子宮口7 cm、SP+3 cm―内診所見を「翻訳」して分娩の現在地を読む
第109回医師国家試験 G問題 第47問
国試問題にチャレンジ
25歳の初産婦。妊娠39週6日。陣痛発来のため入院した。陣痛は周期2分30秒,発作持続時間70秒。外診では第1頭位。内診で子宮口は7 cm開大,展退度80%,児頭下降度はSP+3 cm,子宮頸部は軟,子宮口の位置は前方である。胎胞は認めない。卵膜を介して矢状縫合を1時から7時方向に触知し,子宮口の中央部に小泉門を触れるが大泉門は触れない。 正しいのはどれか。
- a.破水している。
- b.反屈位である。
- c.過強陣痛である。
- d.分娩第2期である。
- e.児頭は嵌入している。
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
分娩中の内診所見は、破水の有無、胎勢、陣痛の強さ、分娩の時期、児頭の下降度という観点で一つずつ解釈します。卵膜を介して縫合を触れれば未破水であり、「胎胞を認めない」ことだけで破水と判断してはいけません。子宮口中央に小泉門を触れ大泉門を触れなければ正常な屈位(後頭位)で、子宮口7 cmは全開大前の分娩第1期、この時期の周期約3分・持続約70秒前後の陣痛は正常範囲です。児頭の最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態が嵌入で、児頭先端がおおむねSP±0付近に達していれば嵌入と考えられ、SP+3 cmなら確実に嵌入しています。Bishopスコアや初産婦での嵌入時期と児頭骨盤不均衡の関係もあわせて理解しておくと、分娩管理の判断に直結します。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・25歳初産婦、妊娠39週6日の正期産。陣痛発来で入院。 ・陣痛: 周期2分30秒、発作持続時間70秒。子宮口7 cm開大時の平均的な値(周期約3分、持続約70秒)に近く、正常範囲である。 ・内診: 子宮口7 cm開大、展退度80%、児頭下降度SP+3 cm、頸部は軟、子宮口の位置は前方。Bishopスコアは開大3点+展退3点+下降度3点+硬度2点+位置2点=13点で、頸管の熟化は十分である。 ・卵膜を介して児頭の縫合を触れる: 卵膜が残っており、まだ破水していない。 ・矢状縫合が1時-7時方向(斜め)に走り、子宮口の中央に小泉門を触れ、大泉門は触れない: 児頭は十分に屈曲しており(屈位)、後頭が先進している。矢状縫合が骨盤の斜径に一致していることから、第2回旋(内回旋)の途中と考えられる。
考え方
子宮口が全開大(10 cm)に達していないので、分娩第1期(開口期)である。陣痛の強さ・頻度は正常、回旋も正常で、正常な分娩経過にあると判断できる。 児頭の下降度は坐骨棘間線を基準(SP±0)として、それより上をマイナス、下をプラスとしてcm単位で表す。児頭の最大周囲径(屈位では小斜径周囲)が骨盤入口面を通過した状態を嵌入(engagement)といい、このとき児頭の先端(骨性先進部)はおおむね坐骨棘の高さ(SP±0付近)に達している。本例はSP+3 cmと坐骨棘より3 cm下まで下降しており、児頭は確実に嵌入している。 各選択肢を、破水の有無、胎勢(屈位か反屈位か)、陣痛の評価、分娩期の区分、児頭下降度という観点から一つずつ検討すればよい。
選択肢考察
- ×a. 破水している。
矢状縫合を「卵膜を介して」触知していることから、卵膜はまだ破れておらず未破水である。胎胞(児頭の前方に羊水が入り込んで卵膜が膨隆したもの)を認めないのは、卵膜が児頭に密着しているためであり、破水を意味するわけではない。破水していれば卵膜を介さず児頭を直接触れ、腟内に羊水の流出を認める。
- ×b. 反屈位である。
子宮口の中央に小泉門を触れ、大泉門は触れないことから、児頭は顎を胸につけるように屈曲した屈位(後頭位)である。反屈位では児頭が伸展するため、大泉門(前頭位)、額(額位)、顔面(顔位)が先進部となり、内診で大泉門や眉間、眼窩、鼻などを触れる。
- ×c. 過強陣痛である。
子宮口7~8 cm開大時の過強陣痛は、陣痛周期1分以内または発作持続時間2分以上で定義される。本例の周期2分30秒、持続70秒はこれに該当せず、この時期の平均的な陣痛にほぼ一致する正常な陣痛である。
- ×d. 分娩第2期である。
分娩第2期(娩出期)は子宮口全開大(10 cm)から児の娩出までをいう。本例は子宮口7 cm開大であり、陣痛開始から全開大までの分娩第1期(開口期)にある。
- ○e. 児頭は嵌入している。
嵌入とは児頭の最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態で、このとき児頭先端はおおむね坐骨棘間線(SP±0)の高さにある。本例の児頭下降度はSP+3 cmで坐骨棘より3 cm下方まで下降しており、児頭は嵌入していると判断できる。
分娩の時期区分
・分娩第1期(開口期): 分娩開始(陣痛周期が10分以内、または1時間に6回以上の陣痛)から子宮口全開大まで。初産婦で約10~12時間、経産婦で約4~6時間。 ・分娩第2期(娩出期): 子宮口全開大から児娩出まで。初産婦で約1~2時間、経産婦で約30分~1時間。 ・分娩第3期(後産期): 児娩出から胎盤娩出まで。15~30分程度。
陣痛の評価(子宮口開大度別)
平均的な陣痛: 4~6 cmで周期約3分・持続約70秒、7~8 cmで周期約3分・持続約70秒、9~10 cm(第2期)で周期約2分・持続約60秒。 過強陣痛: 周期が4~6 cmで1分30秒以内、7~8 cmおよび9 cm以降で1分以内、または持続時間が4~8 cmで2分以上、9 cm以降で1分30秒以上。 微弱陣痛: 周期が4~6 cmで6分30秒以上、7~8 cmで6分以上、9 cm以降で初産婦4分以上・経産婦3分30秒以上、または持続時間が4~8 cmで40秒以内、9 cm以降で30秒以内。
Bishopスコア(頸管成熟度)
開大度(0 cm/1~2 cm/3~4 cm/5 cm以上=0/1/2/3点)、展退度(0~30%/40~50%/60~70%/80%以上=0/1/2/3点)、児頭下降度(SP-3/-2/-1~0/+1以上=0/1/2/3点)、頸部の硬度(硬/中/軟=0/1/2点)、子宮口の位置(後方/中央/前方=0/1/2点)の合計13点満点。9点以上で頸管が熟化していると判断し、分娩誘発の成功が期待できる。
胎位・胎向・胎勢
・胎位: 児の縦軸と子宮の縦軸の関係(頭位、骨盤位、横位)。 ・胎向: 児背(頭位では後頭)が母体の左にあれば第1、右にあれば第2。 ・胎勢: 屈位(後頭位)か反屈位(前頭位、額位、顔位)か。
正常分娩の回旋(第1頭位の場合)
・第1回旋: 骨盤入口で児頭が屈曲し、小泉門が先進する(屈曲)。 ・第2回旋: 骨盤内で児頭が回旋し、矢状縫合が横径から斜径を経て縦径に一致し、後頭が母体前方(恥骨側)を向く(内回旋)。 ・第3回旋: 項部が恥骨弓下を支点として児頭が伸展し、娩出される(伸展)。 ・第4回旋: 娩出後、児頭が母体の大腿方向へ向きを変え、肩甲が縦径に一致する(外回旋)。
嵌入と児頭下降度
児頭最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態を嵌入(固定)という。初産婦では分娩開始前(妊娠末期)に嵌入していることが多いが、経産婦では分娩開始後に嵌入することが多い。初産婦で分娩開始時に児頭が浮動している場合は児頭骨盤不均衡(CPD)を疑う。
POINT
・分娩第1期は子宮口全開大(10 cm)まで。7 cm開大は第1期。 ・卵膜を介して縫合を触知すれば未破水。 ・小泉門が先進し大泉門を触れなければ屈位(正常の後頭位)。 ・SP±0付近で児頭は嵌入しており、SP+3 cmなら確実に嵌入している。 ・子宮口7~8 cmでの過強陣痛は周期1分以内または持続2分以上。 ・Bishopスコアは5項目13点満点、9点以上で頸管熟化。
