StudyMed医師国家試験

黄疸は「抱合の前か後か」で切り分ける―遷延性黄疸に潜むクレチン症

第110回医師国家試験 I問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第9問

新生児期,乳児期に高間接型ビリルビン血症をきたす疾患はどれか。

  1. a.クレチン症
  2. b.新生児肝炎
  3. c.Rotor症候群
  4. d.先天性胆道拡張症
  5. e.Dubin-Johnson症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、新生児期・乳児期の黄疸を、増えているビリルビンが間接型か直接型かで分類する問題だ。ポイントはビリルビン代謝のどの段階でつまずいているかを考えること。まず、間接型と直接型の違いを説明できるかな。
医学生医学生
間接型は抱合前のビリルビンで、直接型は肝臓でグルクロン酸抱合を受けたもの、と生化学で習いました。
ドクタードクター
その通り。赤血球のヘモグロビンが分解されてできるビリルビンは水に溶けにくく、アルブミンに結合して肝臓へ運ばれる。肝細胞でUGT1A1という酵素によってグルクロン酸抱合を受けると水溶性の直接型になり、胆汁中へ排泄される。だから間接型が増えるのは「つくりすぎ」か「取り込み・抱合の障害」、直接型が増えるのは「抱合後に胆汁へ出ていけない」ときだ。
医学生医学生
つまり、障害が抱合より前なら間接型、後なら直接型ということですね。
ドクタードクター
そう、その一本の軸で全選択肢を整理できる。では、どれが抱合より前の障害だと思う?
医学生医学生
体質性黄疸ならCrigler-Najjar症候群やGilbert症候群が間接型ですが、選択肢にはありません。クレチン症が黄疸と関係するのはちょっと意外です。
ドクタードクター
そこがこの問題の核心だ。正解はクレチン症、つまり先天性甲状腺機能低下症。甲状腺ホルモンが不足すると肝のUGT1A1活性の成熟が遅れて抱合が進まない。さらに腸管の動きが悪く便秘になるので、腸肝循環で非抱合型ビリルビンが再吸収されやすくなる。その結果、間接型優位の黄疸が長引くんだ。
医学生医学生
生理的黄疸が長引く原因の一つになるわけですね。小児科実習で、哺乳不良や便秘、臍ヘルニアもクレチン症のサインだと教わりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。巨舌、かれた泣き声、皮膚乾燥、小泉門開大も手がかりだ。日本では新生児マススクリーニングでTSHを測って早期に見つけ、甲状腺ホルモンを補充することで知的発達の障害を防げる。では、残りの選択肢がなぜ直接型になるか見ていこう。新生児肝炎はどうかな。
医学生医学生
肝炎なら肝細胞が壊れるので、抱合もできなくなって間接型が増えそうな気がします。
ドクタードクター
そう考えたくなるけど、実際には胆汁うっ滞が前面に出る。新生児肝炎は乳児早期の原因不明の肝内胆汁うっ滞の総称で、組織では巨細胞性肝炎像を示すことが多い。抱合されたビリルビンが胆汁へ出られずに血中へ逆流するので、直接型優位になるんだ。胆道閉鎖症との鑑別が重要になる。
医学生医学生
Rotor症候群とDubin-Johnson症候群はCBTでもよく出る直接型の体質性黄疸ですね。違いがいつも曖昧になってしまいます。
ドクタードクター
輸送体で区別すると覚えやすい。Dubin-Johnson症候群は毛細胆管側のMRP2の異常で、抱合型ビリルビンを胆汁へ排泄できない。肝細胞に色素が沈着して黒色肝になり、ICG試験は正常だ。一方Rotor症候群は類洞側のOATP1B1とOATP1B3の欠損で、血中に出た抱合型ビリルビンを再び取り込めない。黒色肝はなく、ICG停滞率が著明に高い。どちらも予後は良好だよ。
医学生医学生
先天性胆道拡張症は、胆汁の通り道の問題なので閉塞性黄疸、つまり直接型ですね。
ドクタードクター
その通り。総胆管などの肝外胆管が拡張する先天異常で、ほぼ全例に膵・胆管合流異常を伴う。腹痛・黄疸・腹部腫瘤が古典的三徴で、胆管炎や膵炎、将来の胆道癌のリスクがあるため、拡張胆管を切除して胆道再建を行う。
医学生医学生
抱合前か後かで分けると、クレチン症だけが仲間外れになるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に臨床での注意点だ。生後2週、早産児なら3週を過ぎても続く黄疸を遷延性黄疸という。最も多いのは母乳性黄疸だけど、直接型が上がっていたら胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞を疑って、便の色を確認し速やかに精査する。胆道閉鎖症は生後60日以内の葛西手術で予後が改善するからね。
医学生医学生
母子健康手帳の便色カードは、そのためにあるんですね。
ドクタードクター
その通り。そして間接型が高度になると脂溶性のビリルビンが血液脳関門を越えて核黄疸を起こしうるので、光線療法や交換輸血で対応する。間接型か直接型か、まずそこを確認する習慣をつけておこう。

まとめ

黄疸は、ビリルビンが肝でグルクロン酸抱合を受ける前の段階の障害なら間接型、抱合後の胆汁排泄や胆汁の流れの障害なら直接型が優位になると整理できます。クレチン症では甲状腺ホルモン不足によりUGT1A1活性の成熟が遅れ、便秘による腸肝循環の増加も加わって間接型優位の遷延性黄疸をきたします。新生児肝炎や先天性胆道拡張症は胆汁うっ滞・閉塞により、Dubin-Johnson症候群はMRP2異常、Rotor症候群はOATP1B1/1B3欠損により、いずれも直接型優位となります。遷延性黄疸ではまず直接型か間接型かを確認し、直接型なら胆道閉鎖症を見逃さないことが重要です。ビリルビン代謝の流れに沿って病態を位置づける考え方は、成人の黄疸の鑑別にもそのまま応用できます。

解答・解説

正解はaです

テーマの要点

黄疸の原因を考えるときは、増えているビリルビンが間接型(非抱合型)か直接型(抱合型)かでまず大きく分ける。 ・間接型ビリルビン:赤血球のヘモグロビンが分解されてできる水に溶けにくいビリルビンで、血中ではアルブミンと結合して肝へ運ばれる。 ・直接型ビリルビン:肝細胞内でUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合を受けた水溶性のビリルビンで、毛細胆管へ排泄され胆汁中に出ていく。 したがって、 ・間接型が増える病態=ビリルビンの「産生過剰」(溶血など)か、肝への「取り込み・抱合の障害」。 ・直接型が増える病態=抱合された後の「胆汁への排泄障害」や「胆汁の流れの障害(胆汁うっ滞・胆道閉塞)」、および肝細胞障害。

正解を導く考え方

各選択肢について、障害が「抱合より前」か「抱合より後」かを判断すればよい。新生児肝炎、Rotor症候群、Dubin-Johnson症候群、先天性胆道拡張症はいずれも抱合後のビリルビンが胆汁へうまく流れ出ない病態で、直接型優位となる。一方、クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)では甲状腺ホルモン不足により肝のビリルビン抱合能の成熟が遅れるため、抱合前の間接型ビリルビンが蓄積し、新生児黄疸が遷延する。 なお、新生児期の直接型高ビリルビン血症は胆道閉鎖症など早急な対応を要する疾患の手がかりとなるため、「遷延性黄疸ではまず直接型か間接型かを確認する」ことが臨床上きわめて重要である。

選択肢考察

  1. ○a.  クレチン症

    クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)では、甲状腺ホルモンの不足によって肝のUGT1A1活性の成熟が遅れ、ビリルビンのグルクロン酸抱合が十分に進まない。さらに腸管運動の低下(便秘)によって腸肝循環で再吸収される非抱合型ビリルビンが増えることも加わり、間接型優位の高ビリルビン血症が生じ、生理的黄疸が遷延する。遷延性黄疸のほか、哺乳不良、便秘、臍ヘルニア、巨舌、嗄声(かれた泣き声)、皮膚乾燥、小泉門開大などが手がかりとなる。わが国では新生児マススクリーニング(TSH測定)で早期発見され、早期の甲状腺ホルモン補充により知的発達の障害を防げる。

  2. ×b.  新生児肝炎

    新生児肝炎は、乳児期早期に原因が特定できない肝内胆汁うっ滞をきたす病態の総称で、組織学的には巨細胞性肝炎像を示すことが多い。肝細胞障害と胆汁の排泄障害により、抱合を受けたビリルビンが血中へ逆流するため直接型優位の高ビリルビン血症となる。胆道閉鎖症との鑑別が重要で、灰白色便の有無、十二指腸液検査、肝胆道シンチグラフィなどで区別する。

  3. ×c.  Rotor症候群

    Rotor症候群は常染色体劣性の体質性黄疸で、肝細胞の類洞側にある有機アニオン輸送体OATP1B1とOATP1B3がともに欠損するため、いったん血中へ出た抱合型ビリルビンを肝細胞が再び取り込めなくなる。その結果、直接型優位の高ビリルビン血症となる。肝組織に色素沈着はなく、ICG(インドシアニングリーン)試験で停滞率が著明に高いことが特徴である。予後は良好で治療は不要である。

  4. ×d.  先天性胆道拡張症

    先天性胆道拡張症は総胆管を含む肝外胆管が嚢状・紡錘状に拡張する先天異常で、ほぼ全例に膵・胆管合流異常を合併する。腹痛・黄疸・腹部腫瘤が古典的三徴で、胆汁の流出障害による閉塞性黄疸をきたすため直接型優位の高ビリルビン血症となる。膵液の胆道内逆流により胆管炎・膵炎や将来の胆道癌のリスクがあるため、拡張胆管切除と胆道再建が行われる。

  5. ×e.  Dubin-Johnson症候群

    Dubin-Johnson症候群は常染色体劣性の体質性黄疸で、毛細胆管膜の輸送体MRP2(ABCC2遺伝子産物)の異常により、抱合型ビリルビンを胆汁中へ排泄できない。そのため直接型優位の高ビリルビン血症となる。肝細胞内に褐色〜黒色の色素が沈着して肉眼的に黒色肝を呈すること、ICG試験は正常だがBSP(ブロモスルホフタレイン)試験で再上昇がみられること、尿中コプロポルフィリンI型の比率が上昇することが特徴である。発症は思春期以降が多く、予後は良好である。

高ビリルビン血症の分類と主な疾患

1) 間接型(非抱合型)優位 ・産生過剰:溶血性疾患(新生児溶血性疾患〈血液型不適合〉、遺伝性球状赤血球症、G6PD欠乏症など)、頭血腫などの血腫吸収、多血症。 ・抱合障害:Crigler-Najjar症候群(UGT1A1活性の欠損〈I型〉または著明低下〈II型〉)、Gilbert症候群(UGT1A1活性の軽度低下、空腹・ストレスで増悪)、クレチン症、母乳性黄疸。 ・生理的黄疸:新生児では赤血球寿命が短く量も多いためビリルビン産生が多い一方、UGT1A1活性が未熟で腸肝循環も盛んなため、生後2〜3日から黄疸が出て1〜2週で消える。 2) 直接型(抱合型)優位 ・体質性黄疸:Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群。 ・肝内胆汁うっ滞:新生児肝炎、Alagille症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、シトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞など。 ・肝外胆道の閉塞:胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症。 ・感染症:先天性サイトメガロウイルス感染、敗血症、尿路感染など。

新生児の遷延性黄疸の考え方

生後2週(早産児では3週)を過ぎても続く黄疸を遷延性黄疸という。母乳性黄疸が最も多いが、直接型ビリルビンの上昇(目安として直接型が1.0mg/dL以上など)があれば胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞性疾患を疑い、便色(灰白色便)を確認して速やかに精査する。胆道閉鎖症は生後60日以内の葛西手術が予後を改善するため、早期発見が重要である。母子健康手帳には便色カードが掲載されている。

間接型ビリルビンが問題となる理由

非抱合型ビリルビンは脂溶性で血液脳関門を通過しうるため、高度になると大脳基底核などに沈着して核黄疸(ビリルビン脳症)を起こす。新生児では光線療法や交換輸血で治療する。

POINT

・間接型優位:溶血(産生過剰)、Crigler-Najjar症候群、Gilbert症候群、クレチン症、母乳性黄疸、生理的黄疸。 ・直接型優位:Dubin-Johnson症候群(MRP2異常、黒色肝)、Rotor症候群(OATP1B1/1B3欠損)、新生児肝炎、胆道閉鎖症、先天性胆道拡張症。 ・クレチン症は甲状腺ホルモン不足による肝のビリルビン抱合能の未熟さで遷延性の間接型黄疸を起こす。 ・遷延性黄疸ではまず直接型か間接型かを確認し、直接型なら胆道閉鎖症を見逃さない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。