6歳の「ちょっと太りぎみ」にどう向き合う?―薬ではなく、おやつ・テレビ・バランスで変える小児肥満
第111回医師国家試験 I問題 第37問
国試問題にチャレンジ
肥満度20%の単純性肥満と診断された6歳の男児本人とその保護者への説明として正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.「食欲を抑える薬を使いましょう」
- b.「間食でスナック菓子は控えましょう」
- c.「テレビの視聴時間を減らしましょう」
- d.「主食を3食ともパン食にしましょう」
- e.「3大栄養素をバランスよく摂りましょう」
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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医学生まとめ
小児の肥満は性別・年齢・身長別の標準体重に基づく肥満度で評価し、学童では20%以上を肥満、20〜30%未満を軽度とします。基礎疾患のない単純性肥満の治療は食事療法・運動療法・行動療法が柱であり、スナック菓子など余分なエネルギーを減らし、テレビなどのスクリーンタイムを減らして活動量を増やし、3大栄養素をバランスよく摂るよう指導します。食欲抑制薬は成人の高度肥満症に限られ、小児の軽度肥満には用いず、主食を米からパンに替えてもエネルギーは減らないため、食事全体の量とバランスを見直すことが重要です。成長期であることを踏まえ、体重を急に減らすのではなく身長の伸びとともに肥満度を下げることを目標に、家族ぐるみで取り組みます。低身長や身長の伸びの低下を伴う場合の症候性肥満の除外や、合併症を伴う肥満症の見極めも含め、小児の生活習慣病予防の基本となる考え方です。
解答・解説
正解はb, c, eです
小児の単純性肥満に対する生活指導の基本を問う問題である。
肥満度とは
小児では成長に伴って体格が大きく変わるため、成人のようにBMIの固定した基準値で判定するのではなく、性別・年齢・身長ごとの標準体重を用いた肥満度で評価することが多い。 肥満度(%)=(実測体重−標準体重)÷標準体重×100 学童では肥満度20%以上を肥満とし、20〜30%未満を軽度、30〜50%未満を中等度、50%以上を高度肥満とする。本児の肥満度20%は肥満の範囲に入るが、程度は軽い。
単純性肥満の考え方
単純性(原発性)肥満は、内分泌疾患や遺伝性疾患などの基礎疾患がなく、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで生じる肥満であり、小児肥満の大部分を占める。症候性(二次性)肥満は原疾患の治療が優先されるのに対し、単純性肥満の治療は生活習慣の改善が中心となる。
小児肥満の治療方針
小児は成長期にあるため、成人のような厳しい減量ではなく、「身長が伸びる間に体重の増加を抑え、肥満度を徐々に下げる」ことを目標とする。柱は次の三つである。 (1) 食事療法: 成長に必要な栄養を確保しつつ、余分なエネルギー(菓子類・甘い飲料など)を減らす。 (2) 運動療法: 外遊び・歩行など日常の身体活動を増やし、座って過ごす時間(テレビ・ゲーム・スマートフォン)を減らす。 (3) 行動療法: 家族ぐるみで生活習慣を見直し、本人が続けられる目標を立てる。 薬物療法は、軽度の単純性肥満の6歳児には適応とならない。
選択肢考察
- ×a. 「食欲を抑える薬を使いましょう」
わが国で承認されている食欲抑制薬(マジンドール)は、食事療法・運動療法で効果が不十分な成人の高度肥満症に限って短期間用いられる薬剤であり、小児への安全性は確立していない。依存性や中枢神経系の副作用もある。小児の単純性肥満、しかも肥満度20%という軽度の肥満では、まず食事・運動・生活習慣の改善を行うのが原則であり、薬物療法から始めるのは不適切である。
- ○b. 「間食でスナック菓子は控えましょう」
スナック菓子は脂質と糖質が多く、少量でもエネルギー量が高い一方で、成長に必要なたんぱく質・ビタミン・ミネラルは少ない。間食のスナック菓子や清涼飲料水を減らすことは、成長に必要な栄養素を損なわずに余分な摂取エネルギーを減らす、小児に適した方法である。間食をとる場合は、時間と量を決め、果物や乳製品など栄養価の高いものに置き換えるよう指導するとよい。
- ○c. 「テレビの視聴時間を減らしましょう」
テレビ・ゲーム・スマートフォンなどの画面を見ている時間(スクリーンタイム)が長いと、身体活動量が減って消費エネルギーが低下するうえ、視聴中のながら食べや食品広告による間食の増加にもつながる。座って過ごす時間を減らし、外遊びや歩行などで日常の活動量を増やすことは、小児肥満に対する運動療法・行動療法の基本である。6歳児では、特別な運動よりも楽しく続けられる遊びを通して体を動かす工夫が勧められる。
- ×d. 「主食を3食ともパン食にしましょう」
米飯もパンも主食として炭水化物を供給する点は同じであり、パンに替えても摂取エネルギーが減るわけではない。むしろパン食ではバターやジャムなどを付けたり、菓子パン・調理パンを選んだりすることで脂質・糖質が増えやすく、副食との組み合わせも洋風に偏りやすい。重要なのは主食の種類ではなく、主食・副食を含めた食事全体の量と栄養バランスである。
- ○e. 「3大栄養素をバランスよく摂りましょう」
3大栄養素とは、エネルギー源となる炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質である。小児は成長期にあり、極端な制限食や特定の栄養素だけを減らす食事は成長障害や体調不良を招くおそれがある。摂取エネルギーを適正にしつつ、3大栄養素に加えてビタミン・ミネラルも含めバランスよく摂るよう指導する。朝食を抜かず、3食を規則正しくとることも大切である。
小児肥満の分類
・単純性(原発性)肥満: 基礎疾患のない、過食・運動不足などの生活習慣による肥満。小児肥満の大部分を占める。身長の伸びは良好なことが多い。 ・症候性(二次性)肥満: 内分泌疾患(甲状腺機能低下症、Cushing症候群、成長ホルモン分泌不全症など)、遺伝性疾患(Prader-Willi症候群など)、視床下部障害、薬剤(副腎皮質ステロイドなど)によるもの。低身長や身長の伸びの低下、知的障害、特徴的な外表奇形などを伴う場合に疑う。
肥満と肥満症
小児でも、肥満に伴って高血圧、脂質異常症、耐糖能異常、脂肪肝、睡眠時無呼吸などの健康障害を合併するもの、あるいは腹囲の増大(内臓脂肪蓄積)があり医学的に減量が必要なものを「肥満症」として区別し、積極的な介入の対象とする。小児期の肥満は成人肥満やメタボリックシンドロームへ移行しやすく、早期からの生活習慣改善が重要である。
指導のポイント
・目標: 体重を急に減らすのではなく、体重増加を抑えて身長の伸びとともに肥満度を下げる。 ・食事: 3食規則正しく、朝食をとる。菓子・甘い飲料を控える。よく噛んでゆっくり食べる。極端な制限はしない。 ・運動: 日常の身体活動(外遊び、通学時の歩行、手伝い)を増やし、スクリーンタイムを減らす。 ・行動療法: 体重や生活のグラフ化(記録)、達成可能な目標設定、できたことを褒める。 ・家族の関与: 子どもの食環境は家族が決めるため、家族全体で生活習慣を改善する。本人を責めたり、体型をからかったりしないよう配慮する。 ・薬物療法・外科治療: 小児の単純性肥満では原則として行わない。
POINT
・小児の肥満は肥満度((実測体重−標準体重)÷標準体重×100)で評価し、学童では20%以上を肥満とする。 ・単純性肥満の治療は食事療法・運動療法・行動療法が柱で、家族ぐるみで取り組む。 ・成長期であるため、極端な食事制限は避け、3大栄養素のバランスを保ちつつ余分なエネルギー(菓子・甘い飲料)を減らす。 ・テレビ・ゲームなどの座位時間を減らし、日常の身体活動を増やす。 ・食欲抑制薬は成人の高度肥満症に限られ、小児の軽度肥満には用いない。 ・主食の種類(米かパンか)よりも、食事全体の量と栄養バランスが重要。
