月12日は国連が定めた「UHCデー」である。

主な国際機関・組織の整理

WHO:世界保健機関(保健全般) ILO:国際労働機関(労働・社会保障) UNICEF:国連児童基金(子どもの健康・福祉) UNAIDS:国連合同エイズ計画(HIV/エイズ) UNFPA:国連人口基金(人口・リプロダクティブヘルス) OECD:経済協力開発機構(経済、国連機関ではない) JICA:国際協力機構(日本の独立行政法人、国際機関ではない)

POINT

・UHC:すべての人が必要な保健医療サービスを、経済的困窮に陥ることなく受けられる状態。 ・SDGs目標3のターゲット3.8に位置づけられる。 ・中心的に取り組む国際機関はWHOである。 ・JICAは日本の独立行政法人で国際機関ではない。各機関の略称と役割を対応させて覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。