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血小板が減ると「どこから」出血する?―ITPで学ぶ一次止血と二次止血の見分け方

第112回医師国家試験 A問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第112回 A問題 第11問

免疫性血小板減少性紫斑病〈特発性血小板減少性紫斑病〉〈ITP〉について正しいのはどれか。

  1. a.先天性疾患である。
  2. b.骨髄の巨核球が減少する。
  3. c.皮下出血を起こしやすい。
  4. d.関節内出血を起こしやすい。
  5. e.筋肉内出血を起こしやすい。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫性血小板減少性紫斑病、いわゆるITPの基本的な性質を問う問題だ。ポイントは2つ。「血小板はどこで減っているのか」と「血小板が減るとどんな出血が起こるのか」。この2軸で考えれば、選択肢はすっきり整理できるよ。まず、ITPはどんな病気だったか覚えているかな。
医学生医学生
血小板に対する自己抗体ができる病気ですよね。名前に「特発性」とあるので、原因不明の生まれつきの病気かと思ったこともあります。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。「特発性」は「原因となる基礎疾患が見当たらない」という意味で、先天性という意味ではない。ITPは血小板膜の糖蛋白、主にGPIIb/IIIaなどに対するIgG自己抗体が産生される、後天性の自己免疫疾患なんだ。だから「先天性疾患である」は誤りだよ。
医学生医学生
小児科実習で、風邪のあとに急に紫斑が出てITPと診断された子を見ました。あれも後天性ということですね。
ドクタードクター
その通り。小児ではウイルス感染やワクチン接種のあとに急性発症して、多くは数か月以内に自然に治る。一方、成人は緩やかに発症して慢性化しやすく、若年〜中年女性と高齢者に多い。生まれつきの血小板減少症としては、Bernard-Soulier症候群やWiskott-Aldrich症候群があるけれど、ITPとは別物だ。
医学生医学生
次は骨髄の巨核球ですね。血小板が減っているなら、作る側の巨核球も減っているのかなと思ったんですが。
ドクタードクター
ここが大事な鑑別点だ。抗体がついた血小板は、主に脾臓のマクロファージに捕まって貪食される。つまり、減る主な原因は「末梢での破壊」なんだ。工場である骨髄は作り続けているから、巨核球は正常か、むしろ増加していることが多い。
医学生医学生
なるほど。巨核球が減るのは、再生不良性貧血や白血病のように、骨髄で作ること自体ができなくなる病気ですね。
ドクタードクター
そう。「産生低下」か「破壊・消費の亢進」かを分けて考えるのは、血球減少全般に使える考え方だよ。ちなみに自己抗体は巨核球にも作用して血小板産生を一部障害することも知られているけれど、巨核球数そのものが減るわけではない、という点を押さえておこう。では本題の出血症状。ITPで起こりやすいのは皮下出血、関節内出血、筋肉内出血のどれだと思う?
医学生医学生
血小板は一次止血を担うので、皮下出血でしょうか。関節内出血は血友病のイメージがあります。
ドクタードクター
正解。止血は、血小板が集まって傷口にふたをする一次止血と、凝固因子がフィブリンで固める二次止血の2段階だったね。血小板が減ると、毛細血管レベルの小さな出血を止められなくなるから、点状出血や紫斑といった皮下出血、鼻出血、歯肉出血、月経過多など、皮膚・粘膜の表在性出血が起こりやすい。
医学生医学生
逆に、凝固因子が足りないと深いところに出血するんですね。
ドクタードクター
そう。血友病のような二次止血の異常では、関節内出血や筋肉内血腫といった深部出血が特徴的だ。ITPは凝固因子が正常なので、関節内出血や筋肉内出血は起こりにくい。だから正解は「皮下出血を起こしやすい」だよ。
医学生医学生
検査でいうと、ITPではPTやAPTTは正常で、出血時間が延長するということですね。CBTの勉強でもこの組み合わせはよく出てきました。
ドクタードクター
よく整理できているね。もう少し臨床的な話をしておこう。一般に血小板数が5万/μL未満になると出血症状が出やすくなり、1万/μL未満では消化管出血や頭蓋内出血といった重篤な出血の危険が高まる。口の中に血豆のような血腫ができていたら、重症のサインとして注意したい。
医学生医学生
診断はどうやってつけるんですか。自己抗体を測れば確定でしょうか。
ドクタードクター
実はITPは除外診断なんだ。採血管のEDTAで血小板が凝集して見かけ上少なくなる偽性血小板減少、薬剤性、SLEなどの膠原病、肝硬変による脾機能亢進、白血病や骨髄異形成症候群などを除外して診断する。骨髄検査は必須ではないけれど、高齢者や非典型例では他疾患の除外のために行われるよ。
医学生医学生
治療はステロイドのイメージがあります。
ドクタードクター
成人ではまずHelicobacter pylori陽性なら除菌療法を考える。日本では除菌で血小板が増える例が多いんだ。そのうえでステロイドが第一選択、効果が不十分ならトロンボポエチン受容体作動薬、リツキシマブ、摘脾などを検討する。重い出血や手術前など急いで血小板を上げたいときは、免疫グロブリン大量静注療法や血小板輸血を使う。また、赤血球に対する自己抗体で起こる自己免疫性溶血性貧血と合併したものはEvans症候群と呼ばれる。関連づけて覚えておこう。

まとめ

免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板膜糖蛋白に対する自己抗体により血小板が主に脾臓で破壊される後天性の自己免疫疾患です。末梢での破壊が主体のため骨髄巨核球は正常〜増加し、産生低下による再生不良性貧血や白血病との重要な鑑別点になります。血小板は一次止血を担うため、その減少では点状出血・紫斑などの皮下出血や鼻出血・歯肉出血といった表在性出血が起こり、関節内出血や筋肉内血腫といった深部出血は凝固因子異常(血友病など)に特徴的です。検査ではPT・APTTは正常で出血時間が延長し、診断は偽性血小板減少や薬剤性、膠原病などを除外して行います。「どこで血球が減るのか」「どの止血段階が障害されるのか」という視点は、出血性疾患全般を整理する土台となります。

解答・解説

正解はcです

疾患の要点

免疫性血小板減少性紫斑病(ITP:immune thrombocytopenia)は、血小板膜糖蛋白(主にGPIIb/IIIaやGPIb/IX)に対する自己抗体(IgG)が産生される後天性の自己免疫疾患である。抗体が結合した血小板は、主に脾臓のマクロファージにFc受容体を介して捕捉・貪食され、血小板寿命が著しく短くなる。さらに自己抗体は骨髄巨核球にも作用し、血小板産生を障害することも知られている。

出血症状の考え方

出血傾向は、どの止血機構が障害されているかで症状の出方が異なる。 ・一次止血(血小板)の異常:皮膚・粘膜の表在性出血が中心。点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血、月経過多など。 ・二次止血(凝固因子)の異常:関節内出血、筋肉内血腫などの深部出血が中心(例:血友病)。 ITPは血小板数のみが減少し凝固因子は正常であるため、典型的には皮下出血(点状出血・紫斑)や粘膜出血をきたす。

骨髄所見

血小板は末梢で破壊されているため、骨髄の巨核球数は正常〜増加する。この点が、骨髄での産生自体が低下する再生不良性貧血や白血病などとの重要な鑑別点である。 これらを踏まえ、各選択肢の正誤を判断する。

選択肢考察

  1. ×a.  先天性疾患である。

    ITPは血小板に対する自己抗体によって起こる後天性の自己免疫疾患である。小児ではウイルス感染やワクチン接種の後に急性発症し、多くは数か月以内に自然寛解する。成人では緩徐に発症し慢性化しやすく、若年〜中年女性と高齢者に多い。先天性の血小板減少症(Bernard-Soulier症候群、Wiskott-Aldrich症候群など)とは区別される。

  2. ×b.  骨髄の巨核球が減少する。

    ITPの主病態は末梢での血小板破壊亢進であり、骨髄の巨核球数は正常ないし増加する。巨核球が減少するのは、再生不良性貧血、白血病などによる骨髄占拠、抗癌薬による骨髄抑制など、産生そのものが低下する病態である。骨髄検査はITPの診断に必須ではないが、高齢者や非典型例では他疾患除外のために行われる。

  3. ○c.  皮下出血を起こしやすい。

    血小板は一次止血(血小板血栓の形成)を担うため、その減少では皮膚・粘膜の毛細血管レベルの出血が起こりやすい。ITPでは点状出血や斑状出血(紫斑)といった皮下出血、鼻出血・歯肉出血・口腔内血腫、月経過多などがみられる。一般に血小板数が5万/μL未満で出血症状が出やすくなり、1万/μL未満では消化管出血や頭蓋内出血など重篤な出血の危険が高まる。

  4. ×d.  関節内出血を起こしやすい。

    関節内出血は凝固因子の異常(二次止血障害)に特徴的な深部出血であり、代表は血友病A(第VIII因子欠乏)・血友病B(第IX因子欠乏)である。凝固因子が正常なITPでは関節内出血は起こりにくい。

  5. ×e.  筋肉内出血を起こしやすい。

    筋肉内血腫も関節内出血と同様に凝固因子異常に典型的な深部出血である(血友病、後天性血友病など)。血小板のみが減少するITPでは起こりにくい。

ITPの病態の整理

・抗血小板自己抗体(PAIgG:血小板関連IgG)が血小板に結合→脾臓などでマクロファージにより貪食→血小板寿命短縮。 ・自己抗体は巨核球からの血小板産生も抑制する。 ・トロンボポエチン(TPO)は肝臓でほぼ一定量産生され、血小板・巨核球に結合して消費されることで血中濃度が決まる。ITPでは巨核球量が保たれるため、血中TPO濃度は正常〜軽度上昇にとどまり、著明に上昇する再生不良性貧血とは対照的である。このことがTPO受容体作動薬が有効である理由の一つである。

検査所見

・血小板数減少(10万/μL未満)、赤血球・白血球は原則正常。 ・PT、APTTなど凝固検査は正常、出血時間は延長。 ・骨髄巨核球は正常〜増加。 ・ITPは除外診断であり、偽性血小板減少(EDTA依存性)、薬剤性、SLEなどの膠原病、肝硬変による脾機能亢進、白血病・骨髄異形成症候群などを除外する。

治療(成人)の概要

・Helicobacter pylori陽性なら除菌療法(日本で有効例が多い)。 ・第一選択:副腎皮質ステロイド。 ・二次治療:TPO受容体作動薬(エルトロンボパグ、ロミプロスチム)、リツキシマブ、摘脾など。 ・緊急時(重篤な出血、手術前など):免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)、血小板輸血。

関連疾患

赤血球に対する自己抗体による自己免疫性溶血性貧血(AIHA)も同様の機序で血球が破壊される。ITPとAIHAが合併したものをEvans症候群という。

出血症状と障害部位の対応

・血小板・血管の異常:点状出血、紫斑、粘膜出血(表在性) ・凝固因子の異常:関節内出血、筋肉内血腫(深部)、外傷後の遅発性出血

POINT

・ITPは後天性の自己免疫疾患(抗血小板自己抗体による末梢での血小板破壊) ・骨髄巨核球は正常〜増加(産生低下ではない) ・血小板異常→皮下・粘膜の表在性出血(点状出血、紫斑、鼻出血) ・凝固因子異常(血友病など)→関節内・筋肉内の深部出血 ・PT・APTTは正常、出血時間は延長

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。