StudyMed医師国家試験

「100倍で見渡し、400倍で数える」―尿沈渣の鏡検と血球計数の基本

第109回医師国家試験 G問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第109回 G問題 第23問

尿沈渣の検鏡時,血球成分の個数を計測する際の拡大倍率はどれか。

  1. a.20倍
  2. b.40倍
  3. c.100倍
  4. d.400倍
  5. e.1,000倍

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は尿沈渣の鏡検で、赤血球や白血球を数えるときにどの倍率を使うかという問題だ。単なる数字の暗記ではなく、弱拡大と強拡大をそれぞれ何のために使うのかを理解しておくと迷わない。まず、尿沈渣とはどんな検査か説明できるかな。
医学生医学生
尿を遠心分離して、沈んだ赤血球や白血球、円柱などの有形成分を顕微鏡で見る検査ですよね。
ドクタードクター
その通り。腎臓や尿路のどこに、どんな病変があるかを推定する手がかりになる。鏡検は2段階で行うのが基本で、まず弱拡大で標本全体を見渡し、次に強拡大で細胞成分を詳しく見る。顕微鏡の総合倍率は接眼レンズと対物レンズの積で決まるけれど、接眼レンズは通常何倍だったかな。
医学生医学生
基礎の組織学実習で使ったのは10倍でした。だから対物10倍で100倍、対物40倍で400倍ですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。弱拡大、つまりLPFが総合100倍、強拡大のHPFが総合400倍にあたる。では、血球を数えるのはどちらだと思う?
医学生医学生
正直、100倍でも赤血球は見えそうな気がします。たくさんの視野を見られるほうが数えやすいのではないでしょうか。
ドクタードクター
そこが落とし穴だ。赤血球は直径7〜8μm程度、白血球も10〜15μmほどしかない。100倍では小さな粒としてしか見えず、赤血球なのか白血球なのか、あるいは結晶や酵母なのかを形態で見分けられないんだ。だから血球成分は400倍の強拡大で、複数の視野を観察して1視野あたりの平均を「個/HPF」として報告する。正解は400倍だね。
医学生医学生
血尿の基準も「5個/HPF以上」でしたから、単位にHPFが入っていること自体がヒントになっていたんですね。
ドクタードクター
その気づきは大事だよ。白血球も5個/HPF以上を膿尿の目安とする。では100倍の弱拡大は何に使うのかな。
医学生医学生
全体を見渡して成分の分布を確認する……ほかにもありますか。
ドクタードクター
円柱を探して数えるのが重要な役割だ。円柱は大きくて数が少ないから、強拡大で狭い視野を見ていると見落としやすい。弱拡大で全視野を探して数えるんだ。
医学生医学生
20倍や40倍はどうでしょう。もっと広く見渡せそうですが。
ドクタードクター
40倍は組織標本で全体像を探すときなどに使う倍率で、尿沈渣の鏡検では用いない。20倍ではなおさら血球は点にしか見えない。逆に1,000倍は油浸レンズを使う倍率で、血液塗抹標本の細胞形態やグラム染色での細菌観察に使うもの。カバーガラスをかけた無染色の尿沈渣で血球を数えるには使わないんだ。
医学生医学生
血液内科の実習で末梢血塗抹を見たときは油浸でしたが、尿沈渣とは用途が違うんですね。
ドクタードクター
そう、標本の種類と目的で倍率を選ぶという発想を持っておこう。ここからは発展知識だ。強拡大では赤血球の形にも注目する。ドーナツ状や有棘状などの変形赤血球が多ければ糸球体性血尿を疑う。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、IgA腎症の患者さんの尿沈渣に変形赤血球があると教わりました。円柱にも意味がありましたよね。
ドクタードクター
円柱は尿細管内でTamm-Horsfallムコ蛋白を基質にできる鋳型だから、腎実質由来の成分だ。硝子円柱は健常者でも運動後や脱水時に少数みられるけれど、赤血球円柱は糸球体腎炎、白血球円柱は腎盂腎炎や間質性腎炎、顆粒円柱や上皮円柱は尿細管障害、ろう様円柱や幅広円柱は高度で慢性の腎障害を示唆する。
医学生医学生
400倍で血球の数と形を見て、100倍で円柱を拾う。そうすると出血の場所や腎障害の性質まで推測できるわけですね。
ドクタードクター
その通り。また、結果を施設間で比較できるように、尿量や遠心条件、沈渣量などを統一した標準法が定められている。臨床では、採取後時間がたった尿では細胞が壊れて正確に評価できないことがあるから、新鮮尿で検査することも意識しておこう。

まとめ

尿沈渣は、遠心分離した尿の有形成分を顕微鏡で観察し、腎・尿路病変の部位や性質を推定する検査です。鏡検はまず弱拡大(総合100倍、LPF)で標本全体の分布を確認し、大型で数の少ない円柱を全視野で数え、次に強拡大(総合400倍、HPF)で赤血球・白血球・上皮細胞などを形態まで確認して「個/HPF」で計数します。赤血球・白血球とも5個/HPF以上が血尿・膿尿の目安であり、強拡大では糸球体性血尿を示唆する変形赤血球も評価できます。1,000倍は油浸レンズによる血液塗抹やグラム染色の観察に用いる倍率で、尿沈渣の計数には使いません。倍率ごとの役割を理解しておくことは、検査結果を正しく読み、腎疾患の鑑別へつなげる基本になります。

解答・解説

正解はdです

尿沈渣検査は、尿を遠心分離して沈殿した有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、結晶、細菌など)を顕微鏡で観察する検査であり、腎・尿路系の病変の部位や性質を推定する手がかりになる。

鏡検の手順

日本で標準とされる方法(日本臨床検査標準協議会〈JCCLS〉の尿沈渣検査法)では、原則として無染色の標本を用い、次の2段階で観察する。 1. 弱拡大(low power field:LPF、総合倍率100倍): 標本全体を見渡し、成分が偏りなく分布しているかを確認するとともに、円柱など比較的大きく数の少ない成分を探して数える。 2. 強拡大(high power field:HPF、総合倍率400倍): 赤血球・白血球・上皮細胞などの細胞成分や細菌・結晶を観察し、複数視野(標準法では20視野程度)を観察して平均的な個数を「○個/HPF」として報告する。 顕微鏡の総合倍率は「接眼レンズ(通常10倍)×対物レンズ」で決まり、10倍の対物レンズで100倍、40倍の対物レンズで400倍となる。赤血球(直径約7〜8μm)や白血球(約10〜15μm)を形態まで確認して数えるには400倍が適しており、血球成分の計数は強拡大(400倍)で行う。

選択肢考察

  1. ×a.  20倍

    誤り。総合倍率20倍は尿沈渣の観察には用いない。この倍率では赤血球や白血球は点にしか見えず、細胞の同定も計数もできない。

  2. ×b.  40倍

    誤り。総合倍率40倍(接眼10倍×対物4倍)は、組織標本の全体像を探すときなどに使う低倍率であり、尿沈渣の鏡検では用いない。血球の識別・計数には不十分である。

  3. ×c.  100倍

    誤り。100倍は弱拡大(LPF)であり、尿沈渣ではまずこの倍率で標本全体を観察して成分の分布を確かめ、円柱のように大型で出現数の少ない成分を全視野で探して数えるのに用いる。しかし赤血球・白血球などの血球成分を見分けて数えるには倍率が足りず、血球の計数には用いない。

  4. ○d.  400倍

    正しい。400倍は強拡大(HPF)であり、赤血球、白血球、上皮細胞などの細胞成分を形態まで確認したうえで個数を数える倍率である。複数の視野を観察し、1視野あたりの平均個数を「○個/HPF」と表記する。赤血球5個/HPF以上が顕微鏡的血尿、白血球5個/HPF以上が膿尿(白血球尿)の目安とされ、これらの判定基準もHPFを単位として定められている。さらに強拡大では、糸球体由来を示唆する変形赤血球(ドーナツ状、有棘状など)の有無も観察できる。

  5. ×e.  1,000倍

    誤り。1,000倍は油浸レンズ(対物100倍)を用いる倍率で、血液塗抹標本の細胞形態観察や、グラム染色標本での細菌の観察などに使う。尿沈渣の通常の鏡検(カバーガラスをかけた無染色標本)では用いず、血球成分の計数にも使用しない。

尿沈渣の標本作製(標準法の概要)

新鮮尿10mLを遠心分離(500G、5分)し、上清を除いて沈渣を0.2mLに調整したうえで、その一部をスライドガラスに載せカバーガラスをかけて鏡検する。条件を統一することで、施設間で結果を比較できるようにしている。

主な成分の報告単位と異常の目安

・赤血球: ○個/HPF。5個/HPF以上で血尿と判断する。変形赤血球が多ければ糸球体性血尿を疑う。 ・白血球: ○個/HPF。5個/HPF以上で膿尿とし、尿路感染症などを考える。 ・円柱: ○個/全視野(LPF で数える)。尿細管内で Tamm-Horsfall ムコ蛋白を基質として形成される鋳型であり、腎実質由来の成分である。硝子円柱は健常者でも運動後や脱水時に少数みられるが、赤血球円柱(糸球体腎炎)、白血球円柱(腎盂腎炎、間質性腎炎)、顆粒円柱・上皮円柱(尿細管障害)、ろう様円柱・幅広円柱(高度・慢性の腎障害)は病的意義が大きい。

弱拡大と強拡大の使い分け

・LPF(100倍): 全体の観察、成分分布の確認、円柱の計数 ・HPF(400倍): 血球・上皮細胞・細菌・結晶などの同定と計数

POINT

・尿沈渣はまず弱拡大(100倍、LPF)で全体を観察し、血球成分は強拡大(400倍、HPF)で数える ・報告単位は「○個/HPF」。赤血球・白血球とも5個/HPF以上が異常の目安 ・円柱は弱拡大で全視野を数える ・総合倍率=接眼レンズ(10倍)×対物レンズ

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。