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パソコン仕事のあとの「締めつけられる頭」―VDT作業と緊張型頭痛

第111回医師国家試験 I問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第111回 I問題 第25問

VDT作業が誘因となるのはどれか。

  1. a.片頭痛
  2. b.群発頭痛
  3. c.緊張型頭痛
  4. d.三叉神経痛
  5. e.舌咽神経痛

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ディスプレイを見ながら長時間働くVDT作業が、どの頭痛や神経痛の引き金になるかを問う問題だ。ポイントは、VDT作業が体にどんな負担をかけるのかを具体的に思い浮かべること。そうすれば、それぞれの頭痛の誘因と自然に結びつくよ。
医学生医学生
VDTはvisual display terminalの略ですよね。公衆衛生の講義で、産業保健の分野として習いました。
ドクタードクター
その通り。では、パソコンの前に何時間も座っていると、体にはどんなことが起こるかな。
医学生医学生
肩がこって、目が疲れます。CBTの勉強でずっと画面を見ていたときは、夕方になると頭が重くなりました。
ドクタードクター
まさにそれが答えにつながる。同じ姿勢で頭を前に突き出し続けると、首・肩・背中の筋肉が持続的に緊張する。画面を凝視すれば眼精疲労が起こり、まばたきも減ってドライアイになる。さらに締め切りなどの精神的ストレスも加わる。筋緊張、眼精疲労、精神的ストレスの3つは、どれも緊張型頭痛の代表的な誘因なんだ。
医学生医学生
緊張型頭痛は、頭全体をはちまきで締めつけられるような痛みでしたよね。
ドクタードクター
そう。両側性で拍動しない、締めつけ感や圧迫感のある軽度〜中等度の頭痛だ。日常の動作で悪化せず、悪心や嘔吐も伴わない。一次性頭痛のなかで最も多いタイプでもある。だから正解は緊張型頭痛だ。ほかの選択肢も、誘因の違いという視点で見ていこう。
医学生医学生
片頭痛も、画面がまぶしいと悪くなりそうな気がして迷いました。
ドクタードクター
いい引っかかりどころだね。片頭痛は発作中に光過敏があるから、まぶしい画面はつらく感じる。でもそれは発作中の症状であって、VDT作業そのものが典型的な誘因というわけではない。片頭痛の誘因として知られるのは、ストレスから解放された週末、睡眠の過不足、月経、空腹、赤ワインなどのアルコール、天候の変化などだ。
医学生医学生
ストレスの最中ではなく、解放されたときに起こるというのが緊張型頭痛との違いなんですね。群発頭痛はどうでしょう。
ドクタードクター
群発頭痛は、片側の眼の奥がえぐられるように痛む発作が、群発期に連日起こる頭痛だ。同じ側の流涙や結膜充血、鼻漏、Horner徴候を伴い、痛みでじっとしていられない。誘因は群発期中の飲酒やニトログリセリンのような血管拡張物質で、VDT作業とは関係しない。
医学生医学生
神経内科の実習で、20〜30代の男性が「毎晩同じ時間に目の奥が痛くなる」と受診していたのを思い出しました。
ドクタードクター
典型的だね。治療は純酸素吸入やスマトリプタンの皮下注射が知られている。次に三叉神経痛と舌咽神経痛だ。この2つは頭痛というより、神経の支配領域に起こる神経痛だよ。
医学生医学生
三叉神経痛は、洗顔やひげそりで顔に電気が走るような痛みが出るんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。顔のトリガーゾーンへのわずかな刺激で、数秒〜2分ほどの電撃様の激痛が繰り返し起こる。多くは脳幹への入口付近で、三叉神経根が上小脳動脈などの血管に圧迫されることが原因だ。舌咽神経痛は咽頭や舌根から耳の奥にかけての刺すような痛みで、嚥下や会話、あくびなどで誘発される。どちらもVDT作業とは結びつかない。治療はどちらもカルバマゼピンが第一選択で、難治例では微小血管減圧術を考える。
医学生医学生
頭痛や神経痛はそれぞれ誘因がはっきり違うので、誘因から逆に考えると整理しやすいですね。
ドクタードクター
その発想が大事だ。最後に産業保健の視点も押さえておこう。VDT作業による心身の不調はVDT症候群とよばれ、眼の症状、頸肩腕症候群や腰痛などの筋骨格系の症状、頭痛や倦怠感、抑うつなどの精神症状が含まれる。国はガイドラインを定めていて、2019年にはタブレットやスマートフォンの普及を踏まえて情報機器作業のガイドラインに改められた。
医学生医学生
具体的にはどんな対策があるんですか。
ドクタードクター
作業管理としては、一連続の作業時間が1時間を超えないようにし、次の作業までに10〜15分の作業休止を挟み、その間にも小休止をとる。作業環境では画面の照度やグレアに配慮し、画面との距離は概ね40cm以上とする。さらに配置前や定期の健康診断で眼や筋骨格系の症状を確認する。外来で緊張型頭痛を診たら、鎮痛薬だけでなく、働き方や姿勢、休憩のとり方まで聞くことが再発予防につながるよ。
医学生医学生
鎮痛薬を飲み続けると薬剤の使用過多による頭痛になることもあるので、生活面の改善が大切なんですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。ストレッチや姿勢の改善、適度な休息を組み合わせるのが基本だ。

まとめ

VDT作業では、長時間の同一姿勢による首・肩の筋緊張、画面の凝視による眼精疲労、精神的ストレスが重なり、両側性・非拍動性の締めつけるような痛みを特徴とする緊張型頭痛の誘因となります。片頭痛はストレスからの解放や睡眠の過不足・月経など、群発頭痛は群発期中の飲酒、三叉神経痛は洗顔やひげそりなど顔面への刺激、舌咽神経痛は嚥下などがそれぞれの誘因で、VDT作業とは直接結びつきません。VDT作業による健康障害には眼精疲労・ドライアイ、頸肩腕症候群、腰痛、精神症状などもあり、一連続作業を1時間以内とし10〜15分の作業休止をとるといった作業管理が対策の基本です。頭痛を誘因から整理する視点と、産業保健のガイドラインの知識を組み合わせることで、診療と職場の健康管理の両面に役立てられます。

解答・解説

正解はcです

問われていること

VDT(visual display terminal)作業、すなわちパソコンなどのディスプレイを見ながら長時間行う作業が、どの頭痛・神経痛の誘因となるかを問う問題である。

考え方

VDT作業では、次のような負担が長時間続く。 ・同じ座位姿勢で頭を前に出し、首・肩・背中の筋肉を持続的に緊張させる。 ・画面を凝視することで、眼精疲労(眼の疲れ、かすみ)やまばたきの減少によるドライアイが生じる。 ・作業密度や時間的な制約による精神的ストレスがかかる。 こうした頭頸部・肩の筋緊張、眼精疲労、精神的ストレスはいずれも、頭を締めつけられるような両側性の頭痛を特徴とする緊張型頭痛の代表的な誘因である。一方、片頭痛・群発頭痛・三叉神経痛・舌咽神経痛は、それぞれ別の発症機序と特徴的な誘因をもち、VDT作業との直接の結びつきはない。

選択肢考察

  1. ×a.  片頭痛

    誤り。片頭痛は、三叉神経血管系の活性化によって拍動性の頭痛が発作的に起こる一次性頭痛で、悪心・嘔吐や光過敏・音過敏を伴う。誘因としてはストレスからの解放(週末頭痛)、睡眠の過不足、月経、空腹、アルコール(特に赤ワイン)、天候の変化、強い光などが知られる。発作中は光をまぶしく感じるが、VDT作業そのものが典型的な誘因とはされていない。

  2. ×b.  群発頭痛

    誤り。群発頭痛は、片側の眼窩周囲に激烈な痛みが15分~3時間程度続く発作が、一定期間(群発期)に連日起こる頭痛で、患側の流涙・結膜充血・鼻漏・縮瞳や眼瞼下垂(Horner徴候)を伴う。視床下部の機能異常と、三叉神経血管系から放出されるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの神経ペプチドが関与すると考えられている。群発期中の誘因は飲酒やニトログリセリンなどの血管拡張物質であり、VDT作業は関係しない。

  3. ○c.  緊張型頭痛

    正しい。VDT作業では、長時間の同一姿勢による首・肩の筋肉の持続的緊張(肩こり)、画面の凝視による眼精疲労、精神的ストレスが重なる。これらは頭部を締めつけるような、あるいは圧迫されるような非拍動性・両側性の頭痛である緊張型頭痛の代表的な誘因であり、VDT作業者の訴えとしてよくみられる。

  4. ×d.  三叉神経痛

    誤り。三叉神経痛は、三叉神経の支配領域(主に第2枝・第3枝領域)に、電撃様の激痛が数秒~2分程度、繰り返し出現する疾患である。多くは三叉神経根が脳幹への入口付近で血管(上小脳動脈など)に圧迫されることで起こる。洗顔・ひげそり・歯みがき・会話・咀嚼など、顔面の誘発点(トリガーゾーン)へのわずかな刺激で発作が誘発されるのが特徴であり、VDT作業とは関係がない。

  5. ×e.  舌咽神経痛

    誤り。舌咽神経痛は、舌咽神経の支配領域である咽頭・扁桃・舌根部から耳の奥にかけて、刺すような短い激痛が繰り返し起こる疾患である。嚥下(特に冷たい・熱い・酸っぱい・甘い飲食物)、会話、あくび、咳、くしゃみなどが誘因となる。VDT作業とは関係がない。

VDT作業と健康障害

VDT作業による心身の不調はVDT症候群(テクノストレス)とよばれ、以下に大別される。 ・眼の症状:眼精疲労、視力低下感、かすみ目、ドライアイ ・筋骨格系の症状:頸肩腕症候群(首・肩・腕のこりや痛み、しびれ)、腰痛 ・その他:頭痛(緊張型頭痛)、倦怠感、睡眠障害、抑うつ・不安などの精神症状

職場での対策

厚生労働省は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2002年)を定め、2019年にはタブレットやスマートフォンの普及を踏まえて「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」に改めた。主な内容は次のとおりである。 ・作業管理:一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の作業までに10~15分の作業休止を設け、その間にも1~2回の小休止をとる。 ・作業環境管理:ディスプレイ画面上の照度は500ルクス以下、書類・キーボード上は300ルクス以上を目安とし、グレア(まぶしさ・映り込み)を防ぐ。画面までの視距離は概ね40cm以上とする。 ・健康管理:配置前と定期の健康診断で、眼の症状や筋骨格系の症状などを確認する。 ・労働衛生教育。

一次性頭痛の比較

片頭痛:片側性(両側のこともある)・拍動性、中等度~重度、4~72時間持続、体動で悪化、悪心・嘔吐、光・音過敏を伴う。若年女性に多い。急性期治療はトリプタンなど。 緊張型頭痛:両側性・非拍動性(締めつけ感・圧迫感)、軽度~中等度、30分~7日持続、日常動作で悪化しない。悪心・嘔吐はなく、光過敏と音過敏はあってもどちらか一方まで。最も頻度が高い一次性頭痛である。対策はストレッチ・姿勢改善・休息、鎮痛薬など。 群発頭痛:片側の眼窩周囲、激烈、15~180分持続、群発期に連日発作、同側の自律神経症状を伴い、落ち着きなく動き回る。20~40歳代の男性に多い。急性期治療は純酸素吸入やスマトリプタン皮下注射である。

神経痛

三叉神経痛・舌咽神経痛はいずれも、支配領域に短時間の電撃様・刺すような痛みが反復する。多くは神経根の血管圧迫による特発性で、カルバマゼピンが第一選択薬であり、難治例には微小血管減圧術を検討する。腫瘍や多発性硬化症などによる症候性のものもある。

POINT

・VDT作業は首・肩の筋緊張、眼精疲労、精神的ストレスを介して緊張型頭痛を起こす。 ・VDT作業による障害には眼精疲労・ドライアイ、頸肩腕症候群、腰痛、精神症状などがある。 ・各頭痛・神経痛の誘因:片頭痛はストレスからの解放・睡眠の過不足・月経など、群発頭痛は群発期中の飲酒、三叉神経痛は洗顔・ひげそり・咀嚼など顔面への刺激、舌咽神経痛は嚥下など。 ・作業管理の目安:一連続作業は1時間以内、その後10~15分の作業休止をとる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。