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扇の頂点はどこにある?―断面からプローブの位置を逆算する心エコーの読み方

第109回医師国家試験 G問題 第9問

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第109回 G問題 第9問

健常成人の心エコー図(①~⑤)を別に示す。  探触子〈プローブ〉の位置が心尖部に最も近いのはどれか。

第109回 G問題 第9問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、5枚の心エコー図からプローブを当てた位置を推定する問題だ。経胸壁心エコーでは、プローブをどこに当てるかで得られる断面がほぼ決まっている。だから「この画像は何の断面か」がわかれば、プローブの位置は逆算できる。もう一つの着眼点は、扇形画像の頂点がプローブを当てた体表に相当するということだ。
医学生医学生
扇形の一番上が胸の表面、ということですね。でも正直、心エコーの画像はどれも同じように見えてしまって……。
ドクタードクター
最初はみんなそうだよ。まず代表的なアプローチを整理しよう。一つは胸骨左縁の第3〜4肋間に当てる傍胸骨アプローチ。もう一つは心尖拍動を触れる左第5肋間の鎖骨中線付近に当てる心尖部アプローチ。ほかに心窩部、胸骨上窩からのアプローチもある。
医学生医学生
OSCEの胸部診察で心尖拍動を触れる練習をしました。あの位置にプローブを当てるわけですね。
ドクタードクター
その通り。そこから心臓の長軸に沿って心基部へビームを入れると、心尖部四腔断面、二腔断面、長軸断面が得られる。一方、傍胸骨アプローチでは左室長軸断面と、プローブを回して得る各レベルの短軸断面が描出される。では5枚の画像を見ていこう。まず4つの部屋が全部写っているものはあるかな。
医学生医学生
3枚目は、扇の頂点のすぐ下から中隔が縦に伸びて、左右の心室とその奥に2つの心房が並んでいます。四腔断面でしょうか。
ドクタードクター
正解。扇の頂点に心尖があり、心室中隔と心房中隔が縦一直線に並んで、左右の心室・心房と僧帽弁・三尖弁が同時に見える。これが心尖部四腔断面で、プローブは心尖部に置かれている。つまり答えはこの画像だ。
医学生医学生
4つの心腔が同時に見えたら心尖部から、と覚えればいいですか。
ドクタードクター
基本的にはそれでいい。他の画像も確認しよう。2枚目は手前に右室、その奥に左室、そして左房と大動脈基部が横に並んでいる。何の断面だと思う?
医学生医学生
循環器内科の実習で検査技師さんが最初に出していた、傍胸骨左室長軸断面だと思います。
ドクタードクター
そう。心エコーで最初に記録する基本断面で、左室径や壁厚、左房径、大動脈径の計測、僧帽弁や大動脈弁の観察に使う。傍胸骨断面では、胸壁に最も近い右室が画面の上方、つまり頂点側に写るのも特徴だよ。
医学生医学生
残りの3枚は丸い構造が見えるので、短軸像ですか。
ドクタードクター
いいね。1枚目は円形の左室の中に乳頭筋が見える乳頭筋レベルの短軸断面、5枚目は右室の下に円形の左室が横断されたもので、1枚目より心基部寄りの短軸断面だ。4枚目は中央に大動脈弁の小さな円形断面があって、その周りを右室流出路が取り囲む大動脈弁レベルの短軸断面になる。
医学生医学生
短軸像は長軸断面の位置からプローブを90度くらい回して、ビームの傾きでレベルを変えるんでしたね。だから全部胸骨左縁からということですか。
ドクタードクター
その理解で正しい。短軸像では左室が円形、右室が三日月形に見えるのも覚えておこう。結局、5枚のうち4枚は傍胸骨アプローチで、心尖部から得られるのは四腔断面だけということになる。
医学生医学生
断面の名前の中に、プローブの位置がそのまま入っているんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。最後に臨床での使い分けも押さえておこう。心尖部四腔断面は左右の心腔の大きさ比較、壁運動、房室弁逆流の評価、ドプラ法での左室流入血流のE波・A波の計測に使い、二腔断面と合わせてSimpson法で左室駆出率を求める。心窩部アプローチは下大静脈径と呼吸性変動から右房圧を推定したり、心嚢液を評価したりするのに便利で、肺気腫などで傍胸骨からの描出が悪い人にも役立つ。
医学生医学生
救急外来の実習で、ショックの患者さんに心窩部からエコーを当てて心嚢液を見ていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその場面だね。胸骨上窩からは大動脈弓が見えて、大動脈縮窄の評価に使える。どの窓から何が見えるかを知っていると、ベッドサイドで必要な断面にすばやくたどり着けるよ。

まとめ

経胸壁心エコーでは、プローブを当てる位置によって得られる断面がほぼ決まっており、扇形画像の頂点がプローブを当てた体表に相当します。胸骨左縁第3〜4肋間からの傍胸骨アプローチでは左室長軸断面と、大動脈弁・僧帽弁・乳頭筋レベルなどの短軸断面が得られ、心尖拍動部からの心尖部アプローチでは四腔断面・二腔断面・長軸断面が得られます。4つの心腔と両房室弁が同時に写り、頂点に心尖がある画像は心尖部四腔断面であり、5枚のうちプローブが心尖部に最も近いのはこの断面です。四腔断面は心腔の大きさ比較、房室弁逆流、左室流入血流や駆出率の評価に、心窩部アプローチは下大静脈や心嚢液の評価に用いられます。断面の名前とプローブ位置を結びつけて理解することは、画像判読だけでなくベッドサイドでのエコー操作の基礎になります。

解答・解説

正解はcです

経胸壁心エコー検査では、探触子(プローブ)を当てる位置(アプローチ)によって得られる断面がほぼ決まっている。したがって、画像に写っている断面の種類を判別できれば、プローブの位置を逆算できる。

主なアプローチと代表的な断面

・傍胸骨アプローチ:胸骨左縁の第3〜4肋間にプローブを当てる。プローブの向きを回転・傾斜させることで、傍胸骨左室長軸断面と、各レベルの短軸断面(大動脈弁レベル、僧帽弁レベル、乳頭筋レベル、心尖部レベル)が得られる。 ・心尖部アプローチ:心尖拍動を触れる部位(通常は左第5肋間・鎖骨中線付近)にプローブを当て、心臓の長軸方向に沿って心底部に向けてビームを入れる。心尖部四腔断面、二腔断面、長軸(三腔)断面が得られる。 ・心窩部(剣状突起下)アプローチ、胸骨上窩アプローチなどもある。

画像の判読

・①:円形の左室を横断した短軸像で、内腔に乳頭筋がみられる。左室短軸断面(乳頭筋レベル)である。 ・②:左室・左房・大動脈基部が長軸方向に並び、その手前(画面上方)に右室がみられる。傍胸骨左室長軸断面である。 ・③:扇形の頂点(プローブ側)に心尖部があり、そこから中隔が縦に走って左右の心室を分け、その奥に心房中隔と左右の心房が並ぶ。房室弁(僧帽弁・三尖弁)とあわせて4つの心腔がすべて描出された心尖部四腔断面である。 ・④:中央に大動脈弁の小さな円形断面があり、その周囲を右室(右室流出路)が取り囲む。大動脈弁レベルの短軸断面である。 ・⑤:右室の下に円形の左室が横断されており、左室短軸断面(①より心基部寄りのレベル)である。 ①②④⑤はいずれも傍胸骨アプローチで得られる断面であり、プローブは胸骨左縁にある。心尖部にプローブを当てて得られるのは③のみである。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    左室を輪切りにした左室短軸断面で、内腔に乳頭筋が描出されている。傍胸骨アプローチ(胸骨左縁第3〜4肋間)から、長軸断面の位置でプローブを時計方向に約90度回転させ、ビームを心尖側へ傾けて得る断面である。プローブは心尖部ではなく胸骨左縁にある。

  2. ×b.  ②

    画面手前に右室、その奥に左室、さらに左房と大動脈基部が描出された傍胸骨左室長軸断面である。心エコー検査で最初に記録する基本断面で、左室壁厚・左室径・左房径・大動脈径の計測や、僧帽弁・大動脈弁の観察に用いる。プローブは胸骨左縁第3〜4肋間に置かれ、心尖部からは離れている。

  3. ○c.  ③

    画像の頂点(プローブ直下)に心尖部が位置し、心室中隔と心房中隔が縦に並んで右室・左室・右房・左房の4腔がすべて写っている心尖部四腔断面である。この断面は心尖拍動を触れる部位にプローブを置き、心基部方向へビームを向けて得られる。したがって5つの中で最も心尖部に近い位置にプローブがある。左右心室の大きさや壁運動の比較、房室弁の逆流評価、ドプラ法による左室流入血流の計測などに用いられる。

  4. ×d.  ④

    中央に大動脈弁の円形断面があり、それを右室流出路が取り囲む大動脈弁レベルの短軸断面である。三尖弁・肺動脈弁・左房も同時に観察できる。傍胸骨アプローチでプローブを回転させ、ビームを心基部(頭側)へ傾けて得る断面であり、プローブは胸骨左縁にある。

  5. ×e.  ⑤

    右室の背側に円形の左室が横断された左室短軸断面である。①と同様に傍胸骨アプローチで得られ、ビームの傾け方によって大動脈弁レベル・僧帽弁レベル・乳頭筋レベルと観察部位を変えていく。プローブは胸骨左縁第3〜4肋間にあり、心尖部ではない。

経胸壁心エコーの基本断面の整理

・傍胸骨左室長軸断面:右室流出路、心室中隔、左室後壁、僧帽弁、大動脈弁、左房を観察。左室拡張末期径・収縮末期径、壁厚、左房径などの計測に用いる。 ・傍胸骨短軸断面:大動脈弁レベル(大動脈弁の弁尖数、三尖弁、肺動脈弁)、僧帽弁レベル(僧帽弁口の形態、狭窄の評価)、乳頭筋レベル(左室壁運動を領域ごとに評価)。短軸像では左室は円形、右室は三日月形に描出される。 ・心尖部四腔断面:4つの心腔と両房室弁を同時に観察。左右心室・心房の大きさの比較、壁運動、房室弁逆流、Doppler法による左室流入血流(E波・A波)の評価に用いる。Simpson法による左室駆出率の計測にも二腔断面とあわせて用いる。 ・心尖部二腔断面・長軸断面:左室前壁・下壁・後壁などの壁運動評価。 ・心窩部(剣状突起下)アプローチ:下大静脈径とその呼吸性変動(右房圧の推定)、心嚢液の評価。肺気腫などで傍胸骨からの描出が不良な場合にも有用。 ・胸骨上窩アプローチ:大動脈弓の観察(大動脈縮窄など)。

画像の向きの基本

扇形画像の頂点がプローブを当てた位置(体表)に相当する。心尖部断面では頂点に心尖が、画面下方に心房が描出される。傍胸骨断面では頂点側(画面上方)に最も胸壁に近い右室が描出される。

POINT

・扇形画像の頂点=プローブの位置であり、断面の種類からプローブ位置がわかる。 ・傍胸骨アプローチ(胸骨左縁第3〜4肋間):左室長軸断面、各レベルの短軸断面。 ・心尖部アプローチ(心尖拍動部):四腔断面、二腔断面、長軸断面。 ・4つの心腔がすべて同時に写っていれば心尖部四腔断面と判断できる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。