地域医療構想が描くのは「医療」の未来図―保健所の配置が対象外になる理由
第112回医師国家試験 F問題 第27問
国試問題にチャレンジ
都道府県による地域医療構想において検討すべき内容に含まれないのはどれか。
- a.医療提供体制
- b.保健所の配置
- c.医療従事者の確保・養成
- d.医療需要の将来推計
- e.病床の機能分化推進
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
地域医療構想は2014年の医療介護総合確保推進法による医療法改正で制度化され、都道府県の医療計画の一部として策定されます。内容は、構想区域ごとの医療需要の将来推計、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能別の必要病床数、病床の機能分化と連携、在宅医療の充実、医療従事者の確保・養成などで、病床機能報告制度、地域医療構想調整会議、地域医療介護総合確保基金がこれを支えます。一方、保健所の設置は地域保健法に基づくもので、地域医療構想の検討事項には含まれません。制度問題では「どの法律に基づき、何を対象とする計画か」を軸に整理することが、正確な判断と将来の地域医療への理解につながります。
解答・解説
正解はbです
地域医療構想の目的と、そこで検討される事項を問う問題である。「含まれないもの」を選ぶ形式である。
地域医療構想とは
地域医療構想は、2014年に成立した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(医療介護総合確保推進法)による医療法改正で制度化され、都道府県が策定する医療計画の一部として位置づけられている。団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向けて、医療需要の変化に見合った効率的で質の高い医療提供体制をつくることを目的とし、全都道府県で2016年度中に策定された。
検討される主な内容
1. 将来の医療需要の推計:構想区域(原則として二次医療圏)ごとに、人口推計などを基に入院・在宅医療等の需要を推計する。 2. 目指すべき医療提供体制:病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つの医療機能に分け、それぞれの将来の必要病床数(必要量)を示す。医療機関から毎年報告される病床機能報告と比較し、過不足を把握する。 3. 実現のための施策:病床の機能分化と連携の推進、在宅医療等の充実、医療従事者の確保・養成など。関係者が協議する場として構想区域ごとに地域医療構想調整会議が設けられ、財源として地域医療介護総合確保基金が活用される。 つまり地域医療構想は「医療」の需要と供給体制を扱う計画であり、公衆衛生行政の拠点である保健所をどこに置くかという問題は対象外である。保健所の設置は地域保健法に基づいて定められている。
選択肢考察
- ×a. 医療提供体制
含まれる。地域医療構想の中心的な内容は、将来の医療需要に見合った「目指すべき医療提供体制」を構想区域ごとに描くことである。病床の4機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとの必要量や、在宅医療等の提供体制がここで示される。
- ○b. 保健所の配置
含まれないため、これが正解である。保健所は地域保健法に基づき、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置するもので、その設置や所管区域の設定は地域保健法と同法に基づく基本指針の枠組みで扱われる。地域医療構想は医療需要の推計と病床機能の分化・連携など医療提供体制を対象とする計画であり、保健所の配置は検討事項に含まれない。
- ×c. 医療従事者の確保・養成
含まれる。目指すべき医療提供体制を実現するための施策として、病床の機能分化・連携に必要な施設・設備の整備と並び、医師・看護師など医療従事者の確保・養成が挙げられている。これらの施策は地域医療介護総合確保基金の対象事業にもなっている。
- ×d. 医療需要の将来推計
含まれる。地域医療構想は、構想区域ごとに2025年の医療需要(入院患者数、在宅医療等の患者数など)を、性・年齢階級別の人口推計と受療率などを用いて推計することから始まる。この推計が4機能別の必要病床数の算出根拠となる。
- ×e. 病床の機能分化推進
含まれる。地域医療構想の主眼は、病床の機能分化と連携を進めることである。医療機関は病棟ごとに担っている機能を病床機能報告制度で都道府県に報告し、将来の必要量との差を地域医療構想調整会議で協議して、たとえば過剰な急性期病床を回復期病床へ転換するといった調整を図る。
医療計画と地域医療構想
・医療計画:医療法に基づき都道府県が策定する計画。基準病床数、5疾病(がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患)・6事業(救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、新興感染症等の感染拡大時の医療)および在宅医療の体制、医師確保計画、外来医療計画などを定める。地域医療構想はこの医療計画の一部である。 ・地域医療構想:構想区域ごとの将来の医療需要と4機能別の必要病床数、その実現のための施策を定める。
病床の4機能
・高度急性期:急性期の患者に、状態の早期安定化に向けて診療密度の特に高い医療を提供する。 ・急性期:急性期の患者に、状態の早期安定化に向けて医療を提供する。 ・回復期:急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する。 ・慢性期:長期にわたり療養が必要な患者を入院させる。
関連する仕組み
・病床機能報告制度:一般病床・療養病床を有する医療機関が病棟単位で現状と今後の方向性の機能を毎年報告する。 ・地域医療構想調整会議:構想区域ごとに医療関係者、保険者などが協議する場。 ・地域医療介護総合確保基金:医療介護総合確保推進法により都道府県に設置された基金で、病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進、医療・介護従事者の確保などに充てられる。
補足
2025年以降を見据え、2040年頃に向けて入院医療だけでなく外来・在宅医療や介護との連携、医療人材の確保なども含めた新たな地域医療構想への見直しが国で進められている。
POINT
・地域医療構想は医療介護総合確保推進法(2014年)による医療法改正で制度化され、都道府県の医療計画の一部として策定される。 ・内容:医療需要の将来推計、4機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)別の必要病床数、病床の機能分化・連携、在宅医療等の充実、医療従事者の確保・養成。 ・協議の場は地域医療構想調整会議、財源は地域医療介護総合確保基金。 ・保健所の設置は地域保健法に基づくもので、地域医療構想の検討事項ではない。
