StudyMed医師国家試験

LDは数えない―骨髄異形成症候群の予後を決める「3つの柱」

第110回医師国家試験 I問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第110回 I問題 第20問

骨髄異形成症候群の予後因子でないのはどれか。

  1. a.LD値
  2. b.血小板数
  3. c.染色体異常
  4. d.骨髄芽球比率
  5. e.ヘモグロビン濃度

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は骨髄異形成症候群、つまりMDSの予後因子を問う問題だ。ポイントは、予後予測に実際に使われているスコアの中身を知っているかどうか。まずはMDSがどんな病気か、ざっくり説明できるかな。
医学生医学生
造血幹細胞の異常で血球に異形成が出て、血球が減る病気ですよね。白血病になることもあると習いました。
ドクタードクター
その通り。造血幹細胞に遺伝子異常が起こり、骨髄では細胞が作られているのに成熟前に壊れてしまう無効造血のため、末梢血では血球が減る。そして一部は急性骨髄性白血病に移行する。ただ経過は人によって大きく違って、何年も落ち着いている人もいれば、短期間で白血病化する人もいるんだ。
医学生医学生
血液内科の実習で、外来で輸血だけ続けている高齢の方と、入院して移植を検討している方の両方がMDSだったので驚きました。
ドクタードクター
まさにそれがMDSの特徴だね。だからこそ治療方針を決める前に予後を見積もる必要がある。そこで使われるのが国際予後判定システムのIPSSと、その改訂版のIPSS-Rだ。中身を思い出せるかな。
医学生医学生
芽球の割合と染色体と…あとは血球の数だったような。LDも腫瘍の勢いを反映するので入っていそうな気がします。
ドクタードクター
前半は完璧。そして後半がこの問題の落とし穴なんだ。IPSS系のスコアは「骨髄芽球比率」「染色体異常」「血球減少」の3系統で構成されていて、LD値はスコアに含まれていない。だから予後因子でないものとして選ぶのはLD値になる。
医学生医学生
リンパ腫だとLDが大事なので、つい入っていると思ってしまいました。
ドクタードクター
その連想は自然だよ。実際、悪性リンパ腫の国際予後指標ではLDが項目に入っているからね。MDSでも無効造血を反映してLDが上がることはあって、IPSS-Rでは年齢や全身状態、フェリチンなどと一緒に付加的な予後関連因子として言及されている。でも点数計算には使わない。ここを区別しておこう。では残りを一つずつ確認しよう。骨髄芽球比率はなぜ重要だと思う?
医学生医学生
芽球が増えるほど白血病に近づくからですか。WHO分類では20%以上でAMLでしたよね。
ドクタードクター
その通り。芽球が多いMDSはAMLの一歩手前と考えられ、芽球比率が高いほど点数が高く、予後不良になる。次に染色体異常。これは最も重要な因子の一つだ。
医学生医学生
5q欠失は予後が良いと聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。正常核型やdel(5q)単独、del(20q)単独、-Yは予後良好群。逆に3つ以上の異常をもつ複雑核型や7番染色体の異常は予後不良群になる。IPSS-Rではこれを5段階に細かく分けて点数化しているんだ。
医学生医学生
血球減少の部分は、ヘモグロビンと血小板が両方とも入っているんですね。
ドクタードクター
そう。IPSSでは貧血、好中球減少、血小板減少のうち何系統が減っているかを数えていたけれど、IPSS-Rではヘモグロビン濃度、血小板数、好中球数をそれぞれ別々に段階評価する。貧血が強ければ輸血依存になり、血小板が少なければ出血のリスクが上がる。感染と出血はMDSの主要な死因だから、血球減少が予後に直結するのは理解しやすいよね。
医学生医学生
つまり「芽球」「核型」「血球減少」の3本柱で、LDは補助的な情報、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。最後に臨床的な意味も押さえておこう。リスク分類によって治療の目標が変わる。低リスク群では血球減少を改善することが目標で、輸血や造血刺激因子、del(5q)を伴う例ではレナリドミドなどを使う。高リスク群では白血病化を抑えて生存を延ばすことが目標になり、低メチル化薬のアザシチジンや、適応があれば同種造血幹細胞移植を考える。
医学生医学生
スコアは単なる暗記ではなく、治療方針を決めるための道具なんですね。
ドクタードクター
その通り。さらに最近は、TP53やSF3B1といった遺伝子変異を組み込んだIPSS-Mも提唱されている。予後予測は今も進化している分野だから、基本の3本柱をしっかり押さえたうえで、新しい知見にも目を向けておくといいよ。

まとめ

骨髄異形成症候群は造血幹細胞の異常により異形成と無効造血を生じ、血球減少と急性骨髄性白血病への移行をきたす造血器腫瘍で、経過が多様なため予後予測が治療選択の前提となります。標準的な予後予測システムであるIPSSおよびIPSS-Rは、骨髄芽球比率、染色体異常(核型)、血球減少(ヘモグロビン・血小板・好中球)の3系統で点数化されます。LD値は無効造血を反映して上昇することがあり、IPSS-Rでは付加的な因子として言及されるものの、スコアの構成項目ではありません。リスク分類により、低リスク群では血球減少の改善、高リスク群では低メチル化薬や同種造血幹細胞移植による白血病化抑制と生存延長が治療目標となります。予後スコアの中身を理解することは、MDS診療で治療の強さを判断するための基本となります。

解答・解説

正解はaです

骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は、造血幹細胞に生じた遺伝子異常によって血球の形態異常(異形成)と無効造血が起こり、末梢血の血球減少をきたす造血器腫瘍である。一部は急性骨髄性白血病(AML)へ移行する。経過は症例によって大きく異なり、数年以上安定する例もあれば短期間で白血病化する例もある。このため、治療方針(経過観察・輸血などの支持療法・低メチル化薬・同種造血幹細胞移植など)を決めるには、予後をあらかじめ見積もることが欠かせない。 予後予測には国際予後判定システム(International Prognostic Scoring System:IPSS)や、その改訂版である改訂国際予後判定システム(IPSS-R)が広く使われる。これらで点数化される項目は次の3系統に集約できる。 (1) 骨髄中の芽球比率:芽球が多いほど白血病に近い状態であり、予後不良。 (2) 染色体異常(核型):異常の種類によって予後が大きく異なる。 (3) 血球減少:IPSSでは減少している血球系統の数、IPSS-Rではヘモグロビン濃度・血小板数・好中球数をそれぞれ段階的に評価する。 本問は「予後因子でないもの」を選ぶ問題であり、上記の芽球比率・染色体異常・ヘモグロビン濃度・血小板数はいずれもスコアの構成項目である。一方、LD(乳酸脱水素酵素)値はIPSS・IPSS-Rのスコアには組み込まれていないため、これが正解となる。

選択肢考察

  1. ○a.  LD値

    LD(lactate dehydrogenase:乳酸脱水素酵素)は細胞の破壊や細胞回転の亢進で上昇する非特異的な酵素であり、MDSでも無効造血(骨髄内で血球が成熟前に壊れること)を反映して上昇することがある。しかし、標準的な予後予測システムであるIPSSおよびIPSS-Rの点数化項目には含まれていない。したがって、5つの選択肢の中で「MDSの予後因子でない」ものとして選ぶべきはこれである。なお、IPSS-Rでは年齢・全身状態(performance status)・血清フェリチン・β2-ミクログロブリンとともにLDの高値が「付加的な予後関連因子」として言及されているが、スコア計算には用いない。

  2. ×b.  血小板数

    血小板減少は血球減少の一つとして予後因子に含まれる。IPSSでは血小板数10万/μL未満を血球減少1系統として数え、減少している系統数で点数をつける。IPSS-Rでは血小板数を独立した項目とし、10万/μL以上は0点、5万以上10万/μL未満は0.5点、5万/μL未満は1点と、低いほど高い点数(予後不良)になる。血小板減少は出血のリスクにも直結し、MDSの死因として感染症とともに重要である。

  3. ×c.  染色体異常

    染色体異常(核型)はMDSの予後を左右する最も重要な因子の一つである。IPSSでは、正常核型、-Y、del(5q)単独、del(20q)単独を予後良好群、3つ以上の異常をもつ複雑核型や7番染色体異常を予後不良群、それ以外を中間群とする。IPSS-Rではさらに細分化し、very good・good・intermediate・poor・very poorの5群に分けて0〜4点を与える。複雑核型が多い(4つ以上)場合はvery poorに分類され、最も予後が悪い。

  4. ×d.  骨髄芽球比率

    骨髄中の芽球比率は、白血病への移行しやすさを直接反映する予後因子である。IPSSでは5%未満・5〜10%・11〜20%・21〜30%の区分で、IPSS-Rでは2%以下・2%超5%未満・5〜10%・10%超の区分で点数化し、芽球が多いほど高得点(予後不良)となる。WHO分類では骨髄芽球20%以上でAMLと診断されるため、芽球が増加しているMDSはAML移行の一歩手前の状態と捉えられる。

  5. ×e.  ヘモグロビン濃度

    貧血はMDSで最も多くみられる血球減少であり、予後因子に含まれる。IPSSではヘモグロビン10 g/dL未満を血球減少1系統として数える。IPSS-Rではヘモグロビン濃度を独立項目とし、10 g/dL以上は0点、8以上10 g/dL未満は1点、8 g/dL未満は1.5点を与える。高度の貧血は赤血球輸血依存につながり、輸血依存自体も予後不良と関連する。

MDSの概要

・中高年〜高齢者に多い。原因不明の一次性のほか、抗腫瘍薬や放射線治療後に生じる治療関連MDSもある。 ・末梢血では血球減少(貧血が最多)、骨髄は正形成〜過形成であることが多い(無効造血のため、骨髄に細胞があるのに末梢で減る)。 ・異形成の例:好中球の偽ペルゲル核異常・脱顆粒、環状鉄芽球、微小巨核球など。 ・診断では再生不良性貧血、ビタミンB12・葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血、銅欠乏などを除外する。

IPSSの構成(1997年)

・骨髄芽球比率:5%未満 0点、5〜10% 0.5点、11〜20% 1.5点、21〜30% 2.0点 ・核型:良好 0点、中間 0.5点、不良 1.0点 ・血球減少(Hb 10 g/dL未満、好中球1,800/μL未満、血小板10万/μL未満)の系統数:0〜1系統 0点、2〜3系統 0.5点 ・合計点で Low(0)、Intermediate-1(0.5〜1.0)、Intermediate-2(1.5〜2.0)、High(2.5以上)の4群に分ける。

IPSS-R(2012年)の構成

・核型5群(0〜4点)、骨髄芽球比率(0〜3点)、ヘモグロビン(0〜1.5点)、血小板(0〜1点)、好中球数(0.8×10³/μL未満で0.5点) ・合計点でvery low・low・intermediate・high・very highの5群に分ける。 ・年齢、performance status、血清フェリチン、LD、β2-ミクログロブリンは付加的な因子として扱われ、スコアには含まれない。

近年の動向

・遺伝子変異(TP53、SF3B1など)を組み込んだ分子国際予後判定システム(IPSS-M)も提唱されている。

リスクと治療の関係

・低リスク群:血球減少の改善を目標とする(輸血、造血刺激因子、del(5q)を伴う例ではレナリドミド、など)。 ・高リスク群:白血病化の抑制と生存延長を目標とする(低メチル化薬のアザシチジン、適応があれば同種造血幹細胞移植)。

POINT

・MDSの予後因子(IPSS/IPSS-R)は「骨髄芽球比率」「染色体異常(核型)」「血球減少(ヘモグロビン・血小板・好中球)」の3系統。 ・LD値はIPSS・IPSS-Rのスコア項目ではない。 ・予後分類(低リスク/高リスク)により治療目標が異なる:低リスクは血球減少の改善、高リスクは白血病化抑制と根治(移植)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。