StudyMed医師国家試験

「ついでに聞く」が命を救う―システムレビューで聞き漏らしを防ぐ医療面接

第112回医師国家試験 E問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第112回 E問題 第10問

医療面接におけるシステムレビュー〈review of systems〉で正しいのはどれか。

  1. a.時系列に沿って病歴聴取を行う。
  2. b.患者の言葉で既往歴を体系的に話してもらう。
  3. c.エビデンスを体系的にまとめて患者に説明する。
  4. d.医療面接の最後に聴取した病歴の要約を述べる。
  5. e.主訴と関係のない症状を含め臓器系統別に病歴を聴取する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の構成要素の一つ、システムレビューの定義を問う問題だ。選択肢には「体系的」「レビュー」といった似た響きの言葉が並んでいるから、それぞれが医療面接のどの技法や項目を指しているのかを区別できるかがポイントになるよ。
医学生医学生
システムレビューって、OSCEの医療面接の練習で最後のほうに「ほかに気になる症状はありますか」と聞くところでしょうか。
ドクタードクター
近いけれど、少し違うんだ。システムレビューは、全身を臓器系統に分けて、それぞれの代表的な症状の有無を医師の側から網羅的に尋ねていく方法なんだよ。全身状態、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、神経、精神…という具合に、順番に点検していく。
医学生医学生
なるほど、「system」は臓器系統のことなんですね。てっきり「体系的に」という意味だと思っていました。
ドクタードクター
そこを誤解すると、選択肢の言葉に引っ張られてしまうね。キーワードは「臓器系統別に」「見直す・点検する」。だから主訴と関係のない症状も含めて、臓器系統別に病歴を聴取する、というのが正しい記述になる。
医学生医学生
でも、主訴と関係ない症状まで聞く必要があるんですか。時間がかかりそうです。
ドクタードクター
いい疑問だね。主訴や現病歴は患者さんの訴えに沿って進むから、本人が重要だと思っていない症状や言い忘れた症状は話題に上らないことがある。例えば咳で来た人に聞いてみたら、体重減少や寝汗があった。そうなれば結核や悪性腫瘍を考える手がかりになるよね。
医学生医学生
総合診療科の実習で、腰痛で来た患者さんに指導医の先生が体重の変化を聞いて、結果的に骨転移が見つかったことがありました。
ドクタードクター
まさにシステムレビューの価値が発揮された場面だね。聞き漏らしを防ぎ、隠れた疾患や全身の合併症を拾い上げるのが目的なんだ。では、ほかの選択肢がそれぞれ何を指しているか整理しよう。時系列に沿って病歴を聴取するのは?
医学生医学生
発症から今までの経過を順に聞くので、現病歴ですね。
ドクタードクター
正解。発症時期や様式、部位、性状、程度、増悪・寛解因子、随伴症状などを時間の流れに沿って聞くのが現病歴だ。システムレビューは経過の順ではなく、臓器系統ごとに確認する点が違う。次に、患者さんの言葉で既往歴を体系的に話してもらう、という記述はどうかな。
医学生医学生
患者さん自身の言葉で話してもらうのは開放型質問ですよね。システムレビューは「咳はありませんか」「むくみはありませんか」と具体的に聞くので、むしろ閉鎖型質問が中心な気がします。
ドクタードクター
その理解で合っているよ。しかも対象は既往歴ではなく、現在の全身の症状だ。二重の意味で違うね。エビデンスを体系的にまとめて患者に説明する、というのは?
医学生医学生
これは公衆衛生やEBMの講義で習った系統的レビュー、systematic reviewのことだと思います。名前が似ていて紛らわしいです。
ドクタードクター
そうだね。複数の研究を一定の手順で網羅的に集めて評価・統合するのが系統的レビューで、医学文献の話だ。システムレビューは患者さんに説明する方法ではなく、患者さんから情報を集める方法だから、まったく別物だよ。最後に、面接の最後に病歴の要約を述べる、というのは?
医学生医学生
OSCEで「では、お話を整理させていただきますね」と言うところですね。要約という技法だったと思います。
ドクタードクター
その通り。聴取した内容をまとめて患者さんに伝え、認識のずれを修正したり、言い残したことがないかを確認したりする技法が要約だ。システムレビューも面接の後半で行うことが多いけれど、要約を述べることそのものはシステムレビューではないよ。
医学生医学生
現病歴、開放型質問、系統的レビュー、要約、それぞれ別の概念を「システムレビュー」っぽく見せていたんですね。
ドクタードクター
よく整理できたね。最後に臨床での注意点を。システムレビューは全項目を毎回機械的に聞くと時間がかかるから、外来では主訴や患者背景に応じて重点を置く系統を考えつつ、全身・体重変化・発熱・寝汗のような重要な症状は外さないようにするのが実践的だ。入院時の診察では、より網羅的に行うことが多いね。
医学生医学生
主訴だけに集中しすぎず、全身を一度見渡す習慣をつけることが大切なんですね。
ドクタードクター
そう。医療面接は主訴、現病歴、既往歴、服薬歴、家族歴、社会歴・生活歴、そしてシステムレビューという構成で全体像を描くものだ。その中でシステムレビューは「安全網」の役割を担っていると覚えておこう。

まとめ

システムレビュー〈review of systems〉は、全身を臓器系統別に分け、主訴と関係のない症状も含めて各系統の代表的な症状の有無を医師側から網羅的に尋ねる病歴聴取の方法です。患者の訴えに沿って進む主訴・現病歴の聴取では漏れやすい症状を拾い上げ、隠れた疾患の発見や鑑別診断、全身合併症の把握に役立ちます。時系列での聴取は現病歴、患者自身の言葉で語ってもらうのは開放型質問、エビデンスの統合は系統的レビュー、面接の最後のまとめは要約であり、名称の似た別概念と混同しないことが重要です。医療面接の各項目と面接技法を正しく区別して理解することは、OSCEだけでなく、臨床現場で見落としのない診療を行うための基本となります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

医療面接の構成要素の一つである「システムレビュー〈review of systems:ROS〉」の定義を問う問題である。

システムレビューとは

システムレビューは、全身を臓器系統(全身状態、皮膚、頭頸部、眼・耳・鼻・咽頭、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神、内分泌、血液・リンパなど)に分け、各系統について代表的な症状の有無を医師の側から網羅的・系統的に尋ねていく病歴聴取の方法である。主訴や現病歴の聴取は患者の訴えに沿って進むため、患者が重要と思っていない症状や言い忘れた症状は話題に上らないことがある。システムレビューはこうした「聞き漏らし」を防ぎ、主訴と一見関係のない症状も含めて拾い上げることで、隠れた疾患の発見や鑑別診断の手がかり、全身の合併症の把握に役立つ。

考え方

キーワードは「臓器系統別(system)」に「見直す・点検する(review)」である。時系列の聴取は現病歴、患者自身の言葉で語ってもらうのは開放型質問、エビデンスの体系的なまとめは医学文献の系統的レビュー、面接最後の要約は面接技法の「要約」であり、いずれも名称や「体系的」という言葉が似ているだけで別の概念である。

選択肢考察

  1. ×a.  時系列に沿って病歴聴取を行う。

    時系列に沿って症状の始まりから現在までの経過を聴き取るのは、現病歴の聴取の方法である。システムレビューは経過の順ではなく、臓器系統ごとに症状の有無を確認していく点が異なる。

  2. ×b.  患者の言葉で既往歴を体系的に話してもらう。

    患者に自分の言葉で自由に語ってもらうのは開放型質問(open-ended question)の考え方であり、主に面接の導入や現病歴の聴取で用いられる。システムレビューは、医師側が系統ごとに具体的な症状を挙げて「〜はありませんか」と確認していく閉鎖型質問中心の手法である。また、対象は既往歴ではなく現在の全身の症状である。

  3. ×c.  エビデンスを体系的にまとめて患者に説明する。

    複数の研究結果を一定の手順で網羅的に収集・評価してまとめるのは、根拠に基づく医療(EBM)における系統的レビュー(systematic review)であり、名称が似ているが別物である。システムレビューは患者への説明の手法ではなく、患者から情報を集める病歴聴取の手法である。

  4. ×d.  医療面接の最後に聴取した病歴の要約を述べる。

    聴取した内容を医師がまとめて患者に伝え、理解が正しいか確認するのは面接技法の「要約(summarization)」である。患者との認識のずれを修正し、言い残したことがないかを確かめるために行う。システムレビューも面接の後半で聞き漏らしの確認として行われることが多いが、要約を述べることそのものはシステムレビューではない。

  5. ○e.  主訴と関係のない症状を含め臓器系統別に病歴を聴取する。

    システムレビューの定義そのものである。全身の臓器系統ごとに症状の有無を系統的に問診し、主訴・現病歴・既往歴の聴取では話題に上らなかった症状や問題点を明らかにする。例えば、咳嗽を主訴に来院した患者で体重減少や寝汗が見つかれば、結核や悪性腫瘍を考える手がかりとなる。

医療面接で聴取する主な項目

・主訴:患者が受診した最大の理由を、できるだけ患者の言葉で記載する。 ・現病歴:主訴について、発症時期・様式、部位、性状、程度、経過、増悪・寛解因子、随伴症状などを時系列で聴取する。 ・既往歴:過去の疾患、手術、輸血、外傷、アレルギー歴など。 ・服薬歴:処方薬、市販薬、サプリメントなど。 ・家族歴:血縁者の疾患(遺伝性疾患、悪性腫瘍、生活習慣病など)。 ・社会歴・生活歴:職業、喫煙、飲酒、生活環境、旅行歴、性生活など。 ・システムレビュー:臓器系統別に症状の有無を網羅的に確認する。

システムレビューで尋ねる症状の例

・全身:発熱、体重変化、倦怠感、寝汗 ・呼吸器:咳嗽、喀痰、血痰、呼吸困難 ・循環器:胸痛、動悸、浮腫 ・消化器:食欲、悪心・嘔吐、腹痛、便通異常、吐血・下血 ・泌尿器:排尿回数、排尿時痛、血尿 ・神経:頭痛、めまい、しびれ、脱力

主な面接技法

開放型質問、閉鎖型質問、促し、繰り返し、言い換え、要約、共感、沈黙の活用などがある。

POINT

・システムレビュー=主訴と関係のない症状も含め、臓器系統別に網羅的に症状の有無を聴取する方法。目的は聞き漏らし・見落としの防止。 ・時系列での聴取は現病歴、面接最後のまとめは「要約」、エビデンスの統合は「系統的レビュー」であり、混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。