「強く、速く、絶え間なく」―数字で身につける成人の胸骨圧迫
第112回医師国家試験 E問題 第18問
国試問題にチャレンジ
成人の心肺蘇生における胸骨圧迫について適切なのはどれか。
- a.胸骨の上半分を押す。
- b.100~120/分の速さで押す。
- c.胸壁が3cm程度沈む強さで押す。
- d.胸骨圧迫と人工呼吸は30対1で行う。
- e.患者の下肢を挙上した体位で実施する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
成人の質の高い胸骨圧迫は、硬く平らな面の上で仰臥位にした患者の胸骨の下半分(胸の真ん中)を、約5cm(6cmを超えない)の深さで、100〜120回/分のテンポで押すことが基本です。毎回胸壁を完全に元に戻し、中断は10秒未満にとどめ、人工呼吸を行う場合は30:2で組み合わせます。テンポや深さに上限があるのは、速すぎ・深すぎがかえって有効な血流を減らしたり損傷を増やしたりするためで、下肢挙上は心肺蘇生の標準手順に含まれません。小児では深さが胸の厚さの約3分の1、医療従事者2人以上なら15:2となる点も合わせて押さえておきましょう。胸骨圧迫は医療者だけでなく誰もが行う救命処置であり、数値の根拠まで理解しておくことが、いざというときに質の高い蘇生を実践する力になります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
成人の一次救命処置(BLS:basic life support)のうち、胸骨圧迫の具体的な方法(部位・テンポ・深さ・人工呼吸との比率・体位)を問う問題である。
胸骨圧迫の意義
心停止の状態では心臓が血液を送り出せないため、胸骨を外から押して心臓を胸骨と脊椎の間で圧迫し、さらに胸腔内圧を変化させることで、脳や心筋へ血液を送る。胸骨圧迫で得られる血流は通常時のごく一部にすぎず、圧迫を中断すると冠動脈・脳への灌流圧はすぐに低下し、再開しても元の圧に戻るまで時間がかかる。このため「強く、速く、絶え間なく」押すことが救命率を左右する。
成人の質の高い胸骨圧迫(JRC蘇生ガイドライン2015・2020で共通)
・部位:胸骨の下半分(胸の真ん中が目安) ・深さ:約5cm沈むように押し、6cmを超えない ・テンポ:100〜120回/分 ・解除:毎回、胸壁が元の高さに完全に戻るまで力を抜く(ただし手は胸から離さない) ・中断:最小限にする(人工呼吸やAEDの解析などでの中断は10秒未満を目標とする) ・人工呼吸を行う場合:胸骨圧迫30回に対し人工呼吸2回 ・体位:硬く平らな面の上で仰臥位 ・交代:疲労で質が落ちるため、救助者が複数いれば1〜2分ごとを目安に交代する これらの数値を正確に覚えておけば、各選択肢の正誤は判断できる。
選択肢考察
- ×a. 胸骨の上半分を押す。
圧迫部位は胸骨の下半分である。心臓は胸骨の下半分の裏側に位置しており、ここを押すことで心臓を効率よく圧迫できる。目安は「胸の真ん中」であり、従来は左右の乳頭を結ぶ線と胸骨の交わる点も目安とされてきた。ただし、さらに下の剣状突起を押すと肝臓などの腹部臓器を損傷するおそれがあるので避ける。胸骨の上半分を押しても心臓を十分に圧迫できない。
- ○b. 100~120/分の速さで押す。
成人の胸骨圧迫のテンポは100〜120回/分が推奨されている。テンポが遅すぎると心拍出量が不足し、逆に120回/分を超えるほど速くすると、圧迫が浅くなりやすいうえ、心臓に血液が戻る(胸壁が元に戻る)時間が短くなって有効な血流が得られにくくなる。そのため上限も設けられている。
- ×c. 胸壁が3cm程度沈む強さで押す。
成人では胸が約5cm沈むように押し、6cmを超えないようにする。3cm程度では浅すぎて十分な血流が得られない。実際の現場では圧迫が浅くなりがちであることが知られており、しっかり押すことが強調されている。一方、6cmを超える過度の圧迫は肋骨骨折などの損傷を増やす可能性があるため上限が示されている。なお小児・乳児では胸の厚さの約3分の1を目安とする。
- ×d. 胸骨圧迫と人工呼吸は30対1で行う。
成人では胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ(30:2)を繰り返す。人工呼吸は1回約1秒かけて胸が軽く上がる程度に吹き込む。人工呼吸の技術がない、あるいはためらわれる場合は、胸骨圧迫のみを続けてもよい。なお気管挿管などの高度な気道確保がされた後は、胸骨圧迫を中断せずに続け、それと非同期で人工呼吸を行う(成人では約6秒に1回、10回/分)。
- ×e. 患者の下肢を挙上した体位で実施する。
胸骨圧迫は、患者を硬く平らな面の上に仰臥位に寝かせて行う。柔らかいベッドの上では圧迫の力が逃げるため、背板を入れるか床に移す。心肺蘇生中に下肢を挙上することは、蘇生の成績を改善するという十分な根拠がなく、標準的な手順には含まれない。下肢挙上は循環血液量減少が疑われる患者で静脈還流を増やす目的に用いられることはあるが、心肺蘇生の基本体位ではない。
成人の一次救命処置(BLS)の流れ(JRC蘇生ガイドライン)
1. 周囲の安全を確認する。 2. 肩をたたき大声で呼びかけ、反応を確認する。 3. 反応がなければ大声で応援を呼び、119番通報とAED(自動体外式除細動器)の手配を依頼する。 4. 呼吸を確認する(10秒以内)。普段どおりの呼吸がない、または判断に迷う場合は心停止とみなす。死戦期呼吸(しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸)は「呼吸なし」と判断する。医療従事者は呼吸の確認と同時に頸動脈の拍動を確認してもよいが、脈拍の確認のために胸骨圧迫の開始を遅らせない。 5. 直ちに胸骨圧迫を開始する。人工呼吸ができる場合は30:2で行う。 6. AEDが到着したら電源を入れ、電極パッドを装着し、音声指示に従う。電気ショック後は直ちに胸骨圧迫から再開する。 7. 救急隊などに引き継ぐか、患者が普段どおりの呼吸や目的のある仕草を示すまで続ける。
小児・乳児との違い
・深さ:胸の厚さの約3分の1 ・圧迫の方法:小児は片手または両手、乳児は救助者1人なら2本指、2人以上なら胸郭包み込み両母指圧迫法 ・比率:救助者1人では30:2、医療従事者が2人以上いる場合は15:2 ・テンポは成人と同じ100〜120回/分 ・小児では呼吸原性の心停止が多いため、人工呼吸の重要性が成人より高い。
一般市民と医療従事者の違い
一般市民は呼吸の有無だけで心停止を判断し、脈拍の確認は求められない。人工呼吸ができない場合は胸骨圧迫のみの心肺蘇生でよい。
POINT
・成人の胸骨圧迫:胸骨の下半分を、深さ約5cm(6cmを超えない)、テンポ100〜120回/分で押す。 ・毎回胸壁を完全に元に戻し、中断は10秒未満にとどめる。 ・胸骨圧迫:人工呼吸=30:2(小児で医療従事者2人以上なら15:2)。 ・高度な気道確保後は胸骨圧迫を中断せず、人工呼吸は非同期で10回/分。 ・硬く平らな面の上で仰臥位。下肢挙上は不要。
