1つの胎嚢に2人の赤ちゃん―隔壁が語る一絨毛膜二羊膜双胎の説明ポイント
第112回医師国家試験 F問題 第68問
国試問題にチャレンジ
24歳の女性。無月経を主訴に来院した。最終月経から2か月以上次の月経が来ないため,妊娠したと考え受診した。月経周期は28~56日,不整。子宮は前傾前屈,超鵞卵大,軟。尿妊娠反応陽性。双胎妊娠と診断した。経腟超音波像を別に示す。 女性への説明として正しいのはどれか。2つ選べ。

- a.「2人の胎盤は別々になります」
- b.「2人の性別は異なることが多いです」
- c.「2人の羊水の量に差が出る可能性があります」
- d.「2人の間は羊膜という膜で隔てられています」
- e.「2人の臍帯が互いに絡み合う危険性があります」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
医学生
ドクターまとめ
双胎妊娠では絨毛膜と羊膜の数(膜性)が合併症と管理方針を決めるため、妊娠初期の経腟超音波で、胎嚢の数と2児間の隔壁の有無から膜性を診断します。胎嚢が1つで薄い隔壁があれば一絨毛膜二羊膜双胎であり、胎盤は1つを共有し、一卵性のため2児の性別は同じです。共有胎盤の血管吻合により双胎間輸血症候群が起こりうるため、受血児の羊水過多と供血児の羊水過少という羊水量の差に注意が必要で、一方、臍帯相互巻絡は隔壁のない一絨毛膜一羊膜双胎に特有の合併症です。妊娠中期以降はλサイン(二絨毛膜)とT sign(一絨毛膜二羊膜)で鑑別しますが、初期に膜性を確定しておくことが重要です。膜性から起こりうるリスクを予測し、妊婦にわかりやすく説明できることは、周産期管理の基本となります。
解答・解説
正解はc, dです
所見の整理
24歳の女性で、最終月経から2か月以上月経がなく受診した。月経周期は28~56日と不整であるため、最終月経から数えた妊娠週数は実際の妊娠経過とずれる可能性がある。子宮は超鵞卵大で軟らかく、尿妊娠反応が陽性であり、妊娠初期と考えられる。双胎妊娠と診断されている。
膜性診断の考え方
双胎妊娠では、胎盤の数を反映する「絨毛膜の数」と、胎児を包む袋である「羊膜の数」の組み合わせ(膜性)によって、起こりうる合併症と管理方針が大きく変わる。膜性診断は妊娠初期(おおむね妊娠14週ごろまで)の経腟超音波で行うのが最も正確であり、手順は次のとおりである。 1. 胎嚢(gestational sac)がいくつあるかをみる。胎嚢が2つで、それぞれに胎児がいれば二絨毛膜二羊膜(DD)双胎である。 2. 胎嚢が1つなら一絨毛膜(MC)双胎であり、次に2児の間に薄い隔壁(羊膜)があるかをみる。隔壁があれば一絨毛膜二羊膜(MD)双胎、なければ一絨毛膜一羊膜(MM)双胎である。 本例の超音波像では、1つの胎嚢の中に2つの胎児がみられ、その間を薄い膜が仕切って胎嚢がメガネのように2つに分けられている。したがって一絨毛膜二羊膜双胎と診断できる。
設問の考え方
一絨毛膜二羊膜双胎の特徴(胎盤は1つで共有、一卵性、2児の間に羊膜あり、胎盤血管吻合による双胎間輸血症候群などのリスク)を、妊婦への説明として正しく表現している選択肢を選ぶ。ほかの膜性(DD、MM)の特徴を述べた選択肢との区別がポイントである。
選択肢考察
- ×a. 「2人の胎盤は別々になります」
誤り。胎盤は絨毛膜から形成されるため、絨毛膜の数と胎盤の数は一致する。一絨毛膜双胎では2児が1つの胎盤を共有する。胎盤が2つあるのは二絨毛膜二羊膜双胎であり(ただし付着部位が近いと2つの胎盤が癒合して1つに見えることもある)、本例には当てはまらない。
- ×b. 「2人の性別は異なることが多いです」
誤り。一絨毛膜双胎は1つの受精卵が分割して生じる一卵性双胎であり、遺伝情報は原則として同一であるため、2児の性別は同じである。性別が異なりうるのは二卵性双胎(膜性は必ず二絨毛膜二羊膜)の場合である。
- ○c. 「2人の羊水の量に差が出る可能性があります」
正しい。一絨毛膜双胎では共有する胎盤の表面で2児の血管がつながっている(胎盤血管吻合)。吻合を介した血流が一方向に偏ると、血液を送り出す側の児(供血児)は循環血液量が減って尿量が減り羊水過少に、受け取る側の児(受血児)は循環血液量が増えて尿量が増え羊水過多になる。これが双胎間輸血症候群(TTTS)であり、2児の羊水量の差として現れる。一絨毛膜二羊膜双胎の約1割前後に発症するとされ、妊婦に説明しておくべき重要なリスクである。
- ○d. 「2人の間は羊膜という膜で隔てられています」
正しい。二羊膜双胎では、2児がそれぞれ別の羊膜に包まれているため、2児の間には羊膜による隔壁が存在する。本例の超音波像でも、1つの胎嚢の中で2児の間に薄い膜が確認でき、これが一絨毛膜二羊膜双胎の診断根拠となる。
- ×e. 「2人の臍帯が互いに絡み合う危険性があります」
誤り。臍帯相互の巻絡は、2児が隔壁のない同じ羊膜腔の中にいる一絨毛膜一羊膜双胎に特有の合併症であり、胎児死亡の原因となる。一絨毛膜二羊膜双胎では2児の間に羊膜があるため、臍帯同士が絡み合うことは通常起こらない。
双胎の膜性と卵性
・二卵性双胎:2つの受精卵に由来し、膜性は必ず二絨毛膜二羊膜(DD)である。性別は同じことも異なることもある。 ・一卵性双胎:1つの受精卵が分割して生じる。分割の時期で膜性が決まる。 受精後およそ3日以内(桑実胚まで)に分割 → 二絨毛膜二羊膜(DD) およそ4~8日(胚盤胞期、内細胞塊の分割)→ 一絨毛膜二羊膜(MD)。一卵性双胎で最も多い型である。 およそ8~13日(羊膜形成後)→ 一絨毛膜一羊膜(MM) さらに遅い時期 → 結合双胎 したがって、DDであっても一卵性の場合があり、膜性だけから卵性を確定できるのは一絨毛膜双胎(=一卵性)の場合である。
超音波による膜性診断のポイント
・妊娠初期(特に妊娠10週前後まで)は胎嚢の数で判断しやすい。 ・妊娠中期以降は、隔壁と胎盤の付着部が作る形で判断する。DDでは隔壁の付け根に絨毛組織が入り込んでλ(ラムダ)サイン(twin peak sign)を示し、隔壁は厚い。MDでは隔壁が薄く、付け根がT字状(T sign)となる。 ・時期が進むと判定が難しくなるため、初期のうちに膜性を確定しておくことが重要である。
膜性別のおもな合併症
・一絨毛膜双胎に共通:双胎間輸血症候群(TTTS)、選択的胎児発育不全、双胎貧血多血症(TAPS)、一児死亡時の他児の脳障害・死亡、無心体双胎(TRAP sequence)など、胎盤血管吻合に起因するもの。 ・一絨毛膜一羊膜双胎に特有:臍帯相互巻絡、結合双胎。 ・双胎全般:早産、妊娠高血圧症候群、貧血、胎位異常など。 一絨毛膜双胎はDD双胎よりリスクが高いため、より頻回の超音波検査(羊水量、胎児発育の確認)で管理される。重症TTTSに対しては胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術が行われる。
双胎間輸血症候群(TTTS)
・供血児:循環血液量減少 → 乏尿 → 羊水過少、膀胱が小さい、発育不全、貧血 ・受血児:循環血液量増加 → 多尿 → 羊水過多、膀胱が大きい、心不全・胎児水腫、多血 ・羊水過多と羊水過少が同時にみられること(twin oligo-polyhydramnios sequence)が診断の鍵である。
POINT
・双胎の膜性診断は妊娠初期の経腟超音波で行う:胎嚢2つ=DD、胎嚢1つで隔壁あり=MD、隔壁なし=MM。 ・絨毛膜の数=胎盤の数。一絨毛膜双胎は胎盤を共有し、一卵性(性別は同じ)。 ・一絨毛膜双胎では胎盤血管吻合により双胎間輸血症候群が起こり、羊水量の差(受血児の羊水過多、供血児の羊水過少)として現れる。 ・臍帯相互巻絡は一絨毛膜一羊膜双胎に特有の合併症である。 ・妊娠中期以降の鑑別:λサイン=DD、T sign=MD。
