StudyMed医師国家試験

33週の破水―「続けるか、産ませるか」を決める3つの物差し

第112回医師国家試験 E問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第35問

30歳の初産婦。妊娠33週0日に破水感を主訴に来院した。これまでの妊娠経過に異常はなかった。心拍数80/分,整。血圧110/70mmHg。腟内に貯留した羊水は透明で,児は第1頭位,不規則な子宮収縮を認める。  妊娠継続の可否を決定する上で,有用性が低いのはどれか。

  1. a.体温
  2. b.内診
  3. c.尿検査
  4. d.腹部触診
  5. e.血液検査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、早産期に破水した妊婦さんで、妊娠を続けてよいかどうかを何で判断するか、という問題だ。設問は「有用性が低いもの」を選ぶ形式だから、まず判断の軸を自分で組み立ててから選択肢を眺めるのがコツだよ。最初に、この状態は何と呼ぶかな。
医学生医学生
陣痛が来る前に破水しているので前期破水、しかも37週未満なので早産期の前期破水ですね。
ドクタードクター
その通り。では33週の赤ちゃんを今すぐ出すことのデメリットと、待つことのデメリットをそれぞれ考えてみよう。
医学生医学生
出すと呼吸障害などの早産児の合併症が心配です。待つと……破水しているから感染でしょうか。
ドクタードクター
まさにそこ。卵膜が破れると腟内の細菌が子宮内へ上がりやすくなり、絨毛膜羊膜炎を起こすと母体の敗血症や、児の感染・脳性麻痺のリスクが上がる。だから判断の軸は、子宮内感染があるか、分娩がどこまで進んでいるか、胎児が元気か、の3つになるんだ。
医学生医学生
産婦人科の講義で「PPROMは感染・陣痛・胎児機能不全がなければ待機」と習ったのを思い出しました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ではこの3軸に各選択肢を当てはめよう。まず体温はどうかな。
医学生医学生
発熱は絨毛膜羊膜炎のサインなので、感染の評価に必須だと思います。
ドクタードクター
正解。臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準(Lenckiの基準)では38.0℃以上の発熱が中心で、それに母体頻脈、子宮の圧痛、腟分泌物や羊水の悪臭、白血球数15,000/μL以上を組み合わせる。だから血液検査で白血球数やCRPを追うのも有用だし、経時的な変化が大事なんだ。
医学生医学生
腹部触診は子宮の圧痛を見るためですか。
ドクタードクター
それも一つ。加えて子宮収縮の頻度や強さを手で確かめて分娩の進み具合を評価できるし、レオポルド触診法で胎位も確認できる。一石三鳥だね。
医学生医学生
内診は子宮口の開大を見て、早産が避けられない状況かを判断するんですよね。ただ、破水後に何度も指を入れるのは感染が心配です。
ドクタードクター
良いところに気づいた。だから破水後は腟鏡診を優先し、指による内診は必要最小限にするのが原則だ。それでも子宮口の開大や頸管の展退は継続の可否に直結する情報だから、有用性が低いとは言えない。
医学生医学生
そうすると残るのは尿検査ですね。尿路感染や蛋白尿はわかっても、子宮内感染も分娩進行も胎児の状態も判断できません。
ドクタードクター
その通り、正解は尿検査だ。この方は血圧も正常で尿路症状の記載もないから、妊娠高血圧腎症や膀胱炎を疑う流れでもない。ちなみに早産の予測に使うのは尿ではなく、腟や頸管の分泌物中の顆粒球エラスターゼや胎児性フィブロネクチンだよ。
医学生医学生
CBTの勉強では「感染」と聞くとつい尿検査も思い浮かべてしまうので、何を評価したいのかから逆算するのが大事ですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に管理の全体像も押さえておこう。感染などがなければ抗菌薬を投与しながら待機し、34週未満で1週間以内の早産が見込まれれば胎児の肺成熟を促すために母体へベタメタゾンを投与する。32週未満なら脳性麻痺予防の硫酸マグネシウムも考慮する。34週を過ぎると待つ利益が小さくなるので、分娩誘発を考える。
医学生医学生
逆に絨毛膜羊膜炎や胎児機能不全が出てきたら、週数に関係なく娩出を図るということですね。
ドクタードクター
そう。そして胎児心拍数モニタリングでは、羊水が減ったことによる臍帯圧迫で起こる変動一過性徐脈や、感染に伴う胎児頻脈にも目を光らせておこう。臨床では「待つ」ことは「何もしない」ことではなく、毎日感染と分娩進行を監視し続けることなんだ。

まとめ

妊娠37週未満で陣痛発来前に破水した早産期前期破水では、児の未熟性と上行性の子宮内感染のリスクを天秤にかけて妊娠継続の可否を判断します。判断の軸は、子宮内感染(臨床的絨毛膜羊膜炎)の有無、分娩の進行度、胎児の状態の3つです。感染は体温・母体脈拍・子宮圧痛(腹部触診)・羊水の悪臭・白血球数やCRP(血液検査)で、分娩進行は子宮収縮(腹部触診)と子宮口の開大(内診)で評価しますが、尿検査はこれらのいずれにも直接寄与しません。感染徴候がなければ抗菌薬投与下に待機し、34週未満で早産が迫ればステロイドで胎児の肺成熟を促し、絨毛膜羊膜炎や胎児機能不全があれば週数を問わず娩出を図ります。「何を判断したいのか」から必要な検査を逆算する姿勢は、産科救急に限らず臨床推論全般の基本となります。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

初産婦が妊娠33週0日に破水感を訴えて来院し、腟内に羊水の貯留が確認されている。陣痛が始まる前に卵膜が破れた状態であり、前期破水〈PROM〉と診断できる。妊娠37週未満で起きているので、早産期の前期破水〈preterm PROM:PPROM〉である。羊水は透明で混濁や血性はなく、母体の心拍数80/分・血圧110/70mmHgは正常範囲である。不規則な子宮収縮はあるが、規則的な陣痛には至っていない。

設問の考え方

妊娠33週の児は、出生すると呼吸障害などの早産児合併症の危険があるため、可能であれば妊娠を継続して児の成熟を待ちたい。一方で、破水すると腟内の細菌が子宮内へ上行しやすくなり、絨毛膜羊膜炎〈CAM〉を起こすと母体の敗血症や児の感染症・脳性麻痺などの危険が高まる。そのため、妊娠を継続するか、分娩(娩出)させるかを決めるうえで評価すべきは、主に次の3点である。 ①子宮内感染(臨床的絨毛膜羊膜炎)の有無:母体の発熱、頻脈、子宮の圧痛、羊水・腟分泌物の悪臭、白血球数の増加、CRPの上昇など ②分娩の進行度(早産が避けられるか):子宮収縮の頻度・強さ、子宮頸管の開大・展退の程度 ③胎児の状態:胎児心拍数モニタリングによる胎児機能不全(non-reassuring fetal status)の有無 これらの評価に直接寄与しない検査が「有用性が低い」ものとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  体温

    母体の発熱(38.0℃以上)は臨床的絨毛膜羊膜炎を診断する際の中心となる所見である。絨毛膜羊膜炎と判断されれば、妊娠継続は母児に危険であり、抗菌薬投与とともに分娩を急ぐ方針となる。したがって体温の測定は妊娠継続の可否の判断に有用であり、その後も経時的に観察を続ける。

  2. ×b.  内診

    子宮口の開大度や頸管の展退・熟化の程度を評価し、分娩がどの程度進行しているか、早産が避けられない状況かを判断するのに有用である。子宮口の開大が進んでいれば妊娠継続は困難と判断される。なお破水後は、指による内診を繰り返すと上行性感染の危険を高めるため、腟鏡診による観察を優先し、内診は必要最小限にとどめるのが原則である。

  3. ○c.  尿検査

    尿検査は尿路感染症、妊娠高血圧腎症に伴う蛋白尿、尿糖などの評価には役立つが、子宮内感染の有無や分娩の進行度、胎児の状態を判断する手段にはならない。本例は血圧も正常で、尿路症状の記載もない。したがって、前期破水後の妊娠継続の可否を決めるうえでの有用性は低い。なお早産の予測には、尿ではなく腟・頸管分泌物中の顆粒球エラスターゼや胎児性フィブロネクチンが用いられる。

  4. ×d.  腹部触診

    腹部の触診により、子宮収縮の有無・頻度・強さを確かめて分娩進行を評価できる。また子宮体部の圧痛は臨床的絨毛膜羊膜炎の所見の一つである。さらにレオポルド触診法で胎位・胎向を確認することもできる。妊娠継続の可否を判断するうえで有用である。

  5. ×e.  血液検査

    白血球数(15,000/μL以上の増加は臨床的絨毛膜羊膜炎の所見の一つ)やCRPの上昇は子宮内感染を示唆する。体温などの臨床所見と合わせて感染の有無を判断し、経時的な推移も追う。妊娠継続の可否の判断に有用である。

前期破水〈PROM〉

陣痛が始まる前に卵膜が破綻し羊水が流出する状態をいう。妊娠37週未満のものを早産期前期破水〈PPROM〉と呼ぶ。診断は、腟鏡診で後腟円蓋の羊水貯留や子宮口からの羊水流出を確認するほか、腟内容のpH(羊水はアルカリ性でBTB試験紙が青変する)、羊水中に含まれる物質(インスリン様成長因子結合蛋白1型〈IGFBP-1〉、αフェトプロテインなど)の検出、超音波による羊水量の評価などを用いる。

臨床的絨毛膜羊膜炎の診断(Lenckiの基準)

母体の38.0℃以上の発熱があり、かつ次のうち1項目以上を満たすもの: ・母体頻脈(100/分以上) ・子宮の圧痛 ・腟分泌物または羊水の悪臭 ・母体白血球数15,000/μL以上 発熱がない場合は、上記4項目すべてを満たすものとする。

早産期前期破水の管理の概要

・子宮内感染や胎児機能不全、分娩進行(早産が避けられない状態)がなければ、原則として待機的に管理する。 ・感染予防として抗菌薬を投与する。 ・妊娠34週未満で1週間以内の早産が予想される場合、胎児の肺成熟などを促すため母体に副腎皮質ステロイド(ベタメタゾン)を投与する。 ・妊娠32週未満では、児の脳性麻痺予防を目的として硫酸マグネシウムの投与が考慮される。 ・妊娠34週以降では、待機による利益が小さくなるため分娩誘発を考慮する。 ・臨床的絨毛膜羊膜炎、胎児機能不全、常位胎盤早期剝離などを認めた場合は、週数にかかわらず娩出を図る。

破水後の注意点

破水後は上行性感染の危険があるため、指による内診は必要最小限とし、体温・脈拍・子宮の圧痛・羊水の性状・白血球数・CRPを経時的に観察する。胎児心拍数モニタリングでは、臍帯圧迫による変動一過性徐脈や、感染に伴う胎児頻脈に注意する。

POINT

・妊娠37週未満の陣痛発来前の破水は早産期前期破水(PPROM)である。 ・妊娠継続の可否は、子宮内感染(臨床的絨毛膜羊膜炎)の有無、分娩の進行度、胎児の状態で判断する。 ・感染の評価:体温、母体脈拍、子宮圧痛(腹部触診)、羊水の悪臭、白血球数・CRP(血液検査)。 ・分娩進行の評価:子宮収縮(腹部触診・陣痛計)、子宮口の開大(内診)。 ・尿検査はこれらの判断に直接役立たず、有用性が低い。 ・破水後の内診は感染リスクを考慮し必要最小限にする。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。