StudyMed医師国家試験

好酸球か好中球か―呼吸器疾患を「炎症の主役」で仕分ける

第110回医師国家試験 I問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第25問

末梢血で好酸球増多を呈することが最も少ないのはどれか。

  1. a.気管支喘息
  2. b.気管支拡張症
  3. c.慢性好酸球性肺炎
  4. d.アレルギー性肉芽腫性多発血管炎
  5. e.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、呼吸器疾患のなかで末梢血の好酸球増多を伴いにくいものを選ぶ問題だ。カギは、それぞれの病気で炎症の主役になっている細胞が何かを考えること。まず、好酸球が増える仕組みから確認しよう。好酸球の産生や動員を促す代表的なサイトカインは何だったかな。
医学生医学生
IL-5です。免疫学の講義で、Th2細胞がIL-4、IL-5、IL-13を出すと習いました。
ドクタードクター
その通り。いわゆる2型炎症だね。だから好酸球増多の原因としては、アレルギー疾患、寄生虫感染、好酸球そのものが主役の疾患、薬剤アレルギー、慢性好酸球性白血病やホジキンリンパ腫などの血液腫瘍、副腎不全あたりが代表的だ。基準はおおむね500/μL未満で、それを超えると好酸球増多とよぶ。では、選択肢を眺めてどう感じた?
医学生医学生
喘息は好酸球というイメージがあります。でも、喘息は症状がない時期もあるので、むしろ好酸球が一番上がりにくいのかなとも思いました。
ドクタードクター
迷いどころだね。確かに喘息の末梢血好酸球増多は軽度のことが多い。でも喘息の多くは2型炎症による好酸球性気道炎症が本態で、喀痰中の好酸球や呼気中一酸化窒素の上昇とともに、血液でも好酸球が増えていることが多いんだ。末梢血好酸球数は、抗IL-5抗体などの生物学的製剤を使うかどうかの判断材料にもなっている。
医学生医学生
そうなると、残りの選択肢で炎症の性質が違うのは気管支拡張症ですね。
ドクタードクター
正解。気管支拡張症は、感染と炎症を繰り返して気管支壁が壊れ、不可逆的に拡張した状態だ。背景には小児期の重い肺炎や百日咳、結核の後遺症、副鼻腔気管支症候群、原発性線毛機能不全症、非結核性抗酸菌症などがある。インフルエンザ菌や緑膿菌の感染を繰り返し、炎症の主体は好中球。増悪時には好中球増多やCRP上昇はみられても、好酸球増多は通常みられない。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で、大量の膿性痰を出す患者さんのCTを見ました。気管支が伴走する肺動脈より太くて、指輪のように見えたのを覚えています。
ドクタードクター
signet ring signだね。気管支壁の肥厚が線路のように並ぶtram lineもセットで覚えておこう。では、ほかの選択肢がなぜ好酸球増多を呈するのかも確認しよう。慢性好酸球性肺炎はどうかな。
医学生医学生
名前のとおり好酸球の病気ですね。画像は、肺水腫の逆で外側に影が出るんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、胸膜側優位の浸潤影で、photographic negative of pulmonary edemaと表現される。中年女性に多く、喘息の合併も少なくない。気管支肺胞洗浄液で好酸球が増え、大部分で末梢血好酸球増多も伴う。ステロイドがよく効くけれど再燃しやすい。対比して覚えたいのが急性好酸球性肺炎で、喫煙開始直後などに急に発症し、初期には末梢血好酸球が正常のことがあるんだ。
医学生医学生
アレルギー性肉芽腫性多発血管炎という名前は、CBTの勉強では見かけなかった気がします。
ドクタードクター
今は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、EGPAとよぶ。旧称はChurg-Strauss症候群だ。喘息やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が先行し、その後に著明な好酸球増多を伴って小型血管の血管炎を起こす。多発単神経炎、紫斑、消化管潰瘍、心病変などが出て、MPO-ANCAが一部の症例で陽性になり、IgEも上がる。この中で最も派手に好酸球が増える疾患の一つだね。
医学生医学生
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症も喘息がベースでしたよね。でも気管支拡張も起こすと聞いたので、少し混乱します。
ドクタードクター
そこは大事なポイントだ。ABPAは気道に定着したアスペルギルスに対するⅠ型とⅢ型アレルギーで起こり、好酸球増多、総IgEの著明な上昇、特異的IgEや沈降抗体の陽性、褐色の粘液栓、移動する浸潤影が特徴だ。そして中枢側の気管支拡張をつくる。つまり、気管支拡張そのものは好中球性の病態だけれど、気管支拡張に好酸球増多や喘息が加わっていたら、ABPAを疑うきっかけになるんだ。
医学生医学生
気管支拡張を見たら、まず好中球性の慢性感染を考えて、好酸球が多ければABPAを鑑別に挙げる、という順番ですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床での注意点だ。好中球性炎症か好酸球性炎症かという視点は、治療選択にも直結する。気管支拡張症では排痰の促進、増悪時の抗菌薬、少量長期マクロライド療法が中心で、喀血には気管支動脈塞栓術を考える。一方、好酸球性の病態ではステロイドや生物学的製剤が効きやすい。COPDも多くは好中球性だけれど、血中好酸球が多い人では吸入ステロイドの効果が期待できる、といった使い方もされているよ。
医学生医学生
白血球分画は採血でいつも見ていたのに、好酸球の数字が治療方針にまでつながるとは意識していませんでした。
ドクタードクター
分画は情報の宝庫だからね。好酸球増多を見たら、アレルギー、寄生虫、薬剤、血管炎、血液腫瘍まで広く鑑別を思い浮かべる習慣をつけよう。

まとめ

末梢血の好酸球増多は、IL-5などの2型サイトカインが関与するアレルギー疾患、寄生虫感染、好酸球性疾患、薬剤アレルギー、血液腫瘍などでみられます。気管支喘息では軽度、慢性好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧称Churg-Strauss症候群)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では中等度〜高度の好酸球増多を伴いやすい一方、気管支拡張症は細菌感染を繰り返す好中球性炎症が主体で、好酸球増多は通常みられません。ただし中枢性の気管支拡張に喘息や好酸球増多、IgE高値を伴う場合はABPAを疑う必要があります。炎症の主役が好中球か好酸球かを見極める視点は、鑑別診断だけでなく、抗菌薬、ステロイド、生物学的製剤といった治療選択にも直結する重要な考え方です。

解答・解説

正解はbです

問われていること

呼吸器疾患のなかで、末梢血の好酸球増多を伴いやすいものとそうでないものを区別できるかを問う問題である。

好酸球増多の考え方

末梢血の好酸球数の基準はおおむね500/μL未満(白血球分画で数%程度)であり、これを超えると好酸球増多とよぶ。好酸球はインターロイキン(IL)-5などの2型(Th2型)サイトカインによって骨髄で産生が促され、組織へ動員される。したがって、好酸球増多の原因として代表的なのは、①アレルギー性疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)、②寄生虫感染、③好酸球が主役となる疾患(好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)、④薬剤アレルギー、⑤血液腫瘍(慢性好酸球性白血病、ホジキンリンパ腫など)、⑥副腎不全、である。

正解を導く考え方

選択肢のうち、気管支喘息、慢性好酸球性肺炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(設問中の旧称:アレルギー性肉芽腫性多発血管炎)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)は、いずれも2型炎症(好酸球性炎症)を病態の中心にもつ疾患であり、末梢血の好酸球増多がみられる。一方、気管支拡張症は、気道の感染と炎症を繰り返すことで気管支壁が破壊され、不可逆的に拡張した状態であり、その炎症の主体は好中球である。そのため末梢血で好酸球増多をきたすことは最も少ない。

選択肢考察

  1. ×a.  気管支喘息

    誤り。気管支喘息の多くは2型炎症による好酸球性の気道炎症を本態とし、喀痰中の好酸球増加や呼気中一酸化窒素(FeNO)の上昇とともに、末梢血でも好酸球増多がみられることが多い。その程度は通常軽度である。末梢血好酸球数は、抗IL-5抗体などの生物学的製剤の適応を判断する指標としても用いられる。

  2. ○b.  気管支拡張症

    正しい(好酸球増多を最も呈しにくい)。気管支拡張症は、小児期の重症肺炎・百日咳・結核などの感染後、副鼻腔気管支症候群、原発性線毛機能不全症(カルタゲナー症候群など)、嚢胞性線維症、非結核性抗酸菌症などを背景に、気管支が不可逆的に拡張した状態である。慢性の咳と大量の膿性痰、血痰・喀血が特徴で、インフルエンザ菌や緑膿菌などの感染を繰り返す。炎症の主体は好中球であり、増悪時には末梢血で好中球増多やCRP上昇を示すが、好酸球増多は通常みられない。ただしABPAでは中枢性の気管支拡張を生じるため、気管支拡張に好酸球増多を伴う場合はABPAを疑う。

  3. ×c.  慢性好酸球性肺炎

    誤り。慢性好酸球性肺炎は、数週〜数か月にわたる咳・発熱・体重減少などを呈し、胸部画像で肺の外側(胸膜側)優位の浸潤影(肺水腫の逆の分布、photographic negative of pulmonary edema)を示す疾患である。患者の約3分の1〜半数に気管支喘息を合併する。気管支肺胞洗浄液の好酸球増加に加え、大部分の症例で末梢血好酸球増多を伴い、再燃時にも鋭敏に上昇する。副腎皮質ステロイドがよく効くが再燃しやすい。なお急性好酸球性肺炎では発症初期に末梢血好酸球が増えないことがある点と対比して覚える。

  4. ×d.  アレルギー性肉芽腫性多発血管炎

    誤り。本疾患は現在、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称Churg-Strauss症候群)とよばれる(2012年の血管炎の国際分類改訂で名称が変更された)。気管支喘息やアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎が先行し、その後に著明な末梢血好酸球増多(しばしば白血球の10%以上、1500/μL以上)を伴って小型血管の血管炎を発症する。多発単神経炎、紫斑、消化管潰瘍、心病変などをきたし、MPO-ANCA(ミエロペルオキシダーゼに対する抗好中球細胞質抗体)が一部の症例(3〜5割程度)で陽性となる。血清IgEも上昇する。

  5. ×e.  アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

    誤り。ABPAは、気道に定着したアスペルギルス(主にAspergillus fumigatus)に対するⅠ型およびⅢ型アレルギー反応によって起こる疾患で、多くは気管支喘息を基礎にもつ。末梢血好酸球増多、血清総IgEの著明な上昇、アスペルギルス特異的IgE・IgG(沈降抗体)陽性、粘液栓(喀痰中の褐色粘液栓)、中枢性気管支拡張、移動する浸潤影などが特徴である。治療は副腎皮質ステロイドを中心に、抗真菌薬を併用することがある。

好酸球増多をきたす主な肺疾患(好酸球性肺疾患)

・急性好酸球性肺炎:喫煙開始直後などに急性発症し、呼吸不全をきたしうる。気管支肺胞洗浄液の好酸球は著増するが、初期には末梢血好酸球が正常のことがある。 ・慢性好酸球性肺炎:中年女性に多く、喘息合併が多い。末梢優位の浸潤影、末梢血好酸球増多。 ・単純性肺好酸球増多症(レフレル症候群):寄生虫や薬剤による一過性の移動性浸潤影。 ・ABPA:喘息、総IgE著増、中枢性気管支拡張、粘液栓。 ・EGPA:喘息先行、著明な好酸球増多、血管炎(多発単神経炎など)、MPO-ANCA。 ・薬剤性肺炎、寄生虫感染(肺吸虫症など)、好酸球増多症候群(HES)。

気管支拡張症の要点

・原因:感染後、副鼻腔気管支症候群、原発性線毛機能不全症、嚢胞性線維症、免疫不全、非結核性抗酸菌症、ABPA(中枢性)など。 ・症状:慢性湿性咳嗽、大量の膿性痰、血痰・喀血、ばち指。 ・画像:高分解能CTで、伴走する肺動脈より太い気管支(signet ring sign)、気管支壁肥厚、tram line。 ・治療:排痰の促進、増悪時の抗菌薬、少量長期マクロライド療法、喀血に対する気管支動脈塞栓術など。

好中球性炎症と好酸球性炎症

細菌感染や気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の多くは好中球性炎症が主体である。一方、喘息やアレルギー疾患はTh2細胞や2型自然リンパ球が産生するIL-4、IL-5、IL-13による好酸球性炎症が主体である。

POINT

・好酸球増多は2型炎症(アレルギー)、寄生虫、好酸球性疾患、薬剤、血液腫瘍などでみられる ・気管支喘息では軽度、慢性好酸球性肺炎・EGPA・ABPAでは中等度〜高度の好酸球増多 ・気管支拡張症は好中球性炎症が主体で、好酸球増多は通常みられない ・気管支拡張+好酸球増多+喘息ではABPAを疑う ・アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)の現在の名称は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。