StudyMed医師国家試験

全員に測るか、選んで測るか―特定健診の「必須項目」はメタボの物差しで覚える

第110回医師国家試験 B問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第32問

特定健康診査で必須の項目はどれか。2つ選べ。

  1. a.心電図
  2. b.γ-GTP
  3. c.血圧測定
  4. d.眼底検査
  5. e.尿素呼気試験

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は特定健康診査、いわゆる特定健診の検査項目の問題だ。特定健診の項目には、受診者全員に行う「基本的な健診項目」と、条件を満たした人にだけ医師の判断で行う「詳細な健診項目」がある。この区別がつくかどうかがポイントだね。まず、特定健診が何のための健診か覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いました。メタボリックシンドロームに着目した健診で、40〜74歳が対象でしたよね。
ドクタードクター
その通り。高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、市町村国保や健康保険組合、協会けんぽなどの医療保険者が実施する。目的は、生活習慣病のリスクがある人を早めに見つけて、特定保健指導につなげることだ。
医学生医学生
目的がメタボなら、心電図や眼底検査も動脈硬化の評価に必要そうなので、必須に入っている気がしてしまいます。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも、心電図や眼底検査はすでに血圧や血糖に異常がある人の臓器障害を確かめるための検査なんだ。だから全員ではなく、詳細な健診項目に入っている。覚え方としては、必須項目はメタボの構成要素である腹囲・血圧・脂質・血糖と、それに関連する肝機能・尿検査でできている、と理解するといい。
医学生医学生
それなら血圧測定は確実に必須ですね。メタボの診断基準に、収縮期130mmHg以上か拡張期85mmHg以上という項目がありました。
ドクタードクター
正解。血圧は特定保健指導の対象者を階層化するときの判定にも使うから、全員に測る必要がある。では、もう一つの正解はどれだと思う?
医学生医学生
γ-GTPでしょうか。でも肝機能はメタボと直接関係ないようにも思えて、少し迷います。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。でも内臓脂肪の蓄積は脂肪肝と深く結びついているよね。必須の肝機能検査はAST、ALT、γ-GTPの3つで、脂肪肝や飲酒による肝障害を把握するために全員に測定する。γ-GTPは特に飲酒量を反映しやすいから、保健指導で生活習慣を見直す材料にもなるんだ。
医学生医学生
消化器内科を回ったとき、健診でγ-GTP高値を指摘されて紹介された患者さんがいました。お酒を控えたら数値が下がったと話していました。
ドクタードクター
まさに保健指導の効果が数字で見える例だね。では、心電図と眼底検査がどんな人に行われるか確認しておこう。
医学生医学生
心電図は血圧が高い人や不整脈が疑われる人、眼底検査は血圧や血糖が高い人に、医師が必要と判断したときに行う、ということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。心電図は高血圧による左室肥大や不整脈を、眼底検査は高血圧性網膜症や糖尿病網膜症といった細小血管障害を見るための追加検査だ。詳細な健診項目には他に、貧血検査と血清クレアチニンがある。血清クレアチニンは2018年度から加わった項目だよ。
医学生医学生
尿素呼気試験はピロリ菌の検査なので、さすがに関係なさそうです。
ドクタードクター
そうだね。ピロリ菌のウレアーゼが13C標識尿素を分解して、呼気中に13CO2が出ることを利用した感染診断法だ。胃癌リスクの評価には関係するけれど、メタボを対象とする特定健診には、基本項目にも詳細項目にも含まれていない。胃や大腸の癌検診も特定健診とは別枠だ。
医学生医学生
必須項目を全部挙げると、質問票、身長・体重・BMI・腹囲、身体診察、血圧、脂質、肝機能、血糖、尿糖と尿蛋白、でよいでしょうか。
ドクタードクター
完璧だね。脂質は中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールで、条件によってはNon-HDLコレステロールで代替できる。血糖は空腹時血糖かHbA1cだ。最後に制度面も押さえておこう。会社員が労働安全衛生法に基づく事業者健診を受けた場合は、その結果で特定健診を代替できる。また、特定保健指導は腹囲やBMIを出発点に、追加リスクの数と喫煙歴で動機付け支援と積極的支援に分ける。すでに服薬中の人は特定保健指導の対象外になる点も大事だ。
医学生医学生
75歳以上の人は特定健診ではなく、後期高齢者医療広域連合の健診になるんですよね。
ドクタードクター
その通り。臨床に出ると、健診結果を持って受診する患者さんを診る機会がたくさんある。どの項目が全員に測られていて、どの項目が条件付きなのかを知っていると、結果票の読み方や追加すべき検査の判断がぐっとしやすくなるよ。

まとめ

特定健康診査は高齢者医療確保法に基づき、医療保険者が40〜74歳を対象に行う、メタボリックシンドロームに着目した健診です。全員に行う必須項目は、質問票、身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、身体診察、血圧、脂質、肝機能(AST・ALT・γ-GTP)、血糖、尿糖・尿蛋白であり、本問では血圧測定とγ-GTPが該当します。心電図、眼底検査、貧血検査、血清クレアチニンは、血圧や血糖などに異常がある人に医師の判断で行う詳細な健診項目で、臓器障害を確認するための追加検査です。尿素呼気試験などのピロリ菌検査は特定健診に含まれません。必須項目は「メタボの構成要素と、それに関連する脂肪肝・腎の指標」と理解すると覚えやすく、健診結果を読み解く臨床の場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はb, cです

特定健康診査(特定健診)は、「高齢者の医療の確保に関する法律」(高齢者医療確保法)に基づき、医療保険者(市町村国保、健康保険組合、協会けんぽなど)が40〜74歳の加入者を対象に毎年実施する健診である。2008年度に開始され、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目して生活習慣病の発症・重症化のリスクがある人を早期に見つけ、特定保健指導(動機付け支援・積極的支援)につなげることを目的としている。 検査項目は、全員に行う「基本的な健診項目(必須項目)」と、一定の基準を満たし医師が必要と判断した人にだけ行う「詳細な健診項目」に分かれる。本問はこの区別を問うものである。 考え方としては、必須項目はメタボリックシンドロームの構成要素(腹囲・血圧・脂質・血糖)と、それに関連する脂肪肝などを把握するための肝機能・尿検査で構成されている、と理解するとよい。一方、心電図・眼底検査・貧血検査・血清クレアチニンは、すでに血圧や血糖などに異常がある人の臓器障害(心臓・網膜・腎臓)を確認するための追加検査であり、全員には行わない。尿素呼気試験はヘリコバクター・ピロリ菌の感染診断法であり、特定健診とは無関係である。 したがって、肝機能検査の一つであるγ-GTPと、血圧測定が必須項目に該当する。

選択肢考察

  1. ×a.  心電図

    心電図は「詳細な健診項目」であり、必須項目ではない。当該年度の健診で血圧が受診勧奨判定値以上の人や、問診などで不整脈が疑われる人のうち、医師が必要と認めた場合に実施される。高血圧による左室肥大や不整脈を評価するための追加検査と位置づけられている。

  2. ○b.  γ-GTP

    γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)は、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)とともに、必須の肝機能検査に含まれる。肥満や内臓脂肪蓄積に伴う脂肪肝(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)や、飲酒習慣による肝障害を把握する目的で全員に測定される。γ-GTPは特に飲酒量を反映しやすく、保健指導で生活習慣を見直す材料にもなる。

  3. ○c.  血圧測定

    血圧測定は必須項目である。高血圧はメタボリックシンドロームの診断基準の構成要素(収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上)の一つであり、特定保健指導の対象者を選び出す階層化の判定にも血圧値が用いられる。そのため全受診者に実施される。

  4. ×d.  眼底検査

    眼底検査は「詳細な健診項目」であり、必須項目ではない。当該年度の健診で血圧または血糖が受診勧奨判定値以上の人などのうち、医師が必要と認めた場合に実施される。高血圧性網膜症や糖尿病網膜症など、細小血管障害の有無を確認するための検査である。

  5. ×e.  尿素呼気試験

    尿素呼気試験は、ヘリコバクター・ピロリ菌が持つウレアーゼの働きで、服用した13C標識尿素が分解され呼気中に13CO2が出ることを利用した感染診断法である。胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃癌のリスク評価に関わる検査であり、メタボリックシンドロームを対象とする特定健診の項目には含まれない(基本項目にも詳細項目にもない)。

特定健康診査の検査項目

1. 基本的な健診項目(全員に実施) ・質問票(服薬歴、既往歴、喫煙歴、飲酒、運動・食習慣など) ・身体計測:身長、体重、BMI、腹囲(内臓脂肪面積で代替可) ・理学的検査(身体診察) ・血圧測定 ・血中脂質検査:中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール(中性脂肪が高値の場合や食後採血の場合は、Non-HDLコレステロールで代替可) ・肝機能検査:AST、ALT、γ-GTP ・血糖検査:空腹時血糖またはHbA1c(やむを得ない場合は随時血糖も可) ・尿検査:尿糖、尿蛋白 2. 詳細な健診項目(一定の基準に該当し、医師が必要と認めた人に実施) ・心電図 ・眼底検査 ・貧血検査(赤血球数、血色素量〔ヘモグロビン〕、ヘマトクリット値) ・血清クレアチニン(eGFRによる腎機能評価):2018年度から追加

特定健診・特定保健指導の枠組み

・根拠法:高齢者の医療の確保に関する法律 ・実施主体:医療保険者(労働安全衛生法に基づく事業者健診を受けた場合は、その結果で代替できる) ・対象:40〜74歳の被保険者・被扶養者 ・特定保健指導:腹囲(男性85cm以上、女性90cm以上)またはBMI 25以上を出発点に、血糖・脂質・血圧の追加リスク数と喫煙歴によって「動機付け支援」と「積極的支援」に階層化する。服薬中の人は特定保健指導の対象外となる。 ・75歳以上は後期高齢者医療広域連合による健診(特定健診とは別枠)の対象となる。

POINT

・特定健診の必須項目:質問票、身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、身体診察、血圧、脂質(中性脂肪・HDL-C・LDL-C)、肝機能(AST・ALT・γ-GTP)、血糖(空腹時血糖またはHbA1c)、尿糖・尿蛋白 ・詳細な健診項目(医師の判断):心電図、眼底検査、貧血検査、血清クレアチニン ・ピロリ菌検査(尿素呼気試験など)や胃・大腸の癌検診は特定健診に含まれない ・根拠法は高齢者医療確保法、実施主体は医療保険者、対象は40〜74歳

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。