「年50、5年で100」―放射線業務従事者の線量限度を単位の桁から攻略する
第110回医師国家試験 I問題 第24問
国試問題にチャレンジ
法令に規定された男性放射線業務従事者の通常作業における1年間の放射線被ばく線量限度(実効線量)はどれか。
- a.10ミリシーベルト
- b.50ミリシーベルト
- c.500ミリシーベルト
- d.5シーベルト
- e.10シーベルト
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生まとめ
放射線業務従事者の実効線量限度は、電離放射線障害防止規則などにより「5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv」と定められており、1年間の限度は50mSvです。実効線量は確率的影響を管理するための全身の指標で、皮膚の年500mSvや水晶体の年50mSv(2021年改正で引き下げ)のような等価線量限度は、組織反応を防ぐための臓器別の値として区別します。一般公衆は年1mSv、妊娠可能な女性従事者は3か月5mSvで、医療被ばくには線量限度を適用せず正当化と最適化で管理します。5Svや10Svは急性放射線症候群で致死的になりうる線量域であり、mSvとSvの桁を意識するだけでも誤答を避けられます。自分自身とスタッフを守る放射線防護の知識は、透視やIVRに関わるすべての医師に欠かせません。
解答・解説
正解はbです
問われていること
放射線業務に従事する人(放射線業務従事者)が通常の業務で受けてよい放射線量の上限、すなわち職業被ばくの線量限度のうち、男性の1年あたりの実効線量限度を問う問題である。
実効線量とは
実効線量は、放射線の種類による生物学的影響の違い(放射線加重係数)と、臓器・組織ごとの放射線感受性の違い(組織加重係数)を考慮して、全身が受けた被ばくの影響を一つの数値にまとめた量であり、単位はシーベルト(Sv)である。確率的影響(発がんや遺伝的影響のように、しきい線量がなく線量に比例して発生確率が増えると仮定される影響)のリスク管理に用いられる。体外の線源からの外部被ばくと、体内に取り込んだ放射性物質による内部被ばくを合算して評価する。
法令上の線量限度
国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告を取り入れ、わが国では電離放射線障害防止規則(電離則)や医療法施行規則などで、放射線業務従事者の実効線量限度を「5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv」と定めている。すなわち5年平均では1年あたり20mSvに抑える必要があり、そのうえで単年度では50mSvを超えてはならない。したがって、設問の「1年間の線量限度」は50ミリシーベルトである。 選択肢のうち、mSv(ミリシーベルト)とSv(シーベルト)の桁の違いに注意すると、500mSv以上は職業被ばくの年間限度としてはけた違いに大きく、5Sv・10Svに至っては急性放射線症候群で致死的になりうる線量であることから、常識的にも除外できる。
選択肢考察
- ×a. 10ミリシーベルト
誤り。放射線業務従事者の年間実効線量限度として法令に定められた値ではない。5年間100mSvの枠から計算される1年平均の20mSvよりも小さく、該当する規定はない。なお一般公衆の線量限度は年間1mSvであり、こちらとも一致しない。
- ○b. 50ミリシーベルト
正しい。電離放射線障害防止規則・医療法施行規則などにより、放射線業務従事者の実効線量限度は「5年間で100mSvを超えず、かつ任意の1年間で50mSvを超えない」と定められている。1年間に限ってみた上限が50mSvである。ただし毎年50mSvずつ被ばくすると2年で100mSvに達してしまうため、5年平均では年20mSv以下に管理する必要がある点も併せて理解しておく。
- ×c. 500ミリシーベルト
誤り。500mSvは実効線量限度ではなく、皮膚の等価線量限度(1年間につき500mSv)にあたる数値である。等価線量は特定の臓器・組織ごとの線量で、皮膚や眼の水晶体のような組織反応(確定的影響)を防ぐために個別に限度が設けられている。全身の実効線量としての年間限度としては10倍も大きい。
- ×d. 5シーベルト
誤り。5Sv(5000mSv)は職業被ばくの年間限度より100倍大きい値である。全身に短時間で数Gy(グレイ)程度を被ばくすると骨髄障害を主体とする急性放射線症候群をきたし、半数致死線量(LD50/60)は治療なしで約3〜5Gyとされる。5Svは致死的になりうる線量域であり、線量限度とは無関係である。
- ×e. 10シーベルト
誤り。10Sv(10000mSv)規模の全身急性被ばくでは、骨髄障害に加えて消化管障害が前面に出て、集中治療を行ってもほぼ救命困難とされる。職業被ばくの線量限度とはけた違いの値である。
線量限度の整理(わが国の法令)
1. 放射線業務従事者(通常作業) ・実効線量:5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv ・女性(妊娠する可能性がないと診断された者を除く):3か月間につき5mSv ・妊娠と診断された女性(申し出から出産まで):内部被ばくによる実効線量1mSv、腹部表面の等価線量2mSv ・眼の水晶体の等価線量:5年間につき100mSv、かつ1年間につき50mSv(2021年4月施行の改正で、それまでの年間150mSvから引き下げられた) ・皮膚の等価線量:1年間につき500mSv 2. 緊急作業時:実効線量100mSv(原子力災害などの特例緊急作業では250mSv) 3. 一般公衆:実効線量で年間1mSv(医療被ばくと自然放射線は除く)
放射線防護の三原則
・正当化:被ばくを伴う行為は、それによる便益が害を上回る場合にのみ行う。 ・最適化:経済的・社会的要因を考慮しつつ、被ばくを合理的に達成可能な限り低く保つ(ALARAの原則)。 ・線量限度:個人の被ばくが限度を超えないように管理する。なお医療被ばく(患者が診療で受ける被ばく)には線量限度は適用されず、正当化と最適化(診断参考レベルの活用など)で管理される。
外部被ばく防護の三原則
時間(被ばく時間を短く)、距離(線源から離れる。点線源では線量率は距離の2乗に反比例)、遮蔽(鉛などで遮る)。
影響の種類
・確率的影響(発がん、遺伝的影響):しきい線量がないと仮定され、実効線量で管理する。 ・組織反応(確定的影響:白内障、皮膚障害、不妊、骨髄抑制など):しきい線量があり、それ以下に抑えることで防ぐ。臓器ごとの等価線量限度はこの考えに基づく。
POINT
・放射線業務従事者の実効線量限度:5年間で100mSv、かつ1年間で50mSv(5年平均で年20mSv) ・女性は3か月で5mSv、妊娠中は内部被ばく1mSv・腹部表面2mSv ・水晶体の等価線量限度は2021年改正で5年100mSv・年50mSvへ引き下げ、皮膚は年500mSv ・一般公衆は年1mSv、医療被ばくには線量限度を適用しない ・mSvとSvの単位の桁を取り違えない
