StudyMed医師国家試験

歯ぐきから血が出たらビタミンC?―働きから結びつける栄養素欠乏症の整理術

第111回医師国家試験 G問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第14問

栄養素とその欠乏によって起こる病態との組合せで正しいのはどれか。

  1. a.マグネシウム ―― 味覚障害
  2. b.ビタミンA ―― ペラグラ
  3. c.ビタミンC ―― 出血傾向
  4. d.カルシウム ―― 貧血
  5. e.亜鉛 ―― 夜盲

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ビタミンやミネラルの欠乏症を正しく組み合わせる問題だ。丸暗記で臨むと混乱しやすいけれど、「その栄養素が体の中で何をしているか」から考えると自然に結びつく。一つずつ役割から確認していこう。
医学生医学生
欠乏症は数が多くて、CBTの前にゴロ合わせで詰め込んだ記憶があります。正直、ペラグラと脚気がたまに入れ替わります。
ドクタードクター
それはよくあることだね。だからこそ機能から覚えるのが大事なんだ。まずビタミンCから。生化学で習ったコラーゲン合成の過程を覚えているかな。
医学生医学生
プロリンとリシンを水酸化する酵素の補因子、でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。プロリルヒドロキシラーゼやリシルヒドロキシラーゼが働くにはビタミンCが必要で、これがないと安定した三重らせんのコラーゲンが作れない。すると血管壁や結合組織がもろくなり、歯肉の腫脹・出血、毛包周囲の点状出血、皮下出血、創傷治癒の遅延などが起こる。これが壊血病で、「ビタミンC ―― 出血傾向」が正しい組合せだ。
医学生医学生
出血傾向というと、ビタミンKのほうを先に思い浮かべてしまいました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。ビタミンKは凝固因子II・VII・IX・Xの活性化に必要だから、欠乏するとPTが延長する。一方、ビタミンC欠乏は血管壁の問題なので、PTやAPTTは正常なんだ。同じ「出血」でも機序がまったく違う、と押さえておこう。
医学生医学生
ビタミンAとペラグラの組合せはどうでしょう。ビタミンAは目に関係するんでしたよね。
ドクタードクター
そう。ビタミンAは網膜の杆体にある視物質ロドプシンの材料、レチナールになる。欠乏すると暗いところで見えにくくなる夜盲や、結膜・角膜の乾燥、ビトー斑が起こる。ペラグラはナイアシン欠乏で、皮膚炎・下痢・認知機能障害の「3D」が特徴だ。
医学生医学生
ナイアシンはトリプトファンからも合成されるので、カルチノイド症候群でペラグラになると病理の講義で聞きました。
ドクタードクター
よく覚えているね。トリプトファンがセロトニン合成に回されてしまうからだ。ほかにトウモロコシ主食の食生活やアルコール依存症、Hartnup病でも起こりやすい。では、亜鉛と夜盲の組合せは?
医学生医学生
亜鉛というと味覚障害のイメージです。夜盲はビタミンAなので、ここは入れ替わっていますね。
ドクタードクター
正解。亜鉛は多数の酵素の構成成分で、細胞の入れ替わりが速い組織に欠乏症状が出やすい。味蕾細胞の新生が落ちて味覚障害、口や肛門の周囲や四肢末端の皮膚炎、脱毛、創傷治癒遅延、小児の成長障害などがみられる。ちなみに亜鉛はビタミンAの運搬にも関わるから、重い亜鉛欠乏で暗順応障害を伴うこともあるけれど、亜鉛欠乏の代表的病態として夜盲を挙げるのは適切ではないね。
医学生医学生
マグネシウムと味覚障害も、味覚障害は亜鉛なので違いますね。マグネシウムが足りないと何が起こるんでしょう。
ドクタードクター
マグネシウムは300種類以上の酵素反応の補因子で、神経や筋の興奮性の調節に関わる。欠乏するとテタニーや筋けいれん、QT延長やtorsades de pointesのような不整脈が起こる。さらにPTHの分泌と作用が落ちて低Ca血症、腎からのK喪失で低K血症もきたしやすい。
医学生医学生
循環器内科を回ったとき、低K血症がなかなか補正できない患者さんで、先にMgを補充していました。そういうつながりだったんですね。
ドクタードクター
そう、臨床でとても大事なポイントだよ。最後にカルシウムと貧血。カルシウムは約99%が骨と歯にあって、欠乏すれば小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症の一因になる。貧血の原因となる栄養素は鉄、ビタミンB12・葉酸、銅などで、カルシウムは当てはまらない。
医学生医学生
役割を一つずつたどると、正しい組合せはビタミンCと出血傾向だけ、とはっきり分かりました。
ドクタードクター
最後に臨床での注意点を。長期の中心静脈栄養では亜鉛やセレン、銅などの微量元素欠乏が起こりうるし、アルコール依存症ではビタミンB1やナイアシンなど複数の欠乏が重なりやすい。偏った食事の高齢者や独居の方に、歯肉出血や皮下出血をみたら壊血病も鑑別に入れる。「栄養歴を聞く」ことが診断の入口になるんだ。

まとめ

ビタミンCはコラーゲン合成でプロリン・リシンの水酸化酵素の補因子として働くため、欠乏すると血管壁や結合組織が脆弱化し、歯肉出血や皮下出血などの出血傾向を示す壊血病となります。ビタミンA欠乏は夜盲、ナイアシン欠乏はペラグラ(皮膚炎・下痢・認知機能障害)、亜鉛欠乏は味覚障害や皮膚炎・脱毛、マグネシウム欠乏はテタニーや不整脈、低Ca・低K血症、カルシウム欠乏はくる病・骨軟化症に対応します。同じ出血傾向でも、ビタミンC欠乏は凝固検査が正常であるのに対し、ビタミンK欠乏では凝固因子の活性化障害によりPTが延長する点が鑑別に役立ちます。欠乏症は栄養素の生理的役割から結びつけて理解すると混同しにくく、栄養歴の聴取や中心静脈栄養管理など臨床現場での判断にも直結します。

解答・解説

正解はcです

ビタミンやミネラル(無機質)の欠乏症を正しく対応づけられるかを問う基本問題である。 欠乏症は、丸暗記するよりも「その栄養素が体内で何をしているか」から考えると結びつけやすい。たとえば、 ・ビタミンC:コラーゲン合成に必要 → 欠乏すると血管や結合組織がもろくなり出血する(壊血病) ・ビタミンA:網膜の視物質ロドプシンの材料 → 欠乏すると暗いところで見えにくくなる(夜盲) ・ナイアシン:NAD/NADPの構成成分としてエネルギー代謝を担う → 欠乏するとペラグラ ・亜鉛:多数の酵素の構成成分で、味蕾の細胞の新生や皮膚・毛髪の維持、成長に関与 → 欠乏すると味覚障害、皮膚炎、脱毛など ・カルシウム:骨の主成分 → 欠乏すると骨の石灰化不全や骨量低下 ・マグネシウム:多くの酵素の補因子で、PTH(副甲状腺ホルモン)の分泌・作用やK・Caの代謝に関与 → 欠乏すると神経筋の興奮性亢進、不整脈、低Ca血症・低K血症 のように整理できる。この観点で各組合せを確認すると、「ビタミンC ―― 出血傾向」が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  マグネシウム ―― 味覚障害

    マグネシウムは300種類以上の酵素反応の補因子として働き、ATPを利用する反応や蛋白合成、神経・筋の興奮性の調節に関わる。欠乏すると、テタニー・筋けいれん・振戦などの神経筋症状、不整脈(QT延長、torsades de pointesなど)といった心血管症状がみられる。また、低Mg血症ではPTHの分泌低下と作用不全が起こって低Ca血症を、腎でのK喪失が増えて低K血症をきたしやすい。味覚障害は亜鉛欠乏の代表的症状であり、マグネシウム欠乏とは対応しない。

  2. ×b.  ビタミンA ―― ペラグラ

    ビタミンAは脂溶性ビタミンで、網膜の杆体細胞にある光受容色素ロドプシンの構成成分(レチナール)となるほか、上皮組織の分化・維持にも必要である。欠乏すると夜盲症、結膜・角膜の乾燥(眼球乾燥症)やビトー斑、進行すると角膜軟化症、皮膚の角化亢進などをきたす。ペラグラはナイアシン(ニコチン酸)欠乏症であり、皮膚炎(日光露光部の皮疹)、下痢、認知機能障害(いわゆる3D:dermatitis, diarrhea, dementia)を特徴とする。ナイアシンは必須アミノ酸のトリプトファンからも合成されるため、トウモロコシを主食とする食生活やアルコール依存症、カルチノイド症候群(トリプトファンがセロトニン合成に消費される)、Hartnup病などで起こりやすい。

  3. ○c.  ビタミンC ―― 出血傾向

    ビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性ビタミンで、強い還元作用(抗酸化作用)をもつ。コラーゲン合成の過程ではプロリンとリシンの水酸化を行う酵素(プロリルヒドロキシラーゼ、リシルヒドロキシラーゼ)の補因子として働き、安定した三重らせん構造のコラーゲンを作るのに不可欠である。欠乏するとコラーゲンが不完全になって血管壁や結合組織が脆弱化し、歯肉の腫脹・出血、毛包周囲の点状出血、皮下出血、関節内出血、創傷治癒の遅延などを呈する壊血病となる。小児ではMöller-Barlow病と呼ばれ、骨膜下出血や骨形成障害を伴う。このほかビタミンCは腸管での非ヘム鉄の吸収を促進する作用ももつ。したがってこの組合せは正しい。なお、凝固因子の不足による出血傾向はビタミンK欠乏で起こり、ビタミンC欠乏の出血とは機序が異なる。

  4. ×d.  カルシウム ―― 貧血

    体内のカルシウムの約99%は骨と歯に存在し、残りは筋収縮、神経の興奮伝達、血液凝固、ホルモン分泌、細胞内情報伝達などに関わる。摂取不足が長く続くと骨の石灰化が障害され、小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症の一因となる。低Ca血症ではテタニーやしびれ、QT延長がみられる。貧血の原因となる栄養素は鉄(小球性貧血)、ビタミンB12・葉酸(大球性貧血)、銅などであり、カルシウム欠乏とは対応しない。

  5. ×e.  亜鉛 ―― 夜盲

    亜鉛は鉄に次いで体内に多い必須微量元素で、多数の酵素の構成成分として蛋白合成やDNA合成、細胞分裂に関わる。このため細胞の入れ替わりが速い組織で欠乏症状が出やすく、味覚障害(味蕾細胞の新生低下)、皮膚炎(特に口や肛門の周囲など開口部周囲や四肢末端)、脱毛、創傷治癒遅延、下痢、免疫能低下、性腺機能低下、小児での成長障害(低身長)、貧血などを呈する。長期の中心静脈栄養や腸性肢端皮膚炎でみられる。夜盲の代表的な原因はビタミンA欠乏である。亜鉛はビタミンAの運搬(レチノール結合蛋白の合成)や代謝にも関わるため、重度の亜鉛欠乏で暗順応障害を伴うことはあるが、亜鉛欠乏を代表する病態として夜盲を対応させるのは適切でない。

主なビタミン欠乏症

・ビタミンA:夜盲症、眼球乾燥症、角膜軟化症、皮膚角化 ・ビタミンD:くる病(小児)、骨軟化症(成人) ・ビタミンE:溶血性貧血(未熟児)、神経障害(運動失調など) ・ビタミンK:凝固因子(II・VII・IX・X)の活性化障害による出血傾向、新生児メレナ ・ビタミンB1(チアミン):脚気、Wernicke脳症 ・ビタミンB2(リボフラビン):口角炎、口唇炎、舌炎 ・ナイアシン:ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知機能障害) ・ビタミンB6:末梢神経障害、口角炎(イソニアジド投与時に注意) ・ビタミンB12・葉酸:巨赤芽球性貧血(B12では亜急性連合性脊髄変性症も)、葉酸では胎児の神経管閉鎖障害 ・ビタミンC:壊血病(出血傾向、歯肉出血、創傷治癒遅延)

主なミネラル欠乏症

・鉄:鉄欠乏性貧血(小球性低色素性)、匙状爪 ・亜鉛:味覚障害、皮膚炎、脱毛、成長障害、創傷治癒遅延 ・銅:貧血、好中球減少、Menkes病 ・セレン:心筋症(克山病) ・ヨウ素:甲状腺腫、甲状腺機能低下症 ・マグネシウム:テタニー、不整脈、低Ca血症・低K血症 ・カルシウム:骨軟化症・くる病、骨粗鬆症、テタニー

出血傾向をきたす2つのビタミン欠乏の違い

ビタミンC欠乏は血管壁(コラーゲン)の脆弱化による出血で、凝固検査(PT・APTT)は正常である。ビタミンK欠乏は凝固因子の活性化障害による出血で、PTが延長する。

POINT

・ビタミンC欠乏 → コラーゲン合成障害 → 壊血病(出血傾向) ・ビタミンA欠乏 → 夜盲 ・ナイアシン欠乏 → ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知機能障害) ・亜鉛欠乏 → 味覚障害、皮膚炎、脱毛 ・マグネシウム欠乏 → 低Ca血症・低K血症、不整脈 ・欠乏症は栄養素の生理的役割から結びつけて覚える

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。