StudyMed医師国家試験

カルテは5年、ほかは何年?―医療記録の保存期間を「法律の違い」で整理する

第112回医師国家試験 E問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第22問

医療記録の保存義務期間が最も長いのはどれか。

  1. a.エックス線写真
  2. b.看護記録
  3. c.手術記録
  4. d.処方箋
  5. e.診療録

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療記録の保存期間の問題だ。病院ではさまざまな記録が作られるけれど、どの法律で決められているかによって保存期間が違う。その「根拠法の違い」を整理できているかがポイントになる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で医師法をやったときに、カルテは5年と習った記憶があります。ほかの記録もみんな5年かと思っていました。
ドクタードクター
そこが引っかかりやすいところだね。診療録、つまりカルテは医師法第24条で5年間の保存が義務づけられている。医師は診療したら遅滞なく経過などを診療録に記載し、それを5年間保存しなければならない。一方、それ以外の記録は医療法の「診療に関する諸記録」という別の枠に入るんだ。
医学生医学生
診療に関する諸記録には、どんなものが含まれるんですか。
ドクタードクター
医療法施行規則では、病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院・外来患者数の帳簿などが挙げられている。病院では過去2年間の記録を備えておくことが求められるんだ。
医学生医学生
でも臨床実習で、病院の事務の方が「3年は保管している」と話していた気がします。2年と3年、どちらなんでしょう。
ドクタードクター
鋭いね。それは保険診療のルールが関わっている。保険医療機関及び保険医療養担当規則、いわゆる療担規則の第9条で、療養の給付に関する帳簿や書類などは完結の日から3年間保存すると定められている。日常診療はほとんどが保険診療だから、実務上は3年保存が多いわけだ。ただし、この療担規則でも診療録だけは5年とされている。
医学生医学生
つまり、医療法では2年、保険診療なら3年、カルテだけは医師法でも療担規則でも5年ということですね。
ドクタードクター
その通り。だから選択肢の中で最も長いのは診療録になる。ほかの選択肢も確認しておこう。手術記録はどうかな。
医学生医学生
手術記録は医師が書く大事な記録なので、カルテと同じ5年かと迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。ただ法令上は診療録とは別の「診療に関する諸記録」に分類されていて、医療法上2年、保険医療機関では3年だ。誰が書くかではなく、どの分類に入るかで決まると覚えよう。エックス線写真も同じく諸記録の一つで、2年または3年になる。
医学生医学生
看護記録は看護師さんの記録だから、保健師助産師看護師法で何か決まっているのでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。実は保健師助産師看護師法には看護記録の保存期間の規定はなく、看護記録も諸記録として2年または3年だ。同法で5年保存が定められているのは助産師が作成する助産録のほう。看護記録と助産録を混同しないように注意しよう。
医学生医学生
処方箋はどうですか。院外処方だと薬局に行きますよね。
ドクタードクター
医療機関内で用いた処方箋は諸記録として2年または3年。院外の薬局で調剤を終えた処方箋は、薬剤師法により薬局開設者が3年間保存する。いずれにしても5年には届かない。
医学生医学生
カルテの保存義務は誰が負うんでしょう。勤務医が個人で持っておくわけではないですよね。
ドクタードクター
病院や診療所に勤務する医師が行った診療についてはその施設の管理者、それ以外の場合は医師本人が保存義務を負う。発展として、特定生物由来製品、たとえば輸血用血液製剤や血漿分画製剤の使用記録は20年保存だ。後になって感染症が判明したときに、どの患者に使われたかをさかのぼって調べられるようにするためだね。
医学生医学生
電子カルテの場合も同じ5年ですか。
ドクタードクター
保存期間は同じだよ。電子保存は、真正性・見読性・保存性の3原則を満たすことを条件に認められている。また診療録には、患者の住所・氏名・性別・年齢、病名と主要症状、処方や処置などの治療方法、診療の年月日を記載することが医師法施行規則で定められている。研修医になったら毎日書くものだから、法律上の意味も意識しておこう。

まとめ

医療機関の記録は根拠法によって保存期間が異なり、診療録(カルテ)は医師法第24条により5年間の保存が義務づけられています。手術記録、看護記録、処方箋、エックス線写真などは「診療に関する諸記録」として医療法上2年、保険医療機関では療担規則により完結の日から3年の保存となり、いずれも診療録より短くなります。療担規則でも診療録だけは5年とされているため、実務上は「カルテは5年、その他は3年」と整理すると覚えやすいでしょう。関連して、助産録は5年、調剤済み処方箋は3年、特定生物由来製品の使用記録は20年と定められています。記録の保存期間を知ることは、医療安全や法的責任を担う医師として必須の知識であり、日々の診療録記載の重みを理解することにもつながります。

解答・解説

正解はeです

医療機関で作られる記録の保存期間は、記録の種類によって根拠となる法令が異なり、期間も違う。本問はその区別を問う問題である。

整理の枠組み

・診療録(カルテ):医師法第24条で5年間の保存が義務づけられている。 ・診療録以外の「診療に関する諸記録」(病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者・外来患者の数を明らかにする帳簿など):医療法とその施行規則により、病院では過去2年間の記録を備えておくことが求められる。 ・保険診療を行う保険医療機関:保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第9条により、療養の給付に関する帳簿・書類その他の記録は、その完結の日から3年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録はこの規則でも5年間とされている。 したがって、選択肢のうち保存義務期間が最も長いのは5年の診療録であり、そのほかの記録は2年(医療法)または3年(療担規則)である。日常診療は保険診療が中心なので、実際の運用では「診療録は5年、その他の諸記録は3年」と覚えておくとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  エックス線写真

    エックス線写真は、医療法施行規則でいう「診療に関する諸記録」に含まれ、医療法上は2年間の保存が求められる。保険医療機関では、療担規則により完結の日から3年間保存する。いずれにしても、5年の診療録より短い。

  2. ×b.  看護記録

    看護記録も「診療に関する諸記録」の一つであり、医療法上は2年間、保険医療機関では療担規則により3年間の保存義務がある。看護師が作成する記録ではあるが、保健師助産師看護師法に保存期間の定めはない。なお、同法で5年間の保存が定められているのは助産師が作成する助産録であり、看護記録と混同しないよう注意する。

  3. ×c.  手術記録

    手術記録は、医師が作成する重要な記録であるが、法令上は診療録とは別の「診療に関する諸記録」に分類される。保存義務は医療法上2年間、保険医療機関では療担規則により3年間であり、診療録の5年より短い。

  4. ×d.  処方箋

    医療機関内で用いた処方箋は「診療に関する諸記録」にあたり、医療法上2年間、保険医療機関では療担規則により3年間保存する。なお、院外の薬局で調剤を終えた処方箋は、薬剤師法により薬局開設者が3年間保存する。いずれも5年には及ばない。

  5. ○e.  診療録

    医師は診療をしたら遅滞なく、その経過などを診療録に記載しなければならない(医師法第24条第1項)。その診療録は5年間保存しなければならない(同条第2項)。保存義務を負うのは、病院・診療所に勤務する医師が行った診療についてはその施設の管理者、それ以外の場合は医師本人である。療担規則でも、診療録は完結の日から5年間保存すると定められている。選択肢の中で保存期間が最も長い。

主な記録の保存期間

・診療録(医師法第24条、歯科医師の場合は歯科医師法第23条):5年 ・助産録(保健師助産師看護師法):5年 ・診療に関する諸記録(医療法・同施行規則):2年(病院日誌、各科診療日誌、処方箋、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院・外来患者数の帳簿など) ・保険診療に関する帳簿・書類その他の記録(療担規則第9条):完結の日から3年(診療録は5年) ・調剤済みの処方箋・調剤録(薬剤師法):3年 ・特定生物由来製品(輸血用血液製剤、血漿分画製剤など)の使用記録:20年。感染症が後になって判明したときに、どの患者に使われたかをさかのぼって調べられるようにするためである。

診療録の記載事項(医師法施行規則)

診療を受けた者の住所・氏名・性別・年齢、病名と主要症状、治療方法(処方・処置)、診療の年月日。

電子カルテ

診療録などの電子保存は、真正性・見読性・保存性の3原則を満たすことを条件に認められている。

POINT

・診療録(カルテ)は医師法で5年間保存する。選択肢の記録の中で最も長い ・診療録以外の診療に関する諸記録(エックス線写真、看護記録、手術記録、処方箋など)は、医療法では2年、保険医療機関では療担規則により3年 ・助産録は5年、特定生物由来製品の使用記録は20年

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。