「自分で書く」のはどれ?―実施形式で整理する心理検査
第112回医師国家試験 F問題 第8問
国試問題にチャレンジ
自記式の心理学的検査はどれか。
- a.Rorschachテスト
- b.津守・稲毛式発達検査
- c.状態特性不安検査〈STAI〉
- d.Mini-Mental State Examination〈MMSE〉
- e.簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉]
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
心理学的検査は、被検者本人が質問紙に記入する自記式、あいまいな刺激への反応を解釈する投影法、作業の経過をみる作業検査法、医師などが面接・観察で採点する検査者評価式、養育者から聴取する方法などに分類できます。STAIは状態不安と特性不安を各20項目で自己評定する自記式の不安尺度で、MMPI、Y-G性格検査、BDI、SDSなども自記式に含まれます。一方、Rorschachテストは投影法、MMSEは検査者が実施する認知機能検査、BPRSは医師が評価する精神症状尺度、津守・稲毛式は養育者から聴き取る発達検査です。抑うつのように同じ対象でも自記式(BDI、SDS)と医師評価式(HAM-D、MADRS)が併存するため、「誰が答え、誰が評価するか」で整理しておくことが、試験対策だけでなく検査結果を適切に解釈する臨床力にもつながります。
解答・解説
正解はcです
心理学的検査・評価尺度を、実施方法の違い(誰が、どのように回答・評価するか)で分類できるかを問う問題である。
実施形式による分類
・自記式(自己記入式)質問紙法: 被検者が自分で質問紙を読み、選択肢に記入して答える。短時間で集団にも実施でき、採点も客観的に行える。一方で、被検者が意図的に回答を歪めることもあり、自分の状態をどれだけ自覚しているかにも結果が左右される。 ・投影法: あいまいな刺激(図版・未完成の文章など)に対する反応を検査者が記録・解釈する。無意識の側面を含めた人格の把握をめざす。 ・作業検査法: 一定の作業(計算など)をさせ、その経過や結果から性格傾向を評価する。 ・検査者評価式(観察者評価・面接評価): 医師や心理士などが面接・質問・観察をもとに評価・採点する。認知機能検査や精神症状評価尺度の多くがこれにあたる。 ・養育者などからの聴取: 乳幼児の発達検査のように、本人が答えられない場合に、よく知る人に尋ねて評価する。 設問の5つのうち、被検者本人が質問紙に自分で回答するのは状態特性不安検査(STAI)だけである。
選択肢考察
- ×a. Rorschachテスト
誤り。スイスの精神科医Rorschachが考案した代表的な投影法である。インクの染みでできた左右対称の図版10枚を見せ、何に見えるか、図版のどこにどう見えたかを被検者に口頭で答えさせる。検査者はその反応を記録・分類し、人格傾向や思考・感情の特徴を解釈する。被検者が自分で記入する検査ではない。
- ×b. 津守・稲毛式発達検査
誤り。0〜7歳ごろの乳幼児を対象とする発達検査(乳幼児精神発達診断法)である。運動、探索・操作、社会、生活習慣、言語などの領域について、母親などの養育者に子どもの日常の様子を尋ね、発達の程度を評価する。子ども本人が回答する形式ではない。
- ○c. 状態特性不安検査〈STAI〉
正しい。STAI(State-Trait Anxiety Inventory)はSpielbergerが作成した自記式の不安尺度である。不安を、現在の場面・状況によって変動する一時的な「状態不安」と、不安を感じやすい比較的安定した性格傾向である「特性不安」に分ける。それぞれ20項目、計40項目の質問に被検者が4段階で自己評定して回答する。
- ×d. Mini-Mental State Examination〈MMSE〉
誤り。国際的に広く用いられる認知機能のスクリーニング検査で、検査者が対面で実施する。見当識(時間・場所)、記銘、注意と計算、遅延再生、物品呼称、復唱、口頭指示(3段階命令)、書字指示、文章作成、図形模写の11項目からなり、30点満点である。23点以下で認知症が疑われる。被検者は検査者の質問に答えたり課題を行ったりし、検査者が採点するので、自記式ではない。
- ×e. 簡易精神症状評価尺度[Brief Psychiatric Rating Scale〈BPRS〉]
誤り。精神症状の全般的な重症度を評価する観察者評価尺度で、主に統合失調症などの精神病症状の評価や治療効果の判定に用いられる。心気的訴え、不安、感情的引きこもり、概念の統合障害、罪責感、緊張、誇大性、抑うつ気分、敵意、猜疑心、幻覚、情動の平板化などの18項目を、医師が面接と観察にもとづいて7段階で評価する。被検者が記入する検査ではない。
主な心理検査・評価尺度の実施形式
・自記式質問紙法: STAI(不安)、MMPI(ミネソタ多面人格目録、人格)、矢田部・ギルフォード性格検査(Y-G性格検査)、東大式エゴグラム(TEG)、ベック抑うつ質問票(BDI)、SDS(Zung自己評価式抑うつ尺度)、GHQ(精神健康調査票)、CMI(健康調査票)、AQ(自閉症スペクトラム指数)など。 ・投影法: Rorschachテスト、TAT(主題統覚検査)、SCT(文章完成法)、P-Fスタディ(絵画欲求不満テスト)、バウムテスト、HTPテストなど。 ・作業検査法: 内田・クレペリン精神作業検査。 ・検査者が実施する知能・認知機能検査: WAIS(成人用ウェクスラー知能検査)、WISC(児童用)、田中・ビネー知能検査、MMSE、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R、30点満点で20点以下が認知症疑い)など。 ・観察者(医師)評価尺度: BPRS、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)、MADRS、YMRS(ヤング躁病評価尺度)など。 ・発達検査: 遠城寺式乳幼児分析的発達検査、津守・稲毛式、新版K式発達検査、デンバー式発達スクリーニング検査など。養育者からの聴取や検査者による観察で評価する。
補足
抑うつの評価では、同じ疾患を対象にしていても、自記式(BDI、SDS)と医師評価式(HAM-D、MADRS)の両方があるので区別して覚える。
POINT
・自記式(自己記入式)=被検者本人が質問紙に記入して答える検査。 ・STAIは状態不安と特性不安を各20項目で評価する自記式不安尺度である。 ・Rorschachテストは投影法、MMSEは検査者が実施する認知機能検査、BPRSは医師が評価する精神症状尺度、津守・稲毛式は養育者から聴取する発達検査である。 ・MMPI、Y-G性格検査、BDI、SDSも自記式として押さえておく。
