StudyMed医師国家試験

「TG÷5」に込められた近似―Friedewaldの式でLDLコレステロールを読み解く

第113回医師国家試験 A問題 第75問

国試問題にチャレンジ

第113回 A問題 第75問

前夜から12時間絶食して早朝空腹時に採血した検査で,総コレステロール250mg/dL,トリグリセリド120mg/dL,HDLコレステロール80mg/dLであった。Friedewaldの式を用いてLDLコレステロール値の推測値を求めよ。  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数第1位を四捨五入すること。 解答: ①②③ mg/dL

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、脂質検査の値からLDLコレステロールを計算で推定する問題だ。式を覚えているかどうかだけでなく、「なぜその式が成り立つのか」「どんなときに使えるのか」まで押さえておくと、計算問題が一気に怖くなくなるよ。まず、血液中のコレステロールはどんな形で運ばれているか覚えているかな。
医学生医学生
脂質は水に溶けないので、リポ蛋白に包まれて運ばれるんですよね。生化学の講義で、比重の軽い順にカイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLと習いました。
ドクタードクター
その通り。カイロミクロンは小腸で食事由来の脂質から作られるから、食後に増えて、空腹時にはほぼ消えている。IDLは量が少ないので計算上はVLDLやLDLに含めて扱う。すると空腹時の総コレステロールは、LDL、HDL、VLDLの3つに含まれるコレステロールの和と近似できるんだ。
医学生医学生
じゃあLDLは、総コレステロールからHDLとVLDLのぶんを引けば出せますね。でもVLDLのコレステロールって、普段の検査で測っていましたっけ。
ドクタードクター
いい疑問だ。VLDLのコレステロールは日常検査では直接測らない。そこで使うのが、空腹時のVLDLはトリグリセリドとコレステロールの比がおよそ5対1という性質だ。VLDLは肝臓で作られるトリグリセリドに富んだリポ蛋白だから、トリグリセリドを5で割ればVLDLのコレステロールを見積もれる。
医学生医学生
それで「総コレステロール−HDL−トリグリセリド÷5」になるわけですね。CBTの前は丸暗記していましたが、中身が分かるとすっきりします。
ドクタードクター
では実際に計算してみよう。順番に言ってみて。
医学生医学生
まずトリグリセリド120を5で割って、VLDLのコレステロールは24です。総コレステロール250からHDLの80を引いて170、そこから24を引いて146になります。
ドクタードクター
正解、146 mg/dLだ。割り切れるので四捨五入の処理も要らない。ここで計算に入る前に確認してほしいことがあるんだけど、何だと思う?
医学生医学生
問題文にわざわざ「12時間絶食」「早朝空腹時」と書いてあるのが気になりました。採血条件のことでしょうか。
ドクタードクター
まさにそこ。Friedewaldの式が使えるのは、空腹時採血で、かつトリグリセリドが400 mg/dL未満のときだ。今回はどちらも満たしているから、安心して式を当てはめられる。
医学生医学生
食後だとどうしてダメなんですか。
ドクタードクター
食後はカイロミクロン由来のトリグリセリドが上乗せされるよね。すると「トリグリセリド÷5」がVLDLのコレステロールを過大に見積もってしまい、引き算の結果であるLDLは実際より低く出てしまう。トリグリセリドが400以上の場合も、リポ蛋白の組成が5対1からずれて誤差が大きくなるんだ。
医学生医学生
内科の実習で、外来の採血が食後だったときに「LDL直接法」の値を見ていたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そう。条件を満たさないときはLDL直接法で測るか、non-HDLコレステロール、つまり総コレステロールからHDLを引いた値で評価する。non-HDLはLDLに加えてVLDLやレムナントなど動脈硬化を起こしやすいリポ蛋白のコレステロールをまとめて反映していて、管理目標はLDLの目標値に30を足した値とされているよ。
医学生医学生
今回だとnon-HDLは250−80で170ですね。LDLの146は、診断基準ではどうなりますか。
ドクタードクター
日本動脈硬化学会の基準では、空腹時採血でLDLコレステロール140 mg/dL以上が高LDLコレステロール血症、120〜139が境界域だから、この例は高LDLコレステロール血症に該当する。non-HDLも170以上が高non-HDLコレステロール血症の基準なので、ちょうど該当するね。なお、空腹時とは10時間以上の絶食を指し、水やお茶のようなカロリーのない水分は摂ってよいとされている。
医学生医学生
HDLが80と高めでも、LDLが高ければ安心はできない、ということですね。
ドクタードクター
その通り。HDLが高いと総コレステロールも高く出やすいから、総コレステロールだけで判断せず、LDLやnon-HDLに分解して考えることが大切なんだ。計算の意味と採血条件までセットで理解しておけば、検査値を見たときに「この数字は信用していいか」まで判断できるようになるよ。

まとめ

Friedewaldの式は「LDL-C=総コレステロール−HDL-C−TG÷5」で表され、空腹時VLDLのトリグリセリドとコレステロールの比がおよそ5対1であることを利用してVLDL-Cを推定しています。本問では250−80−120÷5=146 mg/dLとなり、日本動脈硬化学会の基準で高LDLコレステロール血症(140 mg/dL以上)に該当します。この式は空腹時採血かつTG 400 mg/dL未満でのみ有効で、食後採血ではカイロミクロンの影響でLDL-Cが低く算出されるため、条件を満たさない場合はLDL直接法やnon-HDL-C(総コレステロール−HDL-C)で評価します。式の成り立ちと適用条件を理解しておくことは、計算問題への対応だけでなく、日常診療で検査値の信頼性を判断する力にもつながります。

解答・解説

正解は146 mg/dLです

考え方

血液中のコレステロールは単独では存在せず、リポ蛋白(脂質とアポ蛋白の複合体)の一部として運ばれる。空腹時の血清では、カイロミクロンはほぼ消失しており、コレステロールは主にVLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)に分かれて存在する(IDLは量が少なく、計算上はVLDLとLDLに含めて扱う)。したがって、 総コレステロール(TC)=LDL-C+HDL-C+VLDL-C と近似できる。 このうちVLDL-Cは日常検査で直接測定されないが、空腹時のVLDLでは「トリグリセリド(TG):コレステロール」がおよそ5:1であるため、VLDL-C≒TG÷5 と推定できる。これを代入して変形したものがFriedewaldの式(F式)である。 LDL-C=TC-HDL-C-TG÷5(単位はいずれもmg/dL)

計算

TC=250 mg/dL、TG=120 mg/dL、HDL-C=80 mg/dL を代入する。 ①VLDL-Cの推定値:120÷5=24 mg/dL ②LDL-C=250-80-24=146 mg/dL 小数点以下は生じないため、四捨五入の処理は不要で、答えは146 mg/dLとなる。

前提条件の確認

F式は「空腹時採血」かつ「TG<400 mg/dL」で使用できる。本問は12時間絶食後の早朝空腹時採血で、TGは120 mg/dLと400 mg/dL未満であり、F式を適用してよい条件を満たしている。

リポ蛋白の基礎

脂質は水に溶けないため、表面をリン脂質・遊離コレステロール・アポ蛋白で覆い、内部にTGやコレステロールエステルを抱えたリポ蛋白として血中を移動する。比重の低い(脂質が多い)順に、カイロミクロン、VLDL、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL、HDLに分類される。 ・カイロミクロン:小腸で食事由来の脂質から作られ、TGが主成分。食後に増加する。 ・VLDL:肝臓で作られ、TGが主成分。リポ蛋白リパーゼでTGが分解されるとIDLを経てLDLになる。 ・LDL:コレステロールを末梢組織へ運ぶ。動脈壁に沈着して粥状硬化を進めるため「悪玉」と呼ばれる。 ・HDL:末梢組織の余分なコレステロールを肝臓へ戻す(コレステロール逆転送)ため「善玉」と呼ばれる。

F式が使えない場面と代替法

・食後採血:カイロミクロン由来のTGが加わり、TG÷5がVLDL-Cを過大に見積もるため、LDL-Cが実際より低く算出される(負の誤差)。 ・TG≧400 mg/dL:同様にVLDLやレムナントの組成がずれ、誤差が大きくなる。 ・このような場合は、LDL-C直接法で測定するか、non-HDL-C(=TC-HDL-C)で評価する。non-HDL-Cは、LDLに加えVLDL・IDL・レムナントなど動脈硬化を起こしやすいリポ蛋白全体のコレステロールを反映し、管理目標値は「LDL-Cの目標値+30 mg/dL」とされる。本問の数値ではnon-HDL-C=250-80=170 mg/dLとなる。

脂質異常症の診断基準(空腹時採血、日本動脈硬化学会)

・高LDL-C血症:LDL-C 140 mg/dL以上(120〜139 mg/dLは境界域) ・低HDL-C血症:HDL-C 40 mg/dL未満 ・高TG血症:空腹時TG 150 mg/dL以上(2022年版から随時採血では175 mg/dL以上の基準も設けられた) ・高non-HDL-C血症:non-HDL-C 170 mg/dL以上(150〜169 mg/dLは境界域) 本問の例はLDL-C 146 mg/dLで高LDL-C血症に該当する。なお、空腹時とは10時間以上の絶食(水やお茶などカロリーのない水分は可)を指す。

POINT

・Friedewaldの式:LDL-C=TC-HDL-C-TG÷5 ・根拠は「空腹時VLDLのコレステロール≒TG÷5」という近似 ・本問:250-80-120÷5=146 mg/dL ・適用条件は空腹時採血かつTG<400 mg/dL。満たさなければLDL-C直接法またはnon-HDL-C(TC-HDL-C)で評価する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。