パソコン仕事のあとの「締めつけられる頭」―VDT作業と緊張型頭痛
第111回医師国家試験 I問題 第25問
国試問題にチャレンジ
VDT作業が誘因となるのはどれか。
- a.片頭痛
- b.群発頭痛
- c.緊張型頭痛
- d.三叉神経痛
- e.舌咽神経痛
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
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ドクターまとめ
VDT作業では、長時間の同一姿勢による首・肩の筋緊張、画面の凝視による眼精疲労、精神的ストレスが重なり、両側性・非拍動性の締めつけるような痛みを特徴とする緊張型頭痛の誘因となります。片頭痛はストレスからの解放や睡眠の過不足・月経など、群発頭痛は群発期中の飲酒、三叉神経痛は洗顔やひげそりなど顔面への刺激、舌咽神経痛は嚥下などがそれぞれの誘因で、VDT作業とは直接結びつきません。VDT作業による健康障害には眼精疲労・ドライアイ、頸肩腕症候群、腰痛、精神症状などもあり、一連続作業を1時間以内とし10〜15分の作業休止をとるといった作業管理が対策の基本です。頭痛を誘因から整理する視点と、産業保健のガイドラインの知識を組み合わせることで、診療と職場の健康管理の両面に役立てられます。
解答・解説
正解はcです
問われていること
VDT(visual display terminal)作業、すなわちパソコンなどのディスプレイを見ながら長時間行う作業が、どの頭痛・神経痛の誘因となるかを問う問題である。
考え方
VDT作業では、次のような負担が長時間続く。 ・同じ座位姿勢で頭を前に出し、首・肩・背中の筋肉を持続的に緊張させる。 ・画面を凝視することで、眼精疲労(眼の疲れ、かすみ)やまばたきの減少によるドライアイが生じる。 ・作業密度や時間的な制約による精神的ストレスがかかる。 こうした頭頸部・肩の筋緊張、眼精疲労、精神的ストレスはいずれも、頭を締めつけられるような両側性の頭痛を特徴とする緊張型頭痛の代表的な誘因である。一方、片頭痛・群発頭痛・三叉神経痛・舌咽神経痛は、それぞれ別の発症機序と特徴的な誘因をもち、VDT作業との直接の結びつきはない。
選択肢考察
- ×a. 片頭痛
誤り。片頭痛は、三叉神経血管系の活性化によって拍動性の頭痛が発作的に起こる一次性頭痛で、悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴う。誘因としてはストレスからの解放(週末頭痛)、睡眠の過不足、月経、空腹、アルコール(特に赤ワイン)、天候の変化、強い光などが知られる。発作中は光をまぶしく感じるが、VDT作業そのものが典型的な誘因とはされていない。
- ×b. 群発頭痛
誤り。群発頭痛は、片側の眼窩周囲に激烈な痛みが15分~3時間程度続く発作が、一定期間(群発期)に連日起こる頭痛で、患側の流涙・結膜充血・鼻漏・縮瞳や眼瞼下垂(Horner徴候)を伴う。視床下部の機能異常と、三叉神経血管系から放出されるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの神経ペプチドが関与すると考えられている。群発期中の誘因は飲酒やニトログリセリンなどの血管拡張物質であり、VDT作業は関係しない。
- ○c. 緊張型頭痛
正しい。VDT作業では、長時間の同一姿勢による首・肩の筋肉の持続的緊張(肩こり)、画面の凝視による眼精疲労、精神的ストレスが重なる。これらは頭部を締めつけるような、あるいは圧迫されるような非拍動性・両側性の頭痛である緊張型頭痛の代表的な誘因であり、VDT作業者の訴えとしてよくみられる。
- ×d. 三叉神経痛
誤り。三叉神経痛は、三叉神経の支配領域(主に第2枝・第3枝領域)に、電撃様の激痛が数秒~2分程度、繰り返し出現する疾患である。多くは三叉神経根が脳幹への入口付近で血管(上小脳動脈など)に圧迫されることで起こる。洗顔・ひげそり・歯みがき・会話・咀嚼など、顔面の誘発点(トリガーゾーン)へのわずかな刺激で発作が誘発されるのが特徴であり、VDT作業とは関係がない。
- ×e. 舌咽神経痛
誤り。舌咽神経痛は、舌咽神経の支配領域である咽頭・扁桃・舌根部から耳の奥にかけて、刺すような短い激痛が繰り返し起こる疾患である。嚥下(特に冷たい・熱い・酸っぱい・甘い飲食物)、会話、あくび、咳、くしゃみなどが誘因となる。VDT作業とは関係がない。
VDT作業と健康障害
VDT作業による心身の不調はVDT症候群(テクノストレス)とよばれ、以下に大別される。 ・眼の症状:眼精疲労、視力低下感、かすみ目、ドライアイ ・筋骨格系の症状:頸肩腕症候群(首・肩・腕のこりや痛み、しびれ)、腰痛 ・その他:頭痛(緊張型頭痛)、倦怠感、睡眠障害、抑うつ・不安などの精神症状
職場での対策
厚生労働省は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2002年)を定め、2019年にはタブレットやスマートフォンの普及を踏まえて「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に改めた。主な内容は次のとおりである。 ・作業管理:一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の作業までに10~15分の作業休止を設け、その間にも1~2回の小休止をとる。 ・作業環境管理:ディスプレイ画面上の照度は500ルクス以下、書類・キーボード上は300ルクス以上を目安とし、グレア(まぶしさ・映り込み)を防ぐ。画面までの視距離は概ね40cm以上とする。 ・健康管理:配置前と定期の健康診断で、眼の症状や筋骨格系の症状などを確認する。 ・労働衛生教育。
一次性頭痛の比較
片頭痛:片側性(両側のこともある)・拍動性、中等度~重度、4~72時間持続、体動で悪化、悪心・嘔吐、光・音過敏を伴う。若年女性に多い。急性期治療はトリプタンなど。 緊張型頭痛:両側性・非拍動性(締めつけ感・圧迫感)、軽度~中等度、30分~7日持続、日常動作で悪化しない。悪心・嘔吐はなく、光過敏と音過敏はあってもどちらか一方まで。最も頻度が高い一次性頭痛である。対策はストレッチ・姿勢改善・休息、鎮痛薬など。 群発頭痛:片側の眼窩周囲、激烈、15~180分持続、群発期に連日発作、同側の自律神経症状を伴い、落ち着きなく動き回る。20~40歳代の男性に多い。急性期治療は純酸素吸入やスマトリプタン皮下注射である。
神経痛
三叉神経痛・舌咽神経痛はいずれも、支配領域に短時間の電撃様・刺すような痛みが反復する。多くは神経根の血管圧迫による特発性で、カルバマゼピンが第一選択薬であり、難治例には微小血管減圧術を検討する。腫瘍や多発性硬化症などによる症候性のものもある。
POINT
・VDT作業は首・肩の筋緊張、眼精疲労、精神的ストレスを介して緊張型頭痛を起こす。 ・VDT作業による障害には眼精疲労・ドライアイ、頸肩腕症候群、腰痛、精神症状などがある。 ・各頭痛・神経痛の誘因:片頭痛はストレスからの解放・睡眠の過不足・月経など、群発頭痛は群発期中の飲酒、三叉神経痛は洗顔・ひげそり・咀嚼など顔面への刺激、舌咽神経痛は嚥下など。 ・作業管理の目安:一連続作業は1時間以内、その後10~15分の作業休止をとる。
