StudyMed医師国家試験

正常な粘膜の下に潜む腫瘍―胃粘膜下腫瘍は「層」で診る

第112回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第11問

胃粘膜下腫瘍の診断に有用なのはどれか。

  1. a.拡大内視鏡
  2. b.色素内視鏡
  3. c.超音波内視鏡
  4. d.カプセル内視鏡
  5. e.ダブルバルーン内視鏡

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胃粘膜下腫瘍を評価するのに適した内視鏡検査を選ぶ問題だ。ポイントは、病変が粘膜の「表面」にあるのか「下」にあるのか。それによって有用な検査がまったく変わってくる。まず、粘膜下腫瘍とはどんな病変だったかな。
医学生医学生
粘膜より深い層から発生する腫瘍で、表面は正常な粘膜に覆われたなだらかな隆起として見える、と習いました。
ドクタードクター
その通り。代表はGIST(消化管間質腫瘍)で、ほかに平滑筋腫、神経鞘腫、脂肪腫、迷入膵、嚢胞などがある。病変の本体が粘膜の下に隠れているというのが最大の特徴だ。そうなると、どんな困りごとが生じると思う?
医学生医学生
内視鏡で表面を見ても正常粘膜しか見えないので、中身がわからない……ということでしょうか。
ドクタードクター
そう。さらに通常の鉗子生検では表層の正常粘膜しか採れないことが多く、組織診断もつきにくい。そこで必要になるのが、粘膜の下まで「透かして見る」検査だ。どれがそれに当たるかな。
医学生医学生
超音波内視鏡だと思います。内視鏡の先端に超音波プローブがついていて、壁の中を描出できるんですよね。
ドクタードクター
正解。超音波内視鏡、いわゆるEUSでは胃壁が5層構造として描出される。内側から、粘膜表層の高エコー、粘膜深層の低エコー、粘膜下層の高エコー、固有筋層の低エコー、漿膜下層・漿膜の高エコーという並びだ。腫瘍がどの層から出ているか、内部エコーはどうか、大きさや壁外への進展はどうかを評価できる。
医学生医学生
消化器内科の実習で、EUSの画像に縞模様のような層が見えていたのを思い出しました。あれが5層構造なんですね。
ドクタードクター
そうだね。たとえばGISTや平滑筋腫は主に第4層の固有筋層に連続する低エコー腫瘤、脂肪腫は第3層の粘膜下層にある高エコー腫瘤、嚢胞は無エコー域として見える。層と内部エコーの組み合わせで、かなり鑑別を絞り込めるんだ。
医学生医学生
でも、拡大内視鏡や色素内視鏡もより詳しく見る検査なので、役に立ちそうに思えます。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。拡大内視鏡は粘膜表面を拡大し、NBIなどと組み合わせて表面の微細構造や微小血管を観察する検査。色素内視鏡はインジゴカルミンで凹凸を強調したりして、表面の性状を際立たせる検査だ。どちらも早期胃癌のような上皮性病変の拾い上げや範囲診断に強いけれど、正常粘膜に覆われた腫瘍本体は見えない。
医学生医学生
「詳しく見る」といっても、表面を詳しく見るか、深さを見るかの違いということですね。
ドクタードクター
まさにそう。では残りの2つ、カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡はどうだろう。
医学生医学生
CBTの勉強で、どちらも小腸を調べる検査として覚えました。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。カプセル内視鏡はカメラ内蔵のカプセルを飲み込んで撮影する検査で、原因不明の消化管出血など小腸病変の検索に使う。胃では観察が不十分になりやすく、生検もできず、壁の中も評価できない。ダブルバルーン内視鏡は2つのバルーンで腸管をたぐり寄せて深部小腸まで挿入し、生検や止血などの処置もできるけれど、胃なら通常の上部内視鏡で十分届くから使う必要がない。
医学生医学生
EUSで層や性状がわかったあと、確定診断はどうするんですか。
ドクタードクター
EUS-FNA、つまり超音波内視鏡下穿刺吸引法で腫瘍から直接組織を採取できる。免疫染色でKIT(CD117)やDOG1が陽性ならGISTと診断できる。平滑筋腫はdesmin陽性でKIT陰性、神経鞘腫はS-100陽性というように、マーカーで区別していくんだ。
医学生医学生
GISTはカハール介在細胞由来で、c-kit遺伝子変異があるから分子標的薬が効く、と病理の講義で習いました。
ドクタードクター
よく結びつけられたね。臨床での扱いも押さえておこう。GISTを疑う粘膜下腫瘍は大きさで方針の目安が変わり、2cm未満で潰瘍形成や辺縁不整、増大傾向がなければ定期的な内視鏡で経過観察、そうした所見があれば精査する。2〜5cmならEUS-FNAなどで組織診断を試み、GISTなら手術を考慮。5cm以上は悪性の可能性が高く手術適応となる。切除不能や再発例にはイマチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬を使う。
医学生医学生
「表面がきれいだから良性」と安心するのではなく、大きさや増大傾向をきちんと追うことが大事なんですね。
ドクタードクター
その姿勢が大切だ。健診の胃内視鏡で偶然見つかることも多いから、所見を見逃さず、EUSでの層の評価とサイズに応じた対応につなげよう。壁外進展や転移の評価にはCTやMRIも併用するよ。

まとめ

胃粘膜下腫瘍は粘膜上皮より深い層から発生し、表面が正常粘膜に覆われるため、表面を観察する拡大内視鏡や色素内視鏡、通常の鉗子生検では診断が難しい病変です。超音波内視鏡(EUS)では胃壁を5層構造として描出でき、腫瘍の発生層や内部エコーから、第4層由来の低エコー腫瘤ならGISTや平滑筋腫、第3層の高エコー腫瘤なら脂肪腫といった鑑別が可能で、EUS-FNAによる組織採取と免疫染色(KIT、DOG1など)で確定診断につなげられます。カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡は主に小腸病変に用いる検査であり、胃病変には用いません。GISTが疑われる場合は大きさや悪性を疑う所見に応じて経過観察か手術かを判断するため、「表面を見る検査」と「深さを見る検査」を使い分ける考え方は、消化管腫瘍の診療全般の基礎になります。

解答・解説

正解はcです

問われていること

胃粘膜下腫瘍(SMT:submucosal tumor)を評価するのに適した内視鏡検査を選ぶ問題である。

考え方

胃粘膜下腫瘍は、粘膜上皮よりも深い層(粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層など)に存在する病変の総称であり、表面は正常な粘膜で覆われた、なだらかな隆起として観察される。代表は消化管間質腫瘍(GIST)で、そのほか平滑筋腫、神経鞘腫、脂肪腫、迷入膵(異所性膵)、嚢胞、悪性リンパ腫、カルチノイド(神経内分泌腫瘍)などがある。 このように病変本体が粘膜の下に隠れているため、粘膜表面の模様や色調の変化をとらえる検査(拡大内視鏡、色素内視鏡)では本体の性状がわからない。また通常の鉗子生検では表層の正常粘膜しか採取できないことが多い。 そこで、内視鏡の先端に付けた超音波プローブで胃壁の層構造を描出できる超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasonography)が用いられる。EUSでは、腫瘍が胃壁のどの層から発生しているか、内部のエコー性状、大きさ、壁外への進展を評価でき、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で組織を採取して病理診断(免疫染色を含む)を得ることもできる。

選択肢考察

  1. ×a.  拡大内視鏡

    拡大内視鏡は粘膜表面を数十倍に拡大し、狭帯域光観察(NBI)などと組み合わせて表面の微細構造や微小血管の形態を観察する検査である。早期胃癌の範囲診断や質的診断など上皮性病変の評価に有用であるが、粘膜の下にある腫瘍の本体は観察できない。

  2. ×b.  色素内視鏡

    色素内視鏡はインジゴカルミン(凹凸を強調)、ルゴール(食道の扁平上皮をヨードで染める)、クリスタルバイオレットなどを散布・染色して粘膜表面の性状を強調する検査であり、上皮性腫瘍の拾い上げや範囲診断に用いる。正常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍の診断には役立たない。

  3. ○c.  超音波内視鏡

    超音波内視鏡は胃壁を5層構造として描出でき、粘膜下腫瘍の発生層、内部エコー、大きさ、境界や形状を評価できる。たとえばGISTや平滑筋腫は主に第4層(固有筋層)に連続する低エコー腫瘤、脂肪腫は第3層(粘膜下層)の高エコー腫瘤、嚢胞は無エコー域として描出される。さらにEUS-FNAで組織を採取すれば、免疫染色(KIT、DOG1など)によるGISTの確定診断も可能であり、粘膜下腫瘍の診断に最も有用な検査である。

  4. ×d.  カプセル内視鏡

    カプセル内視鏡は小型カメラを内蔵したカプセルを飲み込み、消化管を通過しながら撮影する検査で、主に原因不明の消化管出血など小腸病変の検索に用いられる(大腸用もある)。胃内では観察が不十分になりやすく、送気・吸引や生検もできず、粘膜下の構造評価もできないため、胃粘膜下腫瘍の診断には用いない。

  5. ×e.  ダブルバルーン内視鏡

    ダブルバルーン内視鏡はスコープとオーバーチューブの先端に付けた2つのバルーンを交互に膨らませて腸管をたぐり寄せ、深部小腸まで挿入する検査である。小腸病変の観察に加え、生検や止血、ポリープ切除、狭窄拡張などの処置ができる。胃の病変は通常の上部消化管内視鏡で到達でき、本法を用いる必要はない。

超音波内視鏡でみる胃壁の5層構造

第1層(高エコー):粘膜表層(境界エコー) 第2層(低エコー):粘膜深層(粘膜筋板を含む) 第3層(高エコー):粘膜下層 第4層(低エコー):固有筋層 第5層(高エコー):漿膜下層・漿膜

主な胃粘膜下腫瘍とEUS所見の目安

・GIST:第4層に連続する低エコー腫瘤。カハール介在細胞由来で、KIT(CD117)、DOG1陽性。c-kitまたはPDGFRA遺伝子変異をもつ。 ・平滑筋腫:第4層(または第2層)由来の低エコー腫瘤。desmin陽性、KIT陰性。 ・神経鞘腫:第4層由来の低エコー腫瘤。S-100陽性。 ・脂肪腫:第3層の均一な高エコー腫瘤。内視鏡で黄色調、鉗子で押すと凹む(クッションサイン)。 ・迷入膵:第3~4層に存在し、頂部に臍窩(くぼみ)を伴うことがある。 ・嚢胞:無エコー域。

胃粘膜下腫瘍(GIST疑い)の扱いの目安(GIST診療ガイドライン)

・2cm未満:悪性を疑う所見(潰瘍形成、辺縁不整、増大傾向)がなければ年1~2回の内視鏡などで経過観察。所見があればEUS-FNAなどで精査。 ・2~5cm:EUS-FNAなどで組織診断を試み、GISTと診断されれば手術を考慮する。腹腔鏡下切除も選択肢となる。 ・5cm以上:悪性の可能性が高く、手術の適応となる。 ・切除不能・再発GISTにはチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブなど)を用いる。

補助的な検査

腹部CTやMRIは腫瘍の大きさ、壁外進展、転移の評価に用いる。

POINT

・胃粘膜下腫瘍は表面が正常粘膜で覆われるため、表面観察(拡大・色素内視鏡)や通常の生検では診断しにくい。 ・超音波内視鏡(EUS)で発生層・内部エコーを評価し、EUS-FNAで組織診断する。 ・GISTは第4層(固有筋層)由来、KIT・DOG1陽性。 ・カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡は主に小腸病変に用いる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。