20年でほぼ倍増した「こころの病」―患者調査で読む精神疾患の時代変化
第112回医師国家試験 F問題 第19問
国試問題にチャレンジ
平成8年と平成26年の患者調査を比較して,患者数が最も増加したのはどれか。
- a.気分障害
- b.統合失調症
- c.血管性認知症
- d.アルコール依存症
- e.神経性食思〈欲〉不振症
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
患者調査は厚生労働省が3年ごとに実施する抽出調査で、調査日の受療状況から推計患者数や総患者数を算出します。平成8年から平成26年にかけて、気分障害の推計患者数はほぼ倍増し、精神疾患の中で最も大きく増加しました。統合失調症は実数こそ最多ですが横ばいからやや減少で、認知症の増加はアルツハイマー型が主体であり、血管性認知症、アルコール依存症、神経性食思不振症は増加していません。気分障害の増加には疾患の認知向上や受診のしやすさ、新規抗うつ薬の普及が関わり、統計は受診行動を反映するという読み方も重要です。個々の数値より「気分障害とアルツハイマー型認知症が増え、統合失調症は横ばい」という傾向を押さえることが、精神保健医療福祉施策や自殺対策を理解する土台になります。
解答・解説
正解はaです
患者調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する基幹統計調査で、全国から抽出した病院・診療所を調査日に利用した患者を対象に、傷病の状況などを把握するものである。調査日1日に医療機関を受診・入院していた患者数を全国規模に推計したものが「推計患者数」、調査日に受診していなくても継続的に治療を受けている患者を含めて推計したものが「総患者数」である。 本問は、平成8年(1996年)から平成26年(2014年)までの約20年間で、精神疾患の患者数がどう推移したかを問うている。この期間の精神医療における大きな流れは次の2点である。 1. 気分障害(うつ病・双極性障害など)とアルツハイマー型認知症の患者数が大きく増加した。 2. 統合失調症は高い水準のままほぼ横ばい〜やや減少し、アルコール依存症、血管性認知症、神経性食思不振症などは減少した。 選択肢の推計患者数(千人)を比べると、気分障害は60.3から112.2へとほぼ倍増しているのに対し、他の4疾患はいずれも横ばいまたは減少している。よって最も増加したのは気分障害である。 なお、本問は特定の年次の統計値を比較させる問題であり、数値は調査年によって変わるため、現在の国家試験対策としての有用性は高くないとされる。覚えるべきは個々の数値ではなく「気分障害と認知症(アルツハイマー型)が増え、統合失調症は横ばい」という大きな傾向である。
選択肢考察
- ○a. 気分障害
推計患者数は平成8年の60.3千人から平成26年の112.2千人へとほぼ2倍に増え、選択肢の中で増加が最も著しい。背景として、うつ病が広く社会に知られるようになり精神科・心療内科を受診する心理的なハードルが下がったこと、精神科診療所の増加で受診しやすくなったこと、比較的軽症の患者も医療につながるようになったこと、新規抗うつ薬(SSRI〈選択的セロトニン再取り込み阻害薬〉、SNRI〈セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬〉など)の普及などが考えられる。
- ×b. 統合失調症
推計患者数は235.7千人から221.5千人へとほぼ横ばい〜やや減少である。実数としては選択肢中で最も多く、精神病床入院患者の中でも最大の割合を占めるが、増加はしていない。入院医療中心から地域生活中心へという精神保健医療福祉の改革により、入院患者数は減少傾向にある。
- ×c. 血管性認知症
推計患者数は45.4千人から41.7千人へとやや減少しており、ほぼ横ばいである。高齢化に伴って認知症全体は大きく増えているが、その増加は主にアルツハイマー型認知症によるものである。血管性認知症は、高血圧治療の普及などによる脳血管障害の発症予防の進歩もあり、増加していない。
- ×d. アルコール依存症
推計患者数は21.7千人から13.8千人へと減少している。ただし、アルコール依存症は治療につながっていない潜在患者が非常に多いとされ、医療機関で把握される患者数が実際の有病者数を反映していない点に注意が必要である。なお、アルコール以外の精神作用物質(薬物)の使用による精神及び行動の障害は増加している。
- ×e. 神経性食思〈欲〉不振症
推計患者数は1.2千人から0.6千人へとほぼ半減している。もともと患者数が少ない疾患であり、本調査期間では増加していない。若年女性に多い摂食障害の一型で、やせ願望や肥満恐怖による極端な食事制限と著しいやせを特徴とする。
患者調査の要点
・実施主体:厚生労働省、基幹統計調査。 ・周期:3年ごと(10月中旬の指定日に実施)。 ・対象:層化無作為抽出した病院・診療所を利用した患者。 ・主な指標:推計患者数(調査日1日の入院・外来患者数の推計)、受療率(人口10万対の推計患者数)、総患者数(継続的に医療を受けている者の推計)、退院患者の平均在院日数。
精神疾患の患者数の動向
・精神疾患を有する総患者数は増加傾向にあり、2010年代には400万人前後に達した。 ・増加が目立つのは気分障害(うつ病など)、認知症(特にアルツハイマー型)、神経症性障害・ストレス関連障害など。 ・統合失調症は横ばい〜やや減少で、入院患者は減少傾向。 ・精神病床の入院患者のうち統合失調症が最多だが、認知症の割合が増えている。
気分障害
・うつ病(大うつ病性障害)と双極性障害(躁うつ病)を含む疾患群である。 ・うつ病は抑うつ気分、興味・喜びの喪失、睡眠障害、食欲変化、易疲労感、無価値感、集中力低下、希死念慮などを呈する。 ・自殺の重要な危険因子であり、職場のメンタルヘルス対策(ストレスチェック制度など)や自殺対策の観点からも重視されている。
精神保健医療福祉の方向性
「入院医療中心から地域生活中心へ」という理念のもと、長期入院患者の地域移行が進められている。現在は精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が目指されている。
POINT
・平成8年→平成26年で気分障害の推計患者数はほぼ倍増(60.3千→112.2千)。 ・統合失調症は患者数が多いが横ばい〜やや減少。 ・認知症の増加はアルツハイマー型が主体で、血管性認知症は増えていない。 ・アルコール依存症、神経性食思不振症は医療機関で把握される患者数が減少。 ・個々の数値より「気分障害・アルツハイマー型認知症が増加」という傾向を押さえる。
