StudyMed医師国家試験

へその緒はいつ取れる?―「1〜2週間」の常識と、取れないときに疑う好中球の異常

第109回医師国家試験 G問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第109回 G問題 第15問

臍帯が脱落する時期はどれか。

  1. a.生後48時間以内
  2. b.生後2~5日
  3. c.生後6~15日
  4. d.生後16~29日
  5. e.生後30~60日

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児の臍帯がいつ自然に脱落するかを問う問題だ。単なる暗記に見えるけれど、「なぜその時期に取れるのか」という仕組みを理解すると、脱落が遅れたときに何を疑うべきかまでつながる。まずは、臍帯の断端が出生後にどう変化していくか考えてみよう。
医学生医学生
出生時に結紮して切断したあと、残った部分は血流がなくなるので、だんだん乾いていくんですよね。
ドクタードクター
その通り。血流が途絶えた残端は乾燥・ミイラ化して、黒褐色の硬い組織になる。そして皮膚との境界部に好中球などの炎症細胞が集まって組織を分解し、境目ができて自然に落ちるんだ。病理で習った「分界」の考え方だね。
医学生医学生
産婦人科の実習で新生児室に行ったとき、退院する赤ちゃんにまだへその緒が付いていたのを覚えています。だから意外と遅くて、2〜3週間くらいかと思っていました。
ドクタードクター
いい観察だね。日本では経腟分娩後の入院期間が5日前後のことが多いから、退院時にまだ付いている子は珍しくない。ただ、一般的な脱落時期は生後5〜7日ごろが多く、おおむね1〜2週間以内に取れる。選択肢の中でこの範囲を含むのは「生後6〜15日」だ。
医学生医学生
では生後48時間以内というのは早すぎるということですね。
ドクタードクター
そう。生後2日では残端はまだ乾燥の途中で、境界部での組織分解も進んでいないから、自然に脱落することは通常ない。生後2〜5日も、5日前後で早めに取れる子はいるけれど、2〜4日での脱落はまれで、典型的な時期とはいえない。
医学生医学生
逆に、生後16〜29日だとどうなりますか。たまにそのくらいまで付いている子もいそうですが。
ドクタードクター
通常より遅い時期だね。2週間を過ぎても残っていたら、乾燥が不十分でないか、臍炎のような感染がないかを確認する。そして一般に生後3週間を超えても脱落しない場合を臍帯脱落遅延と呼び、基礎疾患を考える必要が出てくる。生後30〜60日となると明らかな脱落遅延だ。
医学生医学生
脱落遅延で疑う基礎疾患というと……免疫学の講義で白血球接着不全症が臍帯脱落遅延を起こすと習いました。CBTでも出た気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。ここで最初の仕組みが生きてくる。脱落には境界部への好中球の遊走が必要だったよね。白血球接着不全症では好中球が血管内皮に接着できず、血管外へ出られないから、組織の分解が進まず脱落が遅れるんだ。
医学生医学生
なるほど、好中球が現場に行けないから、へその緒が取れないわけですね。ほかに脱落が遅れる要因はありますか。
ドクタードクター
局所が湿った環境だったり感染があったりすると乾燥が遅れる。帝王切開での出生や早産・低出生体重児でも遅れやすいとされている。また、消毒薬を頻繁に使いすぎて臍の細菌叢や炎症反応が抑えられると、かえって脱落が遅れることもあるんだ。尿膜管遺残や臍腸管遺残のような臍の構造異常も鑑別に入る。
医学生医学生
消毒しすぎると遅れるというのは意外でした。じゃあ、ご家族にはどんなケアを伝えればいいんでしょう。
ドクタードクター
基本は清潔と乾燥の維持。おむつで臍を覆わないようにする、といった具体的な指導を退院前にしておくことが大切だ。そのうえで、臍周囲の発赤や腫脹、悪臭のある分泌物があれば臍炎を疑って受診してもらう。臍炎は抗菌薬治療が必要で、放置すると敗血症に進展しうるからね。
医学生医学生
脱落した後のトラブルもありますか。小児科の外来で、臍に赤いポツッとしたものがある赤ちゃんを見たことがあります。
ドクタードクター
それは臍肉芽腫かもしれないね。脱落後の臍に残る赤くて湿った小さな隆起で、硝酸銀による焼灼や結紮で治療する。ほかに乳児に多い臍ヘルニアは、多くが1〜2歳までに自然に閉じる。臍は小さな部位だけど、新生児・乳児健診で必ず見るポイントなんだ。
医学生医学生
整理すると、通常は1〜2週間以内に脱落、3週間を超えたら脱落遅延として感染や好中球機能異常を考える、ということですね。
ドクタードクター
その通り。「取れる時期」を覚えるだけでなく、「取れる仕組み」と「取れないときに何を考えるか」をセットにしておけば、臨床でも試験でも応用が利くよ。

まとめ

出生時に切断された臍帯の残端は、血流を失って乾燥・ミイラ化し、皮膚との境界部に集まる好中球などによる組織分解を経て自然に脱落します。脱落時期には個人差がありますが、一般に生後5〜7日ごろが多く、おおむね1〜2週間以内であり、選択肢では「生後6〜15日」が該当します。湿潤環境や感染、帝王切開、早産などでは脱落が遅れやすく、一般に生後3週間を超えて残る場合は臍帯脱落遅延として、局所感染や臍の遺残に加え、白血球接着不全症などの好中球機能異常を鑑別に挙げます。臍のケアの基本は清潔と乾燥であり、退院前の家族指導や臍炎・臍肉芽腫・臍ヘルニアの理解とあわせて、新生児診療の基礎として押さえておきたい知識です。

解答・解説

正解はcです

出生時に結紮・切断された臍帯は、新生児の腹壁に数cmの断端(臍帯残端)として残る。この残端は血流が途絶えているため次第に乾燥・ミイラ化して黒褐色に硬くなり、皮膚との境界部で起こる好中球などの炎症細胞による組織の分解(分界)によって自然に脱落する。 脱落までの期間には個人差があるが、一般には生後5〜7日ごろが多く、おおむね生後1〜2週間以内に脱落する。選択肢のうちこの範囲を含むのは「生後6〜15日」である。 乾燥が遅れる因子(湿潤環境、感染、帝王切開での出生、早産など)があると脱落は遅れやすい。逆に生後2日以内に脱落することはまずない。生後3週間を超えても脱落しない場合は臍帯脱落遅延として、局所の感染のほか、好中球の機能異常などの基礎疾患を考慮する。

選択肢考察

  1. ×a.  生後48時間以内

    生後48時間以内では臍帯残端はまだ乾燥・ミイラ化の途中であり、脱落に必要な組織の分解も進んでいないため、自然に脱落することは通常ない。

  2. ×b.  生後2~5日

    生後5日前後で早めに脱落する児もいるが、2〜4日での脱落はまれで、典型的な脱落時期とはいえない。わが国では経腟分娩後の入院期間が5日前後であることが多いため、退院時点ではまだ臍帯が付いていることも少なくない。そのため退院前に臍の観察方法や清潔・乾燥の保ち方を家族に指導しておくことが大切である。

  3. ○c.  生後6~15日

    臍帯は乾燥・ミイラ化したのち、皮膚との境界での炎症細胞による分解を経て、一般に生後5〜7日ごろ、遅くとも1〜2週間以内に自然脱落する。選択肢の中で通常の脱落時期を最もよく含むのはこの区間である。脱落後の臍は数日でじゅくじゅくした部分が乾き、上皮化して閉鎖する。

  4. ×d.  生後16~29日

    通常の脱落時期よりも遅い。生後2週間を過ぎても残存している場合は乾燥が不十分でないか、臍炎などの感染がないかを確認する。さらに生後3週間を超えても脱落しない場合は臍帯脱落遅延とされ、白血球接着不全症などの好中球機能異常を鑑別に挙げる必要がある。

  5. ×e.  生後30~60日

    生後1か月以上臍帯が残存するのは明らかな脱落遅延であり、正常な時期ではない。白血球接着不全症(LAD: leukocyte adhesion deficiency、好中球が血管外へ遊走できない先天性免疫不全症)では臍帯の分解が進まず脱落が遅れることが知られており、精査の対象となる。

臍帯脱落の機序

臍帯の切断後、残端の組織(ワルトン膠質や臍帯血管)は血流を失って乾燥・壊死し、ミイラ化する。皮膚との境界部には好中球が集まって炎症反応を起こし、組織を融解・分離させることで残端が脱落する。この過程に好中球の遊走が必要なため、好中球の機能に異常があると脱落が遅れる。

臍帯脱落遅延の原因

・局所要因:湿潤環境、臍炎などの感染 ・出生時の状況:帝王切開での出生、早産・低出生体重児など ・ケアの影響:消毒薬の頻回使用で臍の細菌叢や炎症反応が抑えられると脱落が遅れることがある ・基礎疾患:白血球接着不全症(とくに1型)、そのほかの好中球機能異常、臍帯の尿膜管遺残・臍腸管遺残(尿膜管開存、卵黄腸管遺残など)

臍のケアと関連疾患

・臍のケアの基本は清潔と乾燥の維持である。おむつで臍を覆わないようにする。 ・臍炎:臍周囲の発赤・腫脹・悪臭のある分泌物。抗菌薬治療を要し、放置すると敗血症などに進展しうる。 ・臍肉芽腫:脱落後の臍に残る赤色・湿潤した小隆起。硝酸銀による焼灼や結紮で治療する。 ・臍ヘルニア:乳児に多く、多くは1〜2歳までに自然閉鎖する。

POINT

・臍帯は乾燥・ミイラ化を経て、一般に生後5〜7日ごろ、遅くとも1〜2週間以内に自然脱落する。 ・生後3週間を超えても脱落しない場合は臍帯脱落遅延とし、白血球接着不全症などの好中球機能異常や局所の感染・臍の遺残を考える。 ・臍のケアは清潔と乾燥が基本で、退院前に家族へ指導する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。