「100倍で見渡し、400倍で数える」―尿沈渣の鏡検と血球計数の基本
第109回医師国家試験 G問題 第23問
国試問題にチャレンジ
尿沈渣の検鏡時,血球成分の個数を計測する際の拡大倍率はどれか。
- a.20倍
- b.40倍
- c.100倍
- d.400倍
- e.1,000倍
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
尿沈渣は、遠心分離した尿の有形成分を顕微鏡で観察し、腎・尿路病変の部位や性質を推定する検査です。鏡検はまず弱拡大(総合100倍、LPF)で標本全体の分布を確認し、大型で数の少ない円柱を全視野で数え、次に強拡大(総合400倍、HPF)で赤血球・白血球・上皮細胞などを形態まで確認して「個/HPF」で計数します。赤血球・白血球とも5個/HPF以上が血尿・膿尿の目安であり、強拡大では糸球体性血尿を示唆する変形赤血球も評価できます。1,000倍は油浸レンズによる血液塗抹やグラム染色の観察に用いる倍率で、尿沈渣の計数には使いません。倍率ごとの役割を理解しておくことは、検査結果を正しく読み、腎疾患の鑑別へつなげる基本になります。
解答・解説
正解はdです
尿沈渣検査は、尿を遠心分離して沈殿した有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、結晶、細菌など)を顕微鏡で観察する検査であり、腎・尿路系の病変の部位や性質を推定する手がかりになる。
鏡検の手順
日本で標準とされる方法(日本臨床検査標準協議会〈JCCLS〉の尿沈渣検査法)では、原則として無染色の標本を用い、次の2段階で観察する。 1. 弱拡大(low power field:LPF、総合倍率100倍): 標本全体を見渡し、成分が偏りなく分布しているかを確認するとともに、円柱など比較的大きく数の少ない成分を探して数える。 2. 強拡大(high power field:HPF、総合倍率400倍): 赤血球・白血球・上皮細胞などの細胞成分や細菌・結晶を観察し、複数視野(標準法では20視野程度)を観察して平均的な個数を「○個/HPF」として報告する。 顕微鏡の総合倍率は「接眼レンズ(通常10倍)×対物レンズ」で決まり、10倍の対物レンズで100倍、40倍の対物レンズで400倍となる。赤血球(直径約7〜8μm)や白血球(約10〜15μm)を形態まで確認して数えるには400倍が適しており、血球成分の計数は強拡大(400倍)で行う。
選択肢考察
- ×a. 20倍
誤り。総合倍率20倍は尿沈渣の観察には用いない。この倍率では赤血球や白血球は点にしか見えず、細胞の同定も計数もできない。
- ×b. 40倍
誤り。総合倍率40倍(接眼10倍×対物4倍)は、組織標本の全体像を探すときなどに使う低倍率であり、尿沈渣の鏡検では用いない。血球の識別・計数には不十分である。
- ×c. 100倍
誤り。100倍は弱拡大(LPF)であり、尿沈渣ではまずこの倍率で標本全体を観察して成分の分布を確かめ、円柱のように大型で出現数の少ない成分を全視野で探して数えるのに用いる。しかし赤血球・白血球などの血球成分を見分けて数えるには倍率が足りず、血球の計数には用いない。
- ○d. 400倍
正しい。400倍は強拡大(HPF)であり、赤血球、白血球、上皮細胞などの細胞成分を形態まで確認したうえで個数を数える倍率である。複数の視野を観察し、1視野あたりの平均個数を「○個/HPF」と表記する。赤血球5個/HPF以上が顕微鏡的血尿、白血球5個/HPF以上が膿尿(白血球尿)の目安とされ、これらの判定基準もHPFを単位として定められている。さらに強拡大では、糸球体由来を示唆する変形赤血球(ドーナツ状、有棘状など)の有無も観察できる。
- ×e. 1,000倍
誤り。1,000倍は油浸レンズ(対物100倍)を用いる倍率で、血液塗抹標本の細胞形態観察や、グラム染色標本での細菌の観察などに使う。尿沈渣の通常の鏡検(カバーガラスをかけた無染色標本)では用いず、血球成分の計数にも使用しない。
尿沈渣の標本作製(標準法の概要)
新鮮尿10mLを遠心分離(500G、5分)し、上清を除いて沈渣を0.2mLに調整したうえで、その一部をスライドガラスに載せカバーガラスをかけて鏡検する。条件を統一することで、施設間で結果を比較できるようにしている。
主な成分の報告単位と異常の目安
・赤血球: ○個/HPF。5個/HPF以上で血尿と判断する。変形赤血球が多ければ糸球体性血尿を疑う。 ・白血球: ○個/HPF。5個/HPF以上で膿尿とし、尿路感染症などを考える。 ・円柱: ○個/全視野(LPF で数える)。尿細管内で Tamm-Horsfall ムコ蛋白を基質として形成される鋳型であり、腎実質由来の成分である。硝子円柱は健常者でも運動後や脱水時に少数みられるが、赤血球円柱(糸球体腎炎)、白血球円柱(腎盂腎炎、間質性腎炎)、顆粒円柱・上皮円柱(尿細管障害)、ろう様円柱・幅広円柱(高度・慢性の腎障害)は病的意義が大きい。
弱拡大と強拡大の使い分け
・LPF(100倍): 全体の観察、成分分布の確認、円柱の計数 ・HPF(400倍): 血球・上皮細胞・細菌・結晶などの同定と計数
POINT
・尿沈渣はまず弱拡大(100倍、LPF)で全体を観察し、血球成分は強拡大(400倍、HPF)で数える ・報告単位は「○個/HPF」。赤血球・白血球とも5個/HPF以上が異常の目安 ・円柱は弱拡大で全視野を数える ・総合倍率=接眼レンズ(10倍)×対物レンズ
