「ついでに聞く」が命を救う―システムレビューで聞き漏らしを防ぐ医療面接
第112回医師国家試験 E問題 第10問
国試問題にチャレンジ
医療面接におけるシステムレビュー〈review of systems〉で正しいのはどれか。
- a.時系列に沿って病歴聴取を行う。
- b.患者の言葉で既往歴を体系的に話してもらう。
- c.エビデンスを体系的にまとめて患者に説明する。
- d.医療面接の最後に聴取した病歴の要約を述べる。
- e.主訴と関係のない症状を含め臓器系統別に病歴を聴取する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
システムレビュー〈review of systems〉は、全身を臓器系統別に分け、主訴と関係のない症状も含めて各系統の代表的な症状の有無を医師側から網羅的に尋ねる病歴聴取の方法です。患者の訴えに沿って進む主訴・現病歴の聴取では漏れやすい症状を拾い上げ、隠れた疾患の発見や鑑別診断、全身合併症の把握に役立ちます。時系列での聴取は現病歴、患者自身の言葉で語ってもらうのは開放型質問、エビデンスの統合は系統的レビュー、面接の最後のまとめは要約であり、名称の似た別概念と混同しないことが重要です。医療面接の各項目と面接技法を正しく区別して理解することは、OSCEだけでなく、臨床現場で見落としのない診療を行うための基本となります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
医療面接の構成要素の一つである「システムレビュー〈review of systems:ROS〉」の定義を問う問題である。
システムレビューとは
システムレビューは、全身を臓器系統(全身状態、皮膚、頭頸部、眼・耳・鼻・咽頭、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経系、精神、内分泌、血液・リンパなど)に分け、各系統について代表的な症状の有無を医師の側から網羅的・系統的に尋ねていく病歴聴取の方法である。主訴や現病歴の聴取は患者の訴えに沿って進むため、患者が重要と思っていない症状や言い忘れた症状は話題に上らないことがある。システムレビューはこうした「聞き漏らし」を防ぎ、主訴と一見関係のない症状も含めて拾い上げることで、隠れた疾患の発見や鑑別診断の手がかり、全身の合併症の把握に役立つ。
考え方
キーワードは「臓器系統別(system)」に「見直す・点検する(review)」である。時系列の聴取は現病歴、患者自身の言葉で語ってもらうのは開放型質問、エビデンスの体系的なまとめは医学文献の系統的レビュー、面接最後の要約は面接技法の「要約」であり、いずれも名称や「体系的」という言葉が似ているだけで別の概念である。
選択肢考察
- ×a. 時系列に沿って病歴聴取を行う。
時系列に沿って症状の始まりから現在までの経過を聴き取るのは、現病歴の聴取の方法である。システムレビューは経過の順ではなく、臓器系統ごとに症状の有無を確認していく点が異なる。
- ×b. 患者の言葉で既往歴を体系的に話してもらう。
患者に自分の言葉で自由に語ってもらうのは開放型質問(open-ended question)の考え方であり、主に面接の導入や現病歴の聴取で用いられる。システムレビューは、医師側が系統ごとに具体的な症状を挙げて「〜はありませんか」と確認していく閉鎖型質問中心の手法である。また、対象は既往歴ではなく現在の全身の症状である。
- ×c. エビデンスを体系的にまとめて患者に説明する。
複数の研究結果を一定の手順で網羅的に収集・評価してまとめるのは、根拠に基づく医療(EBM)における系統的レビュー(systematic review)であり、名称が似ているが別物である。システムレビューは患者への説明の手法ではなく、患者から情報を集める病歴聴取の手法である。
- ×d. 医療面接の最後に聴取した病歴の要約を述べる。
聴取した内容を医師がまとめて患者に伝え、理解が正しいか確認するのは面接技法の「要約(summarization)」である。患者との認識のずれを修正し、言い残したことがないかを確かめるために行う。システムレビューも面接の後半で聞き漏らしの確認として行われることが多いが、要約を述べることそのものはシステムレビューではない。
- ○e. 主訴と関係のない症状を含め臓器系統別に病歴を聴取する。
システムレビューの定義そのものである。全身の臓器系統ごとに症状の有無を系統的に問診し、主訴・現病歴・既往歴の聴取では話題に上らなかった症状や問題点を明らかにする。例えば、咳嗽を主訴に来院した患者で体重減少や寝汗が見つかれば、結核や悪性腫瘍を考える手がかりとなる。
医療面接で聴取する主な項目
・主訴:患者が受診した最大の理由を、できるだけ患者の言葉で記載する。 ・現病歴:主訴について、発症時期・様式、部位、性状、程度、経過、増悪・寛解因子、随伴症状などを時系列で聴取する。 ・既往歴:過去の疾患、手術、輸血、外傷、アレルギー歴など。 ・服薬歴:処方薬、市販薬、サプリメントなど。 ・家族歴:血縁者の疾患(遺伝性疾患、悪性腫瘍、生活習慣病など)。 ・社会歴・生活歴:職業、喫煙、飲酒、生活環境、旅行歴、性生活など。 ・システムレビュー:臓器系統別に症状の有無を網羅的に確認する。
システムレビューで尋ねる症状の例
・全身:発熱、体重変化、倦怠感、寝汗 ・呼吸器:咳嗽、喀痰、血痰、呼吸困難 ・循環器:胸痛、動悸、浮腫 ・消化器:食欲、悪心・嘔吐、腹痛、便通異常、吐血・下血 ・泌尿器:排尿回数、排尿時痛、血尿 ・神経:頭痛、めまい、しびれ、脱力
主な面接技法
開放型質問、閉鎖型質問、促し、繰り返し、言い換え、要約、共感、沈黙の活用などがある。
POINT
・システムレビュー=主訴と関係のない症状も含め、臓器系統別に網羅的に症状の有無を聴取する方法。目的は聞き漏らし・見落としの防止。 ・時系列での聴取は現病歴、面接最後のまとめは「要約」、エビデンスの統合は「系統的レビュー」であり、混同しない。
