StudyMed医師国家試験

胎児の「頭からお尻まで」が予定日を決める―妊娠初期のCRL計測を読み解く

第111回医師国家試験 G問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第4問

妊娠初期の経腟超音波像(①~⑤)を別に示す。  分娩予定日を決定するために有用な計測部位はどれか。

第111回 G問題 第4問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、妊娠初期の経腟超音波像で、分娩予定日を決めるのにどの計測が役立つかを問う問題だ。5枚とも同じ断面だから、矢印が何の端から何の端までを測っているかに注目しよう。
医学生医学生
予定日は最終月経から計算するものだと思っていました。超音波で決める必要があるんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。まずは最終月経の初日を妊娠0週0日として、280日目、つまり40週0日を予定日とする。ただ、これは月経周期28日を前提にしているから、周期が不規則な人や最終月経をはっきり覚えていない人では、排卵日のずれがそのまま誤差になってしまうんだ。
医学生医学生
産婦人科の講義でNaegele概算法を習いましたが、あれも28日周期が前提でしたね。
ドクタードクター
その通り。だから妊娠初期に超音波で胎児の大きさを測り、月経から求めた週数と照合して、ずれが大きければ予定日を修正する。そのとき使うのが頭殿長、CRLだ。
医学生医学生
頭殿長は、頭のてっぺんからお尻までの長さですよね。
ドクタードクター
そう。胎児を正中矢状断で描出して、頭頂から殿部の先端までの直線距離を測る。画像でいうと、胎嚢という黒く抜けた袋の中にいる胎児の長軸に沿って、頭の先端からお尻の先端までを結んでいる矢印がそれに当たる。これが正解だ。
医学生医学生
でも、なぜ胎児の長さで週数がわかるんでしょう。赤ちゃんの大きさには個人差がありそうです。
ドクタードクター
そこが大事なポイント。妊娠初期は、体質や遺伝、胎盤機能による発育の差がまだほとんど現れないんだ。だからCRLと妊娠週数の相関がきわめて高く、誤差は数日程度に収まる。日本では、CRLが約14〜41 mm、おおむね妊娠8〜11週台の計測値で予定日を確認・修正するのが標準的だよ。
医学生医学生
胎嚢の端から端までを測っている矢印もありますが、胎嚢の大きさでは代わりにならないんですか。
ドクタードクター
胎嚢は妊娠5週ごろから見え、子宮内妊娠の確認、つまり異所性妊娠の除外にはとても大切だ。でも形がいびつになりやすく、子宮の圧迫などでも変形するから、長径でも短径でもばらつきが大きい。しかも胎児そのものの大きさを表していないから、予定日の決定には使わないんだ。
医学生医学生
胎児の向きとは違う方向に斜めに測っている矢印は、羊膜腔の径ですか。
ドクタードクター
そうだね。羊膜腔の大きさは週数推定の指標として確立していない。それから、胎児の頭部の一部だけを短く測っている矢印もあるけれど、これは胎児全体の長さを反映しないし、規定の断面で測る児頭大横径でもない。
医学生医学生
児頭大横径なら、妊婦健診で毎回測っているのを産科の実習で見ました。
ドクタードクター
BPDは、CRLが41 mmを超える12週以降に週数推定の参考にすることもあるけれど、視床を含む規定の横断面で測る必要がある。中期以降はBPDに腹部周囲長や大腿骨長を組み合わせて推定胎児体重を出し、発育の評価に使うんだ。
医学生医学生
つまり、中期以降の計測で予定日をずらすのはよくない、ということですか。
ドクタードクター
その通り。中期以降は個体差が大きくなるから、そこで予定日を動かすと、発育遅延や過大児を「週数が違っていただけ」と見逃すおそれがある。予定日は初期のCRLで確定させ、その後は計測値を発育の評価に使う、という役割分担が大事なんだ。
医学生医学生
CRLを測るときに気をつけることはありますか。
ドクタードクター
胎児が丸まりすぎていると短く、反りすぎていると長く測れてしまうから、自然な姿勢の正中矢状断で測ること。卵黄嚢や下肢を含めないことも重要だ。たった数mmの差が数日のずれになるから、丁寧な描出が求められるよ。
医学生医学生
予定日が正確だからこそ、早産や過期妊娠の判断もできるんですね。
ドクタードクター
まさにそう。予定日は妊娠管理すべての基準になる。妊娠初期のCRL計測は、その土台を作る大切な検査なんだ。

まとめ

分娩予定日は最終月経初日から算出しますが、月経周期の不規則さや記憶のあいまいさによる誤差があるため、妊娠初期の超音波で頭殿長(CRL)を測定して確認・修正します。CRLは胎児の正中矢状断で頭頂から殿部の先端までを測るもので、発育の個体差がほとんどない妊娠8〜11週台(CRL約14〜41 mm)では週数との相関がきわめて高くなります。胎嚢径は子宮内妊娠の確認には重要ですが、変形しやすくばらつきが大きいため、予定日の決定には用いません。妊娠中期以降のBPD・腹部周囲長・大腿骨長は発育評価に使い、原則として予定日の修正には用いないことも押さえておきましょう。正確な予定日は早産・過期妊娠の判断や胎児発育評価の基準となるため、CRL計測の意義を理解することは妊娠管理全体の理解につながります。

解答・解説

正解はcです

妊娠初期の経腟超音波像上で、どの計測が分娩予定日の決定(確認・修正)に役立つかを問う問題である。

分娩予定日の決め方

分娩予定日は、まず最終月経の初日から算出する(月経周期28日を前提に、最終月経初日を妊娠0週0日とし、280日目=40週0日を予定日とする。簡便法としてNaegele〈ネーゲレ〉概算法がある)。しかし月経周期が不規則な女性や最終月経の記憶があいまいな女性では、この方法は排卵日のずれをそのまま誤差として抱え込む。そこで妊娠初期に超音波で胎児の大きさを測り、月経から求めた週数と照合して、ずれが大きければ予定日を修正する。

なぜ頭殿長〈CRL〉なのか

頭殿長〈CRL:crown-rump length〉は、胎児を正中矢状断(からだを左右に二分する縦断面)で描出し、頭頂(crown)から殿部(rump)の先端までの直線距離を測ったものである。妊娠初期の胎児の発育は個体差(体質・遺伝・胎盤機能などによる差)がまだほとんど現れないため、CRLと妊娠週数の相関がきわめて高く、誤差は数日程度に収まる。日本では、CRLが約14~41 mm(おおむね妊娠8週~11週台に相当)の時期の計測値で予定日を確認・修正するのが標準的である。

画像の読み方

5枚はいずれも同じ断面で、胎嚢(gestational sac:GS、黒く抜けた袋状の構造)の中に胎児が描出されている。矢印が「胎児の頭部の先端から殿部の先端まで」を結んでいるもの、すなわち胎児の長軸に沿って両端を捉えているのが③である。他の矢印は胎嚢そのものの径、羊膜腔の径、胎児頭部の一部の径などを測っており、胎児全体の長さを反映しない。したがって正解は③である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    胎嚢を上下方向に横切る矢印であり、胎嚢壁から反対側の胎嚢壁(一部は胎児を斜めに横切る)までの距離、すなわち胎嚢の短い方の径に近い計測である。胎児の頭殿長にはなっていない。胎嚢の大きさは妊娠5~6週ごろの妊娠成立の確認には用いられるが、形がいびつになりやすく子宮の圧迫などでも変形するため、ばらつきが大きく予定日の決定には適さない。

  2. ×b.  ②

    胎嚢の左右の端から端までを結んだ計測で、胎嚢の長径に当たる。①と同様に胎嚢径は個体差・測定断面によるばらつきが大きく、胎児そのものの大きさを表さないため、分娩予定日の決定には用いない。

  3. ○c.  ③

    胎児の長軸に沿って、頭部の先端から殿部の先端までを結んでおり、頭殿長〈CRL〉の計測である。妊娠初期のCRLは発育の個体差がほとんどなく妊娠週数と高い相関を示すため、最も信頼できる週数の指標となる。CRL 14~41 mm程度(妊娠8~11週台)の時期に計測し、最終月経から求めた予定日とのずれが大きい場合はCRLに基づいて予定日を修正する。正確な計測には、胎児が屈曲しすぎたり伸展しすぎたりしていない自然な姿勢の正中矢状断で、卵黄嚢や四肢を含めずに測ることが重要である。

  4. ×d.  ④

    胎児の長軸とは異なる方向に、羊膜腔(胎児を直接包む羊膜の内腔)を斜めに横切って測っており、羊膜腔の径を計測したものである。羊膜腔の大きさは週数推定の指標として確立しておらず、予定日の決定には用いない。

  5. ×e.  ⑤

    胎児の頭部の一部(後頭部から顔面側にかけての短い距離)を測っている。正しい横断面で計測した児頭大横径〈BPD〉でもなく、胎児全体の長さを表さないため、予定日の決定には適さない。なお、BPDはCRLが41 mmを超える妊娠12週以降に週数推定に使われることがあるが、その場合も視床を含む規定の横断面で測る必要がある。

妊娠週数・予定日の基本

・最終月経初日=妊娠0週0日、分娩予定日=妊娠40週0日(280日目)。 ・Naegele概算法:最終月経の月に9を足す(または3を引く)、日に7を足す。月経周期28日型を前提としている。

妊娠初期の超音波所見と時期の目安

・胎嚢〈GS〉:妊娠5週ごろから子宮内に確認できる。子宮内妊娠の確認(異所性妊娠の除外)に重要だが、週数推定の精度は低い。 ・卵黄嚢:胎嚢内に小さな輪状構造として見え、子宮内妊娠であることの裏付けになる。 ・胎児心拍:妊娠6~7週ごろから確認できるようになる。 ・頭殿長〈CRL〉:妊娠8~11週台(CRL約14~41 mm)で予定日の確認・修正に用いる。

妊娠中期以降の胎児計測

・児頭大横径〈BPD〉、腹部周囲長〈AC〉、大腿骨長〈FL〉などを組み合わせて推定胎児体重〈EFW〉を算出し、発育の評価に用いる。 ・中期以降は胎児発育の個体差が大きくなるため、この時期の計測値で予定日を修正することは原則として行わない(発育遅延や過大児を見逃すおそれがある)。

CRL計測の注意点

・正中矢状断で頭頂と殿部の両端を明瞭に描出する。 ・過屈曲では短く、過伸展では長く測定されるため、自然な姿勢で計測する。 ・卵黄嚢や下肢を含めない。

POINT

・分娩予定日の確認・修正には、妊娠初期(8~11週台、CRL約14~41 mm)の頭殿長〈CRL〉を用いる。 ・CRLは胎児の正中矢状断で頭頂から殿部までを測る。 ・胎嚢径や羊膜腔径はばらつきが大きく、予定日の決定には使わない。 ・妊娠中期以降の計測値(BPD・AC・FL)は発育評価に用い、原則として予定日の修正には使わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。