StudyMed医師国家試験

心拍は「最初が一番速い」わけじゃない―妊娠9週に訪れる胎芽心拍のピーク

第112回医師国家試験 C問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第14問

正常胎芽・胎児において心拍数が最も多い時期はどれか。

  1. a.妊娠6週
  2. b.妊娠9週
  3. c.妊娠16週
  4. d.妊娠28週
  5. e.妊娠40週

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胎芽・胎児の心拍数が妊娠週数とともにどう変わるかを問う問題だ。ポイントは、心拍数が一方向に変化するのではなく「山型」の経過をたどること。その山の頂上がいつかを考えてみよう。
医学生医学生
赤ちゃんは小さいほど心拍が速いイメージがあるので、一番早い妊娠6週が最も速いのかなと思いました。
ドクタードクター
多くの人がそう考えるんだけど、そこが落とし穴なんだ。経腟超音波で心拍動が見え始める妊娠5〜6週ごろの心拍数は、だいたい90〜110/分程度と意外に遅い。心臓の構造や刺激伝導系がまだ未熟だからね。
医学生医学生
成人とあまり変わらないくらいなんですね。そこから速くなっていくんですか。
ドクタードクター
そう。洞結節の自動能が発達するにつれて急速に増えて、妊娠9週前後、おおむね9〜10週で約170〜180/分の最大値に達する。だから正解は妊娠9週だ。
医学生医学生
なぜそこで頭打ちになるんでしょう。生理学の講義で、心拍数は自律神経で調節されると習いましたが。
ドクタードクター
まさにそれが答えだよ。9週前後は心拍数を押し上げる自動能が育つ一方で、ブレーキ役の迷走神経系がまだ十分働いていない。その後、副交感神経系が成熟してくるとブレーキがかかり、心拍数は緩やかに下がっていくんだ。
医学生医学生
では妊娠16週はピークを過ぎて下がり始めたところ、ということですか。
ドクタードクター
その通り。16週ごろでおよそ150/分。「初期から中期は心拍が多い」とあいまいに覚えていると迷いやすいけれど、ピークは中期ではなく妊娠初期の後半にある。
医学生医学生
28週や40週はさらに下がっているんですね。
ドクタードクター
うん。妊娠後半期、28週ごろ以降は約140/分前後で安定し、満期の40週も同程度だ。全経過の中ではむしろ低めの部類になる。この時期の評価は胎児心拍数陣痛図、いわゆるCTGで行うよ。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習でCTGを読む練習をしました。基線の正常範囲は110〜160/分でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。110/分未満を徐脈、160/分を超えるものを頻脈とする。胎児頻脈を見たら、母体の発熱や絨毛膜羊膜炎、胎児低酸素の初期、母体へのリトドリンなどβ刺激薬の投与、胎児の頻脈性不整脈を考える。
医学生医学生
妊娠後半になると一過性頻脈や基線細変動がはっきりしてくるのも、自律神経が成熟するからですか。
ドクタードクター
いい結びつけ方だ。同じ自律神経の成熟が、心拍数の低下とCTGでの反応性の両方に関わっている。もう一つ、妊娠初期の臨床で大事な点も押さえておこう。胎嚢は4〜5週、心拍は5〜6週ごろから確認できるようになり、心拍の確認は生存している正常妊娠の重要な指標になる。
医学生医学生
逆に、初期に心拍がとても遅いと何か意味があるんですか。
ドクタードクター
妊娠初期に著しい徐脈を認める場合は、流産のリスクが高いとされている。ただ初期の心拍数は週数でどんどん変わるから、正確な妊娠週数と合わせて解釈することが欠かせないね。
医学生医学生
「6週で約100、9週で約180のピーク、16週で150、後半は140で安定」と数字の流れで覚えておきます。

まとめ

胎芽の心拍数は、心拍動が確認できる妊娠5〜6週ごろには約90〜110/分と遅く、洞結節の自動能の発達とともに急上昇して妊娠9週前後に約170〜180/分のピークを迎えます。その後は副交感神経(迷走神経)系の成熟によって緩やかに低下し、16週ごろ約150/分、28週以降から満期にかけては約140/分前後で安定します。妊娠後半期の評価にはCTGを用い、基線心拍数の正常範囲は110〜160/分で、頻脈では母体発熱や子宮内感染、β刺激薬投与などを考えます。「早いほど速い」ではなく山型の推移として理解しておくと、妊娠初期の心拍確認からCTG判読まで、自律神経の発達という一本の軸でつながって理解できます。

解答・解説

正解はbです

胎芽・胎児の心拍数は成人より速く、しかも妊娠週数によって大きく変わる。本問はその推移のうち「ピークがいつか」を問う問題である。

心拍数の推移の要点

・経腟超音波で心拍動が確認できるのは妊娠5〜6週ごろで、この時期の心拍数は約90〜110/分と、意外に遅い。 ・その後、心臓の構造と洞結節の自動能が発達するにつれて急速に増加し、妊娠9週前後(おおむね9〜10週)に約170〜180/分の最大値に達する。 ・ピーク以降は、副交感神経(迷走神経)系の成熟によって心拍数を抑える作用が加わり、徐々に低下する。妊娠16週ごろで約150/分、妊娠後半期(28週ごろ以降)から満期にかけては約140/分前後で安定する。 つまり、心拍数は「初期に上昇→9週前後でピーク→以後ゆるやかに低下」という山型の経過をたどる。「妊娠週数が早いほど心拍数が多い」と単純に覚えていると a の6週を選んでしまい、「初期〜中期が多い」とあいまいに覚えていると c の16週と迷う。ピークが妊娠初期の後半(9週前後)にあることを押さえていれば、b が選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  妊娠6週

    誤り。妊娠6週は心拍動が超音波で確認できるようになって間もない時期で、心拍数はおよそ90〜110/分程度にとどまる。心臓の刺激伝導系がまだ未熟なためであり、ここから数週間で急速に増加していく。妊娠初期であっても、最も早い時期が最も速いわけではない点に注意する。

  2. ○b.  妊娠9週

    正しい。胎芽の心拍数は妊娠6週ごろから急上昇し、妊娠9週前後(9〜10週ごろ)に約170〜180/分と生涯で最も速い値になる。これは洞結節の自動能が発達して心拍数を押し上げる一方で、心拍数を抑える迷走神経系の働きがまだ十分に発達していないためと考えられている。この時期を境に、自律神経系の成熟とともに心拍数は低下に転じる。

  3. ×c.  妊娠16週

    誤り。妊娠16週ごろの心拍数はおよそ150/分程度であり、9週前後のピークからすでに低下している。妊娠初期〜中期の心拍数が高いことを漠然と覚えていると迷いやすいが、ピークは中期ではなく妊娠初期の後半にある。

  4. ×d.  妊娠28週

    誤り。妊娠28週ごろには心拍数はおよそ140/分前後まで低下し、その後は満期まで大きく変わらず推移する。この時期以降は胎児心拍数陣痛図(CTG)で評価され、基線心拍数の正常範囲110〜160/分に収まる。

  5. ×e.  妊娠40週

    誤り。妊娠40週(満期)の胎児心拍数は平均して140/分前後であり、28週ごろとほぼ同程度で、むしろ全経過の中ではやや低めである。胎児心拍数陣痛図での基線の正常範囲は110〜160/分で、110/分未満を徐脈、160/分を超えるものを頻脈とする。

胎芽・胎児心拍数のおおよその目安

・妊娠5〜6週:約90〜110/分(心拍動の確認が可能になる時期) ・妊娠9〜10週ごろ:約170〜180/分(最大) ・妊娠16週ごろ:約150/分 ・妊娠28週以降〜満期:約140/分前後で安定

胎児心拍数陣痛図(CTG)の基線心拍数

・正常範囲:110〜160/分 ・徐脈:110/分未満、頻脈:160/分を超える 胎児頻脈の原因には母体発熱・子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)、胎児低酸素の初期、母体への β刺激薬(リトドリン塩酸塩など)投与、胎児頻脈性不整脈などがある。

妊娠初期の心拍確認の意義

経腟超音波で胎嚢(GS)は妊娠4〜5週、胎児心拍は妊娠5〜6週ごろから確認できるようになる。心拍の確認は正常妊娠(生存胎芽)の重要な指標であり、妊娠初期に心拍数が著しく遅い(徐脈)場合は流産のリスクが高いとされる。

週数とともに心拍数が低下する理由

胎児の心拍数は交感神経と副交感神経のバランスで決まる。妊娠が進むにつれて副交感神経(迷走神経)系が成熟し、心拍数を抑える方向に働くため、ピーク後は緩やかに低下する。同じ理由で、妊娠後半期には胎動に伴う一過性頻脈や基線細変動といった自律神経の反応が明瞭になる。

POINT

・胎芽の心拍数は妊娠5〜6週で約90〜110/分と遅く、妊娠9週前後で約170〜180/分のピークとなる。 ・その後は副交感神経系の成熟により低下し、16週ごろ約150/分、28週以降は約140/分前後で安定する。 ・CTGの基線正常範囲は110〜160/分(基本知識として必須)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。