StudyMed医師国家試験

赤血球の中に潜む敵を見つけ出せ―マラリア診断とギムザ染色

第111回医師国家試験 F問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第111回 F問題 第13問

マラリアを診断するために用いる染色法はどれか。

  1. a.Gram染色
  2. b.Grocott染色
  3. c.May-Giemsa染色
  4. d.Papanicolaou染色
  5. e.Ziehl-Neelsen染色

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、マラリアの診断に使う染色法を選ぶ問題だ。ポイントは「マラリア原虫が体のどこにいるか」と「それぞれの染色法が何を見るためのものか」という対応づけだよ。まず、マラリア原虫はどこで増えるか覚えているかな。
医学生医学生
寄生虫学の講義で習いました。ハマダラカに刺されて体に入って、肝臓で増えたあと赤血球に入るんでしたよね。
ドクタードクター
その通り。最終的に赤血球の中に寄生して増殖する、というのが診断を考える出発点なんだ。原虫が血液の中にいるなら、どんな検体で何を見ればいいと思う?
医学生医学生
血液を採って、顕微鏡で赤血球の中の原虫を探せばいい……ということは、血液塗抹標本の染色ですね。
ドクタードクター
そう。血液塗抹標本を染める代表がギムザ系の染色、つまりMay-Giemsa染色やGiemsa染色だ。これが正解になる。原虫の細胞質が青く、核のクロマチンが赤紫色に染まるので、赤血球の中にリング状の輪状体や、栄養体、分裂体、生殖母体といった発育段階を見分けられるんだ。
医学生医学生
血液内科の実習で白血球分画を数えたときの染色ですよね。あれで原虫まで見えるとは意識していませんでした。
ドクタードクター
同じ染色だよ。白血球の種類の判別や異常細胞の検出に使う標本で、血液に寄生する病原体も見つけられる。しかも形態から熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形といった種を推定できるし、感染赤血球の割合である寄生率を数えれば、重症度の評価や治療効果の判定にも使えるんだ。
医学生医学生
Gram染色ではだめなんですか。感染症といえばまずGram染色、というイメージがあります。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、Gram染色は一般細菌のための染色だ。細胞壁の構造の違いで、ペプチドグリカン層の厚いGram陽性菌は紫に、外膜をもつGram陰性菌は赤に染まる。喀痰や尿、膿で起炎菌を推定するのに使うもので、赤血球内の原虫を観察する目的には使わない。
医学生医学生
Ziehl-Neelsen染色は結核菌でしたよね。CBTで抗酸菌と組み合わせて覚えました。
ドクタードクター
そうだね。抗酸菌は細胞壁にミコール酸などの脂質が多く、Gram染色では染まりにくい。石炭酸フクシンを加温して染めると酸アルコールで脱色しても色が抜けず、青い背景に赤い桿菌として見える。これが抗酸性だ。
医学生医学生
Grocott染色は真菌でしょうか。病理実習でニューモシスチス肺炎の標本が黒く染まっていた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。Grocott染色はメセナミン銀染色ともいって、真菌の細胞壁を銀で黒く染め出す。アスペルギルスやカンジダ、クリプトコックス、ニューモシスチスなどを組織標本で探すのに使う。Papanicolaou染色はどうかな。
医学生医学生
細胞診の染色で、子宮頸部の検診で使うものですよね。癌を見つけるのが目的だから、マラリアとは関係なさそうです。
ドクタードクター
その通り。核の構造や細胞質の角化を詳しく見て、主に上皮性の腫瘍を見つけるための染色だ。こうして並べると、細菌、抗酸菌、真菌、細胞診、そして血液という具合に、それぞれ見る対象がはっきり分かれているのがわかるね。
医学生医学生
染色法と対象をペアで覚えれば、迷わずに選べそうです。
ドクタードクター
発展的なことも押さえておこう。血液塗抹には厚層塗抹と薄層塗抹がある。厚層は血液を重ねて塗るから原虫を探す感度が高く、薄層は形態がよく保たれるから種の判定に向いている。そして大事なのは、1回の検査で陰性でもマラリアは否定できないこと。疑いが残れば時間をおいて繰り返し検査する。補助的に原虫抗原の迅速診断キットやPCR法も使われるよ。
医学生医学生
もし帰国後の発熱の患者さんを診たら、渡航歴を聞いてマラリアを考える、ということですね。
ドクタードクター
そう、流行地からの帰国後の発熱では必ず考えたい。特に熱帯熱マラリアは周期性がはっきりしないことが多く、脳マラリアや腎障害、重症貧血を起こして、治療が遅れると命に関わる。三日熱や卵形マラリアは肝臓に休眠体が残って再発の原因になるので、根治にはプリマキンを使う。ちなみにギムザ系染色は、バベシアやリーシュマニア、ミクロフィラリアの検出にも使われるんだ。
医学生医学生
診断の基本は「血液を採ってギムザで見る」。シンプルですが、見逃すと怖い病気だからこそ大事なんですね。

まとめ

マラリアは、ハマダラカが媒介するマラリア原虫が肝細胞で増えたのち赤血球に寄生して増殖する原虫感染症で、確定診断の基本は末梢血塗抹標本をMay-Giemsa染色やGiemsa染色などのギムザ系染色で染め、赤血球内の原虫を光学顕微鏡で確認することです。原虫の形態から種を推定でき、寄生率は重症度評価や治療効果判定にも役立ちます。染色法は対象と組み合わせて覚えることが大切で、Gram染色は一般細菌、Ziehl-Neelsen染色は抗酸菌、Grocott染色は真菌、Papanicolaou染色は細胞診に用います。厚層塗抹は検出感度、薄層塗抹は種の判定に優れ、1回の陰性では否定できないため繰り返し検査し、迅速診断キットやPCR法を補助的に用います。流行地からの帰国後の発熱では必ずマラリアを想起し、特に重症化しうる熱帯熱マラリアを見逃さないことが臨床上の要点です。

解答・解説

正解はcです

マラリアは、ハマダラカ(Anopheles属の蚊)に刺されることでマラリア原虫(Plasmodium属)が体内に入り、肝細胞内で増えたのちに赤血球へ侵入して増殖する原虫感染症である。原虫が赤血球の中に寄生するという点が、診断法を考えるうえでの出発点となる。 診断の基本は、末梢血の塗抹標本をギムザ系の染色(May-Giemsa染色やGiemsa染色)で染め、光学顕微鏡で赤血球内の原虫を直接確認することである。この方法では原虫の細胞質が青色、核(クロマチン)が赤紫色に染まり、輪状体(リング)、栄養体、分裂体、生殖母体といった発育段階を見分けられる。形態から原虫の種(熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形など)を推定でき、感染赤血球の割合(寄生率)を数えれば重症度の評価や治療効果の判定にも使える。 したがって、本問では血液塗抹標本用の染色法を選べばよい。他の選択肢は、それぞれ細菌、真菌、細胞診、抗酸菌という別の対象に用いる染色法であり、「どの染色が何を見るためのものか」を対応づけて覚えておくことが問われている。

選択肢考察

  1. ×a.  Gram染色

    誤り。Gram染色は一般細菌を染め分ける最も基本的な染色法である。細胞壁の構造の違いにより、厚いペプチドグリカン層をもつGram陽性菌は紫〜濃青色に、外膜をもつGram陰性菌は赤色に染まる。喀痰・尿・膿などの検体で、染色性と形態(球菌か桿菌か、配列など)から起炎菌を推定するのに用いる。赤血球内の原虫を観察する目的には使わない。

  2. ×b.  Grocott染色

    誤り。Grocott染色(グロコット染色、メセナミン銀染色)は、真菌の細胞壁を銀で黒く染め出す方法で、主に組織標本中の真菌の検出に用いる。カンジダ、アスペルギルス、クリプトコックス、ムーコル、ニューモシスチス・イロベチー(Pneumocystis jirovecii)などに加え、通常の染色で染まりにくい放線菌類(ノカルジア、アクチノミセス)も描出できる。マラリアの診断には用いない。

  3. ○c.  May-Giemsa染色

    正しい。May-Giemsa染色は血液塗抹標本や骨髄塗抹標本の観察に用いる代表的な染色法で、白血球の種類(好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球)の判別や異常細胞の検出に使われる。同時に、血液中に寄生する病原体の検出にも有用であり、マラリア原虫では赤血球内の原虫を形態とともに確認できるため、マラリア診断の基本検査となる。赤血球に寄生するバベシア、組織や骨髄に見られるリーシュマニア、血中のミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)などの検出にも用いられる。

  4. ×d.  Papanicolaou染色

    誤り。Papanicolaou染色(パパニコロウ染色)は細胞診で使われる代表的な染色法で、核の構造や細胞質の角化の程度などを詳しく観察できる。子宮頸部細胞診、喀痰細胞診、尿細胞診などで、主に上皮性の腫瘍(癌)を見つける目的で行う。マラリア原虫の検出には用いない。

  5. ×e.  Ziehl-Neelsen染色

    誤り。Ziehl-Neelsen染色(チール・ネールゼン染色)は抗酸菌染色の代表的な方法である。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)などの抗酸菌は細胞壁にミコール酸などの脂質を多く含むため、Gram染色では染まりにくい。石炭酸フクシンを加温して染めると、酸アルコールで脱色しても色が抜けず(抗酸性)、青い背景の中に赤い桿菌として見える。マラリアの診断には用いない。

主な染色法と対象

・Gram染色:一般細菌(陽性菌は紫〜濃青、陰性菌は赤) ・Ziehl-Neelsen染色:抗酸菌(結核菌、非結核性抗酸菌)。蛍光法(オーラミン染色など)もスクリーニングに使われる。 ・Grocott染色、PAS染色:真菌 ・墨汁染色:クリプトコックスの莢膜(髄液) ・May-Giemsa染色、Giemsa染色:血液・骨髄の細胞、マラリア原虫などの血液寄生原虫 ・Papanicolaou染色:細胞診(主に癌の検出) ・HE染色:病理組織標本の基本染色

マラリアの検査

・末梢血塗抹標本(ギムザ系染色)が基本である。厚層塗抹標本は原虫を探す感度が高く、薄層塗抹標本は原虫の形態から種を判定するのに向く。 ・1回の検査で陰性でも否定できないため、疑いが残る場合は時間をおいて繰り返し検査する。 ・補助的に、原虫抗原を検出する迅速診断キットや、PCR法による遺伝子検査が用いられる。

マラリアの臨床像(概略)

・流行地(アフリカ、アジア、中南米など)からの帰国後の発熱では必ず考える。 ・三日熱・卵形マラリアは48時間ごと、四日熱マラリアは72時間ごとの周期的な発熱をとりやすいが、熱帯熱マラリアは周期がはっきりしないことが多い。 ・熱帯熱マラリアは脳マラリア、腎障害、重症貧血などを起こし、治療が遅れると致命的になりうる。 ・三日熱・卵形マラリアは肝内に休眠体(ヒプノゾイト)が残り、再発の原因となるため、根治にはプリマキンを用いる。

POINT

・マラリアの確定診断は、末梢血塗抹標本のギムザ系染色(May-Giemsa染色、Giemsa染色)で赤血球内の原虫を見つけることによる。 ・染色法と対象の対応を覚える:Gram=一般細菌、Ziehl-Neelsen=抗酸菌、Grocott=真菌、Papanicolaou=細胞診、Giemsa系=血液細胞・血液寄生原虫。 ・ギムザ系染色はマラリアのほか、バベシア、リーシュマニア、ミクロフィラリアの検出にも使う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。