StudyMed医師国家試験

「あ・き・み」で迷わない―心電図モニターの赤い電極はどこに貼る?

第112回医師国家試験 F問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第28問

赤黄緑の3点誘導式心電図モニターの赤色の電極を装着する部位はどれか。

  1. a.左鎖骨下
  2. b.右鎖骨下
  3. c.心窩部
  4. d.左下胸部
  5. e.右下胸部

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、病棟や手術室で毎日のように使うベッドサイドの心電図モニターの電極の位置を問う問題だ。単なる暗記に見えるけれど、12誘導心電図の四肢電極の色と結びつけると理屈で覚えられる。四肢誘導の電極の色は覚えているかな。
医学生医学生
OSCEの練習で12誘導をとったとき、右手が赤、左手が黄、左足が緑、右足が黒と習いました。
ドクタードクター
完璧だ。3点誘導式モニターは、その四肢の位置を胸壁に投影したものだと考えればいい。右手にあたるのが右鎖骨下、左手にあたるのが左鎖骨下、左足にあたるのが左下胸部だ。
医学生医学生
ということは、赤は右手の色なので右鎖骨下ですね。
ドクタードクター
正解。赤は右鎖骨下、黄は左鎖骨下、緑は左下胸部が標準的な配置だ。右上から時計回りに赤・黄・緑と並ぶので、頭文字をとって「あ・き・み」と覚える語呂もあるよ。
医学生医学生
でも、どうしてこの配置なんでしょう。3つあれば適当な場所でもいい気がしてしまいます。
ドクタードクター
いい疑問だね。標準的な設定では、赤を陰極、緑を陽極として両者の電位差を記録する。右上から左下へ向かう軸だから、12誘導の第Ⅱ誘導に近い波形になるんだ。残る黄色はアース、つまりノイズを減らすための不関電極として働く。
医学生医学生
第Ⅱ誘導はP波がよく見える誘導でしたよね。循環器の講義でそう聞きました。
ドクタードクター
その通り。心房から心室への興奮の伝わる方向は右上から左下で、第Ⅱ誘導の向きとほぼ一致する。だからP波もQRS波も上向きにはっきり描かれ、不整脈の監視に向いているんだ。ほかの選択肢も確認しておこう。左鎖骨下は左手の位置だから黄色、左下胸部は左足の位置だから緑だね。
医学生医学生
右下胸部は右足の位置なので黒ですか。でも3点誘導には黒がないですよね。
ドクタードクター
鋭いね。3点誘導では右下胸部には電極を貼らない。黒色のアース電極を右下胸部に貼るのは5点誘導式のモニターの場合だ。5点誘導ではさらに白の電極を胸部誘導用に胸壁に貼り、複数の誘導を切り替えて観察できる。
医学生医学生
心窩部はどうでしょう。臨床実習の内視鏡室で、胸の真ん中あたりに電極を貼っているのを見た気がします。
ドクタードクター
それはNASA誘導かもしれないね。胸骨上端と剣状突起付近、つまり心窩部の間の電位差をみる特殊な配置で、心窩部側に緑を置く。体動による筋電図ノイズが入りにくくP波が見やすいので、ホルター心電図などで使われることがある。ただし、通常の3点誘導で赤を貼る部位ではない。
医学生医学生
なるほど、目的によって誘導を使い分けるんですね。
ドクタードクター
そう。たとえば術中モニターでは、左室側壁の虚血によるST変化をとらえやすいCM5誘導が使われることもある。ここで臨床上の注意点を一つ。日本や欧州のIEC規格と、米国のAHA規格では色の対応が違うんだ。AHA規格では右手が白、左手が黒、左足が赤で、赤が左下にくる。
医学生医学生
海外の教科書や輸入機器を使うときに、色だけを頼りにすると間違えそうですね。
ドクタードクター
その通り。迷ったら電極に書かれたRAやLLといった表示を確認するといい。それから、電極は骨の上や筋肉の厚い部位を避け、皮脂や汗を拭いてから貼るとノイズが減る。除細動パッドを貼る位置や心エコーのプローブを当てる位置と重ならないようにすることも大切だ。
医学生医学生
研修医になったら最初に任される仕事の一つになりそうなので、色の理由と一緒に覚えておきます。
ドクタードクター
それがいちばん大事だね。理屈がわかっていれば、波形がおかしいときに電極の付け間違いにも気づけるようになるよ。

まとめ

日本で用いられる3点誘導式心電図モニターでは、赤を右鎖骨下、黄を左鎖骨下、緑を左下胸部に貼るのが標準で、これは四肢誘導の右手=赤、左手=黄、左足=緑を胸壁に投影したものです。標準的な設定では赤(陰極)と緑(陽極)で第Ⅱ誘導に近い波形を得て、黄はアースとして働き、P波とQRS波が明瞭なため不整脈の監視に適しています。右下胸部の黒(アース)と胸部誘導用の白は5点誘導で加わり、心窩部を用いるNASA誘導などは特殊な配置です。米国のAHA規格では色の対応が異なる点にも注意が必要で、配置の理由まで理解しておくことが、正確な装着と波形異常への気づきにつながります。

解答・解説

正解はbです

病棟・手術室・内視鏡室などで日常的に使われるベッドサイドの心電図モニターの電極の付け方を問う問題である。 3点誘導式(3電極式)の心電図モニターでは、赤・黄・緑の3色の電極を胸壁に貼る。日本で用いられている色分け(IEC:国際電気標準会議の規格に準拠)では、次の位置が標準である。 ・赤:右鎖骨下(右上胸部) ・黄:左鎖骨下(左上胸部) ・緑:左下胸部(左肋骨弓付近) これは四肢誘導の電極の色(右手=赤、左手=黄、左足=緑)を胸壁上に移したものと考えると理解しやすい。右手の位置にあたる右鎖骨下が赤、左手にあたる左鎖骨下が黄、左足にあたる左下胸部が緑である。標準的な設定では、赤(右上)を陰極、緑(左下)を陽極として両者の電位差を記録するので、得られる波形は標準12誘導心電図の第Ⅱ誘導に近いものになる。残る黄色の電極は不関電極(アース、ノイズ除去用)として働く。第Ⅱ誘導は心房から心室への興奮の伝わる方向(右上から左下)にほぼ一致するため、P波とQRS波がともに上向きにはっきり描かれ、不整脈の監視に適している。 したがって、赤色の電極を装着する部位は右鎖骨下である。

選択肢考察

  1. ×a.  左鎖骨下

    左鎖骨下は四肢誘導の「左手」に相当する位置で、ここには黄色の電極を貼る。第Ⅱ誘導類似の波形をモニターする標準的な設定では、黄色はアース(不関電極)として働く。

  2. ○b.  右鎖骨下

    右鎖骨下は四肢誘導の「右手」に相当する位置であり、右手の電極と同じ赤色の電極を貼る。標準的な設定では陰極となり、左下胸部の緑(陽極)との間で第Ⅱ誘導に近い波形が得られる。

  3. ×c.  心窩部

    通常の3点誘導(第Ⅱ誘導類似)の配置では心窩部には電極を貼らない。心窩部を用いるのはNASA誘導(胸骨上端と剣状突起付近〈心窩部〉の間の電位差をみる誘導)などの特殊な配置で、その場合には心窩部側に緑(陽極)を置く。NASA誘導は体動による筋電図ノイズが入りにくく、P波が見やすい(胸部誘導V2に似た波形になる)ため、ホルター心電図などにも用いられるが、赤を貼る部位ではない。

  4. ×d.  左下胸部

    左下胸部は四肢誘導の「左足」に相当する位置で、緑色の電極を貼る。標準的な設定では陽極となり、右鎖骨下の赤(陰極)との電位差から第Ⅱ誘導類似の波形を得る。

  5. ×e.  右下胸部

    3点誘導では右下胸部には電極を貼らない。右下胸部は四肢誘導の「右足」に相当する位置で、5点誘導式モニターの場合にここへ黒色の電極(アース)を貼る。

電極の色と四肢誘導の対応

12誘導心電図の四肢電極は、右手=赤、左手=黄、左足=緑、右足=黒(アース)である。胸壁に貼るモニター電極も同じ色の対応で配置するため、「右上=赤、左上=黄、左下=緑、右下=黒」と体幹上に四肢を投影して覚えるとよい。右鎖骨下から時計回りに赤(あ)→黄(き)→緑(み)と並ぶので「あきみ」と覚える語呂もある。

5点誘導式モニター

赤(右鎖骨下)、黄(左鎖骨下)、緑(左下胸部)、黒(右下胸部、アース)に加えて、白(胸部誘導用、通常はV1〜V5相当の胸壁上の位置)を貼る。四肢誘導に相当する複数の誘導と1つの胸部誘導を切り替えて観察できる。

誘導の選択

・第Ⅱ誘導類似(右鎖骨下−左下胸部):P波・QRS波が明瞭で、不整脈監視の基本。 ・NASA誘導(胸骨上端−剣状突起付近):体動や呼吸による筋電図ノイズが入りにくく、P波の観察に適する。 ・CM5誘導(胸骨柄−V5相当):左室側壁の虚血によるST変化の検出に適し、術中モニターで用いられる。

注意:色の規格の違い

日本や欧州で用いるIEC規格と、米国で用いるAHA(米国心臓協会)規格とでは電極の色が異なる。AHA規格では右手=白、左手=黒、左足=赤、右足=緑であり、赤が左下にくる。輸入機器や海外の資料を見る際には注意が必要である。

装着時の実際

電極は骨の上や筋肉の厚い部位を避けると筋電図ノイズが減る。皮膚の皮脂・汗を拭き取ってから貼り、除細動のパッドを貼る位置や心エコーのプローブを当てる位置とは重ならないようにする。

POINT

・3点誘導式モニター:赤=右鎖骨下、黄=左鎖骨下、緑=左下胸部(四肢誘導の右手・左手・左足に対応) ・標準設定では赤(−)と緑(+)で第Ⅱ誘導類似の波形を得て、黄はアースとなる ・5点誘導では右下胸部に黒(アース)、胸壁に白(胸部誘導)を加える ・語呂:右上から時計回りに「あ(赤)・き(黄)・み(緑)」

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。