StudyMed医師国家試験

4か月健診の主役は「首」―発達の目安と通過の上限で見抜く運動発達の遅れ

第111回医師国家試験 B問題 第45問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第45問

4か月の乳児。健康診査のため母親に連れられて来院した。母親と健診医との会話を以下に示す。 健診医 「お子さんはミルクをよく飲みますか」 母親 ①「母乳ですが,足りないようなので粉ミルクを足しています」 健診医 「あやしたときに笑いますか」 母親 ②「はい,よく笑います」 健診医 「お母さんの声の方を振り向きますか」 母親 ③「はい,振り向きます」 健診医 「首はすわっていますか」 母親 ④「まだすわっていないようです」 健診医 「寝返りをしますか」 母親 ⑤「まだしません」  異常である可能性が高いのはどれか。

  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は乳児健診の問診から、4か月児として標準から外れている項目を選ぶ問題だ。発達を評価するときは、各項目が「いつ頃できるようになるか」という獲得の目安と、「いつまでにできていないと遅れを疑うか」という上限の両方を意識することが大切。栄養、精神・社会性、聴覚、粗大運動と、項目を一つずつ月齢に照らしていこう。
医学生医学生
寝返りをしないのが一番気になりました。首がすわっていないのとどちらが問題か、少し迷います。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。粗大運動の順番を確認しよう。首がすわる、つまり頸定が3~4か月、寝返りが5~6か月、お座りが6~7か月、はいはいが8~9か月、つかまり立ちが9~10か月、ひとり歩きが1歳から1歳3か月頃。4か月の時点で、寝返りはまだ目安に達していない。
医学生医学生
なるほど、寝返りは5~6か月だから、4か月でできなくても正常範囲なんですね。7か月を過ぎてもできなければ遅れを疑う、という感じでしょうか。
ドクタードクター
そう考えていい。一方、頸定は3~4か月で多くの子が獲得し、4~5か月ではほとんどの子ができている。だから4か月で首がすわっていないのは運動発達の遅れを疑う所見で、今回最も異常の可能性が高いのはここなんだ。4か月健診で一番大事なチェック項目と言っていい。
医学生医学生
小児科の臨床実習で健診を見学したとき、先生が赤ちゃんの両手を持って引き起こしていました。あれが首のすわりの確認ですか。
ドクタードクター
そう、引き起こし反応だね。仰向けから両手を持って引き起こしたとき、頭が体幹についてくるかを見る。頭が後ろに残るのをhead lagという。あわせて筋緊張が低すぎたり高すぎたりしないか、原始反射が残っていないかも診るんだ。
医学生医学生
首がすわらない場合、どんな疾患を考えればいいでしょう。
ドクタードクター
脳性麻痺などの中枢神経疾患、先天性ミオパチーなどの筋疾患、Down症候群などの染色体異常、先天性甲状腺機能低下症など、筋緊張低下をきたす疾患を念頭に置いて評価や経過観察を進める。ただし、健診の場で一度確認できなかっただけで決めつけず、診察所見と合わせて判断することが大事だよ。
医学生医学生
母乳に粉ミルクを足しているのは、母乳が足りていないという意味で問題にならないんですか。
ドクタードクター
母乳に育児用ミルクを足す混合栄養はごく一般的な栄養法で、それ自体は異常ではない。足りているかどうかは体重増加や排尿回数、哺乳後の様子で評価する。体重が順調に増えていれば心配はいらないし、増加不良があれば哺乳量不足や基礎疾患を考えることになる。
医学生医学生
あやすと笑うのは、社会的微笑ですよね。発達の講義で2~3か月頃と習いました。
ドクタードクター
その通り。だから4か月でよく笑うのは正常な精神・社会性の発達だ。逆に4か月になっても視線が合わない、あやしても笑わないときは、視覚障害や自閉スペクトラム症を含めた発達の問題を考えて経過を追う。
医学生医学生
声の方を振り向くのは聴覚の確認にもなりますね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。音や声の方向に顔を向けるのは3~4か月頃からで、4か月で母親の声に振り向くのは正常、聴覚が保たれていることを示唆する。音に反応しなければ難聴を疑うきっかけになる。新生児聴覚スクリーニングをパスしていても、その後の反応は健診で確認していくんだ。
医学生医学生
整理すると、混合栄養も社会的微笑も音への反応も正常、寝返りはまだ時期が来ていないだけで、頸定だけが上限を過ぎつつある、ということですね。
ドクタードクター
完璧だね。発展として、原始反射と随意運動の関係も押さえておこう。Moro反射や把握反射、非対称性緊張性頸反射、いわゆるATNRなどの原始反射は、中枢神経が成熟するにつれて生後数か月で消えていく。反射が残っている間は関連する随意運動が出にくく、たとえばATNRが弱まると寝返りが、手掌把握反射が消えると随意的につかむ動作ができるようになる。
医学生医学生
原始反射がいつまでも残っていたら、脳性麻痺を疑うきっかけになるんですね。
ドクタードクター
そう。消失の遅れは脳性麻痺などを、左右差は分娩麻痺や鎖骨骨折などを示唆する。もう一つ、健診制度も整理しておくと、母子保健法で法定とされている幼児健診は1歳6か月児健診と3歳児健診で、乳児健診は市町村が3~4か月、6~7か月、9~10か月頃などに実施することが多い。健診では発達だけでなく、体重増加や予防接種の進み具合も確認するよ。
医学生医学生
月齢ごとの目安を、獲得時期と上限のセットで覚え直します。

まとめ

乳児の発達評価では、各項目の獲得時期の目安と、遅れを疑う上限の両方を知っておくことが重要です。首のすわり(頸定)は3~4か月で獲得され4~5か月ではほとんどの児が獲得しているため、4か月で未獲得なら運動発達の遅れを疑い、引き起こし反応、筋緊張、原始反射の残存などを診察して脳性麻痺、筋疾患、染色体異常、甲状腺機能低下症などを鑑別します。一方、寝返りは5~6か月が目安で4か月でできなくても正常であり、社会的微笑(2~3か月)や音の方を向くこと(3~4か月)、混合栄養も異常ではありません。頸定→寝返り→お座り→はいはい→つかまり立ち→ひとり歩きという粗大運動の順序と月齢を確実に押さえておくことが、健診で異常を見逃さず、保護者に適切な説明をするための基礎になります。

解答・解説

正解はdです

問題の捉え方

乳児健康診査(乳児健診)での問診から、4か月児として「標準から外れている(異常の可能性が高い)」ものを選ぶ問題である。発達の評価では、各運動・精神発達項目について「いつ頃できるようになるか(獲得の目安)」と「いつまでにできていないと遅れを疑うか(通過の上限)」の両方を知っておく必要がある。

各項目を4か月児の目安と照らし合わせる

・栄養:母乳に育児用粉ミルクを足す混合栄養は一般的な栄養法であり、それ自体は異常ではない。 ・社会的微笑(あやすと笑う):生後2~3か月頃から現れる。4か月で「よく笑う」のは正常。 ・音のする方を向く:生後3~4か月頃から音や声の方向に顔を向けるようになる。正常。 ・首のすわり(頸定):生後3~4か月で多くの児が獲得し、4か月児健診の最重要チェック項目である。4~5か月の時点でほとんどの児が獲得しているため、4か月で首がすわっていなければ運動発達の遅れを疑う。 ・寝返り:生後5~6か月頃に可能となる。4か月でまだできないのは正常範囲である。 以上から、異常の可能性が高いのは「4か月で首がすわっていない」ことである。この場合、仰臥位からの引き起こし反応(両手を持って引き起こした際に頭が体幹についてくるか)や筋緊張、原始反射の残存などを診察し、脳性麻痺、筋疾患(先天性ミオパチーなど)、染色体異常(Down症候群など)、先天性甲状腺機能低下症などの筋緊張低下をきたす疾患や中枢神経疾患を念頭に評価・経過観察を行う。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    母乳を基本としつつ、不足分を育児用粉ミルクで補う混合栄養はよく行われる栄養法であり、異常ではない。母乳が足りているかは体重増加や哺乳後の様子、排尿回数などで評価する。体重増加が良好であれば問題なく、増加不良があれば哺乳量不足や基礎疾患を検討することになるが、本問の会話からは異常とはいえない。

  2. ×b.  ②

    あやすと笑う社会的微笑は生後2~3か月頃からみられ、4か月で「よく笑う」のは正常な精神・社会性の発達である。逆に4か月頃になっても視線が合わない、あやしても笑わないといった場合は、視覚障害や自閉スペクトラム症を含む発達の問題を考えて経過を追う。

  3. ×c.  ③

    生後3~4か月頃には聞こえた音や声の方向へ顔を向けるようになる。4か月で母親の声の方を振り向くのは正常であり、聴覚が保たれていることを示唆する所見でもある。音に反応しない場合は難聴を疑う。

  4. ○d.  ④

    首のすわり(頸定)は生後3~4か月で獲得される運動発達の重要な指標で、4~5か月ではほとんどの児が獲得している。4か月で首がすわっていないのは運動発達の遅れを疑う所見であり、異常である可能性が最も高い。引き起こし反応での頭部の遅れ(head lag)、筋緊張の低下や亢進、原始反射の残存の有無などを診察し、脳性麻痺や筋疾患、染色体異常、甲状腺機能低下症などの鑑別を進める必要がある。

  5. ×e.  ⑤

    寝返りは生後5~6か月頃にできるようになる。寝返りには、首の向きに応じて四肢の肢位が決まる非対称性緊張性頸反射(ATNR)が弱まり消失することが必要で、4か月でまだ寝返りをしないのは正常範囲である。7か月頃を過ぎてもできない場合に遅れを疑う。

粗大運動発達の目安(獲得時期)

・首がすわる(頸定):3~4か月 ・寝返り:5~6か月 ・ひとり座り(お座り):6~7か月(支えなしで座れるのは7か月頃) ・はいはい:8~9か月 ・つかまり立ち:9~10か月 ・つたい歩き:10~11か月 ・ひとり歩き:1歳~1歳3か月頃

精神・社会性、感覚の発達の目安

・社会的微笑:2~3か月 ・追視:1~2か月頃からみられ、3~4か月で180度の追視が可能 ・音の方を向く:3~4か月 ・声を出して笑う:4か月頃 ・人見知り:6~8か月頃 ・喃語(「ばばば」など):6か月頃から、意味のある単語:1歳頃

微細運動の目安

・手を口に持っていく、手をじっと見る(ハンドリガード):3~4か月 ・物に手を伸ばしてつかむ:5~6か月 ・物を持ち替える:6~7か月 ・親指と人差し指でつまむ:9~10か月

原始反射と随意運動

Moro反射、把握反射、非対称性緊張性頸反射(ATNR)などの原始反射は、中枢神経の成熟とともに生後数か月で消失していく。原始反射が残っている間は関連する随意運動が出にくく、反射の消失とともに随意運動が可能となる(例:ATNRが消えると寝返りができる、手掌把握反射が消えると随意的につかめる)。反射の消失遅延は脳性麻痺などを、左右差は分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折などを示唆する。

乳児健診

市町村が行う乳児健診は3~4か月、6~7か月、9~10か月頃に設定されることが多く、3~4か月健診では頸定の確認が最も重要である。法定の幼児健診は1歳6か月児健診と3歳児健診である(母子保健法)。健診では発達のほか、体重増加、栄養法、予防接種の進み具合なども確認する。

POINT

・4か月児健診の最重要項目は首のすわり(頸定)。3~4か月で獲得し、4か月で未獲得なら運動発達の遅れを疑う。 ・寝返りは5~6か月が目安であり、4か月でできなくても正常。 ・社会的微笑は2~3か月、音の方を向くのは3~4か月。 ・混合栄養は異常ではない。 ・粗大運動の順序:頸定(3~4か月)→寝返り(5~6か月)→お座り(6~7か月)→はいはい(8~9か月)→つかまり立ち(9~10か月)→ひとり歩き(1歳~1歳3か月)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。