StudyMed医師国家試験

代診医は誰が送る?―「計画・調整・派遣・現場」で整理するへき地医療の仕組み

第109回医師国家試験 E問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第5問

へき地医療について正しいのはどれか。

  1. a.へき地診療所は一次医療圏ごとに設置されている。
  2. b.へき地保健医療計画は地域医療支援病院が策定する。
  3. c.へき地医療拠点病院は代診医派遣の役割を担っている。
  4. d.へき地巡回診療車は地域の救命救急センターから派遣される。
  5. e.へき地医療支援機構はへき地を有する市町村に設置されている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はへき地医療の体制についての問題だ。選択肢はどれも「どこに設置されるか」「誰が策定するか」「どこから派遣されるか」という主体の取り違えを狙っている。役割分担の全体像を頭に入れれば、迷わず解けるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で聞いた覚えはあるのですが、へき地医療拠点病院とへき地医療支援機構の区別があいまいです。
ドクタードクター
そこが一番混同しやすいところだね。4つの層で整理しよう。計画を立てるのは都道府県、全体の調整役がへき地医療支援機構、人と診療を送り出す拠点がへき地医療拠点病院、そして現地で日常の診療を行うのがへき地診療所だ。
医学生医学生
計画、調整、派遣、現場という分担ですね。そうすると、へき地医療拠点病院が代診医を派遣するというのは正しそうです。
ドクタードクター
その通り。へき地診療所は医師が1人だけということも多いから、その医師が研修や休暇、病気で不在になると、地域の診療が止まってしまう。そこで拠点病院が代わりの医師、つまり代診医を派遣して診療を途切れさせないようにするんだ。ほかにも無医地区への巡回診療、へき地診療所への常勤医の派遣、医療従事者の研修、遠隔医療による診療支援なども担っていて、都道府県知事が指定する。
医学生医学生
地域医療実習で離島の診療所に行ったとき、所長の先生が「学会に行く間は本土の病院から代わりの先生が来てくれる」と話していました。あれが代診医派遣だったんですね。
ドクタードクター
まさにそれだね。では巡回診療車はどうだろう。救命救急センターから派遣されるという選択肢がある。
医学生医学生
救命救急センターは三次救急で、重症患者を24時間受け入れる施設ですよね。定期的に巡回診療に出るのは役割が違う気がします。
ドクタードクター
いい判断だ。巡回診療車や巡回診療船による巡回診療も、へき地医療拠点病院の業務だ。救命救急センターはへき地への定期的な巡回診療を担う施設ではない。次に、へき地保健医療計画の策定主体はどうかな。
医学生医学生
地域医療支援病院が策定する、とありますが、病院が計画を作るのは少し変な感じがします。
ドクタードクター
その違和感は正しい。計画は国の指針に基づいて都道府県が策定する。地域医療支援病院は紹介患者の受け入れや医療機器の共同利用、地域の医療従事者への研修などで、かかりつけ医を支援する医療機関であって、計画を立てる立場ではないんだ。なお現在は、へき地保健医療計画は独立した計画ではなく、都道府県の医療計画の中に一体化されている。
医学生医学生
へき地医療支援機構は市町村に置かれる、という選択肢はどうですか。へき地を抱える市町村が自分で調整するのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そう考えがちだけれど、支援機構は都道府県単位で設置される。市町村単位では医師を送り出せる病院や人材が限られるから、都道府県全体を見渡して、拠点病院からの医師派遣や代診医派遣の調整、へき地勤務医のキャリア支援などを行う必要があるんだ。広域で調整するからこそ意味がある組織だね。
医学生医学生
最後に、へき地診療所は一次医療圏ごとに設置される、というのは?
ドクタードクター
これも誤り。へき地診療所は医療圏という区分ごとに機械的に置くものではなく、医療を受けにくい地域の実情に応じて設置される。目安は、おおむね半径4kmの範囲にほかの医療機関がなく、その範囲の人口が原則1,000人以上で、最寄りの医療機関まで通常の交通機関で30分以上かかる地域だ。離島ではもっと少ない人口でも対象になる。それに、医療法上の医療計画で定めるのは二次医療圏と三次医療圏で、一次医療圏は法律上の区分ではないんだよ。
医学生医学生
CBTの勉強で無医地区の定義も出てきました。半径4km以内に50人以上が住んでいて、医療機関を容易に利用できない地区、でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。数字が似ているから、へき地診療所の設置基準と混同しないように注意しよう。発展として、へき地の医療は医療計画の「5疾病・6事業」のうちの1事業に位置づけられていることも押さえておきたい。6事業は救急医療、災害時医療、新興感染症等の感染拡大時の医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療だ。
医学生医学生
医師確保の面では、自治医科大学や地域枠もへき地医療と関係していますよね。
ドクタードクター
その通り。自治医科大学は各都道府県が共同で設立した大学で、卒業生は出身都道府県で一定期間へき地勤務などに従事する。地域枠も医師の地域偏在対策の一つだ。さらに都道府県の地域医療支援センターが医師配置の調整やキャリア形成を支援していて、へき地医療支援機構と連携して運用されることも多い。将来どこで働くにしても、こうした仕組みを知っておくと地域医療を支える側の視点が持てるよ。

まとめ

へき地医療は、都道府県が計画を策定し(現在は医療計画に一体化)、都道府県単位のへき地医療支援機構が医師派遣などを調整し、へき地医療拠点病院が巡回診療・医師派遣・代診医派遣・研修・遠隔医療支援を担い、へき地診療所が現地の日常診療を行う、という役割分担で成り立っています。へき地診療所は医療圏ごとではなく、半径4km以内に他の医療機関がなく人口が原則1,000人以上、最寄りの医療機関まで30分以上かかる地域などに設置されます。無医地区は半径4km内に50人以上が居住し医療機関を容易に利用できない地区と定義され、へき地の医療は医療計画の6事業の一つです。自治医科大学や地域枠、地域医療支援センターなどの医師確保策とあわせて理解することで、「誰が何を担うか」を問う設問に確実に対応でき、地域医療を支える視点も身につきます。

解答・解説

正解はcです

本問は、へき地医療を支える仕組みのうち「誰が(どの主体が)何を担うか」を問う問題である。

へき地医療体制の骨格

へき地医療は、次のような役割分担で成り立っている。 ・計画を立てる主体:都道府県(国の示す指針に沿って策定する) ・調整・司令塔:へき地医療支援機構(都道府県単位で設置され、医師派遣の調整などを行う) ・人と診療を送り出す拠点:へき地医療拠点病院(巡回診療、医師派遣、代診医派遣などを担う) ・現地で日常の診療を行う施設:へき地診療所

解き方

選択肢はいずれも「設置単位」「策定主体」「派遣元」といった主体の取り違えを狙っている。「計画と支援機構は都道府県」「現場への医師・巡回診療の送り出しはへき地医療拠点病院」という対応関係を押さえておけば、代診医派遣を拠点病院の役割とするcが正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  へき地診療所は一次医療圏ごとに設置されている。

    誤り。へき地診療所は医療圏という行政区分ごとに機械的に置かれるものではなく、医療を受けにくい地域の実情に応じて設置される。設置の目安は、おおむね半径4kmの範囲に他の医療機関がなく、その範囲の人口が原則1,000人以上で、最寄りの医療機関まで通常の交通機関で30分以上かかる地域である。離島では人口300人以上(1,000人未満)でも設置対象となる。なお一次医療圏はおおむね市町村を単位とする日常的な医療の圏域を指すが、医療法上の医療計画で定めるのは二次医療圏と三次医療圏である。

  2. ×b.  へき地保健医療計画は地域医療支援病院が策定する。

    誤り。へき地保健医療計画は、国が示す策定指針に基づいて都道府県が策定するものである。地域医療支援病院は、かかりつけ医などへの支援(紹介患者の受け入れ、医療機器の共同利用、地域の医療従事者への研修など)を担う医療機関であり、計画を策定する立場にはない。なお、第7次医療計画(2018年度~)以降、へき地保健医療計画は独立した計画ではなく、都道府県の医療計画の中に一体化して策定されている。

  3. ○c.  へき地医療拠点病院は代診医派遣の役割を担っている。

    正しい。へき地医療拠点病院は、へき地診療所の医師が研修・休暇・病気などで不在となる際に、代わりの医師(代診医)を派遣して診療を途切れさせない役割を担う。このほか、無医地区などへの巡回診療、へき地診療所への常勤医師の派遣、へき地の医療従事者に対する研修、遠隔医療による診療支援なども主な業務である。都道府県知事が指定する。

  4. ×d.  へき地巡回診療車は地域の救命救急センターから派遣される。

    誤り。巡回診療車(や巡回診療船)による巡回診療は、へき地医療拠点病院が担当する業務である。救命救急センターは重篤な救急患者を24時間受け入れる三次救急医療機関であり、へき地への定期的な巡回診療を担う施設ではない。

  5. ×e.  へき地医療支援機構はへき地を有する市町村に設置されている。

    誤り。へき地医療支援機構は市町村ではなく、都道府県単位で設置される。都道府県全体を見渡して、へき地医療拠点病院からの医師派遣・代診医派遣の調整、へき地勤務医師の確保やキャリア支援、関係機関の連絡調整などを行う、へき地医療の企画・調整の中心となる組織である。市町村単位では医師派遣元となる病院や人材が限られるため、広域での調整が必要となる。

へき地・無医地区の考え方

無医地区とは、医療機関のない地域で、その地区の中心からおおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住し、容易に医療機関を利用できない地区をいう。人口が50人未満でも準じた状況にある地区は「無医地区に準じる地区」とされる。

へき地医療に関わる主な施設・組織

・へき地診療所:へき地で日常の外来診療などを担う。 ・へき地医療拠点病院:巡回診療、医師・代診医派遣、研修、遠隔医療支援などを担う。都道府県知事が指定する。 ・へき地医療支援機構:都道府県単位に置かれ、へき地医療の企画・調整を行う。 ・地域医療支援センター:都道府県が設置し、医師不足地域への医師配置の調整やキャリア形成支援を担う。へき地医療支援機構と連携(統合)して運用される例も多い。

医師確保の制度

自治医科大学はへき地医療に従事する医師の養成を目的として各都道府県が共同で設立した大学であり、卒業生は出身都道府県で一定期間へき地勤務などに従事する。また、地域枠による医学部定員の設定も医師の地域偏在対策の一つである。

医療計画との関係

へき地の医療は、医療計画で定める「5疾病・6事業」のうちの1事業に位置づけられている(6事業:救急医療、災害時医療、新興感染症等の感染拡大時の医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)。

POINT

・へき地保健医療計画の策定主体:都道府県(現在は医療計画に一体化) ・へき地医療支援機構:都道府県単位で設置、医師派遣などの調整役 ・へき地医療拠点病院:巡回診療・医師派遣・代診医派遣・研修・遠隔医療支援 ・へき地診療所:医療圏単位ではなく、医療を受けにくい地域(原則人口1,000人以上、最寄り医療機関まで30分以上など)に設置 ・無医地区:半径4km内に50人以上居住し、医療機関を容易に利用できない地区

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。