「知っている」から「減らす」へ―健康日本21(第二次)の5つの柱とメタボの位置づけ
第111回医師国家試験 E問題 第4問
国試問題にチャレンジ
健康日本21(第二次)の基本方針に含まれないのはどれか。
- a.健康寿命の延伸
- b.非感染性疾患の予防
- c.メンタルヘルス対策の充実
- d.メタボリックシンドロームの認知
- e.栄養・食生活に関する社会環境の改善
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
健康日本21(第二次)は健康増進法に基づく国民健康づくり運動で、2013年度から始まりました。基本的な方向は、健康寿命の延伸と健康格差の縮小、生活習慣病(NCD)の発症予防と重症化予防の徹底、こころ・次世代・高齢者の健康を含む社会生活機能の維持向上、健康を支える社会環境の整備、栄養・食生活などの生活習慣と社会環境の改善の5つです。メタボリックシンドロームの「認知」は第一次の中間評価後に加わった目標で、第二次では「該当者・予備群の減少」や特定健診・特定保健指導の実施率向上に置き換えられています。2024年度からは4つの基本的な方向を掲げる第三次が始まっており、各次の違いを整理しておくことが重要です。国の施策の流れを理解することは、健診結果をもとに患者を保健指導や生活改善につなぐ日常診療の背景知識になります。
解答・解説
正解はdです
健康日本21は「21世紀における国民健康づくり運動」の通称で、健康増進法に基づく「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」として厚生労働大臣が定めている国の健康づくり施策である。第一次(2000〜2012年度)に続き、第二次は2013年度に開始された(当初は2022年度までの10年計画で、その後1年延長され2023年度まで)。 健康日本21(第二次)では、次の5つの「基本的な方向」が示されている。 1. 健康寿命の延伸と健康格差の縮小 2. 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCD〔非感染性疾患〕の予防):がん、循環器疾患、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患) 3. 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上:こころの健康、次世代の健康、高齢者の健康 4. 健康を支え、守るための社会環境の整備 5. 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善 選択肢a・b・c・eはいずれもこの5項目のどれかに対応している。一方、「メタボリックシンドロームの認知」は第二次の基本方針にも目標項目にも含まれていない。したがって、含まれないものとしてdを選ぶ。本問は「含まれないのはどれか」という否定型であることに注意する。
選択肢考察
- ×a. 健康寿命の延伸
基本方針に含まれる。「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」は第二次の最上位に位置づけられた中心的な目標である。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指し、目標は「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」とされた。健康格差の縮小では、都道府県間の健康寿命の差を縮めることが目標とされた。
- ×b. 非感染性疾患の予防
基本方針に含まれる。非感染性疾患(NCD:non-communicable diseases)は、がん・循環器疾患・糖尿病・慢性呼吸器疾患など、生活習慣と関連の深い疾患群を指す国際的な概念で、日本でいう生活習慣病とほぼ重なる。第二次では「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCDの予防)」として、がん、循環器疾患、糖尿病、COPDの4領域に目標が設定された。発症予防(一次予防)に加えて重症化予防まで掲げた点が第二次の特徴である。
- ×c. メンタルヘルス対策の充実
基本方針に含まれる。「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」の柱の一つが「こころの健康」であり、自殺者の減少、気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている者の割合の減少、メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合の増加、小児人口あたりの小児科医・児童精神科医の割合の増加などが目標とされた。これらはメンタルヘルス対策の充実に当たる。
- ○d. メタボリックシンドロームの認知
第二次の基本方針には含まれない。メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満を基盤に高血圧・脂質異常・高血糖が重なった状態)の「認知度の向上」は、第一次の途中(中間評価後)に目標項目として取り入れられ、言葉としては広く国民に浸透した。そのため第二次では「認知」は掲げられておらず、循環器疾患・糖尿病の領域で「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」や「特定健康診査・特定保健指導の実施率の向上」という、より実際の健康状態や行動に結びつく目標に置き換えられている。
- ×e. 栄養・食生活に関する社会環境の改善
基本方針に含まれる。第二次の5番目の柱は「栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善」である。個人の生活習慣の改善だけでなく、食塩や脂肪の少ない食品を提供する企業・飲食店の増加など、社会環境の側からの働きかけも目標とした点が第二次の特徴である。
健康日本21の変遷
・第一次(2000〜2012年度):一次予防(疾病の発生予防)の重視、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸、生活の質の向上を目指した。栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、たばこ、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、がんの9分野で数値目標を設定した。2003年に施行された健康増進法が法的基盤となった。 ・第二次(2013〜2023年度):本文の5つの基本的な方向。健康格差の縮小、重症化予防、社会環境の整備を新たに強調した。 ・第三次(2024年度〜):「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンに掲げ、基本的な方向は「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」「個人の行動と健康状態の改善」「社会環境の質の向上」「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」の4つである。
メタボリックシンドロームと特定健診
2008年度から、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、40〜74歳の医療保険加入者を対象に特定健康診査(いわゆるメタボ健診)と特定保健指導が医療保険者に義務づけられた。第二次では、この実施率の向上とメタボリックシンドローム該当者・予備群の減少が目標として設定された。
POINT
・健康日本21(第二次)の5つの基本的な方向:①健康寿命の延伸と健康格差の縮小、②生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(NCDの予防)、③社会生活に必要な機能の維持・向上(こころ・次世代・高齢者の健康)、④健康を支え守る社会環境の整備、⑤生活習慣及び社会環境の改善。 ・メタボリックシンドロームは「認知」ではなく「該当者・予備群の減少」が第二次の目標。 ・根拠法は健康増進法。2024年度から第三次が始まっている。
