StudyMed医師国家試験

おむつの子の尿はどう採る?―排尿の発達段階で選ぶ小児の採尿法

第110回医師国家試験 E問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第110回 E問題 第2問

物品の写真(①~⑤)を別に示す。  外来で1歳2か月の男児に尿検査を実施するときに必要なのはどれか。

第110回 E問題 第2問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、写真の物品から乳幼児の尿検査に使うものを選ぶ問題だ。ポイントは「この年齢の子が自分で排尿をコントロールできるか」。採尿法は、子どもの発達段階に合わせて選ぶんだ。まず、写真に並んでいる物品が何か確認しておこう。
医学生医学生
注射器、陰部に貼る透明な袋、紙おむつ、目盛り付きの紙コップ、それに幼児用のおまる、ですね。
ドクタードクター
その通り。透明な袋は小児用の採尿バッグで、開口部の周りに粘着面があって陰部に貼り付けて使う。では、1歳2か月の子は排尿をどこまで自分でできると思う?
医学生医学生
小児科の講義で、トイレットトレーニングは2歳前後から始めると習いました。1歳2か月だとまだおむつですよね。
ドクタードクター
正解。乳児期は膀胱に尿がたまると反射的に排尿していて、1歳半〜2歳ごろに尿意を感じ始め、昼間の排尿が自立するのはおおむね3歳ごろ。夜間も含めて自立するのは4〜5歳ごろだ。だから1歳2か月の子に「このコップにおしっこしてね」と言っても無理なんだ。
医学生医学生
それなら、おむつに出た尿を使えばいいのでは、と一瞬思いました。
ドクタードクター
実はそれが難しい。紙おむつの中の高分子吸収体は尿をゲル状に閉じ込めてしまうから、検査に必要な量を取り出せないし、成分も変わりうる。だから検査用には向かないんだ。
医学生医学生
そこで採尿バッグの出番ですね。陰部に貼っておいて、自然に出るのを待つと。
ドクタードクター
そう。外陰部をきれいに拭いてから、男児なら陰茎を袋の中に入れるように貼り付けて、排尿を待つ。痛みもなく簡便だから、外来でのスクリーニング的な尿検査にはこれが一般的なんだ。これが今回の正解だよ。
医学生医学生
採尿カップとおまるは、もっと大きい子向けということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。採尿カップは自分で排尿をコントロールできる年長児・学童や成人向けで、中間尿の採取に使う。おまるはトイレットトレーニング中の2〜3歳以降の幼児なら使える場面もあるけれど、そもそも清潔な容器ではないから、検査に使うなら工夫が要る。いずれも1歳2か月の子には適さない。
医学生医学生
注射器はどうでしょう。乳児で膀胱穿刺をするという話を聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。恥骨上から膀胱を穿刺して尿を吸引する膀胱穿刺や、導尿カテーテルからの吸引に注射器を使うことはある。でも侵襲のある手技で、尿培養のために無菌的な検体がどうしても必要な場面に限られる。一般的な外来の尿検査に必須の物品ではないんだ。
医学生医学生
採尿バッグで十分なら、尿培養もバッグの尿でいいんじゃないかと思ってしまいます。
ドクタードクター
そこが臨床での大事な注意点だ。採尿バッグの尿は皮膚や外陰部の常在菌が混入しやすく、培養では偽陽性が多い。培養が陰性なら尿路感染症の否定に役立つけれど、陽性ならカテーテル導尿や膀胱穿刺の検体で確認する。膀胱穿刺は最も汚染が少なく、検出された菌は原則として有意とみなせる。超音波で膀胱に尿がたまっているのを確認してから行うと成功率が上がるよ。
医学生医学生
小児科の実習で、熱だけの赤ちゃんに導尿していたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そう。乳幼児の尿路感染症は発熱以外の症状に乏しいことが多く、背景に膀胱尿管逆流などの尿路の異常が隠れていることもある。だから「熱源不明の乳幼児では尿を調べる」は小児科の基本なんだ。目的がスクリーニングか培養かで、採尿法を使い分けることが大切だよ。
医学生医学生
年齢と排尿の自立度で道具を選び、検査の目的で清潔度を選ぶ、という二段階で考えればいいんですね。
ドクタードクター
その通り。OSCEや臨床実習で保護者に採尿バッグの使い方を説明する場面もあるから、手順もあわせて覚えておこう。

まとめ

小児の採尿法は、排尿の自立度という発達段階に合わせて選びます。昼間の排尿が自立するのはおおむね3歳ごろで、おむつを使用している1歳2か月の児の外来尿検査では、陰部に貼り付けて自然排尿を待つ採尿バッグが非侵襲的で簡便です。紙おむつは尿が吸収体に保持されて検査に使えず、採尿カップ(中間尿)は排尿が自立した年長児以降、おまるはトイレットトレーニング中の幼児向けです。ただし採尿バッグの尿は常在菌の混入が多く、尿路感染症の診断に培養が必要な場合はカテーテル導尿や膀胱穿刺で無菌的に採取します。発熱以外の症状に乏しい乳幼児の尿路感染症を見逃さないためにも、検査の目的と年齢に応じた採尿法の使い分けは小児診療の基本となります。

解答・解説

正解はbです

写真の物品

①注射器(シリンジ),②採尿バッグ(小児用採尿パック:開口部の周囲に粘着面があり,陰部に貼り付けて尿をためる透明な袋),③紙おむつ(股部に排尿を知らせる表示線が付いている),④目盛り付きの紙製採尿カップ,⑤幼児用おまるである。

考え方

採尿方法は,子どもの発達段階,特に排尿の自立(トイレットトレーニング)の程度によって選ぶ。トイレットトレーニングは一般に2歳前後から始まり,昼間の排尿が自立するのは3歳ごろである。1歳2か月の児はまだおむつを使用しており,自分の意思で排尿のタイミングを調節したり,指示に従って容器に尿を出したりすることはできない。 このため,外来でのスクリーニング的な尿検査では,陰部に採尿バッグを貼り付け,自然排尿を待って尿を回収する方法が一般的である。侵襲がなく簡便であることが利点である。 一方,採尿バッグの尿は皮膚や外陰部の常在菌が混入しやすく,尿培養の検体としては信頼性が低い。尿路感染症を診断するために培養用の検体が必要な場合には,カテーテル導尿や膀胱穿刺(恥骨上穿刺)によって無菌的に採取する。本問は「外来で尿検査を実施する」という一般的な場面であり,最も適切なのは採尿バッグである。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は注射器である。乳幼児では,尿培養のために無菌的な検体が必要な場合に,恥骨上から膀胱を穿刺して尿を吸引する膀胱穿刺や,導尿カテーテルからの尿の吸引に用いることがある。しかし侵襲を伴う手技であり,外来での一般的な尿検査に必須の物品ではない。

  2. ○b.  ②

    ②は小児用の採尿バッグである。排尿が自立していない乳幼児では,外陰部を清拭したのち開口部を陰部(男児では陰茎を袋の中に入れるように)に貼り付け,自然に排尿されるのを待って尿を採取する。非侵襲的で簡便なため,1歳2か月の児の外来尿検査に適している。ただし汚染が起こりやすいので,培養で陽性となった場合の解釈には注意が必要である。

  3. ×c.  ③

    ③は紙おむつである。おむつに吸収された尿は高分子吸収体に保持されるため,検査に必要な量の尿を取り出すことができず,成分も変化しうるため,検査用の採尿には適さない。

  4. ×d.  ④

    ④は採尿カップである。自分で排尿をコントロールして容器に尿を受けることができる年長児以降(学童や成人)で用いられ,中間尿の採取にも使われる。1歳2か月の児では使用できない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は幼児用のおまるである。トイレットトレーニング中〜排尿が自立し始めた幼児(おおむね2〜3歳以降)であれば,おまるで排尿させて尿を回収する方法もとりうるが,排尿の自立していない1歳2か月の児には用いられない。また,おまる自体が清潔な容器ではないため,検査用の採尿には工夫が必要である。

小児の採尿法

・採尿バッグ: 排尿未自立の乳幼児。非侵襲的・簡便だが汚染が多く,培養では偽陽性が多い。培養陰性なら尿路感染症の否定に役立つが,陽性の場合はカテーテル尿などで確認する。 ・カテーテル導尿: 乳幼児の尿培養に広く用いられる。汚染が少ない。 ・膀胱穿刺(恥骨上穿刺): 最も汚染の少ない方法で,検出された細菌は原則として有意とみなす。超音波で膀胱内の尿を確認してから行うと成功率が上がる。 ・中間尿採取: 排尿が自立した年長児・学童・成人。採尿カップを用いる。

排尿の発達の目安

・乳児期: 膀胱に尿がたまると反射的に排尿する ・1歳半〜2歳ごろ: 尿意を感じ始め,トイレットトレーニングを開始する目安となる ・3歳ごろ: 昼間の排尿が自立する ・4〜5歳ごろ: 夜間の排尿もおおむね自立する(5歳以降も続く夜間の尿失禁は夜尿症として扱う)

乳幼児の尿路感染症

乳幼児の発熱では尿路感染症が重要な鑑別であり,症状が発熱のみで局所症状に乏しいことが多い。膀胱尿管逆流などの尿路の異常を背景にもつことがある。

POINT

・排尿未自立の乳幼児の外来尿検査には採尿バッグを用いる ・採尿バッグの尿は汚染されやすく,尿培養にはカテーテル導尿や膀胱穿刺の検体が望ましい ・採尿カップ(中間尿)は排尿が自立した年長児以降 ・昼間の排尿自立はおおむね3歳ごろ ・紙おむつからの採尿は検査に適さない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。