UHCの旗振り役はどこ?―略語を「正式名称」と「役割」に戻して国際機関を見分ける
第113回医師国家試験 C問題 第1問
国試問題にチャレンジ
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC〉について中心的に取り組む国際機関はどれか。
- a.ILO
- b.WHO
- c.JICA
- d.OECD
- e.UNAIDS
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人が必要な保健医療サービスを、経済的な困窮に陥ることなく利用できる状態を指し、SDGs目標3のターゲット3.8に位置づけられています。保健分野を専門とする国連機関である世界保健機関(WHO)が、各国の達成状況のモニタリングや政策支援を通じてUHCを中心的に推進しています。ILOは労働・社会保障、OECDは経済分野、UNAIDSはHIV/エイズ対策に特化した機関であり、JICAは日本の独立行政法人で国際機関ではありません。日本は1961年に国民皆保険を達成した国としてUHCを国際的に提唱しており、高額療養費制度などの身近な仕組みもUHCの理念とつながっています。略語を正式名称と役割に戻して整理する習慣は、国際保健分野の理解に役立ちます。
解答・解説
正解はbです
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ〈UHC: Universal Health Coverage〉とは、「すべての人が、必要とする健康増進・予防・治療・リハビリテーション・緩和ケアなどの保健医療サービスを、経済的な困窮に陥ることなく、支払い可能な費用で利用できる状態」を指す考え方である。 2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標〈SDGs: Sustainable Development Goals〉では、目標3「すべての人に健康と福祉を」の中のターゲット3.8としてUHCの達成が掲げられている。 UHCは保健医療そのものに関わる概念であるため、国連システムの中で保健分野を専門に担当する世界保健機関〈WHO〉が中心となって推進している。労働、経済、特定疾患対策、二国間援助などを担う機関もそれぞれの立場でUHCに関与し得るが、「中心的に取り組む国際機関」として問われればWHOを選ぶことになる。 各選択肢については、略語の正式名称と、その機関が何を目的とした組織なのか(そもそも国際機関なのか)を思い出すことが解答の鍵となる。
選択肢考察
- ×a. ILO
ILO(International Labour Organization)は国際労働機関であり、国連の専門機関の一つである。労働条件の改善、労働基準の設定、雇用・社会保障の促進などを任務とする。社会保障の観点から医療保障に触れることはあるものの、労働分野が本来の担当であり、UHCを中心的に推進する機関ではない。
- ○b. WHO
WHO(World Health Organization)は世界保健機関であり、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする国連の保健専門機関である(本部はジュネーブ)。UHCを保健政策の最重要目標の一つに位置づけ、各国のUHC達成状況のモニタリング(サービスのカバー率や、医療費による家計の経済的困窮の指標など)や政策支援を世界銀行などと連携して行っている。UHCに中心的に取り組む国際機関として最も適切である。
- ×c. JICA
JICA(Japan International Cooperation Agency)は国際協力機構であり、日本の政府開発援助〈ODA〉を一元的に実施する日本の独立行政法人である。開発途上国の保健医療体制強化を通じてUHC達成を支援する事業も行っているが、基本的には日本と相手国の二国間協力を担う組織であり、そもそも国際機関ではない。
- ×d. OECD
OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)は経済協力開発機構であり、主に先進国が加盟し、加盟国の経済成長、開発途上国への援助、自由な多角的貿易の拡大などについて協議・政策提言を行う国際機関である。加盟国の医療費や保健統計の比較(Health Statistics など)も公表しているが、本来は経済分野の機関であり、UHCを中心的に推進する機関ではない。
- ×e. UNAIDS
UNAIDS(Joint United Nations Programme on HIV/AIDS)は国連合同エイズ計画であり、WHOやUNICEFなど複数の国連機関が共同で運営する、HIV/エイズ対策に特化した国連の計画である。特定の感染症対策を担うもので、保健医療サービス全体の普遍的な提供を目指すUHCを中心的に担う機関ではない。
UHCの3つの側面
UHCは、①カバーされる人の範囲(誰が対象か)、②提供されるサービスの範囲(どのサービスが含まれるか)、③費用負担の程度(自己負担をどれだけ抑えられるか)という3つの軸で評価される。医療を受けられても、その支払いで家計が破綻するようでは達成とはいえない点が特徴である。
SDGsとUHC
SDGsは2015年の国連総会で採択された2030年までの国際目標で、17の目標と169のターゲットからなる。前身の国連ミレニアム開発目標〈MDGs〉は開発途上国を主な対象としていたが、SDGsは先進国も含むすべての国が対象である。保健分野は目標3にまとめられ、そのターゲット3.8がUHCの達成である。
日本とUHC
日本は1961年に国民皆保険を達成しており、UHCを早期に実現した国として知られる。この経験を背景に、国際保健外交の場でUHCの推進を積極的に提唱してきた。毎年12月12日は国連が定めた「UHCデー」である。
主な国際機関・組織の整理
WHO:世界保健機関(保健全般) ILO:国際労働機関(労働・社会保障) UNICEF:国連児童基金(子どもの健康・福祉) UNAIDS:国連合同エイズ計画(HIV/エイズ) UNFPA:国連人口基金(人口・リプロダクティブヘルス) OECD:経済協力開発機構(経済、国連機関ではない) JICA:国際協力機構(日本の独立行政法人、国際機関ではない)
POINT
・UHC:すべての人が必要な保健医療サービスを、経済的困窮に陥ることなく受けられる状態。 ・SDGs目標3のターゲット3.8に位置づけられる。 ・中心的に取り組む国際機関はWHOである。 ・JICAは日本の独立行政法人で国際機関ではない。各機関の略称と役割を対応させて覚える。
