保健所とは何が違う?―「身近な窓口」市町村保健センターを法律から読み解く
第110回医師国家試験 G問題 第32問
国試問題にチャレンジ
市町村保健センターについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.住民の健康相談を行う。
- b.設置根拠は地域保健法である。
- c.医療法に基づく医療計画を策定する。
- d.センター長は医師でなければならない。
- e.各市町村に設置することが義務付けられている。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
市町村保健センターは、地域保健法に基づいて市町村が設置する施設で、健康相談、保健指導、健康診査、予防接種、乳幼児健診など住民に身近な対人保健サービスを提供します。同じく地域保健法を根拠とする保健所と比べると、保健所は都道府県や指定都市、中核市、特別区などに設置義務があり所長は原則医師であるのに対し、市町村保健センターは任意設置でセンター長の資格要件はありません。保健所は感染症対策、食品・環境衛生、医療監視、難病や精神保健の専門的支援など広域的・専門的業務を担い、医療法に基づく医療計画は都道府県が策定します。両者の役割分担を理解しておくことは、感染症の届出や母子保健での連携など、臨床医として地域の行政機関と協働する際の基礎になります。
解答・解説
正解はa, bです
本問は、地域保健を担う行政機関のうち、市町村保健センターの法的位置づけと役割を問う一般問題である。
考え方
地域保健の拠点には「保健所」と「市町村保健センター」の2種類があり、いずれも地域保健法に規定されている。両者の違いを対比して押さえると、各選択肢を判断しやすい。 ・保健所:都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置しなければならない(設置義務)。所長は原則として医師。広域的・専門的・技術的な業務(感染症対策、食品衛生、環境衛生、医療監視、精神保健や難病の専門的支援など)と、市町村への技術的支援を担う。 ・市町村保健センター:市町村が設置することが「できる」施設(任意設置)。センター長の資格要件は定められていない。住民に身近な対人保健サービス(健康相談、保健指導、健康診査、健康教育、予防接種など)を総合的に提供する。 また、医療法に基づく医療計画は都道府県が策定するものであり、市町村の機関の業務ではない。以上から、健康相談を行うこと、設置根拠が地域保健法であることの2つが正しい。
選択肢考察
- ○a. 住民の健康相談を行う。
正しい。地域保健法では、市町村保健センターを「住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行うことを目的とする施設」と位置づけている。実際には、乳幼児健診や母子健康手帳の交付、妊産婦・乳幼児の訪問指導、成人の健康相談・健康教育、がん検診、予防接種など、住民が日常的に利用する対人保健サービスの窓口となっている。保健師が中心となって業務を担う。
- ○b. 設置根拠は地域保健法である。
正しい。市町村保健センターは地域保健法(第18条)に基づき市町村が設置する施設である。地域保健法は、1994年に旧保健所法を改正・改称して成立した法律で(全面施行は1997年)、身近な保健サービスは市町村、広域的・専門的なサービスは保健所という役割分担を明確にした。この法改正によって、それまで予算措置で整備されてきた市町村保健センターが法律上に位置づけられた。保健所も同じく地域保健法に基づく機関である。
- ×c. 医療法に基づく医療計画を策定する。
誤り。医療法に基づく医療計画は、都道府県が地域の実情に応じて策定するものである。医療計画には、二次医療圏・三次医療圏の設定と基準病床数、5疾病(がん、脳卒中、心血管疾患、糖尿病、精神疾患)・6事業(救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、新興感染症等の感染拡大時の医療)と在宅医療の提供体制、地域医療構想などが盛り込まれ、現在は6年ごとに見直される。市町村の機関である市町村保健センターが策定するものではない。
- ×d. センター長は医師でなければならない。
誤り。市町村保健センターのセンター長について、医師であることを求める法令上の規定はない。実際には市町村の事務職員や保健師などがセンター長を務めることが多い。これに対して保健所長は、地域保健法施行令により原則として医師でなければならないとされている(医師の確保が著しく困難な場合などに限り、一定の要件を満たす医師以外の職員を充てる例外がある)。保健所との違いとして押さえておく。
- ×e. 各市町村に設置することが義務付けられている。
誤り。地域保健法では「市町村は、市町村保健センターを設置することができる」と規定されており、設置は任意である。多くの市町村に設置されているものの、法律上の義務ではない。一方、保健所は都道府県、指定都市、中核市、政令で定める市、特別区に設置が義務付けられており、この「義務」か「任意」かの違いは頻出の論点である。
保健所と市町村保健センターの比較
・根拠法:いずれも地域保健法。 ・設置主体:保健所は都道府県・指定都市・中核市・その他政令市・特別区。市町村保健センターは市町村。 ・設置:保健所は義務、市町村保健センターは任意(「設置することができる」)。 ・長の資格:保健所長は原則医師。市町村保健センター長は規定なし。 ・性格:保健所は行政機関として監視・指導や許認可などの権限を伴う業務を行う。市町村保健センターは住民に対する保健サービスを提供する施設である。
主な業務の分担
・保健所:感染症の予防・まん延防止(積極的疫学調査など)、食品衛生・環境衛生、医療機関・薬事に関する監視、精神保健福祉や難病、結核などの専門的な支援、人口動態統計などの統計業務、市町村への技術的援助・職員研修。 ・市町村保健センター:母子保健(母子健康手帳の交付、乳幼児健康診査、新生児・妊産婦の訪問指導など)、成人保健(健康増進法に基づく健康相談・健康教育・がん検診など)、予防接種、高齢者の介護予防などの身近な対人サービス。
地域保健法の成立
1937年(昭和12年)制定の保健所法(1947年に全面改正)を1994年に改正・改称して地域保健法が成立し、1997年に全面施行された。住民に身近で頻度の高いサービスを市町村に一元化し、保健所は広域的・専門的拠点として再編された。
POINT
・市町村保健センターは地域保健法に基づき市町村が設置する(任意設置)。 ・健康相談、保健指導、健康診査、予防接種など住民に身近な対人保健サービスを行う。 ・センター長の資格要件はない(保健所長は原則医師)。 ・保健所は地域保健法に基づき都道府県・政令市・特別区などに設置義務がある。 ・医療法に基づく医療計画を策定するのは都道府県である。
