StudyMed医師国家試験

乳幼児健診はどこでやる?―市町村保健センターと保健所の役割分担を整理する

第111回医師国家試験 G問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第7問

市町村保健センターの業務はどれか。

  1. a.夜間・休日の診療
  2. b.乳幼児の健康診査
  3. c.要支援,要介護の認定
  4. d.食中毒発生時の原因調査
  5. e.病院運営についての助言

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は地域保健を担う行政機関の役割分担を問う問題だよ。ポイントは「市町村保健センター」と「保健所」の違い。住民に身近なサービスなのか、専門的・広域的な業務なのか、という軸で選択肢を見ていくと迷わなくなる。
医学生医学生
正直、保健所と保健センターの違いがあいまいです。公衆衛生の講義でも名前が似ていて混同しました。
ドクタードクター
多くの人がそこでつまずくね。まず共通点から。どちらも地域保健法に基づく施設なんだ。違いは設置主体と性格。保健所は都道府県、政令指定都市、中核市、特別区などが必ず設置する機関で、所長は原則として医師。一方の市町村保健センターは市町村が任意で設置する施設で、所長が医師である必要はなく、保健師や管理栄養士が中心になって働いている。
医学生医学生
任意設置なのに、実際にはほとんどの市町村にあるんですよね。
ドクタードクター
その通り。役割をひと言でいえば、保健センターは住民に最も身近な「対人保健サービスの拠点」。健康相談、保健指導、健康診査を直接住民に提供する場所だ。保健所は食品衛生や環境衛生の監視指導、感染症対策、精神保健や難病など、専門性や広域性の高い業務を担い、市町村を技術的に支援する立場にある。
医学生医学生
そうすると、乳幼児の健康診査は身近なサービスなので保健センターでしょうか。地域医療実習で保健センターの3歳児健診を見学したことがあります。
ドクタードクター
正解だよ。母子保健法で、1歳6か月児健診と3歳児健診の実施が市町村に義務づけられていて、乳児健診も市町村が行う。その会場になるのが多くの場合保健センターだ。発育・発達の確認、疾病や障害の早期発見、そして育児相談の機会にもなる。では、他の選択肢も確認しよう。夜間・休日の診療はどうかな。
医学生医学生
「センター」という名前なので、休日夜間急患センターと同じようなものかと一瞬思いました。
ドクタードクター
名前が似ているからこそのひっかけだね。保健センターは予防や健康づくりのための施設で、治療をする医療機関ではない。夜間・休日の診療は、休日夜間急患センターや在宅当番医制といった初期救急医療体制が担っているんだ。
医学生医学生
要支援・要介護の認定は市町村がやる仕事だった気がするので、保健センターでもいいのかなと思ったんですが。
ドクタードクター
鋭いところに気づいたね。確かに介護保険の保険者は市町村で、認定も市町村が行う。ただし流れとしては、訪問調査とコンピュータによる一次判定、主治医意見書をもとに、市町村に置かれる介護認定審査会が二次判定を行い、その結果で市町村が認定する。これは介護保険の事務であって、保健センターの業務ではないんだ。「市町村の仕事=保健センターの仕事」ではない点に注意しよう。
医学生医学生
食中毒の原因調査は保健所ですよね。医師が届け出る先も保健所長だったと思います。
ドクタードクター
よく覚えているね。食品衛生法では、食中毒患者を診断した医師は直ちに最寄りの保健所長へ届け出る。届出を受けた保健所が聞き取りや原因食品・施設の調査、検体検査を行う。飲食店の営業許可や監視指導と同じく、典型的な保健所業務だ。
医学生医学生
病院運営への助言も、専門的な内容なので保健センターではなさそうです。
ドクタードクター
そう、保健センターは住民への対人サービスの施設だから、医療機関の運営には関わらない。ちなみに医療法に基づく病院への立入検査、いわゆる医療監視は都道府県などが保健所を通じて行うけれど、これは法令を守っているかの確認であって、経営や運営の助言とは別物だよ。
医学生医学生
身近で頻度の高い対人サービスは市町村、監視や調査、専門的で広域的な業務は保健所、という整理ですね。
ドクタードクター
その軸で考えれば大抵の問題は解ける。発展として、市町村の業務をもう少し挙げておこう。母子健康手帳の交付、妊婦健診、乳児家庭全戸訪問、がん検診や健康教育、それに予防接種法に基づく定期接種も実施主体は市町村だ。保健所のほうは感染症の発生届の受理と積極的疫学調査、結核対策、精神保健福祉、難病対策、人口動態統計などが代表的だね。
医学生医学生
臨床に出たら、感染症や食中毒の届出で保健所とやり取りすることになりそうですね。
ドクタードクター
まさにそう。医師が届出を出すのは保健所、発達が気になる親子や産後に不安を抱える母親をつなぐ先は保健センターの保健師、というように、患者さんを地域につなぐときにこの役割分担の理解が生きてくる。高齢者の総合相談なら、市町村が設置する地域包括支援センターも窓口になるよ。

まとめ

市町村保健センターは地域保健法に基づき市町村が任意に設置する施設で、健康相談・保健指導・健康診査など住民に身近な対人保健サービスを担い、母子保健法に基づく乳幼児健康診査(1歳6か月児・3歳児健診など)はその代表的な業務です。これに対し保健所は都道府県や政令指定都市などが必ず設置し、原則として医師が所長を務め、食中毒の原因調査、感染症対策、医療監視など専門的・広域的な業務を担います。夜間・休日診療は休日夜間急患センターなどの医療機関、要介護認定は介護認定審査会の判定を経て市町村が行う介護保険の事務であり、いずれも保健センターの業務ではありません。「身近な対人サービスは市町村、専門的・広域的業務は保健所」という軸で整理しておくと、試験だけでなく、届出や患者さんを地域資源につなぐ臨床の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

地域保健を担う行政機関のうち、市町村保健センターの役割を、保健所や他の機関の業務と区別できるかを問う問題である。

市町村保健センターとは

市町村保健センターは、地域保健法に基づいて市町村が設置できる施設である(設置は任意だが、ほとんどの市町村に置かれている)。地域保健法では、住民に対して健康相談、保健指導、健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行うための施設と位置づけられている。住民に最も身近なところで、乳幼児から高齢者までの対人保健サービスを直接提供する拠点であり、母子保健や成人・高齢者の健康づくりの中心となる。所長が医師である必要はなく、主に保健師、管理栄養士などが業務を担う。

保健所との違い

保健所は都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置する機関で、所長は原則として医師である。食品衛生・環境衛生・医事薬事に関する監視指導、感染症対策、食中毒の調査、精神保健や難病など専門性・広域性の高い業務を担い、市町村への技術的支援も行う。

考え方

「住民に身近で、頻度の高い一般的な対人サービス(健診・相談・保健指導・予防接種など)は市町村」「専門的・広域的・技術的な業務や監視・調査は保健所」と整理すると判断しやすい。乳幼児健康診査は母子保健法に基づき市町村が実施する代表的な対人サービスであり、市町村保健センターの業務である。

選択肢考察

  1. ×a.  夜間・休日の診療

    市町村保健センターは保健サービス(予防・健康づくり)の拠点であり、診療(治療)を行う医療機関ではない。夜間・休日の診療は、休日夜間急患センターや在宅当番医制など、地域の初期救急医療体制が担う。

  2. ○b.  乳幼児の健康診査

    母子保健法では、市町村に1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査の実施が義務づけられており、乳児健康診査なども市町村が行う。これらは市町村保健センターで実施されることが多く、発育・発達の確認、疾病や障害の早期発見、育児相談・保健指導の機会となる。市町村保健センターの代表的な業務である。

  3. ×c.  要支援,要介護の認定

    介護保険の要支援・要介護認定は、保険者である市町村が行う事務であり、訪問調査の結果とコンピュータによる一次判定、主治医意見書をもとに、市町村に置かれる介護認定審査会(保健・医療・福祉の専門家で構成)が二次判定として審査・判定し、その結果に基づいて市町村が認定する。市町村保健センターの業務ではない。

  4. ×d.  食中毒発生時の原因調査

    食品衛生法では、食中毒患者を診断した医師は直ちに最寄りの保健所長に届け出ることとされ、届出を受けた保健所が患者・関係者への聞き取り、原因食品や施設の調査、検体の検査などを行う。食品衛生の監視指導とともに保健所の業務であり、市町村保健センターの業務ではない。

  5. ×e.  病院運営についての助言

    市町村保健センターは住民への対人保健サービスを行う施設であり、医療機関の運営に関わる業務は行わない。なお、医療法に基づく病院への立入検査(医療監視)は都道府県や保健所設置市などが保健所を通じて行うが、これは法令の遵守状況を確認するものであって、病院の経営・運営への助言とは異なる。

市町村保健センターと保健所の比較

・根拠法:いずれも地域保健法。 ・設置主体:市町村保健センター=市町村(任意設置)。保健所=都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区(必置)。 ・所長:市町村保健センター=医師である必要はない。保健所=原則として医師。 ・性格:市町村保健センター=住民に身近な対人保健サービスの拠点。保健所=専門的・広域的・技術的拠点で、監視・指導や市町村への支援も担う。

市町村(市町村保健センター)の主な業務

・母子保健:母子健康手帳の交付、妊婦健康診査、乳児家庭全戸訪問、乳幼児健康診査(1歳6か月児・3歳児健診)、育児相談。 ・成人・高齢者保健:健康増進法に基づくがん検診、健康相談・健康教育、歯周疾患検診など。 ・予防接種(予防接種法に基づく定期接種の実施主体は市町村)。

保健所の主な業務

・感染症対策(発生届の受理、積極的疫学調査など)。 ・食品衛生(飲食店の営業許可、監視指導、食中毒の調査)。 ・環境衛生(理容・美容所、旅館、公衆浴場などの監視指導)。 ・医事・薬事(医療機関への立入検査など)。 ・精神保健福祉、難病対策、結核対策、人口動態統計などの統計業務。

その他の関連機関

・休日夜間急患センター:初期救急医療を担う医療機関。 ・介護認定審査会:市町村に置かれ、要介護度の二次判定を行う。 ・地域包括支援センター:市町村が設置し、高齢者の総合相談、介護予防ケアマネジメント、権利擁護などを担う。

POINT

・市町村保健センターは地域保健法に基づき市町村が任意に設置し、健康相談・保健指導・健康診査など住民に身近な対人保健サービスを担う。 ・乳幼児健康診査(1歳6か月児・3歳児健診)は母子保健法に基づき市町村が実施する。 ・食中毒の原因調査、感染症対策、医療監視などの専門的・広域的業務は保健所が担う。 ・要介護認定は市町村(介護認定審査会での審査・判定を経る)、夜間・休日診療は休日夜間急患センターなどの医療機関が担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。